マザーズ・フロントライン   作:ペニーボイス

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AK12ちゃんと関わりたすぎて彼女が感情豊かすぎる感じになりましたごめんなさいごめんなさいごめんなさい


8話 調達

 

 

 

 

 

「そうは言っても、坊やが心配よ。もしまたあの塹壕の時みたいになったら…」

 

 

 時刻は午後3時の指揮ルーム。

 副官のダーリャママと一緒にサモワールティーを飲んでいる時に、ダーリャママが藪から棒に私の装備を見直すと言ってきた。

 そりゃあ有難い。

 こんな21世紀も半ばになってギムナスチョルカじゃ共産趣味者なコスプレイヤーだと思われちまう。

 だがダーリャママのいう"装備"は彼女お手製のギムナスチョルカのことではなかったらしい。

 

 

「いくら指揮官とはいえ、護身用の自動拳銃だけじゃ火力が足りないわ。」

 

「…めっさくさ今更じゃない?」

 

「だから坊やのために、相応しいメインウェポンを用意したの♡」

 

「ほう、無視ですか。大したものですね。」

 

 

 そうは言いつつも彼女の申し出は有難い。

 ダーリャママはどこからか大きなトラッドボックスを引っ張り出してきて、私の目の前でそれを開ける。

 そのまま箱の中に手を突っ込むと、手に取った銃を私に見せてくれた。

 

 

「…これなんてどうかしら?SVT自動小銃!強力な7.62mm弾をセミオートで射撃できるのよ?」

 

「重い、嵩張る、取り回し辛い、古い

 

「もうっ!坊やったらワガママねぇ。じゃ、これなんてどう?PPD38短機関銃!」

 

「重い、嵩張る、複雑、古い

 

「お気に召さなかったかしら?…なら…これならどうかしら。フェドロフM1916!」

 

「重い、嵩張る、複雑、取り回し辛い、古い!!…ねえ、ダーリャママ。申し出は有難いんだけど、もうこんな時代なんだから。せめて私のメインウェポンぐらいは新しいヤツで良いんじゃないかな?」

 

「んもぅ、最近の若い子は…。まあ坊やの言うことも一理あるわね。良いでしょう、"ソムリエ"に連絡してあげるわ。」

 

「"ソムリエ"?」

 

「ええ。グリフィンに入社したての指揮官達は、どんな銃を選べば良いかも分からない。でも彼女に頼めば最も良い選択肢をチョイスしてくれるわよ?」

 

「マジで!?」

 

「マジよ。でも難点があるの。彼女に連絡を取れるのは限られた人形だけ。…幸い、私はその内の1人なの。」

 

「ダーリャママ、マジで最高!」

 

 

 

 

 

 …………………

 

 

 

 

 三十分後、私はスーツに着替えてグリフィンの地下区画に来ていた。

 何故そんな服装かと言うと、"ソムリエ"に会うにしてもドレスコードが適用されるらしい。

 久々にスーツなんて着たし、地下区画はエレベーターから降りた場所から高級感溢れる内装が施されていて、お陰で私は余計に緊張している。

 

 正直尻込みすること気持ちがないわけではないが、せっかくダーリャママがアポイントメントを取ってくれたのだから引き返すわけにもいかない。

 私は高級感漂う廊下を進み、目的の部屋を目指す。

 ダーリャママから教えられた通り、廊下の終わりにはカウンターがあり、1人の人形がそこで控えている。

 

 艶やかなプラチナブロンドに空色の瞳をして、凛とした雰囲気を纏っているその人形は、私を一瞥しただけで認識したようだった。

 

 

 

「ペトレンコ様。お話は伺っている。"ソムリエ"に会いにきたのね?」

 

「あ、あなたはAN94!?…驚いたな、国家保安局所属かと。」

 

「それは….まあ…これは我々の本来の任務ではありませんが…」

 

「我々?」

 

「ええ。ソムリエは私ではない。…奥へどうぞ。」

 

 

 

 AN94に案内され、カウンターの奥にあるスペースに通される。

 そこにはAN94と同じくらい見事なプラチナブロンドをした、しかし瞳を瞼で覆い隠す人形が、微笑みを浮かべて私を待っていた。

 

 

「…ディミートリ・ペトレンコか?DP28から話は聞いている。」

 

「え、AK12!?え、マジで?え?なんで2人してこんなところに!?え!?」

 

「そう、私たちはこんなところにいる場合ではないの。でも大祖国戦争の大先輩に逆らうわけにはいかないわ。…ああ。実力としての意味ではなくて、()()の問題よ。」

 

 

 すげえなダーリャママ。

 大祖国戦争…つまり、第二次世界大戦における赤軍の勝利は実に輝かしい出来事でもある。

 世界が崩壊してしまう前では、少なくとも年に一回はモスクワで対独戦勝記念日のパレードが行われていた。

 それほどにまで、ロシアではあの戦争の英雄を讃えていたのである。

 

 そしてその伝統は世界が崩壊した今でも有効らしい。

 ダーリャママは特権を私の為に使ってくれたわけだ。

 ありがたやありがたや。

 

 

 

「DPからは何か言われてない?…暗号を教えてくれたハズよ?」

 

「ああ、そうだ。"テイスティングを"」

 

「よくできました。…あなたが望んでいるものなんて、目を開けなくてもよく分かるわ。あなたは自身に合った装備がほしい。まずはメインウェポンね。単純で、頑丈な物をもとめている。」

 

「その通り」

 

 

 AK12の背後にはライトアップされた銃の数々がラックに掛けてあり、彼女はその内の1つを手に取った。

 そしてそのまま、それを私に差し出す。

 

 

AK12アサルト・ライフル。遠近両様のハイブリットスコープを搭載、ハンドガード下部にタクティカル・ライトおよびレーザー、装弾口には弾倉交換が容易なマグウェルを取り付けているわ。」

 

 

 私は昔陸軍にいた時に教わった手順でアサルト・ライフルを点検する。

 スコープの取付、機関部への注油、マガジンの装着、どれをとってもこれ以上はない。

 完璧だ、素晴らしい。

 

 

「次にサイドアームね。ドイツ製が好きなのは聞いているけど、ロシア製のオススメがあるわ。」

 

 

 彼女はそう言うと、今度は別の銃をラックから取り出す。

 

 

AK12

 

「え?」

 

「この銃はメインウェポンとしても有用だけど、サイドアームとしても完璧なのは言うまでもないわね。」

 

「ちょ」

 

「え?何々?締めくくりにオススメは、ですって?ならこれはどうかしら。AK12。」

 

「あの」

 

「滑りにくいグリップに、新型銃床を装備。ロシア銃の最高傑作よ。」

 

「いや、だから」

 

「デザート……ふん…ならコレを。AK12。職人が最終調整をしたバレルを搭載する逸品…あなたには勿体くらい。」

 

 

 AK12が自らの半身を推し進めてくるせいで、私は西部開拓時代に存在した博打師みたいになっている。

 ただアサルト・ライフルはデリンジャーのように何鋌持ち運んでも大丈夫なわけではない。

 デリンジャーの十数倍重いし、取り回しもデリンジャーほどではないのだ。

 

 

「…お、お気持ちは有り難いんですけどね、AK12さん。いくら何でもご自身を推し過ぎじゃないでしょうか?自分大好きっ子じゃあるまいし。」

 

「ペトレンコ?まさか私にご不満が?」

 

「いや、あの」

 

「冗談よ。ちょっとからかってみただけ。」

 

 

 クスクスと笑うAK12。

 彼女はしばらく笑うと、しばし深呼吸をして、こう言った。

 

 

「さてと…ここからは()()よ?」

 

 

 突如彼女が目を見開く。

 "ソムリエ"なんて呼び名は彼女に相応しくない。

 私がもし彼女に渾名をつけるとすれば…ナーサリー・●イムとか、そんな名前で呼ぶ。

 

 

「深層演算を開始」

 

「え、そんな大袈裟な」

 

「しっ!…ペトレンコ様、AK12は今度こそあなたの望む装備を算定する。だからあなたはただ身を任せれば良い。」

 

 

 AN94が私の耳元で囁いた。

 クール系美少女の突然のASMRありがとうございます。

 耳が幸せです。

 

 

「………なるほど、これならあなたにピッタリね。」

 

 

 AK12が演算を終え、背後のラックからテキパキと銃を取り出していく。

 そしてそのまま銃の数々を目の前のデスクに置くと、目を見開いたまま、今度は口を開いた。

 

 

「メインウェポンはそのままで良いでしょう。単純、精確、頑丈。これ以上何を求める?」

 

「はい、メインはコレで」

 

「よろしい。次はサイドアームね。オススメはコレよ。ブローニング・ハイパワー。」

 

 

 まさか西側の拳銃を勧められるとは思ってはいなかった。

 だが決して悪いチョイスではない。

 ブローニング・ハイパワーといえばかのジョン・ブローニングが設計した傑作銃で、他のブローニング設計銃と同じように信頼性は折り紙つきである。

 

 

「何も、1935年当時のままってわけじゃない。装弾数は15+1発。マガジンは交換容易性を向上、照準器には蛍光サイトを使用し、バレルは私自らが削り出したモノよ。」

 

 

 私はまたも陸軍式のやり方で拳銃をチェックする。

 スライドを前進・後退させ、実際にマガジンを挿入、更には照準もつけてみた。

 完璧だ。正に完璧。語彙力がクソだけど銃は完璧。

 

 

「あなたは砲兵出身で、本来近接戦闘には不慣れ。だからショットガンも用意したかったけど…そのお年頃でメインウェポン2つ持ちはキツいでしょう?」

 

「誠に恥ずかしながらね。」

 

「だから…不本意ながらコレを。」

 

「アメリカ製のM26?」

 

「メインのAKハンドガード下部にライト及びレーザーと交換で装着できるように調整してあるわ。弾薬はバックショット、スラグ、焼夷弾が使える。」

 

「おおっ!」

 

「これなら必要な時に装着していけば良いだけだし…少なくともAKとサイガを持ち歩くよりはマシでしょう。さて、最後のデザートね。」

 

 

 彼女はそう言いながら、自身のレッグホルスターからM40リボルバーを取り出して私に差し出した。

 

 

「あなたは腕っ節の立つタイプではないし、スマートにやれるタイプでもない。カビ臭いほど古いタイプの人間ね。だから同じようにカビ臭い道具を用意したわ。…()()()()を雑に扱ったら、容赦はしないわよ?」

 

 

 

 

 

 

 AK12とAN94は本来の任務へと戻っていった。

 私はコレで遂に満足な装備を手に入れたわけだ。

 後に残る問題といえば…このゴテゴテした新式装備にギムナスチョルカはちょっとなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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