タルコフとciv6で時間が溶ける溶ける(白目)
久々の執筆で感覚を忘れたので今回は短めとなっております
追記:サボってる間に1万UA行ってました、ありがとうございます!
Side:恵飛須沢胡桃
──僅かに体に走る痛み。それを堪えながらも立ち上がる
傍らには、呻きながらも同じく体を起こす美紀の姿
思ったよりも、お互いに怪我はそこまで酷くはない
「っつつ……二人共、大丈夫か?」
遅れて、アタシ達の前にいたカズも立ち上がる。怪我の程度はアタシ達よりも酷く、所々から血が滲んでいるのが見える
「あ、あぁ……」
「先輩の方こそ、大丈夫なんですか?」
「ちっと痛むけど、問題ねーよ。とりあえずお前らが無事でなによりなんだが……」
周りへと目を向ければ、堕ちた鳥を焦がしていた炎は、今やアタシ達の校舎をも焦がそうとしていて。つい先程の音に引き寄せられたであろう亡者の群れは、数える事すら億劫になる程であった
数える事を放棄した所で、数が変わる訳でもなく
校舎に戻るには、この群れをなんとかして突破する必要があるのだが……
この人数では、どう考えてもこの数を突破するのは不可能だ。されど、相手方がそれを考慮してくれる筈もなく。一匹の亡者の視線が、こちらを射抜く
「……さて、二人共行けるか? ダメそうだったらどっか無事そうな車ん中でも避難してていいんだぜ?」
「じょーだん。お前の方こそ、怪我自体はアタシ達より酷いんだから休んでたらどうだ?」
「ハッ、バカ言うなよ。今ここでお前達だけに無茶させたとアイツに知られたら、後で屋上からノーロープバンジー確定だぜ?」
軽口を叩ける程度には元気らしい。元気なようで何よりだ
葵も、無駄に頑丈なだけがコイツの取り柄だって言ってたしな
一先ずは、周りの数を減らす事が先決だろう
アタシとカズで叩いて、いざと言う時は美紀にフォローして貰う。さっきまでと一緒だ
……ただ、奴らがどれだけ増えるか、アタシ達の体力がいつまで保つかは、気がかりだけどな
Side out
──凄まじい音と共に、屋上が僅かに揺れる
半ば反射的に背もたれにしていたフェンスから身を起こし、音の方角へと顔を向ける
初めに目に入ったのは炎に身を包んだ鉄の鳥
その炎の燃え広がり様と言えば凄まじく、周りに点在する廃車どころかこの校舎まで燃え広がりかねない勢いだった
次に目に入ったのは、その鉄の鳥へと集う、数える事すら億劫になる程の”奴ら”の群れ
先程くらいの轟音ともなれば、学校中どころか近辺から奴らが集まって来ていても、何一つおかしくはない
そして、最後に目に入ったのは──
「あんの馬鹿……!」
──奴らに周りを囲まれている、くるみちゃん達。その姿に、思わず罵声が漏れる
自分の迂闊さを呪いながらも、解決策を模索する為に思考を巡らせようとした、その時だった
「どう、して……」
「「りーさん⁉︎」」「若狭さん⁉︎」
半ばうわ言の様な呟きと共に、りーさんが膝から崩れ落ちる
由紀ちゃん達と共に駆け寄り肩を揺するも、彼女からの反応は返ってこない
その姿は、まるで糸の切れた人形の様で
「クソ、なんだってんですか……あー、もう! とりあえず避難です避難!」
「避難って、どこへ⁉︎」
「それを今考えてんですよ!」
悲鳴じみた先生の声に対して叫ぶと共に、思考を巡らせる
外……はダメだ。そもそも外に出るには、外から集いつつある奴らの群れを、三人を守りながら突破する必要がある。とてもではないが、そんな事を出来る自信なんてものはない
かと言って、この学園の中のどこかに避難しようにも、それだけでは火の手からは逃れられまい
──詰み、という言葉が頭の中を過ぎる
そんな中、天啓の如き言葉を発したのは由紀ちゃんだった
「……地下に、非常区画ってあったよね?」
ポツリ、と呟く様な彼女の言葉に、佐倉先生と顔を見合わせる
そうだ、そこがあった。あそこであれば、シャッターを閉めれば炎も煙も届かず、安全だろう
「それです! 流石由紀ちゃん!」
「そ、そうかな?」
えへへー、と彼女が照れ臭そうに笑う
目的地は決まった。ならば次は──
──再び、りーさんへと視線を向ける
先の爆発で、校内の奴らは音の地点へと誘き寄せられている。恐らく、校内に残っている数は、そう多くはない
故に、このまま彼女達を連れて地下へと向かう事は、不可能という程ではないだろう
だが、そうしてしまうのは、何かが違うような気がして
「……佐倉先生、由紀ちゃんをお願いします。ここは僕が」
「でも……」
「大丈夫です、校内の奴らの数もそう多くはない筈ですから。……由紀ちゃん、僕の代わりに佐倉先生を、しっかりとサポートしてくださいね?」
そう告げると共に、不安そうな表情の由紀ちゃんに、僅かな数のブザーとケミカルライトを手渡す
正直、不安はある。数が少ないだろうとは言え、襲われない保証などない上に、自分とは違って二人は戦えない
安全を最優先するのであれば、全員で行動するのが賢いやり方というものなのだろう。ここで二手に別れる必要性など、何一つない
それでも、彼女は大きく頷いてくれて
「わかった。……待ってるからね?」
「ええ、任せてください」
そう言って佐倉先生の手を引き、屋上を後にする彼女達を見送りながらも、りーさんの方へと向き直る
彼女は今なお、視線を虚空へと彷徨わせ、その膝を折ったままだ
その心はひび割れ、折れかけ、今にも崩れ落ちようとしているのだろう
そんな彼女に、
ここからは、俺の役目だ
Side:若狭悠里
──燃える。燃えていく
──私たちの学校が、私たちの在り処が。私たちの積み上げてきたもの全てが、灰に帰していく
どうして。
昨日まで、なんの変哲もない日常が送れていたはずなのに
少し苦しいけれど、皆で笑い合える日々が、送れていたはずなのに
──悠里
広がってゆく朱を前に、すくむ足では立つことすらままならず
まともに呼吸を繰り返す事すら、干上がった喉では困難で
──悠里
──誰かの声が聞こえる
聞き慣れた、だれかのこえ
この、こえは──
「悠里っ!」
「あおい、くん……」
「……大丈夫、大丈夫だ。落ち着いて」
思考が現実へと引き戻されると同時に、私の体が抱き寄せられる
密着する彼の体から、温かな熱が伝わる。力強くて、それでいて柔らかな抱擁
彼の大きな手が、私の背中を撫でる。ほんの少しくすぐったい
耳元で、彼の言葉は紡がれ続ける
「ここにはもう誰も居ない。……だから、少しくらい弱くなっても大丈夫だ」
幼子をあやすかの様な、優しい声色
私の弱さを受け止めてくれる人が、目の前に居る。私が弱さを打ち明けてもいいと思える、唯一の人が
彼の口から紡がれる言葉に、私の口からも、自然と言葉が漏れる
「……もう、嫌なの」
「……」
「もう嫌なのっ! 頑張って少しずつ積み上げて、なんとか形になってきたのに、私たちの努力は全部無駄だったっていう事実を突きつけられてっ!」
感情のままに叫ぶ私の言葉を、彼は目を閉じたまま、静かに聞いている
「こんなのどうしようもないじゃないっ! どうしようも、ないじゃない……」
彼の胸に顔を埋める。こうでもしないと、声をあげて泣き出してしまいそうだった
背中を撫でていた手がピタリと止まり、その手は背中を離れ、私の頭を撫で始めた
「確かに無駄だったのかもしれない。どうしようもない様な事で全部崩れてちまってさ、疲れてもう嫌になっちまったかもしれない」
でもさ、と言葉を区切り、彼は続ける
「例え全部無駄だったとしても、意味はあったんだ」
「い、み……?」
「そう、意味。今まで笑った事も、泣いた事も。頑張った事も、遊んだ事も。失敗した事も、喧嘩した事だってそうさ。今までやってきた事全部に、意味はあったんだ」
柔らかな声色で、彼はなおも語り続ける
「ここで歩みを止めたら、今までやってきた事が本当に無意味になっちまう。だからさ──」
言葉を区切ると共に、伝わる熱が消失する
そして私の目の前には、立ち上がった彼の姿と、差し出された手の平
「もう少しだけ、俺と一緒に歩いてみないか?」
──ずるい。そんな言い方をされてしまったら、断れないじゃない
彼の手を取り、立ち上がる。いつのまにか、足の震えは何処かへと消え去っていて
「……ん、大丈夫そうですね。やっぱり、りーさんには笑顔が似合いますよ」
そう笑いながら、私の手を引いて校舎へと歩む彼に、私も続いて歩みを進めてゆく
──しっかりと、彼の手を握り返しながら
凍京ぐらしで公式から供給あったと思ったら3年後も公式で連載してくれるとかマジ!?!?!?!?!?