とんでもなく寝過ごした   作:横電池

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41.剣の戦闘訓練について

 

 

 元老院を出てムロツミと試練についての話す。試練も協力しないかという誘いだ。

 

「試練を突破するのは冒険者のみの力で、ナルメル討伐に貢献すること……やっぱり気になる表現でしたよね」

「組むことに断る理由はないぜ! むしろオレたちから頼みたい話だからな!」

 

 と、ムロツミからはもろ手をあげての賛成を得られた。問題児たるシャーロットさんは、

 

「ま、いいんじゃない」

「いいんですか」

 

 深都発見は自分の力だけでとよく言ってたのに。

 

「試練なんてさっさと終わらせたいもの。突破条件も貢献すること、だから文句ないわ」

「はあ」

 

 よくわからないけど、文句がないならそれでいい。

 

 誰も反対意見はないことだし、今日は休んで明日出発することに落ち着いた。それまでは各自、自由行動。

 ムロツミの2人はもう休むとのことで、明日の集合場所だけ決めて別れることに。

 そして僕はもちろんネイピア商会に行くつもりだ。軽やかな足取りで向かおうとしたところ、シャーロットさんに呼び止められた。

 

「ちょっと付き合いなさい」

「え、嫌です」

「……起動符を買ってからでいいから付き合いなさい」

「まあ、それなら……」

 

 それなら断る理由はないや。

 そんなわけで、2人でネイピア商会へと向かった。

 

 

 

 

 

「起動符ってありますか!」

 

 店に入っての第一声が我ながらシンプル。来店目的がわかりやすい。

 期待いっぱい胸いっぱいな客に、店主さんもわかりやすい答えを返してくれた。

 

「お主らには売れんのぅ」

「嘘ぅ!?」

 

 なんでだ。カナエからは滅多にお店に並ばないとは聞いていた。だから品切れの覚悟はあったけど、売れないってことはあるにはあるということだ。

 

「よ、予約とか要るんですか……?」

「希少な素材を用いた品物は、その素材を持ち込んでくれた者たちに優先して売る決まりなのじゃ。余るほど在庫があれば別だがの」

「そんな……」

「ひとつも売ってくれないわけ? 私の剣まだ戻ってこないんでしょ。ひとつぐらい売ってくれてもいいじゃない」

「迷惑料は昨日渡したではないか。お主らも受け取ったのだからこれ以上たかるでない。我が可哀想と思わんのか」

 

 よよよ、と泣き真似をされた。この分じゃどう交渉しても無駄そうだ。

 起動符を得るにはその素材を持ち込むしかないか。確実に試練には間に合わないし、今回は諦めよう……

 

 気落ちしてしまったが、切り替えて試練に向けての準備だ。このお店は冷やかし禁止だから何か買わないと。

 

 せめてナマズに有効そうな物はないかと店内を見る。すると入口から2人組の客がやって来た。

 

「こんにちは! 濡れても使えるマフラーとかないかな?」

「あるわけないでしょ……変な探し物しないで。私まで変な目で見られるわ……勘弁して……」

 

 新しい客は探している物こそよくわからないけど、その見た目は冒険者だとわかる格好だ。

 鎚を持つ軽装の戦士に占星術師の2人組。

 

「濡れると冷たくなるマフラーしかないのぅ」

「そっかぁ。あったらアーウラが喜ぶんだけど」

「変な素材でできてそうだし嫌よ……」

 

 やっぱりどこも占星術師をメンバーに入れているなぁ……ペイルホースにはいなかった気がするけど。

 この人たちも試練を受ける組だったりするだろうか。もしも受ける組なら協力を持ちかけてもいいかもしれない。4人も6人も大差ないし。

 

「あの、少しいいですか」

「うん? どうしたの? わぁ、すごい白いね!」

「ネローナ、失礼だからやめて……。何か?」

 

 声を掛けると、元気そうな戦士の人は警戒心一切ない反応を、占星術師の人は反対に少しだけ警戒心を見せてきた。

 自己紹介はされてないけど戦士の方はネローナ。占星術師の方はアーウラということがわかった。

 

「怪しい者じゃないです。聞きたいことがあって」

「怪しさ全開の台詞ね」

「シャーロットさん茶々入れるのやめてください……。いや、ほんとに怪しくないです、肌が白いのはあまり日光に当たらないだけです、ただ尋ねたいことがあって声を掛けたんです」

「あはは、この人すごい早口だ」

 

 アーウラさんが「なんだこいつ」みたいな目になってたから頑張って説明したのに、ネローナさんからは早口扱いとは。

 

「冒険者の人ですよね! 元老院の試練を受けるのかなと思いまして!」

「……試練?」

「え、また試練あるの?」

 

 あれ、この反応は……試練が今やってることを知らないパターン? まだ4階まで行ってないとか。

 

「……ひょっとして、ナルメルの?」

 

 あれ、名前が出たってことは知ってる?

 

「それです、それです」

「私たちは受けないわ。だって前に終えたから……」

「あの時は洗濯が大変だったよね!」

「勘弁して……思い出したくない」

 

 まさかの試練突破済みの先輩だった。これはどうしよう。協力関係をと思ったけど、突破済みの人たちと組むのは合否判定に悪い影響を出しそうだ。っていうか普通にダメだろう。

 

「思い出したくないところ申し訳ないですけど、良ければナルメルの情報を貰えたりしません……?」

「いいよ! まずナルメルはね、大きいナマズだよ! それかルァ──?!」

「待ってネローナ」

 

 せめて情報をと思って聞けば、教えてくれそうだったネローナさんをアーウラさんが止めた。物理的に。

 

「ムー! ンムーー!」

「悪いけど教えられないわ。試験だもの。合格者が情報を教えたなんてバレたりしたら、どう影響するかわからないし……」

「そうですか……」

 

 じゃあ事前情報はほとんどなしで挑むしかない。いや、少しはあるか。

 ナルメルについてわかっていることは、大きなナマズだということ。

 戦いが終わったら洗濯が大変だったということ。

 

 ……やっぱり、わかってることはないに等しいや。

 

「情報なんてなくてもやることは変わらないわよ」

「ンムー」

 

 シャーロットさんは脳筋さを出さないでください。

 

「ネローナみたいな人ね……」

「たぶん、ネローナさんよりひねくれてますよ」

「大変そうね……」

「……あんたたちの方が絶対ひねくれてるわよ」

「ムー!」

「ところでネローナさんを解放しては……?」

 

 そろそろもがくネローナさんが可哀想に思えてきた。

 

「ダメよ。ネローナはよく暴走するから……話したらダメってわかっていても勢いでナルメルについて話しかねないわ……」

「ネローナさんも暴走癖あるんですね……」

「やっぱりそっちも……」

「はい……」

「ムカつくわこいつら……ミゼルだって暴走しがちの癖に……」

 

 ちょっとシンパシーを感じちゃうんです。暴走しがちな相方ってところが特に。まあネローナさんの方が純粋さがありそうだけど。

 

「シャーロットさんは魔物を発見したらすぐに挑みかかるんですよ……。戦いも自分1人で十分だから手を出すなとか言って……」

「ネローナは何にでも興味持つのよ……。馬鹿みたいに派手なキノコを、美味しそうだからってろくに確認もせず……齧ってからそのキノコが魔物だったなんてこともあったわ……」

 

 保護者の会というのはこんな感じなのかもしれない。うちの子ったらね……みたいなやり取りに自然となってしまった。

 

「全然言葉で止まってくれないから、強引に止めるしかないのよ……疲れるからやめてほしいわ……」

「僕は強引に止める手立てがないんですよね……。だからせめて暴走する方向を調整するって感じで……」

「苦労するわね……」

「ほんとですよぬぇ!?」

「いい加減ふざけた話はやめなさいっての」

 

 とうとう鉄拳制裁が入ってしまった。頭がいたい。

 

 これ以上の雑談もなんだしと解散。

 結局、今回のネイピア商会での買い物はお皿と医療品の購入のみ。あとは回収していた魔物の素材を売ったぐらいだ。

 だけど知り合いができたのは喜ばしいことだ。気が早いけど、試練を突破後の環境についての情報とか得やすくなりそうだし。

 

 ……そういやトーマさんとかも試練突破組なんだろうか。冒険者歴が長そうだし可能性はあるかも。

 

 まあそれはおいといて、とにかくネイピア商会での買い物はおしまい。

 

「シャーロットさん、何します?」

 

 買い物前に付き合えと言ってたので聞くことに。友好を深めるためにご飯でも、ってタイプではないだろうことはこれまでの経験でわかっている。

 もう夕飯の時間と言ってもいい。早いこと用件を済ませてご飯にしたい。もしくは先にご飯だ。

 

「時間的にもお腹が空くころだと思うんですけど」

「……そうね。先に食べましょ。その後に話すわ」

「ははあ」

 

 それじゃあと、羽ばたく蝶亭へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 伸びる舌の刺身。

 

 羽ばたく蝶亭のママさんに聞いた今日のオススメメニュー。なんの舌なのか聞けば「ソンナ細かいコトを気にするデナイ!」とのこと。

 出されたお刺身は白身だ。名前に伸びるとあるけど……うん、あまり伸びない。生前?は伸びたんだろうか。

 火を通さずに食べて本当に大丈夫なのか。なんの舌なのか。お腹壊さないか。変な菌とかないか。なんの舌なのか。ほんとになんの舌なのか。気になる点はたくさんあるが、食べないことにはお金が勿体ない。

 

 だけど食べる前に向かいの席を盗み見る。

 

「ぬぬぬ……。このコリコリ感がたまらん!」

「この毒キノコ、毒ない。おいしい、うれしい」

 

 僕と同じく伸びる舌の刺身を頼んだトーマさんが上機嫌に舌鼓をうっている。

 その隣では毒松茸のソテーを頼んだボーグマンさん。2人とも満足げだ。

 

「うっさい。静かに食べれないわけ?」

 

 相席相手に文句を言うシャーロットさん。彼女のお皿の中は順調に減っている辺り、味に満足しているのだろう。

 話の前にと蝶亭に僕たちは来たが、混み合う時間だったため相席になったのだ。

 

「お前は静かすぎね? 海獣丼はもっとガツガツ音を立てて食うのがマナーなんだぜ。ハフハフッてよ」

「ミゼル、食べない。食べない、なら、オデ、食べていいか?」

「あ、いえちゃんと食べます」

 

 ……うん、コリコリ? いや、ムニムニ? 独特な食感だ。

 

「デザートから聞いたぜ、お前ら海に出てたんだってな」

「まぁ、そうですね……何も得る物はなかったですけど。ていうかあの人と知り合いだったんですか」

「知り合いっつうより、同じギルドだからな。ほとんど形式上だけどよ。しかし何もなかったのか。つまんねー」

「海は、霧、危ない。でもオデ、怖くない」

「私たちが海にいた間、そっちは何か収穫とかないの?」

「食後にあんまぁい物を奢ってくれるなら教えてやってもいいぜ」

「絶対嫌」

「ケチくせぇなぁ。まぁ樹海も海と同じでなーんも変わってないけどよ」

 

 あ、タレつけると美味しい。やや舌への残り方が独特だけどアリだ。

 むしろこれはタレが美味しいのでは……? いや、食感との組み合わせ?

 

「そういやトーマさんたちって探索はどこまで進んでるんです? 試練とか聞いてます?」

「試練? ああ、アレか? 地図描きか?」

「いえ、そっちじゃなくて」

「お? もう聞いてんのか、ナルメル」

「やっぱり知ってるんですね……」

 

 実は僕たちとムロツミ以外はすでに突破済みという疑惑が出てきそう。

 

「まぁ生き残ってる連中の大半は知ってるぜ。新人なんて少ねぇからな。俺の知ってる範囲じゃペイルホースとバートラム、ムロツミとお前らぐらいだな。まだ試練を合格してない生き残りは」

「少なっ」

 

 たったの4ギルドだけって。ムロツミとは協力関係、ペイルホースはどうでもいいとして、競争相手はバートラムだけ。

 

「つっても俺だって全ギルド把握してるわけじゃねぇよ。知ってる範囲での話だからな」

「バートラムってギルドはどういう連中なの?」

「リーダーが絡み酒で面倒臭いな。他の連中はすぐに酔いつぶれちまって一緒に飲むには微妙だな」

 

 わざとどうでもいい情報出してるな、この人。

 シャーロットさんが知らないってことはペイルホースのような知名度はないのかな。

 

「あ、ナルメルについては奢られても教えねぇからな」

「トーマ、ケチ」

「なんでボーグマンくんが不満そうなんすかねぇ……? いじわるでもなんでもねぇよ」

「元老院からそういう御触れでも出てんの?」

「ああ。それに、ナルメルに対処できねぇとこの先やっていけないからな。割とマジで」

「あ、ちょっと先輩っぽいです今の」

「ぽいとかじゃなくて先輩なんだよなぁ」

 

 ナルメルの強さは丁度良い試金石?

 まぁこれ以上は誰に聞いても教えてもらえないだろう。舌に未だ残る食感を流すように、水をグイッと飲みほした。シャーロットさんも食べ終わっているようだし退席しよう。

 

「なんだよ、もう帰るのか? 夜はこれからってのによー」

「あんまり粘り過ぎも良くないですよ。普通に迷惑な客ですし」

「ひでぇな。試練受けるんだったら頑張れよー、死ぬなよー」

「はい、ありがとうございます」

 

 トーマさんたちはあと何時間粘る気だろうか。もうあの人たちも食べ終わっていたけども。

 今度最長記録について聞いてみたいところだ。

 

 

 

 

 

 

 蝶亭を出て、散歩のようにゆったりと海都を歩く。

 

 夜風が丁度いい冷たさで心地良い。海の上で感じる風とは全然違う。

 以前小説で、空気が美味しいという表現を見たことがある。今ならその感覚もややわかるというもの。

 

「それで、話ってなんです?」

 

 このままのんびり散歩もいいけど、話を終わらせるのも大事だ。だいたい明日から試練なんだから。

 

「剣を使えるようになりたいって言ってたじゃない」

「あ、はい」

「今でも考えは変わったない?」

「そうですねー……使えるようになりたいですね。銃だと音が魔物を引き寄せかねないですし」

 

 もちろん体質のデメリットはわかっているけども、利便性を考えると剣は使えるようになりたい。

 

「考えたのよ。あんたって頭おかしいし」

「ブーメラン」

「今みたいに意味わからないこと言うからとかじゃなく常識がないし」

「ひどいブーメラン」

「だから剣を教えてあげる」

 

 何がだからなのか。

 駄目だ。文脈が理解できない。僕の常識がないからわからないのか。いや、絶対この人が頭おかしいだけだ。

 

「教えてあげたら才能がないことに気づけて諦められるでしょ?」

「あー」

 

 そういうとこだよ。そういうとこがひねくれてるんだよ。

 

「街の中なら魔物もいないし、あんたがドジって転んでも大丈夫でしょ」

「ていうかシャーロットさんて人に教えれるんです?」

 

 その言動で教えるとか絶対無理でしょ。

 

「習うより慣れろよ」

「デスヨネー」

「練習中、私に一太刀でもいれることができたら、魔物との戦いで剣を使ってもいいわ」

 

 とにかく斬りかかれ、がこの人なりの剣の教えとな。

 ドレークさんとの斬り合っていた姿を思い出す。うん、剣を使わせる気ないなこの人。

 だからといって「わかりました、諦めます」なんて言う気はない。

 

「……まぐれでも攻撃が当たったら危ないと思うんですが」

「ほら、これ」

「何ですこれ。おもちゃの剣……?」

 

 古そうなおもちゃ。剣を模したデザインだけど当然刃はない。重くもないし硬くもない。布と綿、中に管のようなものが入ってるようだ。

 

「これなら怪我させちゃうかも、なんて言い訳せずに使えるでしょ。当たったら音が鳴るわよ」

「へぇ」

 

 試しにと曲げてみる。すると、プピィィ……と間の抜けた音が出た。ちょっと面白い。

 こんなものいつの間に買ったんだろう。買う姿を想像するのが難しいや。

 

「これで二人斬り合うって中々恥ずかしい光景になりそう……」

「それ使うのはあんただけよ。私は使わないから」

「ひどい……ってそれならシャーロットさんはどうするんです?」

「いい感じの棒でも探すわ」

 

 元王族の装備、いい感じの棒。

 

「あと、こっちからも攻撃するから。あんたが無様に怪我しようが文句は受け付けないわ」

「……まあそうですよね」

 

 魔物との戦いで怪我したらダメな僕の体質だ。怪我前提の動きをしてたらダメに決まってる。

 今の補足から少しだけ、ある考えが頭によぎった。

 

 考えを確かめるのに、これは丁度いいかも。

 突発的な性悪提案だけど、もしかしたら良い展開になってくれるかもしれない。

 

 

 

 




 

大航海クエスト共闘NPC
ネローナ&アーウラ
ネローナはメイス型ウォリアー。空中樹海でも参戦。
アーウラは冷え性だけど雷主体のゾディアック。
色々検索けてたらこの2人、百合の波動を感じるそうです。
私は篤い友情を感じてますよ。ええ。
でもこう、あえて百合るならアーウラの片想いとかだといいなって思います。無邪気ネローナに振り回されつつ「もう、しょうがないんだから」みたいに付き合うアーウラ的な。その内側には切なる想いをひた隠しにしてry


少し妄想爆発しました。
ネローナ&アーウラ好き。
でもこのお話では出る機会は少なめ。かなしい。


トーマさんとボーグマンさん久しぶりの登場なのでここに紹介。

トーマ
大航海クエスト共闘の人。また、酒場でレアドロップ条件を教えてくれる人。
このお話では先輩ボウケンシャー。何時間も蝶亭に居座っており、あまり樹海探索に出ることは少なめの印象。

ボーグマン
大航海クエスト共闘の人。
このお話ではトーマとよく一緒にいる。世界樹Xでも一緒にいるね。
あとこのお話で使う獣は野牛のみ。
毒蜥蜴事件の救世主。


試練のクリアがまだのギルドは実際は他にもいます。
ロイヤルガーズのように、樹海の外に目的を持つギルドとか。

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