とんでもなく寝過ごした   作:横電池

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17.幽霊船との戦い

 

 

 

 

 古代魚の魔物とその群れは倒したけども、異常な霧の塊は消えずにそこにあるままだ。

 塊の中からは時折奇妙な音が聞こえる。

 

「ドレークさん……」

「俺もお前も完全に見られてるな」

 

 え、そうなの?

 それよりあの霧について教えてほしい。

 

「あの霧はなんですか」

「……まあ、まだ少しだけ時間はあるか」

 

 霧の塊はじわじわ近づいてきている。ジャイルズさんは古代魚との戦いの前に小屋に入ったままだ。

 

「お前も聞いたことぐらいあるだろう。幽霊船を」

「……名前だけ」

 

 クロスジャンケの船で一度だけ、名前を聞いたことがある。それぐらいだ。

 

「それでよく元海賊なんて言えたな……まあいい」

 

 つまり、あの霧の塊が幽霊船? 船要素はどこに。あの霧の中か。霧が濃すぎて影も見えないけど。

 

「あれは霧を運ぶ船だ。そして、この海を霧で覆う元凶だ」

「……」

「霧を作る確証はないがな。俺の勘だ」

 

 海の霧の元凶……勘と言ってるけど否定できる気がしない。現にこの塊は、島を覆うほどの霧を発生させている。

 

「……これを相手にするのが目的だったんですか」

「ああ」

「個人で相手にできる大きさですか、これ?」

 

 未だ船の形が見えないけども、霧の塊からして大型船に迫る大きさだろう。

 

「……個人で相手しなくてはならない理由があるのさ」

「まじですか」

「こんな危ない雰囲気の霧だ。各都市が放っとくわけがない。アユタヤだけでも幽霊船を沈めた記録が残ってる」

 

 沈めた記録があるのに、今こうして目の前に迫っている。

 

「何度沈めようと、奴は何度も姿を見せた。外装を変えてな。商船の姿、海賊船の姿、軍艦の姿……多様なものだったらしい。今の姿はわからんが、以前見たときと変わらなければ……武装完備な海賊船だ」

「それってかなり不味いんじゃ……」

 

 武装完備ってことは砲撃もありえる気が……こんな小さな島なんて耐えられない。

 

「まだ船の姿が見えない距離だ。俺たちが奴の姿を見るまで砲撃は絶対にない」

「……?」

「話の続きだ。奴は外装を何度も変える。外装の船は多種多様……沈んだ船の年月も関係なく、古い船も、新しい船も。それが個人で挑むべき理由だ」

 

 さっきから、ドレークさんは船の姿を外装と表現している。つまり、船の中に本体がいる?

 魔物がヤドカリのように沈没船を宿代わりにしている? でも今、ドレークさんは砲撃について触れた。ただ宿にしているだけと考えない方がいい。

 

「つい先程まで共に戦った仲間の船も、沈んだ瞬間奴の外装になる……! 友の亡骸も奴らの玩具にされて!」

「ドレークさん……?」

「……すまない、取り乱した。数で挑めば、犠牲が出ればその亡骸を踏み越えなくてはならない。海上という困難な場で築いた強固な繋がりを、省みる暇すらなく……」

 

 口ぶりからして、ドレークさんの知り合いの船がやられたのか。

 ……幽霊船というより、ゾンビの船と考えた方がいいか。仲間の船もすぐに敵になる。悪趣味なものだ。

 

 少しずつ、周囲がより一層見えなくなってくる。霧の塊が触れれる距離まで来たからだ。

 

 濃霧の中、大きな船影が見えてくる。

 

「変わってない、か……!」

「でかい……」

 

 アーモロードの海兵隊の船より大きい。クロスジャンケの船は論外。砲門が見える範囲でも13門。船首の下には特別大きな砲台が見える。

 

 ──────ォォォォォオオオオオン

 

 また奇妙な音が船からする。この音はなんなんだ。

 

「船首の左右にある砲門は焼玉式焼夷弾が撃ち出される。その隣は油雨噴射砲、正面中央はサンダーカノン砲、海上からは見えないが魚雷砲門も備えている」

「ガチガチすぎません……?」

「装備は最高峰だ。だが砲手は屑だ」

「へ?」

 

 焼夷弾の砲が撃たれるも、着弾は島の反対側。水柱の立つ大きな音が遅れて聞こえてくる。

 

 砲手は本当に下手くそだ!

 

 というか砲手なんているの?

 

「うわ……」

 

 キモい。

 火を吹いた砲門のそばを見れば、やけにでかくてキモい蟲がいた。大きな触角が4つ口回りについた赤い蟲の魔物。まさかあれが砲手?

 

「……あの蟲は」

「幽霊船の船員だ。ただの蟲と侮るな。あれは人を喰う」

「……キモさ満点」

「もうひとつ教えてやる。あの蟲は船を恐れない者を優先して襲う。俺もお前も、蟲の餌として見られているはずだ」

「なんですかその基準」

 

 船を怖がると蟲は襲ってこない? 意味がわからない。けど、きっと嘘ではない。この人は言葉が足りないことが多々あるけど、嘘をつく人ではない気がする。

 

「お前は気持ち悪いが、こいつ相手にはいいかもしれないな」

「なんで今のタイミングで悪口が出るんですか……」

「行くぞ。俺たちが恐怖しないとわかった奴はどう動くかわからない。乗り込んで中の元凶を仕留める」

 

 駆け出すドレークさんに遅れずついていく。あ、ダメ。滅茶苦茶速いこの人。

 ドレークさんがロープに結ばれた鈎を船に引っ掻け、そこから乗り込んだ。僕も遅れながらよじ登る。

 赤い蟲はカチカチと音を鳴らしながら近づいてくる。普通にキモい。

 

「ていうかあの人待つ気なさすぎる……!」

 

 赤い蟲は見るからに噛みつくのが得意な構造だ。一度でもあの牙のような触角に捕まれば引きちぎられるに違いない。

 そんなキモヤバイ蟲が何匹も。

 

 ドレークさんはどこ行った? 甲板にはいない。船倉の中? この蟲の群れを振り切って中に行ったのか。速すぎるってば。

 

「おひゅ!」

 

 近くまできた蟲を撃つとなんかキモい液を撒き散らしてきた。掛かったらどうなるかわからないし全力で避ける。とりあえず液はすごく臭い。

 まともに相手してたら厄介そうだ。視点を遠くに定めて全体を見ながら、船倉へ僕も行こう。

 

 

 

 

 

 赤い蟲、一つ目の紫色のカメムシみたいな蟲、クリオネのような見た目の魔物。

 幽霊船の船員は蟲ばかり。クリオネは蟲かは置いといて。

 

 とにかく船倉もキモいのだらけだ。

 

「あぶな!?」

 

 蟲のくせに電気を出すなこいつ。

 そこら中に血痕、引っ掻き傷、蟲の死骸に繭、ボロボロの布切れ。布切れはよく見れば服だったものだ。着用者はきっと骨も残ってない。

 

 この大きな船をよくもまあ好き勝手荒らしてくれたもんだ。このキモ蟲どもは。

 

 開きっぱなしの扉の奥から何かが飛んでくる。

 蟲かと思えば、

 

「ドレークさん!?」

「くそ……!」

 

 頭から血を流すドレークさんが飛んできた。いや、飛ばされてきた。

 扉の奥に何かいる。

 

「蛇……?」

 

 黄緑の細長い何かが暗闇の中、蠢いている。

 

「耳を塞げ!」

「へ!? は、はい!」

 

 何事かと思えば、ドレークさんが導火線に火のついた手榴弾を暗闇に投げ入れた。

 すぐさま衝撃と大きな爆発音。その破壊力のあまり船が揺れ傾く。

 

 ていうかこの場所も危ないんじゃ……!

 

 すぐに移動しなくてはと思ったけど様子が変だ。大きな揺れが起きるほどの衝撃なのに、ここまで破壊が届かない。

 

「ドレークさ……ドレークさん!?」

 

 またさっきの手榴弾を取り出してらっしゃる。これ以上は僕らも危険なのでは。

 そんな僕の心配を知ってか知らずか、躊躇わずに火をつけた。

 

「走るぞ!」

「ほぁ!?」

 

 手榴弾を扉にひとつ投げ、残りを通路にばら撒いた。

 

 船ごと吹き飛ばす気か。派手すぎる。

 

 ていうか本当にドレークさん速いって。ていうか蟲たちドレークさん無視してない!? 滅茶苦茶僕狙いだあいつら!

 

 揺れる船の中、蟲に捕まらないように急いで走る。背後から激しい冷気を感じた。

 

 手榴弾の爆発によるものではない。異常な冷気だ。それもどんどんと周囲の温度を奪っていく。

 

 幸い蟲は急激な温度の低下に対応しきれていないのか動きが鈍くなっている。とはいえ悠長にしていては凍ってしまいそうな予感。冷気の発生源から逃げ切らないと。

 

「うひゃあ!?」

 

 顔の横を細長い何かが伸び貫く。

 蛇かと思ったけど全然違う。これは……ショッキングな黄緑色の触手?

 

 謎の触手が何本も伸びてくる。なんだこれは。何がいるんだ。

 

「くっ……!」

 

 前から苦痛を堪える声が聞こえた。こんな状況だ。声の主は僕かドレークさんのどちらかしかいない。

 

「ドレークさん! 足が!」

 

 ドレークさんの姿が見えた。彼の足は黄緑の触手によって貫かれていた。

 触手はそれに留まらず、足に巻き付こうと蠢く。

 

「ぬぅ……!」

 

 倒れながらも彼はレイピアで触手を切断した。が、

 

「なんという再生力だ……」

 

 切り落とされた触手の断面から、瞬く間に新たな触手が伸びてきた。

 

「感心してる場合じゃないですよ!」

「ああ……!」

 

 そう言って彼はまた、手榴弾を取り出した。

 

 何個あるのさ、それ。

 

 触手の奥へと投げ込む。今度はほとんど時間差がなく爆発した。

 それはつまり、僕らも逃げる間なんてないほどに。

 

「なぁぁあ!?」

 

 爆風のほとんどを触手が受け止めたとはいえ、完全に無くなったわけではない。残った威力だけでも僕らを吹き飛ばすには充分だった。

 全身が引き裂かれると思ってしまうほどの衝撃と、後方へ駆けていく視界。そして迫る地面。

 

「ぐぁ!?」

 

 ちょーいたい。

 

 具体的には背中と顔と胸と足と二の腕あたりが痛い。いやもう全身痛い。

 

 ドサリとそばから何か落ちてきた音がした。

 そして聞こえる呻き声。あ、ドレークさんだ。

 

「ドレークさん……爆弾、扱いひどすぎです……」

「仕方ない、だろ……」

 

 良かった無事みたいだ。

 

 

 ───ォォォォォオオオオオン

 

 

 まだ聞こえる謎の音。これは船の奥にいたやつの鳴き声? だとしたらあの爆発を耐えられたということ。

 

 つまり、

 

「……ひどい」

 

 まだ戦いは続いているということ他ならない。

 

 だけど体を起こすことすら無理だ。ドレークさんも身動きが取れないのか倒れたまま。

 

 ギチギチとキモい音が聞こえる。あの蟲どもが顎を咬み鳴らしている音だ。

 

 蟲に喰われるとか断固拒否したいのに。

 

「───ァァアあああ!!」

「……へ」

 

 悲鳴か雄叫びが判断つきにくい声が聞こえた。

 

 この声は、

 

「ジャイルズ、さん……」

「う、うわぁぁあああああ!?」

 

 近づく蟲に何かかけている。

 

「大丈夫ですか!?」

「大丈夫、じゃないかもで、す……」

 

 ジャイルズさんの顔すっごい。真っ青になりながら号泣してる。

 

 あ、駄目。

 

 視界が、白くなって、きた。

 

 ジャイルズさんひとりじゃ、むり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開けると夜空が見えた。

 

 月明かりが、星が見えた。

 

 あれ、僕は何を……確か、古代魚の魔物と戦って、そのあと───

 

「霧!?」

 

 あの霧を運ぶ船は!? 夜空が見えるってことは倒せた!? ジャイルズさんが!?

 

「ってうおァア!?」

 

 体を起こしたらすぐそばにあのキモい蟲が何匹もいた。しかもこいつら生きてる。

 

「目を覚まして早々、元気なやつだな」

「ドレークさん! この蟲!」

「落ち着いてよく見ろ。蟲は動けない」

「へ?」

 

 蟲は体のほとんどが粘着力の強い何かに捕らわれていた。なんだこれ、Gホイホイの粘着ネット、みたいな……

 

「害虫駆除の罠だそうだ。俺たちの周囲に撒いてくれたおかげで命拾いできたわけだ」

「なるほど……」

 

 ジャイルズさんのおかげで。

 これはお礼を言わなくちゃ。そこで泡吹いて倒れているジャイルズさんに……

 

「ジャイルズさーん!?」

「気絶しているだけだ。おかげで命拾いした」

「ジャイルズさんの気絶で!?」

 

 ジャイルズさんが意識を失うと助かるとか意味がわからないんですが。

 

「……もう気づいているかも知れないが、あの幽霊船の外装は、俺の仲間の船だ」

「ジャイルズさんの気絶は放置なんです!?」

「幽霊船と交戦し、俺だけが生き延びた」

「完全に放置だ!?」

「順をおって説明してやってんだ! 黙って聞け!」

「はいっ!!」

 

 怒られたのでおとなしく話を聞くことに専念する。

 

「仲間を沈められ、生き延びた俺は幽霊船を追った。難破船を見つければ手がかりがないかあさり、霧の出現ルートを調べてずっとな。アユタヤで暮らすようになったのもその時だ」

 

 

 

「アユタヤでの記録、難破船の記録、俺の見た幽霊船の記憶……これらからある推論が立てられた。今回の命拾いのおかげでより推論が強まった」

「結構焦らしますね」

「……幽霊船は人に恐怖を与えるのが目的だ。命を奪うよりもな。恐怖しない状態、つまり気絶すれば幽霊船は何もしてこなくなる。代わりに蟲が来るがな」

「じゃあ、蟲もあの魚たちと同じ、おこぼれ狙い?」

「だろうな。初めて遭遇したとき、俺が生き延びれたのは、今回のように近くで起きた爆発に吹き飛ばされて意識を失ったからだ。その時は岩礁に乗り上げたから蟲にも気づかれなかったがな」

 

 意識があると恐怖を与えるために幽霊船に狙われる。

 意識がなくなると幽霊船ではなく蟲に狙われる。

 

「おそらくだが、その男は蟲が近づけないようにネットを周囲に撒けたが、その後恐怖で気絶したんだろう。おかげで誰も意識を持たない状況になり、幽霊船はいなくなった。残った蟲は罠によってこの通りだ」

 

 もしもジャイルズさんがその時意識を保ったままだった場合、あの触手の持ち主がどう動いていたか……

 

 ジャイルズさんの気の弱さに感謝だ。

 

「……あの船の中の触手はなんだったんですか」

「元凶だろう。俺もよく見れなかったが、巨大な烏賊のように見えた」

「烏賊……」

 

 あの大きさ、再生力、特異性……烏賊の魔物と言うより、怪物の魔物とでも言えそうな規格外生物だった。それこそ烏賊の怪物、クラーケンのような。

 

 クラーケンの魔物? もう何だそれ。

 

「……そういえば、船の中であまりドレークさんが蟲に狙われなかったのって何でなんです?」

「お前が気持ち悪いからだ」

「意味がわからなくてひどい」

 

 なんでそこまで気持ち悪い扱いされるのか。ていうか全く説明になってない。

 

「……自覚がないのか」

「え、な、何がです?」

 

 ひょっとしてまた肌の色か。病的に白いとか言いたいのか。海賊や港で暮らしてる人と比べたらどうしてもそうなるよ。

 

「お前には感情がない」

「へ?」

 

 何それ厨二病? 感情がない冷血人間とか封印されし厨二心がくすぐられちゃう。

 

 呆けてる僕に向けてドレークさんはレイピアを突きつけた。剣先は僕の喉へと。

 

「うわ……」

「……こうして剣を突きつけられて、お前は驚きこそするがそれ以上はない」

「えと……?」

 

 それ以上ってなんだ。オーバーリアクションを期待されてるのか。

 

「普通は怖がるもんだ」

「……?」

 

 言いたいことはわかるけど、でもドレークさん刺す気なさそうだし。

 

「それだけじゃない。お前は俺に発砲した時も、反撃がくるかもしれないという恐れも、あの女剣士に誤射するかもしれないという恐れも、同じ人間に、銃による痛みを与える恐怖も、何もなかった」

「……」

「どんなやつだって恐怖は多少なりともあるもんだ。恐れが最悪の状況を予想させ、事前に対処法を考える切欠になる。生物として大事な本能だ」

「……」

「だがお前にはそれがない」

 

 ふむ。

 

「俺にはお前が人間に見えなかった。だから気持ちが悪い」

 

 なんというか、あれだ。

 

「すごく新鮮です」

「気持ち悪い」

「ひどい」

 

 肌の色が病的とかじゃなくてそんな風に見られるとか初めてだ。

 でもそうか。僕は変なのか……嘘ぅ。

 だけど確かに怖いとかはあまり感じたことが……ないっけ? そんなことないと思うけど。だいたい僕は普通の人間だ。この時代の生まれじゃないけど。

 

 あ、あれかも。コールドスリープの弊害とかで感情が出にくくとか。表情筋が死んでるとか。それでドレークさんの勘違い発生の可能性。まあ弁明難しいし、今は

 

 

「僕は人間です」

 

 

 これしか言えない。

 

「それはもうわかったさ。だが違う存在に見えることもあるだけだ」

「なんとも反応に困りますけど……」

 

 ま、まあ人それぞれですね。うん。

 

「ぅあ……れ……?」

「あ、ジャイルズさん、気づきました?」

「ミゼ───ヒィェエエエエエエエアアア!?」

「やかましいやつだ」

「誰だってこうなるでしょ」

 

 目を覚ましたら周囲はでかくてキモい蟲に囲まれているんだから。粘着力が強いおかげで被害はないけど。ドレークさんは一番に目を覚ましたから誰にも悲鳴を聞かれていないだけと予想してる。

 

「さて、いつまでもここにいるわけにはいかないな」

「あの幽霊船、またここに来るんですよね……」

「ああ」

 

 やっぱり。

 それじゃあこの島の霧は安全なものなんかじゃない。超危険だ。ジャイルズさんにはぬか喜びさせる形となってしまった。

 

「ジャイルズさん、申し訳ないです……。やっぱりこの島はとても危険です」

「……そう、ですか」

 

 言われた意味を呑み込むのに少し時間が掛かったのか、ジャイルズさんは呆けた状態だ。

 そんな彼にドレークさんが質問した。

 

「どうしてこんな島にこだわっていたんだ?」

「……夢、ですかね。自分の作った作物で、たくさんの人を喜ばせれたらって……。その夢の第一歩になるはずだったんですが……」

「夢か……」

 

 ドレークさんは思案気にふけり、ジャイルズさんの背中を叩いた。

 

「ひぇ!」

「なら夢を叶えてしまえばいい」

「は、はい?」

「奴は同じ場所に姿を現すのに間隔を開ける。少なくとも半年は大丈夫だろう」

 

 つまり半年は島に霧が発生することはない、と。

 でも半年後は島を空けないとってことなんだよね。作物とか大丈夫なんだろうか。

 

「で、ですが……」

「俺はあの幽霊船を追う。次こそ、奴に引導を渡す。そうなればこの島は安全だ」

「アレの次出る場所はわかっているんですか?」

「ああ、ある程度は予想がついている」

 

 ということはドレークさんはそこへ行くのか。

 

 ……ドレークさんの勧誘は無理そうだなぁ。

 

「ジャイルズ、どうだ? お前はこの島に住んでも問題ない。夢を叶えていいんだ」

「ありがたいお話ですが……その言葉に甘えたら、ドレークさんの負担になるんじゃないですか?」

「ん?」

「ほとんど見ているだけでしたけど、あの幽霊船は人が太刀打ちできるとは思えないです……。わた、私のような臆病者では説得力はないかもしれませんが……ドレークさんも挑んじゃダメだと、思うんです……」

 

 ドレークさんの言葉通りに動けば、幽霊船を滅ぼさないとジャイルズさんの生活に安全が無くなる。その重荷がドレークさんの背中に寄りかかるんじゃないか。

 

「別に俺は親切心からこんなことを言ってるわけじゃない。お前は命の恩人だ。ならば恩には報いないといけない。それに、夢を追うやつは応援したくなるってもんだ。海賊をやってた身としては特にな」

 

 ……僕もドレークさんの恩人になりえないかな。なりえないか。ていうか僕もジャイルズさんに助けられた身だ。あ、ジャイルズさんたちからもらうはずだった報酬はチャラとかで済まないかな。

 

「それとな、ジャイルズ。お前は臆病者ではない」

「え……」

「俺たちのためにあの蟲に挑むほどのやつだ。それに俺みたいな強面の奴に意見できるなら勇敢だ。俺は恩義のある、勇敢な男の夢を応援したい。だから夢を追え」

「ドレークさん……」

 

 うん。

 

 僕完全に空気だ。

 

 こんな夢に向かってレッツゴーな雰囲気の中「ドレークさん深都に興味はありませんか?」とか「知り合いに冒険者志望の人はいませんか?」なんて聞けるわけがない。

 

 なんだか意気投合しだした二人を尻目に、僕は星空を眺めてため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 




 


幽霊船。
大航海クエスト、トルトゥーガ島のクエストボス。
名前が幽霊船。見た目もたぶん船。そしてボス。もうオカルトボス。
世界樹3と5はオカルト系モンスターが出るシリーズです。Xの令嬢はまた別と考えてます。
まあ原作通りオカルト系で通すのもなあと思い、今回はこんな形です。中にクラーケンがいます。

クラーケン。
世界樹3の裏ボス。ゲーム内だと樹海の4層に封印されていますが、原作通りだと封印時期に疑問があって……飲み込めなかったので……このお話ではこんな形になりました。
ゲーム時の強さは頭おかしいです。超火力に超回復持ちの化け物です。このお話では超火力に超回復持ちとなってます。

蟲。
名前は出てませんが原作に出てくる敵です。


あとこのお話の魔物は大きく二つの勢力に分けられています。

バタビア編、終わりです。
次は幽霊船完全撃破まで書き溜めします。

原作キャラの配置も原作ボスの配置も変えまくりなこのお話……原作沿いタグ外すべきかな……
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