終わる世界、始まる物語   作:フィーラ

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14.かくにん

 何事もなく二階バリケードの建築を終え、昼食の後にバリケードを乗り越え一階へと下る

 今度の二階のバリケードは天板を釘で床に固定した。前の様に簡単に崩れる事もないだろう

 

「それじゃ万が一も無いとは思いますけど、一応注意してくださいね?」

 くるみちゃんもカズも居るし、万が一も無いとは思いながらも皆に声をかける

 目指す場所はすぐそこ。倉庫奥の階段を下った先の非常避難区画だ

 

「付近に姿はなし。大丈夫」

 くるみちゃんの声を聴き、彼女を先頭に倉庫へと走る

 全員が駆け込んだのを確認し倉庫の扉を閉じる。周囲に奴らの影はない

 

 

「ほんじゃ、前来た時に閉めといたから奴らはいねえとは思うけど、一応気ぃつけてなー」

 機械室への扉をくぐり、カズがシャッターを上げる

 階段の先は、相変わらず真っ暗だ

 

「暗いねー、電気無いのかな?」

「どーだろうな、冷蔵室があんだから電気自体は来てるとは思うけど」

 由紀ちゃんが辺りをきょろきょろと見回している。シャッターの外を探すが、それらしきものは見当たらない

 

「あ、あったあったー」

 パチン。

 由紀ちゃんの声と共に、階段が蛍光灯の光で照らされる

 スイッチは、中にあったのか 

 

「電気、やっぱり来てるのね」

「……スイッチなんて、全然気が付きませんでしたね」

 駆け出した由紀ちゃんを追うように、階段を下っていく

 

 

 

「うぇー、これ全部?」

 地下二階、非常避難区域。そこには無数のコンテナが立ち並んでいた

 彼女の呻き声も、おおよそ正当なものだろう

 一つ一つ中身を確認して記録し、必要そうな物があれば持っていく

 人数が多いとはいえ、簡単な事ではない

 

「あ、奥の方に冷蔵室とは別に扉がありますけど、そこは絶対開けないでくださいね。ちょーっと精神衛生上よくないものがあるので」

 はーい、という声と共に二人一組で彼女たちは駆けていく

 

「おし、そんじゃ俺達も行くか」

「あいよー」

 メモを片手に、自分たちの担当区画へと歩き出す

 

 

「チキン、クリーム、野菜シチュー缶。それぞれ十ずつ、フリーズドライ済み」

「あいよー」

 コンテナの中身を一つ一つ確認し、数と種類をメモしていく

 備蓄されていた食糧は水を必要とするものやしないもの、開けてすぐ食べられる様なものから調理が必要なものまで様々だった

 ここにある多くの食糧を持ちかえれば、食事の幅も広がるだろう。が

 

「つってもまぁ、すぐ持ってかなきゃいけねえ様なもんでもねえよなぁ」

「元々保存食だしな。今あっちにある奴の方が優先だろ」

 カズの持ってきた食糧は少なくなってきたものの、購買部と食堂,倉庫に食糧はまだ多くある

 それらの場所にあるものはいずれ腐ってしまうものも多くあり、そちらの方が優先だ

 なにせここに在る食糧だけで、()()()()()()()単純計算で二ヵ月はもつのだ。近隣の食糧を粗方取りつくしてからでも遅くはないだろう

 

 

「……なぁ相棒、これから知らねえ奴がこの集団に合流してきたりとか加わりたいっつってきたりとか、あるんかね?」

「……正直、俺はあって欲しくねえな。トラブルの元だ」

 正直な所、この集団は既に安定した形をとっているとは思う。そこに下手に外からの干渉があれば、どう崩れるかわからない

 

 くるみちゃんもりーさんも、恐らく相手が校外の人間であれば、佐倉先生も。相手が危険あるいは相手を救う事が危険だと判断すれば、相手を見捨てる事自体は出来るだろう

 だがあの底なしに優しい由紀ちゃんが、困って見える誰かを見捨てることなど、出来るだろうか?

 いや、救う事や受け入れる事自体は構わない。だがそれが原因で、彼女達に危険が及ぶような事があれば──

 

「顔が怖い怖い、落ち着け。俺が来た時点で外の生存者は殆ど見かけなかったし、そう出会う様なもんでもねえよ」

「……そうだな」

 お前ほんとアイツらの事好きだなー、などとぼやくカズを無視して、確認を再開する

 

 

 

「こっちは終わりましたー、後は冷蔵室の確認だけですかね?」

「お疲れ様、葵君に和義君。皆集まってるから、後はもうそこだけね」

 りーさんに用紙を手渡し、辺りを見回す

 見れば冷蔵室の前に皆は既に集まっており、自分達が最後だった様だ

 由紀ちゃんに至っては早く開けようよー、と言ってそわそわしており、佐倉先生に宥められている

 

「すみません、今こっちも終わりましたー」

「もー、葵くんたち遅いよ! 待ちくたびれちゃったー」 

「それじゃあ、開けるわよ?」

 りーさんの言葉に頷き、冷蔵室の扉がゆっくりと開く──

 

 

 

「「「「「「いっただっきまーす!!!」」」」」」

 肉厚なステーキに、付け合せの野菜

 今の世界ではおおよそ見られないであろう物達が、ステーキ皿の上で湯気をあげている

 白米も、今日くらいはおかわり自由だそうだ

 

「うっめえなぁ……」

「いやー、ちゃんと冷凍保存されててよかったですねえ」

 しみじみとしたカズの呟きを聞きながら、人類の技術への感謝を口にする

 周りを見渡せば、由紀ちゃんはもきゅもきゅと一心不乱に頬張り、くるみちゃんに至っては感激の涙を流しながら食べている

 この先、肉を食べる機会なんてそうそうないだろう。しっかりと味わっておかなければ

 

「電気さえちゃんと行っていれば、しばらくはもつんじゃないかしら」

「というか、非常区画なんだろ? 非常電源とかそっちに優先的に行くようになってんじゃね?」

 まだあそこにはここに居る全員で食べたとしても、数食分になりそうな肉が残っていた

 カズの言う通りならば、急いで食べなくてもいいかもしれない

 

「なら、残ってたのは何かのイベントの時にでも残しておきますか?」

「そうね、そうしましょうか」

「りーさんおかわりー!」

 

 

「ふー、いやー食った食った」

「それじゃ、シャワーを浴びて寝る準備をしましょうか」

 佐倉先生の言葉に頷き、全員が椅子から立ちあがる──

「ちょーっと待った!」

 それを引きとめたのは由紀ちゃんの声

 

「どうしたの? 由紀ちゃん」

「まーた変なこと企んでんなー?」

 自信満々な由紀ちゃんとは対照的に、怪訝そうなくるみちゃん達

 ……確かに、彼女の提案する事はいつも突拍子がない。そんな態度になるのも、まぁ頷けなくはないだろう

「キャンプだよ!」

 

 

「……キャンプ? あー、確か二階の資料室にいくつかテントあったな」

「屋上でテントでも張るつもりですか? 僕は構いませんけど」

 得心が行った様子のカズ。自分も構わないが、彼女達が何と言うかだ

 

「キャンプかー、いいんじゃね? 確か購買部に花火あったよな?」

「今日は良く晴れてるし、いいんじゃないかしら」

「先生も、いいと思うわ」

 ……思ったより、好評だった

 そうと決まったのなら、準備をしなければならない

 

 

「それじゃ、僕たちでテントやらを回収してきます。先にシャワー浴びて来ちゃってください」

「ええ、お願いね?」

 どうせ野郎なんかより、女性の方がシャワーを浴びるのには時間がかかるだろう

 シャワーを浴びに更衣室に向かう女性陣を尻目に、二階の資料室へと向かう

 

「……なぁ、覗きに行かねえか?」

「バカ野郎。くるみちゃんにシャベルで頭をかち割られるか、りーさんのお説教ウン時間コースになる未来が待ってるぞ」

 だよなー、と言う呟きを聞き流しながら、妄言を真っ向から否定する

 

 由紀ちゃんはなんだかんだで許してくれそうだし、佐倉先生ももしかしたら水に流してくれる可能性はある

 ただ、あの二人は絶対に駄目だろう。乙女心的に

 ……第一、覗きに行こうとしたら俺がしばく。彼女達に、アホみたいな理由で心の傷を負わせる訳にはいかない

  

 テントの道具を二つ分、肩に担ぐ。……思ったよりも軽い

「思ったよりも軽いから、そっちは購買部で花火取ってきてくれ」

「あいよー、んじゃ後で合流すっか」

 カズと別れ、屋上へと急ぐ

 

 ……流石に、今から覗きに行ったりはしないだろう。多分

 そのくらいの信用はしているつもりだ。恐らく、きっと、めいびー

(……なるべく早く組み立てて、アイツと合流すっか)

 

 

 屋上でテントを組み立てていると、屋上の扉が開いた音が聞こえた

 扉の方に目をやれば、りーさんがこちらへと歩いてきていて

「お疲れ様。私達が代わるから、シャワー浴びて来ていいのよ?」

「わっかりました。……それと、大丈夫でしたか?」

 

 不思議そうに小首をかしげるりーさん。何事もなかったようで何よりだ

「いえ、こっちの話です。それじゃあ、なるべく早く戻ってきますので」

 

 シャワーを浴びる前に、カズの奴を回収しなければならない

(アイツの事だから、こっちに来てないっつー事は生徒会室か寝室辺りか)

 アイツを探しに、屋上の扉をくぐる──




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