ガールズ&パンツァー サイレンがなる頃に‥‥   作:ステルス兄貴

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島の駐在には、ひぐらしのなく頃に の 前原圭一を採用しました。


5話

第六十二回全国高校生戦車道大会での敗戦により、学校で虐めにあい、母親から半ば見捨てられ、重度の対人恐怖症になってしまったみほの療養の為、彼女と父である常夫と共に離島、夜美島にやってきたまほは、島民からの奇異な視線と離島と言う閉鎖した雰囲気に戸惑い、みほの治療が終わるまで、島の人たちとうまくやっていけるのか不安になるまほ。

そんなある日の夜、島中が一時停電となり、島中に謎のサイレンが響き渡る。

父である常夫はその日、急な仕事が入り、家を出ていった。

しかし、その日、常夫は家に戻ってこなかった。

翌日、まほは常夫を捜しに行くが、職場である島の役所の人間も駐在もまほの言っていることに冷たくあしらい、協力的ではなかった。

みほの担当医である島の医師、入江だけはまほの言っていることを信じてくれ、一緒に常夫を捜しに行ってくれた。

その最中、昨晩、常夫が向かったとされる森の中でまほは、入江とはぐれてしまった。

まほは、森の中で常夫と入江を捜している中、背後から得体の知れない気配を感じた。

気配の主はまほのことを後ろから追いかけてくる。

不安と恐怖から、まほは森の中にあった礼拝堂の中に逃げ込む。

そして、逃げ込んだ礼拝堂の中で、まほは倒れている常夫を発見した。

倒れていた常夫の姿を見て、まほは不安と恐怖がピークとなり、その場から逃げ出す。

礼拝堂から飛び出したまほは、我武者羅に走った。

途中、湿った草地に足を取られ、転んだが、すぐに起き上がり、まほは森の出口を目指す。

 

「待って!!西住さん!!一体どうしたんだ!?」

 

その時、まほは不意に背後から腕を掴まれ、グッと何かに引き寄せられた。

 

「い、いや!!」

 

びっくりしたまほは、あの得体の知れない気配の主かと思ったが、

 

「西住さん、落ち着いて、私ですよ!!」

 

まほの腕を掴んでいたのは、森の中ではぐれた入江だった。

まほは事態が把握できず、呆然としていたが、次第に落ち着きを取り戻す。

 

「どこに行っていたんだい?捜したんだよ」

 

それは、まほのセリフだったが、今はこうして入江と合流できたことで、まほは、

 

「先生‥‥」

 

まほは自分らしくないと思いつつ、この時は本当に怖かったのか、入江の胸に飛び込んだ。

黒森峰の戦車道チームの面々が見たらきっと、驚愕していただろう。

 

震えていたまほをひとまず、落ち着かせるため、入江は一旦、診療所までまほを連れていき、ベッドで休ませた。

どうにか落ち着いたまほが入江に事情を説明する。

すると、入江は、

 

「じゃあ、私は駐在所へ行ってくる」

 

と、言って、駐在所へと向かった。

まほの言葉よりも島の医者で大人の入江の言葉なら、あの駐在も信じてくれるだろう。

一人、診療所で残されたまほは不安に押し潰されそうだったが、すぐに入江は駐在と共に戻ってきた。

 

「で?どういうことなんだ?」

 

駐在はギロッとベッドに居るまほを一睨みしてくる。

まほはそれが辛くて黙って俯く。

 

「前原さん、西住さんもまだ混乱しているみたいですから‥‥」

 

入江が夜美島の駐在、前原圭一巡査を宥める。

しかし、前原は険しい表情のままだ。

 

「ともかく、行ってみましょう。西住さん、案内を頼めるかな?」

 

「は、はい」

 

その後、まほは入江と前原の二人をあの礼拝堂へと案内する。

前原は、当初、まほの言葉をやはり信じてはいない様子だった。

 

「西住さん、確かにこの中で、間違いないんだね?」

 

入江がまほに確認するように訊ねると、まほは黙ったまま頷く。

 

「あ、あの‥先生、ここは‥‥?」

 

そして、まほは入江にこの礼拝堂がどんな建物なのかを訊ねる。

 

「ここは、昔使われていた集会所みたいです。今は管理人もおらず、老朽化しているので、ただの廃墟みたいですけど‥‥」

 

「えっ?」

 

入江の話では、ここは使われていない様だが、先日、ここには大勢の人たちが居た。

あれは一体何だったのだろうか?

入江と前原が顔を見合わせ、頷くと二人は礼拝堂のドアを開け、中に入っていく。

まほも二人の後をついていく。

 

「地下だそうです」

 

入江が説明すると前原は警戒しながら礼拝堂の地下へと向かう。

まほは不安ながらも自らを奮い立たせるため、ブラウスの胸のあたりのボタンをギュッと握りしめる。

 

「先生、ちょっと‥‥」

 

すると、地下に降りた前原が入江に声をかける。

 

「どうですか?」

 

「ちょっと来てくれ」

 

前原に言われ、入江とまほも地下に向かう。

 

「どうかしたんですか?」

 

「どうもこうもあるか‥‥見てくれ」

 

「あ‥‥」

 

入江は地下のフロアを見て、唖然とする。

それはまほも同じだった。

地下のフロアにはさきほど、まほが見た常夫の姿はなく、ガラーンとした静寂が支配しているだけだった。

 

「そ、そんなっ‥‥!?」

 

まほはヨロヨロとフロアに歩み出てあまりのことに言葉を失った。

 

「これは一体どういうことなんだ?」

 

前原が厳しい口調でまほに問う。

振り返ると、入江もまほの顔をジッと見ていた。

まほ自身も何がどうなっているのか分からず、説明できなかった。

だが、確かに自分が最初、ここへ来た時、常夫が倒れていたのだ‥‥

しかし、今はその常夫の姿がない。

一体、常夫はどこへ行ってしまったのだろうか?

まほの不安が益々募った。

 

前原巡査と別れ、入江に送ってもらったまほは、混乱と不安の中、家に戻った。

 

「みほ‥‥」

 

まほは、みほがちゃんと留守番していたのか気掛かりで、みほの部屋に向かい声をかけるが、部屋の中から返答はない。

寝ているのだろうか?

まほがみほの部屋に入ると、みほはスースーと、静かに寝息を立てて眠っていた。

みほがちゃんと留守番をしていたことにまほはホッと胸を撫で下ろした。

しかし、父親である常夫の行方はまだ分からないまま‥‥

どこへ行ってしまったのか?

父の行方が気掛かりになっていると、台所の方からカタンっと、物音が聞こえてきた。

まほが台所に行くと、そこには冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注ぎそれを飲んでいる常夫の姿があった。

ただ、常夫の足には無数の擦り傷があり、所々出血しており、絆創膏や包帯が巻かれている。

 

「ん?よお、おかえり。どこに行ってたんだ?」

 

「それはこっちのセリフよ!!心配したんだからね!!」

 

まほは呆れる振りをしようとしたが、不安からの開放からか、自然と目から涙を流し、常夫に抱きつき、ギュッと父の身体を抱きしめた。

それから、まほは常夫の治療をする。

 

「いや、まいったよ。作業中に落っこちちゃってね」

 

常夫はまるで他人事のように淡々と自分に起きた出来事をまほに話す。

まほは包帯を巻き直すと、ジッと常夫の顔を見る。

 

「どうかしたのかい?」

 

その視線に気づいたのか、常夫が訊ねてくる。

 

「ううん‥‥もし、痛んだり、腫れるようなら、入江先生のところに行って、ちゃんと診てもらってね」

 

「いや、大丈夫だよ。心配をかけたね」

 

常夫はそう言ってスッと立ち上がり、居間を出ていった。

まほは、常夫の背中を目で追いながら、何か表現出来ない漠然とした不安感‥‥というよりも違和感を覚える。

目の前に居るのは確かに姿も声も父である西住常夫に間違いないのだが、昨日までの常夫とは何かが違うように見えたのだ。

 

「うぅ~‥‥」

 

すると、不意に静寂を破るように、ヴィットマンの唸り声が聞こえてきた。

 

「ワン!!ワン!!ワン!!」

 

まほが庭に面した窓を見ると、そこには今にも飛び掛からんとばかりの勢いで、こちらに向かってヴィットマンが吠えていた。

ヴィットマンの視線の先には常夫がいた。

まほは信じられない思いでその光景を見ていた。

昨日までヴィットマンは常夫に対してあんな態度を取っていなかった。

それが急に威嚇するかのように、ヴィットマンが常夫に唸りながら吠えていたのだから‥‥

 

その日の夜、まほは夢を見た。

 

薄暗く小さな部屋で自分はみほにしがみついていた。

みほの顔色はまるで死人の様に蒼白く、息をしていない。

そして、首筋にはザックリと刃物の傷痕が残されていた。

 

「みほ!!みほ!!お願いだ!!目を開けてくれ!!みほ!!」

 

「残念ですが、妹さんは既に‥‥」

 

まほの後ろから白衣を着た人物‥‥恐らく医者が声をかける。

 

「そんな訳ない!!みほが‥‥みほが‥‥!!」

 

まほは医者の言葉を否定するかのように声を荒げ、目からは大粒の涙を零す。

 

 

「っ!?」

 

そこで、まほは目が覚めた。

夢見が悪く、息を切らし、目には涙が伝っていた。

 

(なんなんだ?今の夢は‥‥?縁起でもない‥‥)

 

そう思った、まほはみほの事を確認せずにはいられず、掛け布団をめくると、まほは自分の部屋を後にして、みほの部屋へと向かう。

みほの部屋では、みほがまだ眠っていた。

 

(よかった‥‥みほは生きている‥‥ちゃんと生きている‥‥)

 

まほは眠っているみほに近づき、

 

「みほ‥大丈夫だ。お姉ちゃんが守ってあげるからね」

 

みほが重度の対人恐怖症になったのは自分の責任でもあるのだ。

ならば、みほの対人恐怖症が治るまで極力自分はみほのそばに居て、彼女を守るのは姉である自分の責務であると自分に言い聞かせながら、みほの髪を撫でた。

そんな中、チラッと机を見ると、みほが描いたのか、一冊のノートが開かれたままの状態で置かれており、そこには先日、あの鉄塔の近くでみほと出会っていた赤い服の少女の姿が描かれていた。

その姿はすっぽりと頭巾の様に被った赤い服が生々しい色遣いで描かれていた。

まほはそのノートを手に取り、まじまじとその絵を見る。

あの少女といた時のみほの様子はとても楽しそうで、自分がみほの笑顔を取り戻すはずだったのに、いきなりポンと出てきたどこの馬の骨とも分からない少女にその役割を横から掻っ攫われたことにまほは複雑な思いを抱く。

 

それから暫しの時間が経ち、日が昇る。

まほはヴィットマンの為の朝食を持って庭にいくと、鎖でつながれていた筈のヴィットマンがおらず、鎖だけがポツンと地面に置かれている状態だった。

 

「ヴィットマン?‥‥ヴィットマン!!」

 

呼びかけてもヴィットマンからの返答はおろか、姿も見えない。

まほは心配のあまり、大声を上げて辺りを捜し回った。

 

「ヴィットマン!!ヴィットマン!!どこに行ったの!?」

 

すると、その声を聞きつけた常夫が玄関から姿を現した。

まほは、常夫にヴィットマンの事を訊ねる。

 

「お父さん、ヴィットマンが居ないんだけど、知らない?」

 

常夫は表情を曇らせ、ぶっきらぼうな感じで、

 

「いや、知らないな」

 

まほは、常夫のその態度に疑問を感じながらもヴィットマンの行方が気になった。

 

「ヴィットマン‥‥一体何処に行ったんだろう‥‥?」

 

朝食後、まほはヴィットマンのリードを手にヴィットマンを捜しに出た。

島民の人にヴィットマンの事を訊ねても、常夫と同じく、

 

「知らない」

 

「見てないねぇ」

 

と、ぶっきらぼうな様子での返答しか返ってこなかった。

やがて、まほはまたもや、森にヴィットマンを捜しに来た。

 

「ヴィットマン!!ヴィットマン!!」

 

森の中で、ヴィットマンの名前を呼ぶが、ヴィットマンの姿は相変わらず見えないし、犬の声もしない。

 

「もう、どこに行っちゃったんだろう‥‥?」

 

しばらくの間、ヴィットマンの事を捜しまわったが、ヴィットマンの姿を見つけることが出来ず、更に天候も風が強くなってきたので、家に戻ることにした。

もしかしたら、入れ違いでヴィットマンも家に戻っているかもしれないと言う思いを抱いて‥‥しかし、家に戻ってもヴィットマンは居なかった。

 

午後になり、まほはみほの診察の為、入江の診療所へとむかった。

そして、診察後、先日同様、みほに待合室で待っているように言うと、みほは診察室を出ていく。

みほが診察室から出ていったのを確認したまほは、

 

「先生‥‥」

 

「ん?なんです?」

 

「サイレンってなんです?」

 

「えっ?サイレン?」

 

「はい‥‥この前の停電の日に鳴ったあのサイレン‥‥あのサイレンが鳴った日からおかしいんです!!お父さんも帰ってきてから、なんか変ですし、今日の朝、ヴィットマン‥‥家の飼い犬も行方不明になったし‥‥」

 

「考えすぎですよ」

 

「違います!!絶対にあのサイレンのせいです!!」

 

「西住さん、落ち着いて」

 

「サイレンって、一体何なんですか!?サイレンが鳴ったら、一体何が起きるんですか!?」

 

まほが声を荒げると、入江は大きくため息を吐き、答える。

 

「単なるこの島の迷信ですよ。迷信」

 

「でも、あの手帳に書いてありました!!」

 

「手帳?」

 

「はい!!きっと、あの日の夜、お父さんの身に何かあったんです!!でなければ、ヴィットマンがお父さんにあんな態度を取る訳がないし‥‥もしかして、ヴィットマンはお父さんに‥‥」

 

ヴィットマンが居なくなったのは、常夫がヴィットマンを殺したのではないかと推測するまほ。

 

「西住さん、落ち着いて‥‥それで、手帳って何かな?それを踏まえて、ゆっくり話して下さい」

 

入江はジッとまほの事を見て、まほは小さく頷く。

 

それから、まほはこの夜美島に来てから体験したことを入江に話した。

まほとみほが家に戻ったのは夕陽が水平線の彼方に沈んだ頃だった。

家に戻ったがやはり、ヴィットマンの姿はなかった。

常夫はまだ仕事から戻っていなかった。

みほは部屋に戻り、まほは夕食の準備をした。

夕食の準備ができても、まだ常夫は仕事から戻らず、先にみほと夕食を食べようと思ったまほは、みほの部屋に行き、彼女に夕飯が出来たことを伝える。

 

「みほ、晩御飯が出来たぞ」

 

しかし、みほからの返答はない。

 

「みほ?」

 

まほはみほの部屋に入るが、部屋にみほの姿はなかった。

 

「みほ‥‥どこに行ったんだ‥‥?」

 

まほは家中を捜すが、みほの姿は見つからない。

みほを捜す中、まほは常夫の部屋に入る。

部屋の明かりをつけると、みほの姿は無く、机の上にはなにやら書類が置かれており、そこにはでかでかと『YAMIJIMA』と書かれた書類が置かれていた。

気になったまほはその書類を手に取り、表紙をめくる。

するとそこには『集団失踪』と書かれた文字があり、下にはその事例が書かれていた。

 

 

ロアノーク島植民地集団失踪事件 (1587年~1590年)

 

1584年、時のイギリス女王エリザベス一世の寵臣、ウォルター・ローリーが率いる探検隊がロアノーク島に辿り着いた。

およそ六週間の滞在を経て、この地が植民に適しているという感触を得たローリーは、帰国後、早速植民地建設計画を練り上げ、イギリス議会の下院へ計画書を提出する。

女王はローリーに対し、サーの称号と、発見した地域を自身にちなんでヴァージニアと呼ぶ許可を与えてこれに報いた。

しかし、ローリーの報告とは裏腹に、ロアノーク島近辺は決して植民に適しているとは言えなかった。

近海は岩礁だらけで、浅瀬が多く、常に座礁の危険があったのだ。

取り敢えず一隊はロアノーク島北部に砦を建設し、グレンヴィルは進捗状況を報告する為にいったん母国へと戻る。

一方、107名の男と共に砦に残り守備を担っていた守備隊たちは、現地のインディアン(先住民)と衝突して激戦を繰り返していた。

彼らは戦いには長けていたものの、植民に関しては全くのド素人同然であった為、食料の欠乏を如何ともしがたく、すっかり植民の意欲を失っていた。

そんな中、サー・フランシス・ドレーク提督率いる探検隊が近くを通りかかり、ドレーク提督たちに救出されると、これ幸いとばかりに島に居た人たちは提督たちと一緒にイギリスへ帰国してしまい、最初の植民はみじめな結果に終わった。

二度目の植民は1587年5月8日に行われ、今度は前回の航海に 測量士兼画家として参加していたジョン・ホワイトが率いる一団150人が、再度ロアノークへ向けて出発する。

ロアノーク島に到着した一団は植民を進め、ホワイトの娘が女児を出産し、植民地にちなんでヴァージニアと名づけられるといった慶事もあった。

しかし、インディアンとの衝突が数を増すなど、状況は深刻になる一方であったことから、ホワイトは救援隊の派遣を求めるべくイギリスへ帰国する。

ところが当時のイギリスは、スペインの無敵艦隊との決戦に向け 一国を挙げて決戦の準備が進行中で遥か西の植民地などに余分な船と人員を割いている余裕などあるはずもなく、ロアノーク島への救援は先延ばしとなる。

ようやくホワイトが救援隊と共にロアノーク島に到着したのは約三年後の1590年8月17日であった。

しかし、島は不気味なくらい静かで、イギリスの音楽を演奏し、何度も呼びかけるも、全く返事が無い。

翌18日にホワイトたちはロアノーク島に上陸し、捜索を始めたが、小屋や防護柵は雑草に覆われているばかりで、娘も、孫娘も、 他の仲間も、誰一人姿を見出せない。

やがて一つの標識が見つかり、きれいな大文字ではっきりこう記されていた。

 

「 C R O A T O A N 」

 

と‥‥そして消えた人々は未だに発見されていない。

 

 

マリー・セレスト号乗組員失踪事件(1872年)

 

1872年11月5日、マリー・セレスト号という二本マストのアメリカの帆船が原料アルコール(飲酒用ではないアルコール)を積んで、アメリカのニューヨークからイタリアのジェノバに向けて出港した。

この船に乗っていたのは、ベンジャミン・ブリッグス船長と八人の乗員、そして、船長の妻、マリー(本によってはファニーと記されている)と娘のソフィアの総勢十一人であった。

そしてマリー・セレスト号がニューヨークを出港して1ヵ月後の12月5日、そのマリー・セレスト号が、ポルトガルとアゾレス諸島の間の大西洋を漂流しているのが、イギリス船、デイ・グラシア号に発見された。

マリー・スレスト号は航行している様子はなく、海上を漂っている状態だったため、何か事故が発生したのではと思い、グラシア号は、マリー・セレスト号に近づいて船を横付けにして声をかけてみたが、返事がない。

そのため、船長以下、数人の乗組員がマリー・セレスト号に乗り込んで中の様子を確認することにした。

しかし、船の中には誰も見当たらなかった。 

海賊に襲われたのか? 

それとも船内で伝染病が起き、皆その病気に感染して乗組員全員が死亡したのだろうか? 

それにしても、船内に乗員の死体がないのはおかしい。

しかし、不思議なことはそれだけではなかった。 

船内の様子を調べる内に、次々と奇怪なことが分かったのだ。

無人で漂流していたマリー・セレスト号の船長室のテーブルの上にあった食事は食べかけのままで暖かく、コーヒーは、まだカップから湯気を立てており、調理室では、火にかけたままの鍋がグツグツと煮立っていた。

また他の船員の部屋には食べかけのチキンと、シチューが残っていた。

洗面所にはついさっきまでヒゲを剃っていたような形跡があり、ある船員の部屋には血のついたナイフが置いてあった。 

そして、船長の航海日誌には、

 

「12月4日、我が妻マリー(本によってはファニー)が‥‥」

 

と走り書きが残っていた。

船に備え付けの救命ボートも全部残っており、綱をほどいた形跡もなかった。

船の倉庫には、まだたくさんの食料や飲み水が残っており、積荷のアルコールの樽も置かれたままで、盗難にあった様子はなかった。

12月4日、一体この船に何が起こったのだろうか?

マリー・セレスト号の乗組員が、どこへ消えたのかは、未だ謎のままである。

 

 

「‥‥」

 

まほは、息を呑んで書類をめくり続けた。

 

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