とんでもなく寝過ごした   作:横電池

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人と魔の境界で
53.海都と深都の歩み寄り


 

 

 

 深都の天極殿星御座にて。

 

「深王さま。海都から使者を名乗る連中が来ました」

「そうか。やはり彼らはこの深都を秘匿してくれなかったか」

「いかがいたしましょうか」

「通せ。海都の理解がどれほどのものか、その確認もしたい」

 

 深都までの道が見つかってしまった今、追い返したところで無駄だろう。ならば迎え入れ、相互理解を求めるしかない。

 深都の王はそう考え、座して使者を待った。

 

 

 

 

 使者は4人だった。

 朱い派手な陣羽織の若者、忍装束の少年、占星術師の少女、変わったドレスの女。

 ドレスの女以外は武器を所持しており、鬼気迫る表情を浮かべている。

 

「……海都からの使者と聞いたが、武装した者が使者とはな」

「深都までの道に魔物が出る。正当防衛のための武装として許していただきたい」

「……よい。それで使者は何用で我との謁見を望んだのか聞かせてもらえないか」

 

 ドレスの女が前に出た。

 

「海都の姫より預かった親書、それと献上品をお持ちしました。お目通しお願いします」

「確かに受け取った」

 

 海都からの親書は深都との友好を望むものだった。当たり障りのない、普通の親書。

 

「……他にはないのか?」

「え? ええと……? 将軍、何かありましたっけ……」

「我々が姫様から預かったのは以上です。何か問題がありましょうか」

 

 ドレスの女に代わり、陣羽織の青年が発言した。

 親書のどこにも、魔について、フカビトについて触れられていない。

 トーマという冒険者は全てを報告していないのか、それとも海都が一部を無視しているのか、深王にはわからない。

 彼らが魔の危険を理解し、報告の取捨選択をしてくれたのであればこちらから魔やフカビトについて聞くことはできない。聞けば余計な情報を与えるだけになる。

 

「……問題はない。深都としても、海都とは友好を結びたい」

「姫様も喜ばれます」

「だが……深都と海都、かつてはひとつだったが100年あまりの年月離れていた。時間をかけねばかつてのようにはなれない」

「でしょうな」

「そのためいくつかこちらからも条件をつけさせてもらう。例えば、親書には海都の兵を深都の防衛のために駐屯させる、などあるが、こういった行為は制限する。懐によその兵力を置くほど、我は豪胆ではないのだ」

「姫様にお伝えしましょう」

「……頼む。それとオランピア、彼らを地軸まで案内してやれ。次からは魔物蔓延る迷宮を歩かずに済む。武装しなくとも良くなるはずだ」

 

 オランピアが了承の返事を出す前に、占星術師の少女が静かに言う。

 

「人殺しがいる街を無防備に歩けるわけがありません」

「お、おい! カナエ!」

「……とても使者とは思えない発言だが」

 

 件の少女はオランピアをきつく睨んでいる。その姿から、肉親、あるいは友がオランピアによって排除されたのだろうと予測はついた。

 使者でなければ流せた発言だが、今は都市間でのやり取り。見過ごすというのは示しがつかない。

 

 深王が続きを言う前に、陣羽織の青年が少女の頭を掴み地面に叩きつけ、無理やり土下座の形にさせる。

 

「申し訳ありません。この者は道中の護衛にと雇った冒険者。使者と名乗らせていたのは護衛同行のための方便だったことを謝罪致します」

「離、し────ッァ」

「……勝手なことをするな」

「クジュラ! 確かに今のはカナエも悪かったけどよ、もうやめてくれよ!」

「黙れ。姫様の望みをくだらない八つ当たりで絶たせるわけにはいかない」

 

「もうよい。先の失言、これ以上責める気はなくなった。護衛に使者を名乗らせた虚偽も許そう」

「感謝します」

 

 カナエという少女は打ち付けられた痛みに苦しんでいたが、それでもオランピアへの目は敵意に満ちていた。

 それを咎める陣羽織の青年こそが、あの中で本当の使者なのだろう。

 

「オランピア、他の者に彼らを地軸まで案内するよう伝えよ」

「わかりました」

「配慮、痛み入ります」

「……よい」

 

 オランピアが室外へ去っていく際、一瞬、陣羽織の青年の目が占星術師の少女と同じものになっていたことを、深王は見逃さなかった。

 

 その後、使者たちは別の者に連れられ謁見の場を後にする。

 残ったのは深王ひとり。

 

「……どう考える」

「何がよ」

 

 深王の言葉に、柱の影から返事が出る。

 

「彼らの言葉にも、親書にも、どこにもフカビトという単語がなかった。知らない振りをしているのか、本当に知らないのか」

「トーマが変な報告をして情報がちゃんと伝わってないだけじゃないの?」

「そう単純なことであればいいが……」

「どうせまた使者が来るでしょ。その時に聞けばいいじゃない」

「彼らが何も知らなければ余計な情報を与えることになる。口封じをするわけにもいかぬ……。それより、彼らと卿は知り合いだったのか? 突然隠れ始めて……」

「カナエ……あの占星術師と少しね」

 

 あの少女をみるに、オランピアとケトスの行ってきたことは、かなり恨みを買っているだろう。

 彼らの行動は必要なことでもあった、などと言ってもそう簡単には納得して貰えないことはわかっている。柱に隠れていたシャーロットは理解してくれたようだが……

 

「……卿にひとつ頼みたいことがある」

「何?」

「オランピアと共に、光輝ノ石窟に潜む魔の使いであろう存在を排除してほしい」

「オランピアと?」

「卿は我の同志だ。そしてオランピアも我の同志。卿とオランピアには今後行動を共にして貰いたい」

「……まあ、いいけど」

 

 オランピアは忠実だが、忠誠心のあまりやり過ぎることがある。それを今回思い知った。適当な兵ではオランピアのストッパーにはなれないだろうが、シャーロットの戦闘力ならそれも可能なはずだ。

 そしてシャーロットもオランピアの行動が世界のため、邪心一切ないものと理解して貰える機会が増えよう。彼女は深都の理解者ではあるが、疑心を残しているかもしれない。その解消のために深王は2人を組ませることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「案内に感謝する。後は大丈夫だ」

 

 深都の兵が去り、残ったのは使者として訪れたムロツミとクジュラ、それとネイピア商会の者のみ。

 ネイピア商会の女が恐る恐るクジュラへと声かける。

 

「あの、将軍……」

「なんだ」

「深都での出店許可を貰うの忘れちゃってたんだけど、今からもう一回謁見ってできないかしら……?」

「次もお前を使者として選ぶ。今日は諦めろ」

「うーあー、絶対あの守銭奴にジメジメ責められるわ……」

「次があるだけ幸運と思え。だが、お前は駄目だ」

 

 仇のオランピアが場に居なくなってから、弱々しく縮こまるカナエをクジュラは責める。

 

「俺たちは姫様の使いだ。姫様の意に反する行動を、ましてや勝手にとるなどあってはならない」

「……すみません」

「か、カナエは親父さんをオランピアに殺されてるんだ。だから」

「責めるな? 馬鹿を言うな。もう一度いう。俺たちは姫様の使いだ。姫様の意に反する行動をしてはいけない。姫様の願いの障害となるものは、なんであろうと斬り捨てる」

 

 殺伐しすぎて怖いんですけど……とネイピア商会の女は小声で呟いた。

 話はこれでおしまいとばかりに地軸に近づくクジュラに、カナエは食い下がる。

 

「……将軍は、オランピアを許せるんですか」

「カナエ……!」

「アタシは許せません。許せるはずがない……! 大勢を騙してきて! 殺してきて! そんな女を許せって!? 無理に決まってるでしょう!? アタシは将軍みたいにオランピアを許すことなんてできません!」

「カナエ、落ち着けって!」

「……おい」

「く、クジュラ! カナエは今気が立ってるだけなんだ!」

 

 クジュラはついさっき、なんであろうと斬り捨てると言ったばかり。アガタもクジュラの評判については知っている。最善のために味方ごと敵を斬ったという話を。そのため、先の言葉もただの脅しとは思えなかった。

 せめてもとアガタはクジュラとカナエの間に立つ。仲裁なんて器用な真似はできないまでも、少しでも頭を冷やすための時間稼ぎになろうとして。

 

「オランピアを許す必要はない」

「……え?」

 

 刀を抜かれる、と怯えていたアガタはきょとんとする。それはカナエも同様だった。

 

「俺もあの女を許してはいない。だが報いを受けさせるのは今ではない。復讐したいのなら、時期を待て」

「え、でも姫様の願いは……」

 

 ネイピア商会の女は耳を塞ぎ出して知らんプリを始めた。絶対聞いてはいけない系の会話でしょ、と思ったからだ。

 

「……あの女は姫様の願いから外れている存在だ。今はまだ無理だが、必ず時が来る。それまで復讐心を持ち続けるんだな。もっとも、俺があの女を殺す方が早いだろうが」

「……っ」

「海都に戻るぞ」

「待ってください!」

「まだ何かあるのか?」

 

 普段から仏頂面なクジュラだが、いつも以上に眉間にシワが寄っていた。

 

「さっきは、すみませんでした!」

「謝罪ならもういい」

「それとお願いがあります。オランピアを殺す時が来た時、アタシも連れて行ってください」

「……あの女は激しく抵抗するだろう。お前が返り討ちにあう可能性が高い」

「構いません」

「俺はお前を守りながら戦う気はない。なんならお前ごと敵を斬るつもりだ」

「それでもいいです」

「……そうか。覚悟できているなら俺は構わない。お前はどうだ」

「オレ……?」

 

 突然アガタに問われる。

 

「オランピアが姫様の願いの障害となる時、お前もその女とついてくるか」

「アガタは関係ありません。アタシだけの問題です」

「オレも行く! 行くに決まってんだろ!」

 

 庇うようなカナエの言葉にアガタは反発するよう叫んだ。

 

「アガタ、危ないからダメだよ」

「カナエの方が危なっかしいっての! 絶対オレも行く! カナエを守らなきゃいけねえんだ!」

「そうか。守れるといいな」

 

 鼻息荒くするアガタに小さく笑いながら、今度こそ話は終わりとばかりにクジュラは地軸を起動した。

 

 

 

 

 






海都ルートのパーティ事情と深都ルートのパーティ事情的な。

この下は更新についての言い訳とかとか

すごく更新遅れて申し訳ないのと、さらに申し訳ない話を少し。

言い訳すると別のゲームにハマりすぎて全然書けてませんでした。そして書き溜めも現在なし。

今回の更新は先の展開をどう変更しようと、この話は書き直すことはないだろうな、と判断したための更新です。あ、誤字や単語修正ぐらいはありますよ。
そのため次の更新はまだまだ先です。生存報告を兼ねての今回の更新です!
ごめんなさーい!

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