ガールズ&パンツァー サイレンがなる頃に‥‥ 作:ステルス兄貴
家族構成とみほの過去がSIREN(映画版)の設定に使えそうだったので‥‥
サイレン‥‥それは、救急車、パトカー、消防車など警察・消防の諸機関が、人々に注意を促すために大きな音響を発する装置で、その装置が発する音の名称にも使用されることがある。
その名称の語源は、ギリシャ神話に登場する、航行中の船の乗組員を美声で誘惑し、難破させる半人半鳥の魔物、セイレーンであるとされる。
サイレンは、人々に注意を促す音響装置であることから、このサイレンもまた、奇妙な世界への警告だったのかもしれません‥‥
1976年‥‥某月某日‥‥
日本に存在する数ある離島の中で、最も日本本土から離れた有人島 夜美島。
この日の昼過ぎ、夜美島を大型の嵐が襲った。
だが、島の地理上、この島には季節によって嵐が良く来る位置にあり、今はその嵐が到来するシーズンの真っただ中‥‥。
よって島の住人にとっては嵐など別に珍しい物ではなく、浸水や土砂崩れさえ、気をつけて警戒していれば自然に収まるだろうと島の住人の誰もがそう疑わなかった。
しかし、嵐は夕方になってからも勢力を増し、海は荒れ、風も強くなるばかりであった。
そして、日が落ちた頃にそれは起きた。
突然、島中の電気が全て落ち、島中に有るありとあらゆる電気機器、電話が使えなくなったのだ。
明かりという明かりがすべて消えた事から、島中は夜の暗闇に包まれた。
夜、八時頃、まだ雨と風はあるものの船を出せないほどではないので、捜索・救助隊が夜美島に上陸した。
「おーい!!誰か!?誰かおらんか!?」
捜索隊は夜美島の住宅地を中心に島民を捜索した。
「どうだ!?そっちは!?誰かいたか!?」
「いえ、島民どころか犬一匹いません!!」
捜索隊の隊長が近くを捜索し、合流した隊員に訊ねるが、隊員の方も島民の誰一人見つかっていない様だ。
「どうなっているんだ!?この嵐の中、この島の人たちは一体どこに行ったんだ?」
捜索隊の隊長が辺りを見回しながら不安げに言う。
港には、ロープできつく固定されていた漁船群があり、皆で船に乗って島を脱出した様子も見えない。
小さな漁船では島民全員を乗せるには無理があるし、それ以前に嵐の中を小型の漁船で逃げるにはあまりにも無謀である。
たまたま島の近くを通った貨客船に乗って避難したとしても何かしら、置手紙や連絡を入れる筈だ。
しかし、夜美島からも、この近くを通る貨客船や大型船からは、島の人を収容したと言う連絡も無い。
つまり、この島の人間はまだ島の中に居る筈である。
隊員らが一軒の民家の中に入り、住民を捜すも、やはり家の中には人の気配はない。
居間のテーブルにはこの家の住人が夕食を摂っていたのだろうか?
食べかけの料理が乗っかったままとなっていた。
隊員の一人が恐る恐る味噌汁に指を入れると、
「まだ温かい‥‥」
味噌汁はまだ冷めておらず、ついさっきまで人が居た形跡がある。
隊員たちが困惑していると、他の地区で捜索をしている別の班から連絡があった。
「こちら第二班!!民家にて、男性一名を発見!!保護しました!!」
どうやら他の場所で島民が居たようだ。
そこで、島民が見つかったとされる民家へと向かうと、
そこで、隊員たちの見たものは、部屋中に沢山の火が灯った蝋燭と懐中電灯があり、まるで夜の闇から必死に逃れようとしている様だった。
そして部屋の壁には沢山のお札が貼ってあり、その部屋の隅では一人の男が震えながら膝を抱えていた。
「見つかったのはこの人だけか?」
「はい」
「他の島民は?」
「それがいくら聞いても、訳の分からない事ばかり言って‥‥」
「きみ、他の島民はどうした?どこにいる!?」
隊員が他の島民の行方を訊ねても男は何の反応も見せない。
「おい!!なんとか言え!?他の島民はどこだ!?」
業を煮やした隊員が強めの口調で男に訊ねる。
すると、
「‥‥れ‥ン‥‥だ‥‥」
「ん?なに?」
男はブツブツと何かを話し始めた。
「‥‥さ‥‥れ‥‥ん‥だ‥‥サイレンだ‥‥」
「サイレン?」
「三度目‥‥三度目のサイレンが鳴って‥‥」
男は相変わらず、訳の分からない事ばかり言っている。
このままこの男をここに放置するわけにもいかず、事情も聞かなければならないので、隊員たちは男を連れ出そうとする。
「や、やめろ!!どこへ連れ出す気だ!?」
男は声を荒げ、暴れるが、隊員たちは両脇を固めて男を連れ出そうとする。
「さ、サイレンが鳴ったら、外に出るな!!サイレンが鳴ったら、外に出てはならない!!サイレンが鳴ったら‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁ‥‥!!」
男は隊員の腕を振りほどき、頭を抱えながら、悲鳴をあげた。
後にこの出来事は夜美島集団失踪事件として一時期世間を賑わせ、この男以外の島民の行方は依然として不明のままとなった‥‥
夜美島の島民が謎の失踪をしてから、三十五年後‥‥
未だにあの時の島民が見つからないまま時は流れ、静岡県にある陸上自衛隊の富士演習場では、第六十二回戦車道全国高校生大会、決勝戦が行われていた。
決勝まで駒を進めたのはこれまで過去の大会で、九連覇している黒森峰女学園と同じく戦車道では、強豪校として名の知れたプラウダ高校だった。
戦車道の試合には主に二つのルールがあり、相手チームの戦車すべてを撃破する殲滅戦。
自軍チームの車輌の中からあらかじめ一輌をフラッグ車として指定し、相手のフラッグ車を先に行動不能とした側が勝者となるフラッグ戦の二種類があり、全国大会ではフラッグ戦のルールが適用されていた。
決勝戦のこの日、天候は悪く、いつ雨が降ってもおかしくない雲模様だった。
そして、試合の最中、とうとう雨は降りだした。
しかし、大会運営本部は試合の停止、または中止を伝えることなく、両チームは運営本部からの連絡がなかったので、試合を続けた。
だが、時間の経過と共に雨の勢いは激しさを増し、運営本部も試合の停止、または中止を検討しようとした時、それは起きた。
黒森峰女学園チームの戦車の一両が、氾濫した川へ落ちてしまった。
近くに居た黒森峰女学園チームは急いで、仲間の戦車が川に落ちたことを運営本部に伝え、試合の停止と救助を要請した。
そんな中、今回黒森峰女学園チームのフラッグ車の車長を務める西住みほは、一人で川に落ちた戦車の救出へ向かった。
みほがフラッグ車を出て仲間の救助に行った直後、対戦相手であるプラウダ高校の戦車の攻撃を受け、黒森峰女学園のフラッグ車は被弾、行動不能を示す、白旗が上がった。
大会運営本部が、試合の停止の放送したのは、黒森峰女学園のフラッグ車被弾から数秒経ってからの事だった。
その後、黒森峰女学園側はこの試合の無効を訴えたが、対戦相手のプラウダ高校側は、大会運営本部が試合の停止をしたのは、黒森峰のフラッグ車撃破後の事で、試合停止前に撃破したのだから、今回の試合の勝者はプラウダ高校だと主張した。
結果的にプラウダ高校側の主張が認められ、黒森峰女学園は十連覇と言う偉業を達成できず、第六十二回戦車道全国高校生大会はプラウダ高校の優勝と言うことで幕を下ろした。
試合後、黒森峰女学園側の空気はまるでお通夜みたいに重かった。
全国高校生大会の中でも偉業ともいえる十連覇まであと一勝と言うところで、その記録は無くなってしまった。
そして、その責任は運営側ではなく、当時、フラッグ車の車長を務めていたみほに集中した。
彼女はあの時のフラッグ車の車長の役職の他に、黒森峰女学園戦車チームの副隊長と言う役職についていた。
みほはこの時、今年黒森峰女学園に入学したばかりの新入生‥‥
そんな新入生がいきなり副隊長と言う幹部の地位につけたのは彼女の実家に関係していた。
みほの実家、西住家は戦車道では有名な流派の一つ、西住流で、彼女は幼少期の頃から、姉の西住まほと共に戦車道をしていた。
姉であるまほは、黒森峰女学園戦車チームの隊長であり、今回決勝戦でみほの戦車をフラッグ車に決めたのは、まほが、みほの成長の為にと思い決めたのだ。
しかし、結果的に黒森峰女学園はプラウダ高校に敗れ、準優勝と言う結果になり、これまで先輩たちが積み立ててきた功績と十連覇の夢が潰えてしまった。
そして、今回の敗戦の責任で、みほは、副隊長を解任され、半年の間、戦車道に顔を出すことを禁止された。
しかし、任命したまほには一切の責任はなく、全てみほ一人に責任を押し付けた結果となった。
役職の解任と試合への出禁‥‥
これだけでも十分に責任を果たしたはずだが、周囲はそうは思わなかった。
みほは、仲間を‥‥人の命を助けた‥‥
人として褒められることをした。
しかし、戦車道の中では母校の十連覇と言う偉業を潰し、さらに実家の流派である西住流に泥を塗った。
先輩や同級生、黒森峰女学園のOG、西住流の門下生たちがらバッシングを受け、更には母親であり、西住流家元の西住しほからは、
「貴方は西住流や黒森峰戦車道に泥を塗ったのよ!!黒森峰戦車道の培ったものを全て台無しにした!!あなたの行動でね!!恥を知りなさい!!」
と叱咤された。
すると、みほは、
「私は西住流に反することをしました。しかし、人の道から足を外してまでその道を歩もうとは思いません!!人命を軽視してなにが競技ですか!?仲間を切り捨てて何が戦車道ですか!?何が西住流ですか!?戦車道は戦争ではなくスポーツ競技の筈です!?」
と、反論した。
隣に居たまほは、驚いた。
みほは幼少期の頃は明るく闊達な子だった。
しかし、年を重ね、戦車道をしてから、みほは何だか常に自信がなさそうにオドオドし、引っ込み思案で自分の本心を言わない子になっていった。
それが自分の母親‥‥自分の門下である家元に対して声を上げて言ったのだ。
それから二人の口論は続いたが、最終的にしほが、みほを部屋から退室させて、二人の口論は終わった。
それからしばらくして、まほは、みほの異変に気づいた。
「みほ!!その怪我はどうした?!」
「ちょっと階段から落ちちゃって‥‥」
学校の廊下で会ったのは、お腹を抑えながら無理やり歩いていると言う状態のみほだった。
しかも片頬を少し赤くして鼻血を流しながら、弱々しく歩いていた。
まほに笑顔を絶やさないみほの顔は、姉であるまほから見ても、見るのが辛い…
確認のため、まほがみほの制服の上着をめくると、そこには青あざが数カ所に及んでいた。
あざは腹部から背中に集中していて、どう見ても階段で落ちた怪我ではない事は見ればわかった。
その後、まほは保健室までみほを運んで、ベッドに寝かしつけた後、事の次第を後輩から聞いた。
みほが‥‥妹が虐めにあっていると言うことを‥‥
これが陰口だの悪口だのを言われていたぐらいの事ならまほは注意するぐらいで済ませた。
しかし、事情を聞けば聞くほど、腸が煮えくりかえる事がみほの身に起こっていたことを知った。
あの負け試合からほぼ毎日休み時間になるとみほは先輩方に呼び出されては暴行を加えられていたと言う。
顔は目立つから腹を殴る、蹴る、そんな事がよく起きていたらしい。
当初は、まほに笑みを浮かべ、何事もなかったかのように振る舞っていたみほであったが、続く陰湿な虐めに等々耐えきれなくなり、対人恐怖症を患い登校拒否をする羽目になった。
母親のしほは、西住流に泥を塗った不出来な娘に対してもう関心が無いのか、みほが登校拒否をしても何も言わなかった。
学校側もいじめ問題を大きくしたくはないのか、静観する構えをとっている。
みほが登校拒否をするようになってから、数ヶ月後‥‥
父である、西住常夫が、
「しばらく離島で精神療養をしよう」
と提案してきた。
みほを休学扱いにして、離島の静かな環境で過ごし、療養させようと言うのだ。
なお、その最中‥離島での収入に関してだが、常夫は優れた整備士であり、整備士資格の他に様々な資格を有しているので、離島でもその資格を活かした仕事があるので、離島での仕事と収入は問題ないと言う。
「みほが行くのであれば、私も行きます!!」
妹の身を案じるまほもみほと共に離島へ行くと言い出した。
妹の虐めの事実にもっと早く気づいていれば、みほは精神的に参ることも、対人恐怖症になることもなかった。
そもそも、あの試合のフラッグ車を自分がやれば良かった。
十連覇がかかった決勝なのだから、隊長である自分が務めるべきだった。
そんな後悔がまほの中に渦巻いており、みほの為に何かしてやりたいと思っていた。
しかし、みほが半ば家元から見放されている現状で、まほは今となっては西住流の大事な後継者‥‥今年の全国大会で負け、来年の大会は何としてでも雪辱を果たさなければならない。
その為にチームの再編や練習メニューの作成など、この大事な時に学業、戦車道から離れて、離島へ行くなんて、家元のしほが許さないのではないかと思いきや、意外にも、しほは、まほの離島行きを許可した。
まほは、常夫とみほと離島へ行く前、みほを虐めていた者たちへの報復は忘れなかった。
そして、今日、最後のターゲットである、みほを虐めていた主犯格の先輩に制裁を加えていた。
ドスッ!
ドカッ!
ドスッ!
「なんて声を出すんですか?それでも黒森峰戦車道の一員ですか?」
「ご、ごめ‥‥ゆ、許して‥‥」
「許す?『何を』ですか?私は何か先輩方に許しをこわれる様なことをしましたか?」
ドスッ!
「へぐぅ!‥‥ご‥‥ごべん‥‥なざい‥‥」
「はて?それは何に対しての謝罪ですか?ねぇ?私は貴女に聞いているんですけど?」
ドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッ
ドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッ
みほがされたいたように、何度も先輩の腹部を蹴るまほ。
「ほら…言ってくださいよ、先ほどの謝罪は一体、誰に対してですか?」
「あ‥‥あ‥‥に‥‥にしず‥‥西住‥‥み‥‥み‥‥」
「は や く 言 え!!」
「西住みほさんに暴力を振るってしまい……ごめんなさい……本当にごめんなさい!」
「はぁ~‥‥そうですか‥‥でも、口で言うのは簡単ですよ?謝るなら、言葉ではなくちゃんと行動で示してみてください。例えばほら、額を地面につけて土下座をして謝るとか?」
「は、はい!本当に……申し訳ありませんでし‥‥」
ズシッ!!
「うぐっ‥‥」
先輩はまほに土下座して謝罪する前にぐもった声を出す。
その訳は、
「額が浮いていますよ?ほら、こうしてちゃんと地面につけなきゃ、ダメですよ」
まほは先輩の頭をまるでボールの様に踏みつけたからだ。
「た、隊長‥‥一体何を‥‥?」
そこへ、かつてのみほの同級生で、戦車道のチームメイトである逸見エリカが目を見開いて立っていた。
「『何を?』決まっているだろう?休学前に虫けらへの教育だ‥‥そうでしょう?先輩?」
まほは先輩の頭に置いた足をグリグリと動かす。
「先輩、これは貴女が階段から落ちて負った傷ですよね?」
「は、はい‥‥そうです‥‥」
まほは先輩に対して確認するかのように訊ねる。
「エリカもここには来ていない、何も見ていない‥‥そうだろう?」
次にまほは、目撃者であるエリカにここで見たことは忘れろと言う。
「は、はい‥‥」
エリカは怯えるように返答する。
「そうだ、それでいい‥‥私はしばらく、みほと共に離島で過ごす‥‥後の事は任せたぞ」
そう言って、まほはこの場から立ち去っていく。
「あ、あの!!隊長!!」
「なんだ?」
「あっ、いえ‥‥その‥‥なんでもありません。お大事になさってください」
「?」
エリカの発言にまほは、首を傾げながらも、きっと、みほの事をさしているのだと思い、
「ああ‥‥みほにもよろしく伝えておく」
そう言い残し、まほはみほと共に学校を休学し、父の常夫と共にみほの療養の為、ある島へと向かった。
島の名前は、夜美島と言う名前の島だった‥‥