とんでもなく寝過ごした   作:横電池

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65.夜と共に夢も終わり

 

 

 

 

 

『大丈夫だ、大丈夫だから! 意識をしっかり持て! 頑張れ! 頑張ってくれ!』

 

 

 何度も彼女に掛けた頑張れという言葉を、グラウコスはいつの間にか使わなくなっていた。

 彼女の姿が人間から遠ざかれば遠ざかるほど、頑張れという言葉が酷に思えてしまったからだ。

 

 何度も彼女に噛みつかれた。それは恋人同士のじゃれ合いとは異なる、喰らうことを目的とした齧りつきだった。だが血が流れる度に、彼女は嘔吐していた。

 

『君はまだ人間だ! 頑張れ……!』

 

 彼女は言われなくてもたくさん頑張っている。だというのに、頑張れと声を掛ける自分はどれほどあさましいのか。

 

 そんな思いから、いつしか頑張れと言わないようになった。

 

 

 

 

 

 

「砂の下に触手を伸ばしているぞ!」

「足元!」

 

 遠くから出されたペイルホースの注意喚起に意識を戻し、その場から離れる。

 捉えられたら一巻の終わり。だから気を抜ける場面ではない。

 

「や、やっぱり氷の占星術なんて役に立つわけないですよ。さっきから全然怯んでもくれません!」

「海から上がったらって思ったけどな、炎もダメだ!」

 

 最後の希望、霊薬はこの手にある。

 彼女を海ではなく陸まで連れ出すことができた。あとは霊薬を飲ませる。それだけが、酷く遠く感じる。

 

「確実に力を削いでいる! あと少しだ! 皆、頑張ってくれ!」

 

 グラウコスは協力してくれている人たちに喝をいれた。

 

 相棒の剣虎に跨り彼女へと距離を詰める。

 こんな最中にも、脳裏にはかつての日々が蘇った。

 

 

 

 

 

 

『また来てる……それで隠れてるつもりですか? ストーカーさん』

『だから私はグラウコスという名前があるんだが……しかしよく気づいたね。あと声を掛ける機会を見計らっていただけだよ。ストーカーじゃない』

『そりゃ気づきますよ。猛獣がはみ出ているじゃないですか……その子、本当に噛まないんですか? こわいんですけど』

『人を噛んだことはないよ。魔物相手なら何度も噛みつくがね。そうだ、撫でてみるかい?』

 

 彼女はおっかなびっくりという様子で、剣虎に手を伸ばす。

 剣虎は撫でやすくするために頭を自ら摺り寄せた。

 

『かわいい……』

『そうだろう?』

『この子だけならいつだって歓迎ですよ。あなたは別ですが』

 

 その言葉に剣虎は甘えた声をあげながら彼女の手に顎をのせた。

 

『相棒に出し抜かれた……だと……?』

 

 傷つく主人を尻目に普段見たことない態度をとる剣虎と、自分には一度も向けてくれなかった笑顔を見せる彼女を前に泣き崩れた思い出。

 

 

 

 

 

 

 今の相棒は、彼女に撫でてもらった剣虎ではない。その娘だ。

 今、こうして共に戦ってくれているのは、主人への忠誠だ。この子は苦しむ彼女しか知らない。彼女の優しい手を、教えてあげたい。

 

 触手の道を一足飛びし、無数に伸びるうちの脚の1つに剣虎が噛みちぎろうとする。千切れまいと伸びきった脚を槍で斬り裂いた。

 

 すぐさま彼女が悲鳴をあげる。だが痛みに対しての悲鳴ではないとすぐにわかった。

 

 青白い不可思議な塊が彼女の頭上に浮かび上がり、恐ろしい勢いで周囲へと弾け飛んだ。

 

 勘頼りにその攻撃の回避を試みる。が、完全に避け切ることができなかった。槍の柄で衝撃は多少殺せたが勢いは殺しきれず吹き飛ばされる。

 

 見れば剣虎も同様に吹き飛ばされていた。

 

「グラウコスさん!」

「私は大丈夫だ!」

 

 シバの使者に返事をしながら懐の霊薬も手で確認する。大丈夫、割れていない。

 

「ここは大丈夫だろ! 目つぶしが卑怯とか言うなよ!」

「人体部分以外なら大丈夫です! 合わせます!」

 

 戦士の剣が異形の目に斬撃を見まい、間髪入れずに銃弾が斬り口から内部へと侵入するように撃ち込まれた。

 

 彼女の攻撃によってペースを奪われたかと思ったがまだ優勢だ。今のうちにグラウコスも立て直しを図るため、剣虎のそばへと駆け寄った。

 剣虎の筋肉で覆われた身体に走る斬痕。しなやかで強靭な筋肉で守られた臓器まで届いてはいない。

 

「まだいけるか」

 

 問いかけに剣虎は立ち上がり、力強く吠えた。

 

「ああ、もう少しなんだ。頑張れ」

 

 グラウコスは柄の真ん中から折れて短くなってしまった槍を握る。

 今度は剣虎に跨らない。長物でなくなった武器では、剣虎と共に動いても意味がないと判断したから。そのため、2手に別れて彼女へと迫った。

 

「君も知っているだろう。私のしつこさは相当なものだと」

 

 

 

 

 

 

 

『しつこいです。なんでそんなに私に構うんですか』

『君にひと目惚れしたからだ』

『……テレることなく言いきるのはすごいですね』

『恥じることではないからな』

『……ひと目惚れって、冷めるのも早そうですよね』

『そんなことない!』

『私のこと全然知らないのに言い切れるのはどうかと思います』

『ならば互いを知るために一緒に食事はどうだろうか!』

 

 何度食事を誘っても、断られていた。

 この日も断られてしまうのでは、という諦めの気持ちが実はあった。

 

 だが、彼女はいつもと違う返事をくれた。

 

『……今度の休日、3日後ならいいですよ。その時思いっきり冷めちゃっても知りませんからね』

『ほ、本当か! 本当にいいのか!?』

『なんですか。断ってほしかったんですか?』

『そんなことない! とても嬉しいんだ! 3日後だな! 店選びは任せてくれ! 素敵な食事を約束しよう!』

『声が大きいです。もう、恥ずかしい……。お店は期待はしてませんよ。グラウコスさんのセンスですからね……』

 

 その日の帰りは足取りが軽やかだった。すれ違う人に怪し気な薬を使用したのではと疑われるほどに。

 だがそんな疑いの声も、グラウコスはまったく気にならなかった。締まりのない笑顔のまま兵舎へ戻った。

 

 彼女との食事は、果たされることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 グラウコスの足に触手が巻き付いた。

 獲物を捉えたとばかりに触手は足を強く締め上げ、引きずりながらグラウコスを自身の眼前まで引っ張った。

 蒼白になった彼女の顔は、笑顔を浮かべている。

 

「まずい!」

「くそっ、待ってろ!」

 

 占星術も銃も、グラウコスの身体が人質のような位置取りのため攻めることができない。このままではグラウコスの命が潰える。コルタナが救出に向かおうとするが、思うように進めない。

 

 彼女の笑顔を見ながら、グラウコスは静かに呟く。

 

「ふふ……彼女が、私に微笑んでくれたことはなかったよ。やはり、君は美しいな……」

「何諦めてんだよ馬鹿爺!」

 

 グラウコスは諦めてなどいない。

 ストーカー染みたしつこさを誇る時代があったのだ。彼は30年以上想い続けるしつこさを持っているのだ。

 

「少し見惚れてしまっただけだよ。だが残念だ」

 

 宙ぶらりんになりながらグラウコスはため息をつく。

 

 

「……美しいが、とても冷たい。これでは相棒が甘えてくれないぞ」

 

 

 言い終わると同時に、剣虎の牙が触手を斬り裂いた。

 だが彼女は止まらない。触手が減ったところで、また増やせばいいだけだとばかりに。それにグラウコスも宙ぶらりんではなくなっただけで、危険な間合いのままだ。

 

「失礼します!」

 

 グラウコスと彼女の間にポルックスが入る。

 間髪入れずに彼女の胸部に片手をかざし、残りの手で上から強く叩きつけた。

 

 ポルックスが得意とする格闘術は本来対人用の技術。今まではそれを魔物相手に無理やり使っていた。だが今回は別。

 

「身体の芯が痺れるような痛みでしょう。すみません」

 

 律儀に謝罪するポルックスに鋏の触手が襲いかかった。しかし、その触手の進路上に突如氷が落ちてきた。氷と鋏の一瞬の膠着、すぐさま氷は砕かれる。

 

「や、やっぱり氷なんて役立たず! 止めれてないなんて本当にすみません! すみません!」

 

 ほんの僅かの時間稼ぎだったが十分。グラウコスとポルックスは危険な間合いから離れることができたのだから。しかしネガティブなサファイアは謝り続ける。何なのだろう。

 

 しかしこの場で謝罪をするのはサファイアだけではない。

 

 グラウコスもまた、心中では謝罪を続けていた。

 

 

 すまない、私は卑怯な男だ、と。何度も何度も懺悔する。

 

 彼女はずっと頑張ってきた。だから、彼女に頑張れと言うのは止めたのに。

 

 

「触手の再生も遅くなってきている! あと少しだ! 皆、頑張ってくれ!」

 

 

 皆を応援するフリをしながら……また、彼女に頑張れと言ってしまう。

 

 

 

 

 それなりの時間、交戦状態にもかかわらず未だに誰も落とされていない。

 状況は優勢なまま。それにしびれを切らしたのか、再び彼女は悲鳴をあげる。そしてまたも出てきた青白い塊。

 目にも止まらぬ速度で周囲を襲う攻撃。誰もあの速度についていくことができなかった。先ほど全滅しなかったのは、ひとえに運がよかったからだとその場にいる全員が自覚していた。

 だからこそ、無抵抗のままなはずはなかった。

 

 白い塊を銃弾が狙い撃つ。だが塊の数は減らない。

 

 塊が動きだす直前、彼女の周囲を業火が包み、姿を見えなくさせた。

 

 こちらから見えないということは、向こうからも見えないということ。元より相手の攻撃は見てから避けるなどできない代物。ならば相手から視界を奪う。そのつもりでカストルは炎を放ったのだ。

 

 その狙いが上手くいったのか、それともたまたまなのか誰にもわからない。だが青白い凶刃は誰にも襲うことなく地面に痕を作るだけに終わった。

 

「良し……! ってまたか!?」

 

 安堵も束の間。

 炎が無くなり彼女の姿が見えると、再度浮かび上がる青白い塊。

 占星術を用意する隙もなく、今度は自由なまま、クライソウルを放たせてしまった。

 

 その時、その場にいる全員の考えが一致していた。

 

 これを凌げば勝てる、と。

 

 炎によって魔物の身体の大半を焼け焦がされ、再生もできていない姿が見えたからだ。心苦しくあるが、彼女の人間の部分も苦痛に歪んでいるのが見えた。

 もう無力化は目の前。だから迫る青白い刃を凌げれば──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「痛ぅ……」

 

 痛む身体を起こせば、目前に広がるのは真っ赤な壁だった。

 

「何、これ……え」

 

 なんだこの壁。ここはどこだ。それより皆は大丈夫だろうか。何がどうなっている。

 

「は?」

 

 周囲を見れば、僕の足から壁が作られていた。

 正確には足の傷口から。

 

「まさか……真祖!」

 

【随分と憎らし気に呼ぶ。僕はお前を守ったのだぞ? この身体に迫った光弾は2つ。1つ目は足を掠めるだけだったが、2つ目は身体を両断する軌道だった】

 

「すぐに壁を解いて!」

 

【感謝もなしとはな】

 

 血の壁がなくなり、再び戦場が目に映る。

 だが優勢だった先ほどまでと程遠いものになっていた。

 

 大勢で囲んでいたはずなのに、今現在、立って戦っているのはグラウコスさん1人。虎も遠くで倒れたまま動いていない。

 

 あの1撃で、形成が逆転した?

 

 コルタナさんもサファイアさんも、倒れたままだ。微かに動いているから死んではいないようだが、戦線復帰は難しいかもしれない。カストルさんたちも同じだ。

 グラウコスさんがやられれば、とどめを刺すために動くだろう。なら今は救助を優先か、いや、グラウコスさんの加勢の方がいいのか。わからない。とにかく動かないと。

 

「……銃は」

 

 手から銃がなくなっている。攻撃を受けたはずみに落としてしまったのか。ここ一番という時に何をやっているんだ僕は。

 

 銃を探そうと動く前に、グラウコスさんの苦痛の声が届いた。

 右肩を貫かれている……あれではまともに動かせるのは左手だけだ。ただでさえ槍が折れて戦いづらそうだったというのに、さらに深手を負ってしまったとなると……

 

「まだ……まだ私は君を諦めていないぞ!」

 

 槍の穂先を左手で握り、相手へと突きさしながら吠えるグラウコスさん。

 

【あの人間は、諦めなければ何かが変わるとでも言いたいのか。馬鹿な話だ】

 

「黙ってろ……」

 

 銃はどこだ。いや、今はそれよりも、もう撤退するべきだ。グラウコスさんはまだ動ける。なら、まずは動けない皆を連れて離脱する。それまでグラウコスさんに粘ってもらうしかない。いや、僕がグラウコスさんと交代すれば可能性はもっとあるか。

 自分を人質にするようだけど、この身体は真祖にとって死なれては困るもの。また血の壁で守らざるを得なくなるかもしれない。

 

 考えをまとめ、すぐに駆けだそうとしたが、身体が動かなかった。

 

【僕を利用するなど、ふざけた考えだ】

 

「お前……!」

 

【この距離なら安全だ。僕はお前の無謀な行動を止めて守ってやっている。感謝される行動だと考えたが、よもや怒りをぶつけられるとはな】

 

 身体の自由をまた奪われている……!

 足の傷が大きすぎたか。いや、それだけでなく戦いの中でいくつも傷ができている。出血しすぎた。

 

 いや、動けるはずだ。未だ身体の主導権は僕にある。真祖じゃない。首から上は僕の意志通り動く。

 だが足掻いても身体は動かない。なんなんだ、部分的に主導権を奪えるとかか。

 

 思考を妨げるように甲高い悲鳴があがった。

 グラウコスさんが1人でも善戦している証拠だ。

 

 悲鳴に視線を向ければ、槍の穂先が弾き飛ばされる瞬間だった。

 

【満身創痍で武器もなし。見ているがいい。あの男は魔物となった女より、人間である我が身を優先する】

 

 得意げに語る真祖の言葉を聞き入れたわけではない。だが動くことができない身体は、グラウコスさんの動きに注目する。

 

 彼は懐に左手を潜り込ませた。

 そして懐から取りだしたものは、竜の血の入った小瓶。

 

【……何を考えている】

 

 真祖じゃないけど、同じことを思ってしまった。

 まだ無力化はできていない。いや、今はもう撤退を選ぶべきだ。確かに力を削ぐことはできたが、血を強制的に飲ませる必要がある。相手を抑え込んで無理やり飲ませるという手はずだったのだから、1人ではどうあがいても不可能で。

 

 グラウコスさんは瓶の蓋を口で無理やり開けた。

 瓶の中密封されていた竜の血は空気に触れ、量を減らしていく。

 

「こんな老いぼれの肉ではなく、美味しい食事をごちそうするつもりだったのだが……本当に重ね重ね、すまないな」

 

【あの男、何を……】

 

「素敵な食事を約束したのに……。はは、私のセンスは、やっぱりダメだな」

 

 ズキンと頭の芯が痛む。

 

「だが約束は約束だろう。老いぼれの肉と、怪し気なワインを召し上がって、くれ……お願いだ」

 

 また、頭がひどく痛みだした。なんだというのだ、さっきから。

 

【……】

 

 何かを、思い出している。

 

 

 

 

 

 

『生まれからの時間の経過を気にする意味はあるのか』

『変な言い方。誕生日って普通に言わない?』

 

 知らない思い出だ。

 見覚えのある見たことのない黒髪の少女と会話している、知らない記憶。

 

『呼称はどうでもいい。それで、何が言いたい』

『シンちゃんは何かくれないの?』

『意味が分からない』

 

 少女は僕に、いや、記憶の持ち主にシンちゃんと呼びかける。

 ……やっぱりこれは、真祖の記憶か。

 

『だってみんな私の誕生日祝いって贈り物をくれたんだもの! お友達からもほしいわ!』

『普段一緒にいる女からもらえばいい』

『シンちゃんからもほしいの! お友達だもの!』

『……これでどうだ』

 

 真祖は自分の指を千切って変形させる。指だったそれは、あっという間に宝石に変化した。

 だが少女はそれを見て微妙な顔をする。

 

『えぇ……なんか嫌』

『わがままなやつだ』

『贈り物は適当に選んじゃだめよ! まったくシンちゃんは』

『では何を基準に選べばいい』

『その人がもらって喜ぶものがいいの! 誕生日の贈り物なんだから!』

『そもそも僕はお前の誕生日なんて知らない』

『うーん。それなら仕方ない? でも、うーん』

 

 まだまだ食い下がろうとする少女の雰囲気に、真祖がため息をついたのがわかった。

 

『……面倒なやつだ。今はないが、いずれ贈り物を用意してやろう』

『ほんとうっ!? なら許します! 約束だからね! ちゃーんと私が喜ぶ物ね!』

『お前が喜ぶ贈り物だな。約束しよう』

 

 

【僕の記憶を見るとは、勝手なやつだ】

 

 

 

 

 

 

 明確に僕に向けた真祖の言葉によって、意識が現実へと戻った。

 

 全く時間は経っていないようで、見える景色に変化はない。

 グラウコスさんが瓶を開けて語りかけていた時のものと同じだ。

 

 彼は血の瓶を彼女に近づける。

 そんなもの、飲んでくれるはずがない。だけど打つ手がないのだろう。彼女の中に残った人間性に賭けるしか、もう。

 

 血はどんどんと量を減らしていく。あのペースでは10秒もしないうちに無くなるだろう。

 

 突然、微動だにしなかった身体が動きだした。

 

 まさか竜の血を無理やり奪うために……!? すでに最悪なんだ。これ以上酷い状況を作ってたまるか。

 

【邪魔をするな】

 

 真祖は苛立つ声をあげる。だが止めることができない。

 

 瞬く間にグラウコスさんたちに触れれる距離へと詰めた。

 

「君は……」

 

 至近距離に現れたこの身体に、グラウコスさんは呆気にとられ、彼女の方は青白い塊を浮かべ始めた。

 しかし何らかの攻撃が届く前に真祖が動く。

 

「……肉片だけになったとはいえ、真祖たる僕に牙を剥くか」

 

 真祖が彼女の魔物部分を殴りつけた。その拳は肉を抉り、内側まで届く。

 

 さらにそこから変化があった。僕の腕に血管のような太い管が浮きあがる。そして強く脈動し始めた。

 その動きに合わせ、魔物の肉が縮んでいく。まるで吸い込まれるように、どんどんと。

 

「な、なにが起きているんだ……なっ」

 

 グラウコスさんの疑問の声に、小さな驚愕の声が混ざった。

 

 僕も何が起きているのか説明が欲しい。

 

【……肉片だけとはいえ僕の眷族だ。だから僕の身体へと戻した。女の身体から離れなかった部分を除いてな】

 

 それって……彼女は人間に戻れたということ?

 

【まだ違う。眷族の肉が僅かでも残っていれば変化は止まらない。あとは減った竜の血次第だ】

 

 途端地面が迫った。

 

 理由はすぐにわかった。急に身体の主導権を返しやがったせいだ。

 そのせいで顔から砂浜に接触。痛い。

 

「あいふ、ゆるふぁな……」

 

 恨み言は途中で止まった。

 

 聞いたことのない声が聞こえたから。

 

 

「やっぱり、グラウコスさんのセンスは、期待できるものじゃないですね」

 

 

 女性の声だ。

 若い女性の声が、近くから聞こえた。

 

 続いて聞きなれた老年の男の声。

 

 

「あ、ああ……。ああ……っ! すまない、予約していた、店がお休みでね。また、予約し直さないとだ……っ」

 

 

 海の波音と共に、泣き震える男の声が、朝日が昇る海岸に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 







視点変更が多くてすまない……ぶっこむ場所があまりに少なく……つい……


スキュレーについて。

アイエイアのスキュレーって氷属性スキル使わないんですよね。人間性が残ってるんでしょうか。

スキュレーについて色々考えてたのですが、そしてそして、少し話が逸れる&長々話ですが、世界樹Xは各地の世界樹の特徴を発現しているため見慣れたボスが登場します。ただここで疑問なのは、世界樹2のボスは、上帝の造った魔物という点です。
上帝という世界樹外の存在によりできた魔物が何故世界樹Xに登場を、と考えたのですが、各地の世界樹が常時遺伝子を共有し合っているのでは、と考えてみました。
上帝によってできた魔物は世界樹の遺伝子が含められているため不死になっている。とありました。
そんで世界樹Xは各地の世界樹の遺伝子を含むから各地の特徴を出している、とあったような気がします(あやふや)
そんな2つの事柄から、世界樹はそれぞれ互いに情報をある程度共有し合っているのではと考えました。
そんなごり押し考えから、アイエイアのスキュレー化は2の遺伝子情報が提供されていたから。
ベースは2と同じように人間(別人)だけど氷スキルを使わないのは上帝による改造もとい魔物への変化の安定化がなかったから、みたいな。

でも時系列的に2のスキュレーの方が後じゃない?
……こ、こう、スキュレー遺伝子がもともと世界樹にあって、上帝のはこう、その遺伝子の発露が強かったにしたら!改造による安定化つきなら!ヨシ!!(現場猫)顔が同じ!?世の中にはそっくりさんが三名はいるとかなんとか!!

長々ダラダラと話してすみません。まあ結局は人それぞれのマイ世界樹設定でいいと思います!
どうせ今のダラダラ話は作中に出しませんからね!

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