終わる世界、始まる物語   作:フィーラ

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きらファンを始めたので初投稿です


7.そと

 夜の一件以降、特に何事もなく朝を迎える

 夜中に窓から見えた奴らはむしろ明るい時より少なく見えた程で、何か法則性があるのだろうかと考える程だった

(もしかしたら夜の見張りも必要ないかもなぁ、もう数日様子見て大丈夫そうだったら皆に伝えるか)

 そんな事を考えながら窓から朝日を眺めていると、誰かが部屋へと入ってくる

 

「お疲れ様、大丈夫だった?」

 どうやら一番最初に起きてきたのはりーさんだ

 一昨日の朝も一番最初に起きていたし、早起きだったりするのだろうか

 

「おはようございます、りーさん。特に何事もなかったです」

 目を丸くして驚いたような表情をするが、すぐに穏やかな笑みに変わる

 ……やっぱり、慣れない内は恥ずかしい

 

「ええ、おはよう葵君。由紀ちゃんとお話ししたのね?」

「……りーさんの差し金でしたか。由紀ちゃんには圧し切られるし、くるみちゃんには揶揄われるしで、大変だったんですからね?」

 責める様な物言いに、彼女はくすくすと微笑む

 

「差し金、って程じゃないのよ? 由紀ちゃんに葵君ともっと仲良くなりたいって相談されただけ」

「そうですか……いえ、いつかやらなければならない事だと解ってはいたのですが」

 他愛もない話をしながら時間を過ごしていると、廊下から騒がしい声が聞こえる

 そろそろ皆起きだした頃だろうか

「さて、それじゃあ食事の準備でもしましょうか」

「ええ、そうね」

 

 

 

「今日は、お掃除の日にしましょうか」

 食事中に、佐倉先生からそんな提案をされた

 確かに、いつまでも廊下とかが汚れたままなのもどうかとは思う

「いいんじゃないですか? いつまでも廊下とかがあの様っていうのもどうかとは思いますし」

「食糧も一先ず大丈夫そうだしな。いいんじゃね?」

 由紀ちゃんとりーさんも頷いて同意している。今日一日を使って掃除や整理をするのも悪くないかもしれない

 

「あ、そういえば皆に伝えておきたい事があるので、食事後にでもいいですかね?」

 一昨日言い損ねた事を思い出す。この件に関してはなるべく早く共有しておくべきだろう

「あら、今でもいいのよ?」

「いえ、食事中にする話でもないので。とりあえず食べてしまいましょう」

 佐倉先生の言葉もありがたいが、こういった話を食事中にするのはあまりよくない

 なにしろ、そう明るい話でもないのだから

 

 

 

「それで、話しておきたい事についてなんですが……」

 食事が終わった後、皆がテーブルについている事を確認してから話を始める

 

「こちらの生活がある程度落ち着いてからでいいので、物資の調達は外を優先した方がいいかもしれません」

「つってもまだ食糧には余裕あるんだろ? そんなに急ぐ必要はないんじゃないか?」

 くるみちゃんの言葉も尤もだが、この学校には食糧こそあるもののその食糧もそう長くはもたず、何より食糧以外の物資が圧倒的に足りない。その旨を話す

 食糧に関してはマニュアルに書かれていた地下の保管物資があるが、その事は現状皆には知らせる事はできない。現状では実質無い様なものだ

 いつ救助が来るか、そもそも救助が来るかどうかすらもわからない以上、物資の貯蔵は多くあった方が良い

 

「……そうね、流石に換えのお洋服とかも欲しいものね」

 りーさんの言葉に、他の三人もわずかに同意を示す

 女性にとっては、ある意味死活問題だろう

 

「飽く迄もこちらの生活が落ち着いてから、です。物資が枯渇した場合にどこに求める事になるかと言えば当然学校の外になる訳で、外の物資と言うものは基本的に他の生存者との競争です」

 競争になるのは他の生存者が存在していれば、の話ですが。と付け加える

 

 他の生存者がいれば外の物資もいつまであるかわからない。根こそぎ持って行ってしまわれればそれで終わりだ

「なにも今日明日に取りに行こうという話ではなく、何度も言う様ですが落ち着いてからの話です。外の情報がない内は迂闊に外に出る訳にもいきませんし」

 

 

「とにかく、いずれは外に取りに行く必要があるという事を伝えておきたかっただけです。それじゃあ、掃除を始めましょうか」

 話を終え、席を立つ

 とにかく外の情報がない事には始まらない。奴らの習性を含めて、まだまだ情報が足りないと言っていいかもしれない

(情報を集めに外に出る必要があるかもなー、佐倉先生の車でも借りられないかな)

 掃除を始める為に、廊下へと出る

 

 

 

「……それで、外の情報はどうやって知るつもりなの?」

 廊下を掃除していると、モップを片手にりーさんが小声で話しかけてくる

 周りには廊下の端に由紀ちゃんが見えるくらいなので、そこまで小声で話す事もないと思うのだが

 

「んー、カズが合流してきてくれればそれである程度は解決するんですけどね。多分今まで合流して来てないってことは、情報やら物資やら集めてから合流する為に外に居るんでしょうし」

 アイツがいの一番に合流して来ないという事は、つまりそういう事なのだろう

 長年の付き添いのおかげでアイツの考えはよく理解している

 

「まぁ数日待って合流して来なかったら適当に車でも借りて、ひとっ走り物資集めついでに一人で外行ってこようかと」

「一人じゃ危ないじゃないっ!」

 りーさんが声を荒らげる。心配してくれているのだろうか

「そうは言っても、くるみちゃんを連れていく訳にはいきませんから。一人の方が身軽でいいくらいですよ。それに万が一アイツが合流してこなかったら、の話です」

 

 そう返したものの、彼女はまだ納得できない様で何かを言いかけている

 その言葉を聞く前に、勢いよくぶつかってきた何かによって突き飛ばされた

 

「痛っ!」

「葵君っ、大丈夫っ!?」

 響いたのは由紀ちゃんの驚いたような声と、りーさんの心配するような声

 ぶつかってきたのは、さっきまで廊下の端に居た由紀ちゃんの様だ

 

「あぁ、僕は大丈夫です。由紀ちゃんの方は大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫ー」

 どうやら怪我はない様でなによりだ

 元気な事はなによりだが、走る時には前くらいはちゃんと見て欲しい

「気を付けてくださいね? 僕はともかくとして他の人にぶつかったりしたら危ないですから」

「うん、ごみん……」

 

「由紀ちゃん……?」

 声の方へと振り向くと、そこには笑顔のりーさんが居た

 ……笑顔とはいったものの、その目は全く笑っていない

「廊下を走っちゃ……ダ メ で し ょ う?」

 自分が怒られている訳ではないにも関わらず、正直かなり怖い

 由紀ちゃんも、腰が引けている

 

 

 その後、十分ほどりーさんによるお説教を受けた後に由紀ちゃんは解放された

 お説教中にちらちらと助けを求める様な目を向けられたが、あの状態のりーさんには正直近寄りたくなかった。ごめん、由紀ちゃん

 

 

 

 結局掃除には一日中かかったものの、三階はそれなりに綺麗になった

 食事の為に再び生徒会室に集まり、今日の夜の相談をする

「んじゃ、今日はあたしが見張りをするよ。めぐねえと葵はもうやったしな」

「ええ、ありがとうございます。どうも夜は奴らが少ない様ですので、あと数日したら見張りもいらないかもしれません」

「そういえば、一昨日の夜に窓から校庭を見た時も少なかった様な・・・・・・」

 佐倉先生は思い出したかの様に呟き、他の三人は意外そうな顔をしている

 

「だとしたら、どこに行ったのかしら……」

「みんな、お家に帰ってるとか?」

 呟くようなりーさんの声に返したのは、由紀ちゃんの声

 ……その発想はなかった。他の皆も由紀ちゃんの方を一斉に向く

「……いや、そんな事があり得んのか? いくらここが学校っつってもさ」

「案外あり得るかもしれませんよ? 少なくとも夜に消えて、朝には帰ってきてる訳ですからね」

 食事中の分析は、続いていく

 

 

 

Side:恵飛須沢胡桃

 

 ……確かに葵とめぐねえの言う通り、アイツらの数は少ない

 皆が寝静まった後に窓から校庭を見下ろしながら、その事実を確認する

 

 アイツらはどこに行ったんだ? なぜ夜には居ないのに朝になったら現れる?

 本当に由紀の言う通り家に帰っているとでも言うのか?

 

 

 窓から校庭を見下ろし、アイツらを観察していると車の走る音が聞こえる

 見れば、校門から車が一台入っていていた

 ――他の生存者がいたのか

 

「……ッ!」

 反射的に資料室へと走る

 車の中の奴らが友好的とも限らない。万が一の準備は整えて置いたほうが良い

 

 

 相も変わらず由紀達から離れて寝ている葵を揺すり起こし、他の三人を起こさない様に小声で呼びかける

「葵っ! 起きろ!」

「……どうしたんですかそんなに慌てて、何が問題でも?」

 数秒の後、葵は眠そうに目を擦りながら体を起こす

 ……本当に寝起きが悪いなコイツは

「生存者だ!校門から車で入って来た!」

 そう呼びかけるとさっきまでの眠そうな雰囲気は霧散し、真剣な表情で問いかけてくる

 

「数は?」

「いや、車で入って来たのを見ただけだから正確な数はわかんねえ。ただ車の大きさからして、居ても四ってとこだ」

「四ですか……追い返すには厳しいですね」

 そう呟きながら、葵は窓から校庭を観察している

 

「……ん? もしかしてその車ってあの黒いやつですか?」

「え? ああ、そうだけど」

 葵は校庭を見ながら何やら拍子抜けした様な表情をしている。……何かわかったのか?

「あー、アレ多分カズんとこの車ですね。恐らくカズが合流しに来たんでしょう」

 

 緊張して損したー、と呟く葵

 アイツが本当に生きていて、合流しに来た?

「ま、多分アレに関しては警戒しなくても大丈夫でしょう。一応迎えに行ってやりますかー」

 そう言いながらシャベルを手に取り、葵は資料室を出て行く

 アタシは半ば呆気に取られながらも、それに続く

 

 

 部屋を出ると、バリケードを乗り越える様な音が廊下に響いている

 一応警戒しながらも、音の方へと近づく。・・・・・・葵は全くと言っていい程警戒していないが

 眼を凝らせば、一人分の人影。リュックを背負った、体格からして若い男

 その人影を視認して、葵は当然の如く呼びかける

 

「おっすカズ、久しぶり」

 人影はその声に反応して、嬉しそうに声を返しながら近づいてくる

「おう葵! やっとこさ合流出来たわ」

 その人影──典軸 和義は、こちらに手を振った

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