船の墓場にあった島。そこのオブジェの下は洞窟となっていた。
雨宿りの場所としてはこれ以上ない候補だ。先についていた大型船の船員もそこにいるのだろう。
「うっわぁ、びしょ濡れ……」
「こんなに荒れた空になるなんてな」
「もうやだぁ、ナックルぅ。こわぁい」
「大丈夫さ、デザート」
うぜぇ。
ダメだダメだ。口が悪くなってしまう。
「うざ……」
シャーロットさんは耐えきれなかったか。普通に口から出てるよ。一瞬僕が言ったのかと思った。
「それにしても、ここが船の墓場……」
「……先客は4人組のようで御座る」
「わかるんです?」
「残された足跡から。重装備が1人、残りは軽装で御座るな」
重装備……ということは武装した人がいる。大型船なのに4人だけとはなんともまた……ひょっとして漂流者かと考えたけど、海賊という可能性もあるかな。
「人数がわかるのは大きいわね」
「そうですね」
人数的にはこちらの方が多い。さらには全員冒険者を生業としているのだ。たぶん荒事になっても大丈夫。相手の人数も先にわかったことだし、挟み撃ちなど受けることはないだろう。
「お化けがでそうでこわぁい」
「俺が必ず守ってやるぜ」
「静かにしてもらっていいですか」
「やだぁ、ひがみこわぁい」
ぶっころ。
「誰だ?」
奥から男の声が聞こえた。
ちくしょう、デザートのせいで先客にバレた。バレたからには仕方ない。互いに声が届く距離のようだしこちらからも話しかける。
「アーモロードから来た者です。そちらは?」
「……お前」
「?」
「この声……」
シャーロットさんが眉間にしわを寄せだした。この声に聞き覚えがあるのか嫌そうな顔だ。
「こんな場所でも会うとはな、気持ち悪い奴だ」
「ひど……ってドレークさん!?」
悪口と共に姿を見せたのは、バタビアの騒動で知り合った元海賊のドレークさんだった。島についてた大型船は彼の船だったか。前見たときは小型船だったのにえらい変わりようだ。
あれ、でもキリカゼさんは足跡から4人って言ってたけど……
その疑問もすぐに解決した。
「不思議な縁もあるものね。まさかすぐ再会するなんて」
「うげぇ……」
続いて現れた女性の姿にシャーロットさんの表情がさらに歪む。
「ヴィクトリアさんも……ということはアルバートさんやベンジャミンさんも?」
「おう、いるぞー」
枕投げの裏切り者たちこと従者の2人もいた。ロイヤルガーズがドレークさんと一緒に行動をしてた?
接点がわからないけど、この状況を見るにあの船に乗ってたのは間違いないだろう。
「ミゼル殿たちの知り合いで?」
「まあ、そうですね」
「お前たち、なんでここに来たんだ」
なんでと言われたら……お宝探し? 僕は依頼ですが。
「デートよ、ねー?」
「ああ、デートをしながら宝探しをしてたんだ」
「はぁ?」
デザートとナックルの回答に、ドレークさんは得体の知れないものを見る目を向けた。そりゃそういう反応になる。
「前半は意味がわからないが、宝探しか」
「ドレークさんたちは何を? 同じような目的には思えませんけど」
「俺の目的は知ってるだろう」
何をわかりきったことをと言わんばかりの反応。
ドレークさんの目的といえば……幽霊船だ。
確かに船の墓場なんて場所、幽霊船がいそうである。
「ヴィクトリアさんたちは?」
「私たちも彼と同じ目的よ。海の霧を払うために彼と同行したの」
「アユタヤで奴の情報を集め直していたらこのお姫様につかまってな。自分たちも協力させろとしつこくついてきやがった」
ひょっとしてハンマーヘッド戦後にヴィクトリアさんが言ってた気になる人ってドレークさんのことだったのか。
「ま、とにかくだ。俺たちはここの財宝に興味はない。欲しけりゃ持っていけ」
「そいつはありがたい。デザート、やったな」
ドレークさんの言葉にナックルが喜びを示す。
先客がいて宝への不安を抱えていた彼らには嬉しい話だろう。だからこそ、争いもなく素直に喜ぶと思ったが、
「は? ナックル、何言ってんの?」
「え?」
デザートは全く喜びを見せなかった。むしろナックルの発言に少し苛立っているようにも見えた。
本当に理解できないこいつ。
「本気で言ってんの? 今の話聞いてそれ? 海の霧を払うって言ってんのよ?」
「あ、ああ、そうだけど俺たちは元々デートと宝探しに……」
「ほんっとありえない。顔はイケてて腕もいいからアリだと思ったのに、将来性0じゃない」
ナックルが唖然としている。
ナックルだけじゃない。この場にいるデザート以外の人間が呆然としている。
「なぁ、あの女は突然どうしたんだ?」
「さぁ……?」
アルバートさんが尋ねてきたけど僕に聞かれてもわかるわけがない。
「もう別れましょ」
「ど、どういうことなんだデザート!」
「説明しないといけないわけ?」
ぜひとも説明してほしい。ナックルのためだけじゃなく、僕らのためにも。
あ、説明能力があればの話ですけど。
「霧を払えば海都から間違いなく報奨が出るわ。海都だけじゃなく他の大都市からだって出る。この島に隠せる程度の財宝なんか目じゃないぐらいにね」
「だ、だが本当に霧が払えるかなんて───」
「ここは樹海じゃないのよ。樹海の外にある財宝は持って帰ったってどうせ歴史資料として元老院にほとんど取られるわよ。手元にどれだけ残るか怪しいものね。少しは頭使ってくれない? 脳筋な男って使えないのよね~」
何この豹変。なんかナックルが可哀想になってきた。
デザートは呆けるナックルからドレークさんへと向き直る。
「ね? だから私もあなたたちの話にかませてくれない?」
「お、おう……」
「素敵な返事ね、もう少し若かったら狙ってたかもしれないわね」
何あの女ヤバイ。
ドレークさんがめちゃくちゃ引いてる。
「ま、待ってくれデザート!」
「まだ何かあるわけ? しつこい男は嫌われるわよ」
いったい何がナックルを動かすのか理解できない。あの女はダメだと思う。
「お、俺にチャンスをくれ! 霧を払うって言っても簡単なことじゃないだろう!? 俺の力が必要かもしれない!」
「脳筋で出来ることなんてないわよ」
「そんなことない!」
ひどい言いようだ。
ちらりとシャーロットさんを盗み見たけど流れ弾を受けた様子はない。あなたも脳筋枠なんですよと言わない方が彼女のためだろうか。
こっそり様子を見ていたことがバレたのか、シャーロットさんと目が合った。
「……私たちも財宝より霧の元凶を狙ってみない?」
彼女から提案、その裏はたぶん偉業達成への渇望だろう。名声をあげれば継承権を取り戻せるという望み。
だけどその望みを叶えるために協力することはできない。
「……いえ、僕たちはそもそもキリカゼさんの依頼でここに来たんです。依頼人がアーモロードに戻るのなら送らないといけませんよ」
「む……」
依頼人優先だ。たとえ個人間の依頼といえど、ニンジャの依頼、裏切るわけにはいかない。
「それがし次第ということで御座るか」
「あ、聞こえてましたか」
さすがニンジャ、耳がいい。きっと耳だけじゃなくあらゆる感覚が鋭いのだ。
「それがしの目的はただ一つ、主の求める宝のみ。なればこの地に眠る財宝に求める宝があれば海都に戻りたく思う」
「……なかった場合は?」
「海の霧を払えば、探せる範囲が広くなる。さすればそれがしの目的達成に近づけるであろうな」
財宝を見てから決めるということか。
未だ言い争っているナックルとデザートは置いといてドレークさんに財宝の場所を聞こう。さっさと確認して答えを決めなくちゃ。
「ここにあった財宝ってどこです?」
「ん? ああ、それなら奥にまとめておいた」
「まとめておいたって……まとめれる量だったんですか」
一気に財宝への期待が消えていきそう。
そんな僕らに補足するようにヴィクトリアさんたちが説明した。
「ほとんどの宝箱が空だったわ。もともとは海賊の隠し場所だったんでしょうね。何かあったのか慌てて持ちだして、ほとんどが海に沈んだのだと思うわ」
「ま、それでもひと箱分ぐらいの量は残ってたぜ。全部持ち帰れば当分は遊んで暮らせそうな量がな」
全部持ち帰ることができれば、の話だろうけど。
さっきのデザートの発言からしてほとんど元老院に取られるんだろうし。
「……」
「とにかく見に行ってみましょうか」
たったひと箱だけの財宝。確認は非常に簡単で、キリカゼさんは箱の中身を全て改めると大きく肩を落とした。
その後、苦笑いを浮かべながら霧払いの決意を決めた。
「それじゃあなんだ、情報の共有から始めるか」
「はい」
「ミゼル、お前から話してやれ」
ドレークさんの言葉を皮切りに、霧の元凶である幽霊船について話し合いが始まった。気分は助手である。クラーケンについての情報はこの場では僕とドレークさんしか知りえない状態だ。ヴィクトリアさんたちとシャーロットさんはさわりだけ、キリカゼさんやデザートたちはほとんど知らない状態。
僕はクラーケンとの遭遇時のことを思い出しながら、そして整理しながら話していく。
「海の霧は幽霊船と呼ばれていた存在が元凶です。正確には、霧の元凶である幽霊船、その中にいる本体の巨大なイカの怪物。呼び方がイカでは脅威度が低く勘違いしてしまいそうなのでクラーケンと呼びますね」
さらりと名付けてみた。特に誰からも反対は上がらない様子。
「本当にそのクラーケンを倒せば霧が晴れるわけ?」
ネーミングへの不満はなかったが、デザートから質問が上がった。
「それは……」
「それはわからない。だが霧の発生原因はクラーケンであることは間違いない。放置していれば霧の領域が広がりこそするが、無くなることはないだろうな」
僕の代わりにドレークさんが回答してくれた。言葉が詰まりかけたから助かる。
「それなら別にいいわ」
「えっと、クラーケンは人の感情に反応して追いかけてくるようです。特に恐怖を求めているようで、相手を怖がらせることを念頭に置いた動きがあります」
「感情?」
「はい。信じがたい話でしょうが実際に遭遇時、霧の中から奇襲をせずにまず不気味な姿を見せ、こちらの恐怖心を煽ってから攻撃を開始してきました」
言ってて本当に謎な生態だ。
だけど他者の感情は実際感知することが可能な生物は他にもいるし、ありえなくはない。意図はわからないけど。身近なものでいえば犬なんかは人の緊張や好奇、嫌悪を察知できるらしいし。
「目的はわかりませんが───」
「目的は恐怖を集めることだ」
「……だそうです」
もうドレークさんが全部解説してくれないかな。
「魔物の目的なんてどうでもいいわ。そいつの攻撃方法とかはわからないの?」
シャーロットさんったら、ナックルという新手の脳筋でせっかく脳筋っぽさが隠れてたのに何故自分からバラしちゃうのか。
「確認できたのは触手を鋭く伸ばして襲ってくること、周囲の熱を奪うこと。攻撃はこの2つだけですね。あくまで確認できたのは、ですけど。あと攻撃ではありませんが、非常に高い自己再生能力を有してました。斬り落とされた触手が瞬時に元通りになるほどです」
「質問を」
「はい、ベンジャミンさん」
「熱を奪うというのはどのようにでしょうか」
「実際どう奪うかは見てません。ただ、クラーケンを中心にどんどんと冷えていったんです。周囲にいた蟲……クラーケンと共生関係の存在が凍りつくほどに」
今思うとあれは防ぎようがない攻撃では。
空間に影響する攻撃なんて、盾や鎧でどうにかできるとは思えない。
「クラーケンについてはこれぐらいです。それじゃ次は話に出た蟲についてです」
本体であるクラーケンだけでなく無視できない存在。幽霊船の船員である蟲についてわかっていることを述べていく。
「クラーケンとは違ってこいつらは恐怖を持たない存在を優先して狙って動きます。様々な形状があるので一概に言えませんが、単体での脅威度は低いと思います」
「恐怖を持たない存在なんているわけ?」
「意識を失えば恐怖を持たない状態になります」
「ああ、そういうことね」
……意外にデザートの理解力が高くて戸惑う。どっちが素なんだ。どっちもか。
「倒したと思っても油断せずに。周囲に体液をばら撒くように弾けます。体液の影響は調べてませんが、とりあえずすごい臭いです」
「あまり触れたくはないわね……」
「ちなみにアユタヤ行きの時ヴィクトリアさんたちの荷物は樽詰めの蟲のそばに置いてました」
「今その情報要る……?」
いらないけどなんとなく。
「それと蟲についてですが、船の装備を使うことができるみたいです」
「船の装備? よくわかんねぇんだけど」
「大砲とかですね。命中の精度こそ低いですが……。僕の知っている幽霊船の情報は以上ですね」
他に補足説明があるならドレークさんからやってほしい。
「はいはーい、しつもーん」
「……どうぞ」
手をあげてデザートから質問が来る。くだらない質問だったら無視しよう。
「クラーケンの大きさがどれぐらいか今の説明じゃわかんないわ。あと蟲の大きさも」
「クラーケンは全貌を見ていませんが、見えていた範囲の触手だけでも20mは伸びていました。それでも見えた範囲は一部です。蟲はどれも人間と同じか、やや大きいぐらいでしたね。大きいものでも2mほどかと」
「……マジ?」
「まじです」
他の皆の反応も伺うとあまり良くない表情具合。
やはり大きすぎる相手というのはそれだけで脅威だ。
「倒す目途とかあるの? そこまで大きかったらまともに攻撃も入らないわよ」
「……」
「奴を待ち伏せし、外装を大量の爆弾で吹き飛ばし、捨て身覚悟でクラーケンの急所を狙う。俺が思いついたのはそれぐらいだ」
生物である以上、心臓を狙うということだろう。もしもあれがイカと同じような体内構造だとしても、心臓の位置まで攻撃が届くかどうか。剣を刺したところで心臓まで届くか怪しく、生半可な攻撃はあの再生能力の前では無駄に終わる。さらに言えば近づく難易度も遥かに高い。
まず遭遇したら、砲撃を飛ばす幽霊船に乗りこむことから始まる。砲撃の精度こそ酷いものだが、近づけば、そして数を撃たれれば当たってもおかしくない。
砲撃を掻い潜っても次は船員の蟲どもだ。群がるように襲ってくる蟲の数々。生理的嫌悪と数による暴力が出迎えてくる。
蟲の攻撃を抜ければ次に待つのはクラーケンの触手。脅威の長さを誇る攻撃が幾度と襲い、近づけば近づくほどその密度もあがることは想像に難くない。
触手を躱し進めば周囲を凍らせる空間攻撃。防ぐ手立てなんてない。距離を取らなければ命を失うだろう。
「捨て身覚悟とか間違いなく犬死じゃない。イイ話かと思ったけどとんだ期待外れね」
「あなたね、文句ばかり言わないで代案でもだしたらどうなの」
デザートとヴィクトリアさんはあまり相性が良くないようだ。というかデザートと相性がいい人なんて早々いないだろう。
ドレークさんの案は成功率がかなり低い。だけど他の案はない。
となれば、もうドレークさんの案の成功率を少しでもあげる方向で考えたほうがいいか。
「……ひとまず、クラーケンに近づく方法を考えないといけませんね。問題点は船の攻撃、蟲の攻撃、しょ……」
「? ミゼル殿?」
触手、と言いかけて考えがよぎる。
何故クラーケンという規格外の化け物相手に、人間の力で対抗しようと考えていたのだろうか、と。
相手は化け物だ。まともに近づくことも叶わない強大な化け物。
僕らは人間だ。小さくか弱い生き物だ。肉体に恵まれていないからこそ、武器を使って戦う種族だ。
人間の武器はなんだ。
爪じゃない。牙じゃない。筋肉じゃない。武器を、兵器を扱う知識だ。道具を利用する知識が、人間を強くした。
ならばそれで戦うべきだ。
「バタビアの南に古代兵器が眠る遺跡があります」
「あ?」
古代兵器の動く石像、ゴーレム。
ゴーレムならば、あの硬い体ならば、生半可な攻撃はものともしないだろう。温度を感じない体なら、クラーケンの冷気など意味をなさないだろう。
「その古代兵器ならクラーケンを倒せる可能性があります。捨て身で攻撃するよりも、遥かに」
「へぇ」
「そいつは随分と頼もしい話だな。その古代兵器ってのが本当に期待できるものなら、だが」
ドレークさんには胡散臭く感じるのだろう。古代兵器なんて突然情報に出されたらそうなるのも仕方ない。
「僕とシャーロットさんが実際に古代兵器を見ました。何体もの古代兵器……石の巨人の破壊力を見ましたし、その耐久力、再生力も確認しました」
「シャーロット、今の話は本当?」
「…………ええ、間違いはないわ」
そこはすっと同意してほしかった。
「その時の古代兵器は僕が持っていた幽霊船の船員、蟲の欠片に反応して攻撃してきたんです」
「へぇ。なかなかイイ話じゃない。その古代兵器はクラーケンを敵として見る可能性があるわけね」
デザートの反応だけが喜ばしい反応なのがなんだか残念だ。
ドレークさんは先ほどと変わらず胡散臭げ。ヴィクトリアさんたちは思案気に、キリカゼさんは目をつぶって話の流れを完全に任せる姿勢だ。ナックルはかなり前から頭に?マークを浮かべているのでどうでもいい。
「……先に言っとくわ」
ここでシャーロットさんが口を開いた。
僕の話を強化してくれるような情報を言ってくれるかなと期待して待つ。
「古代兵器が反応したのは、遺跡の内部まで、古代兵器の前まで持っていった時の話よ。遺跡の外に置いてあったときは無反応だった」
そういえばそうだ。うっかりしていた。
いや、でもあの時は樽から出してなかったのもあるし……
「……つまりなんだ。幽霊船を遺跡まで連れていき、遺跡の中へクラーケンを誘いこめれば、古代兵器とやらが動きだしてくれるってことか」
「そうなりますね」
「……」
もちろん渋る理由はわかる。実現難易度が高いことはわかっている。
まず幽霊船を遺跡まで連れていく。この時点で難易度が高い。
カーチェイスならぬボートレースみたいなものだ。追いつかれたらおしまいの。
幽霊船もといクラーケンの性質上、船に意識ある者がいれば追い続けてはくれるだろう。だが遺跡に辿りつく前に沈められたらおしまいなのだ。追いかけている間、砲撃はずっと続くだろう。蟲どもが飛び移ってくるだろう。それらを全て凌ぎ続けないといけない。
次に遺跡の中へと誘いこむことだ。
これは完全に未知数だ。クラーケンから幽霊船という宿を引きはがし、中まで追いかけさせる。奴がどこまで執念深いかによるもので、確実性はない。
そして最後に古代兵器、ゴーレムの攻撃が通用するか。
もはや祈るしかない。だけど人間の捨て身攻撃よりははるかに可能性が高いのは確かだ。
「私はその白いのの意見に賛成よ。というか捨て身特攻なんて馬鹿な作戦は絶対降りるわ」
「白いのて」
何故味方がよりによってデザートだけなんだ。
「……いいか、お前の案は遺跡に到着しなけりゃそもそも始まらない。だが問題は遺跡までの移動だ。そこまで行くには幽霊船の攻撃を凌ぐこと。その点はどう考える? 言っておくが、神頼みなんてものは意見に含まれないぞ」
ドレークさんの問い。答えられなければゴーレムの利用は却下されるだろう。
途中で海に沈められる可能性が高いのなら、ドレークさんが予想する幽霊船出撃ポイントで待ち伏せした方がいいということだろう。スタートラインに立てない作戦など不要なのだから。
「……」
「思いつかないのか」
こちらから大砲なりなんなりで幽霊船を攻撃する、はダメだろう。幽霊船は見た目こそ船の形を取っているが、実際はクラーケンが中で泳いでいるだけだ。外装を壊したところで影響はあまりない。むしろ外装を移動中に壊すのは危険だ。外装を捨てた場合、次の宿は何になるかわからない。沈没船から見繕ってくるならまだいい。最悪、僕らの船に直接とりついてくる可能性がある。そうなればなすすべなく沈められるだろう。
「船に乗りこめばいいじゃない。船に乗りこんで砲台を壊しちゃえば何もできなくなるんじゃない?」
助け舟に素直に喜べない……いや、喜ぶべきか。誰の意見であろうと喜ぶべきだ、うん。……デザートじゃなかったらなあ……
「……砲撃を無力化か。だが蟲が黙ってはいないはずだ」
「幸いにもここにいる者は皆手練れ。クラーケン本体はともかく、蟲程度であれば問題ないとそれがしは考える」
「キリカゼさん! ありがとうございます!」
「う、うむ?」
キリカゼさんの助け舟すっごい嬉しい!
なんか戸惑ってたけどすっごい嬉しい!
「んんっ、もちろん、今の話通りに進む保証はないです。ですが捨て身よりかは絶対にいいはずです」
「待って」
「? シャーロットさん?」
どうしたのだろう。新たな助け舟……というわけではなさそうだ。
「遺跡についてからどうするつもり? クラーケンにどうやって中に入ってもらうつもりよ?」
「その点は大丈夫です」
「どうするって言うの」
「もしもクラーケンが入ってこなかったら、ゴーレムの、あ、古代兵器の性質を利用します」
ゴーレムじゃ誰にも通じないしね。言い直さないとね。
「あんた、それって───」
─────────ォォォォォオオオオオン
「今のは!?」
「来たか……」
今の音……バタビアで聞いた鳴き声。……幽霊船!
もしかしてドレークさんの待ち伏せポイントってこの島だったわけ? 早く教えてほしかった。
「島が包まれる前に出ましょう!」
「そうだな。不安はまだあるが、お前の作戦でいくか」
全員が武器を手に取り船へと走る。島には濃霧が迫っている。いや、これはもう包まれて……
「全員早く船に乗れ!」
ドレークさん本当に速い。もう船出てる。
僕も遅れず錨をあげて早く出ないといけない。船が出る前に蟲どもが乗りこんできたら面倒だ。先を行くドレークさんの船に大声で確認する。
「ドレークさん、進路は!」
「ひたすら東だ! ここまで来たら奴からもう逃げられん! 霧の中を突き進め! いいか! ひたすら東だ!!」
「はい!」
島を飲みこむ霧の塊。
それを避けて進みたくも思えた。だけどこの海で、この霧相手にそれは不可能だ。
こいつは海の中、自由に動きまわるクラーケンなのだから。
作戦の細かい打ち合わせこそできなかったけど、やるべき方針が決まった。
それならば、あとはやるだけだ。
バタビア編で出たドレークさん。
元海賊のアユタヤの漁師さんです。
このお話では幽霊船を追いかけている人物。銃は苦手な突剣型パイレーツ。
作中今後書くことなさそうなので、簡単に適当に舞台裏。前回の補足だったり。
・トライルーキーズと遊んでた頃、ヴィクトリアたちがドレークと会い幽霊船について知る。
・ドレークはヴィクトリアたちを降ろそうとアーモロードまで連れてくも、しつこくつきまとわれる。
・港長、ドレークから幽霊船を南西で討伐計画を立てていることを聞く。頑張れって応援して見送る。
・なんか白モヤシがこのタイミングで南西に行きたいとか言い出した(前話)
・ある事情により白モヤシが怪しく思う港長。けど銃をプレゼント。
です! ざっくり舞台裏でした! 港長のある事情はいずれちゃんと答え合わせ来るはず!
あ、関係はあまりないですがイカの心臓は3つあるそうです。
鰓心臓と呼ばれる補助的なのが2つと、通常の心臓とで。
あと関係ないですが今回の文字数は後書き除くと8888文字ですって。
8はタコさんの足の本数ですね!