ガールズ&パンツァー サイレンがなる頃に‥‥ 作:ステルス兄貴
夜美島で突然の停電が起こり、三度目のサイレンが島中に鳴り響き、優しかった父、常夫は化け物みたいな様相となり、自分たちに襲い掛かってきた。
何とか、隙をついて家から脱出したまほはみほの手を引いて、港へと向かう。
その途中、ポケットから携帯を取り出し、黒森峰にいるエリカと連絡をとろうとするが、やはり圏外の為か使用できない。
家から脱出する少し前、圏外の筈なのに、常夫から着信が来たのに自分が使うとやはり使えない。
まほは携帯をポケットにしまい、港を再び目指す。
商店街を通ると、そこには誰も居ない。
ある意味不気味さを感じる。
そんな中、少し先の建物から、よろよろと歩み出てくる人影があった。
目を凝らしてその人物を見てみると、それは警官の制服を着た前原であった。
「お巡りさん!!助けてください!!」
まほは駆け出し、前原に声をかける。
「助けてください!!私たち、さっきお父さんに‥‥っ!?」
まほは先程、家で常夫に殺されそうになったことを話したが、その途中で、まほは口をつぐみ、固まる。
ゆっくりと振り返った前原は常夫と同じく、顔面蒼白で目からは赤い血をたらたらと流していた。
「‥‥リョウカイ‥‥シャサツ‥‥シマス‥‥」
前原は腰のホルスターに収められていた拳銃を抜くと、その銃口をまほとみほに向けてきた。
戦車道をしていれば、当然相手チームの戦車から砲口を向けられるし、反対に相手へ砲口を向けたことはこれまで何度もあった。
しかし、今は身を守るための特殊カーボンも装甲もない。
弾が当たれば白旗ではなく、自分の身体に流れている血を出すことになり、試合や大会ではなく、人生が終了してしまう。
「いやっ!!」
まほはは、悲鳴を上げ、常夫の時の様に前原に体当たりをする。
その反動で前原は倒れ、空にむかって拳銃を発砲する。
常夫の時と同じく、前原も冗談ではなく、本気で自分たちを殺すつもりだ。
これも常夫と同じく、よろめきながら獣みたいな雄叫びをあげながら身体をピクピクと痙攣しながら拳銃を持った手を硬直させていた。
まほはみほを抱き寄せ、前原の横をすり抜け、駆け出す。
二人のスピードについていけない前原は、やみくもに拳銃を乱射する。
よろけながらも立ち上がった前原はまほたちを追いかけようとするが、近くに停めてあった自転車につまずいて倒れ、弾倉の弾が無くなるまで、発砲し続けた。
しかし、滅茶苦茶に撃った弾がまほたちに当たるわけもなく、まほとみほは、その場から上手く逃げることが出来た。
戦車の砲撃音ではなく、初めて聞いた拳銃の銃声にビクビクしながら、まほとみほは、港を目指した。
やっとの思いで港についたまほは周囲を見渡す。
当然連絡船の発着時間ではないので、連絡船の姿はない。
それどころか、漁船さえ一隻もない。
「船が無い‥‥くっ、一体何処へ逃げれば‥‥」
船がない以上、島から出ることが出来ない。
まほが港を見渡して船が無いか探していると、みほは振り返り、遠くの空を指さした。
それに気づいたまほは、みほが指さしている方向に視線を向ける。
みほの指先は、島の中央に聳え立つ山があり、その頂上にはあの鉄塔が稲光に照らされ、光っている。
「鉄塔‥‥」
まほは、半信半疑で呟く。
そして、みほをチラッと見ると、みほは力強く頷く。
その時、まほの脳裏に、「サイレンは鉄塔か?」と言う手帳のメモの文章と廃屋で出会ったあのホームレス風の男の‥‥
「サイレンを止めるんだ!!奴らに取り込まれる前に‥‥」
と言う言葉が蘇る。
まほは、意を決し、自分に言い聞かせる強い口調で言い放つ。
「みほ、行くぞ!!」
まほは、みほの手を引き、もう一度、島の中心部へと戻っていく。
(お父さんやお巡りさんの様子から、おそらく島の人間すべてが、化け物になっていると見た方がいいだろう‥‥)
(化け物がひしめく中、あの鉄塔に行けるのだろうか?)
三度目のサイレンで島民に変化‥‥
常夫や前原みたいに島に居る人間すべてが化け物になり、自分たちを殺そうと襲い掛かってくるだろう。
しかし、朝になれば、元に戻る筈‥‥
あんな化け物が居れば、ニュースにならないわけがない。
だが、日の出までまだかなりの時間がある。
それまで、みほを連れて隠れるなんて、難しい。
それならば、あのホームレス風の男が言っていたように、あのサイレンを止めることが出来れば、島の人間も元に戻るかもしれない。
その思いを抱き、まほはみほの手を引いて、鉄塔を目指した。
森へ分け入れる道にさしかかり、まほは足を速めて鉄塔を見上げる。
サイレンの音は徐々に大きくなる。
やはり、あの鉄塔からサイレンが鳴り響いている。
ところが、鉄塔に気を取られていたせいで、まほは道がカーブしているのに気づかず、足を踏み外し、斜面から転げ落ちてしまった。
レナから鉄塔の近くは、崖があるから危ないと言っていたことをすっかり失念していた。
最初に来た時は、まだ太陽が昇っている時に来たし、二度目は暗かったとは言え、足元を見ながら下りたので、落ちることはなかった。
しかし、今回は上ばかりを見て、足元への注意が疎かになっていたのだ。
斜面の下にたたきつけられたまほは、苦痛で顔を歪める。
「いった‥‥っ!?みほ!!大丈夫!?」
まほはすぐに起き上がり、みほに怪我がないか確認する。
みほは頷く。
見たところ、みほに怪我はないみたいだ。
立ち上がろうとしたまほは、右足に激痛を感じ、その場に蹲る。
みほは心配そうにまほを見つめている。
まほは取り繕い、微笑む。
「大丈夫だ‥‥お姉ちゃんがみほを絶対に守るから‥‥」
すると、頭上から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「まほちゃん‥‥どこにいるの‥‥?」
それはレナの声だった。
「大丈夫よ‥‥何も心配いらないわ‥‥出ておいで‥‥」
まほは足を引きずるようにして、斜面から身を預けて、上の様子をこっそりと覗き見る。
声は確かにレナの声だが、常夫や前原のこともある。
レナの後姿が少し離れたところに見える。
おぼつかない足取りでフラフラと歩いていたレナは、ゆっくりと振り返った。
「っ!?」
まほは、思わず声を出しそうになるのを手で口を塞いで、こらえる。
レナの顔はやはり、常夫や前原と同じく、顔面蒼白で目からは赤い血を流していた。
「デテオイデ‥‥マホチャン‥‥」
レナの声が野太い声に変わる。
「ドコニイルノ‥‥?」
まほは斜面に身を隠し、みほを抱き寄せる。
みほは、息をひそめてレナをやり過ごそうとしたが、
「くしゅん!!」
その時、みほが不意にくしゃみをしてしまう。
「っ!?」
まずいと思ったが、既に遅く、
「ソコニイルノ?」
頭上からレナの声がする。
まほはレナの注意を逸らすため、ポケットから携帯を取り出し、アラームの時刻を一分後に設定し、遠くの茂みへと投げ捨てる。
島を出た後のエリカとの連絡手段が無くなったが、本土の連絡船ターミナルにも公衆電話ぐらいはあるので、そこからエリカと連絡すればいい。
圏外で使えない携帯なんてただのお荷物でしかない。
それにまた常夫から着信が着て、居場所がバレるのはまずい。
ならば、このピンチを乗り切るために役立ってもらおう。
レナがすぐそこまで、近づいてきた時、離れた茂みから、アラーム音が鳴る。
「アラ?ソコニイタノ‥‥?」
レナは、自分たちから離れ、携帯を投げ入れた茂みへと近づいていく。
「みほ、行くよ」
レナが携帯の方へ向かっている隙にまほはみほの手を引いて、斜面から飛び出し、森の中を進んで行く‥‥
雷鳴とサイレンが鳴り響く中、まほはやっと目的地であった鉄塔に辿り着く。
見上げると、鉄塔は、はるか上空の暗闇まで吸い込まれるかの様に高く聳え立っている。
そして、サイレンはやはり鉄塔の頂上に設置されているスピーカーから出ている様だ。
「みほ、下は絶対に見ないようにね」
まほはみほを先に鉄塔の梯子に上らせ、自らのみほの後から梯子を登っていく。
「いい、手を離しちゃダメだからね!!」
まほは後ろからみほに声をかけながら、梯子を登る。
みほとまほは一歩、一歩着実に梯子を登り、てっぺんを目指す。
上に上がれば上がるほど、風の影響が強くなり、登るスピードが遅くなる。
「くっ‥‥」
強風で吹き飛ばされそうになり、ギュッと梯子を掴み、風が弱まるのを待つ。
そして、風が弱まり、再び登ろうとしたその時、まほは凄い力で足首を引っ張られ、バランスを崩す。
下を見ると、廃墟で出会ったあのホームレス風の男がまほの足首を掴んでいた。
男は常夫、前原、レナと同じく顔面蒼白で、目からは赤い血を流している。
どうやら、あの男も廃墟から連れ出された後、奴らの仲間入りをしたみたいだ。
まほは男の手を振り切ろうとするも、男はしっかりと足首を掴んで離さない。
さらにもがくと、男の力が緩む。
その隙を見逃さず、まほは梯子を登ろうとする。
すると、男はまた手を伸ばしてくる。
まほはその手を蹴りつけて避けようとする。
それでも男はまほの蹴りを躱しながら、執拗に掴みかかってくる。
まほはタイミングを見計らって男が梯子を上がろうとして、身を乗り出した瞬間、
「このっ!!」
男の頭目掛けて真っ直ぐに蹴りを振り下ろす。
「グワーッ!!」
まほの放った蹴りは男の顔面に直撃し、バランスを崩した男は梯子から落下していく。
地面に強く叩きつけられた男を見て、まほは思わず顔をしかめる。
震える身体を奮い立たせ、まほはもう一度、頂上を目指す。
永遠に続くのではないかと思うほど、長い梯子をひたすら登って上を目指す。
ようやく、みほとまほの二人は鉄塔の頂上に到着した。
天井には足場が設けられており、手すりをしっかり握る。
「な、何よ‥‥これ‥‥」
鉄塔の頂上から周りを見たまほは、声を振り絞るかのように呟く。
島の周りの海が血の様に赤く染まっている。
これは決して、光の具合から赤く見えるとかではない。
そして、まほは鉄塔の下からこちらに登ってくる異形の者たちの存在に気づく。
「早くサイレンを止めないと‥‥」
このままではいずれ、異形に変化した島民たちが梯子を登り此処に辿りついてしまう。
まほは鉄塔の上にあるスピーカーを睨みつける。
そして、足場に転がっていた鉄パイプを拾い、
「止まれ!!このっ!!このっ!!」
鉄パイプでスピーカーを叩く。
何度も鉄パイプで叩くと、やがて、スピーカーのカバーが外れ、サイレンの音が乱れ始める。
「止まれっ!!止まれっ!!止まれっ!!止まって!!」
まほの渾身の一撃で、等々スピーカーは鉄塔から外れ、落下していき、スピーカーが地面にたたきつけられると、サイレンの音はついに止んだ‥‥
サイレンの音が止み、まほは足場にへたり込む。
大きく息を吐き、安堵していると、不意に誰かが自分に呼びかける声がした。
「西住さん!!それを壊してもサイレンは鳴り止まない!!」
びっくりして振り返ると、梯子の最上部にしがみついた入江がまほに向かって声を張り上げていた。
入江はこれまであってきた島民と異なり、普通の人間だった。
しかし、まほはもう、島民の誰も信じることが出来ない状態だった。
信じられるのは自分とみほだけ‥‥
まほは鉄パイプを握りしめ、身を固くし、警戒する。
「来ないで!!もう、信じない!!私はもう、貴方たちを信じない!!」
まほがそう叫ぶとさっき鳴り止んだ筈のサイレンが再び鳴り始める。
「ど、どうして‥‥スピーカーは壊したはずなのに‥‥?」
サイレンを鳴らしていたスピーカーはさっき地面に叩き落とした。
その筈なのにどこからか、サイレンは鳴っている。
「だから、言っただろう!?」
入江がまほに向かって叫ぶ。
「じゃあ‥‥じゃあ、このサイレンは一体何処から‥‥?」
スピーカーはもうない筈なのに、サイレンの音はますます激しくなり、この音を聴き続けていると、頭がどうにかなりそうだ‥‥
入江がまほに向かって何かを叫んでいるが、サイレンの轟音で聞こえない。
「サイレン‥‥か‥‥えない!!」
「えっ?なに!?」
入江の叫び声が所々に聞こえる。
「サイレンなんか‥‥っていない!!‥‥サイレンなんか、鳴っていない!!」
ようやく聞こえた入江の声。
しかし、まほには入江の言葉の意味が理解できない。
「サイレンなんか、鳴っていない」
入江はそう言うが、実際にサイレンは鳴っている。
しかし、入江は言葉を続ける。
「サイレンは君だけにしか聞こえていない!!実際にサイレンなんか鳴っていないんだ!!」
「な、何を言っているの‥‥?先生‥貴方、おかしくなったの‥‥?」
まほはみほのいる場所へ向かう。
しかし、その最中、サイレンが再び鳴り止み、辺りは静寂に包まれる。
「西住さん!!そこは危ないから早くこっちへ!!」
入江が手を差し伸べるがまほはソレを無視して、みほに話しかけようとする。
「ねぇ、みほ‥‥」
すると、さっきまで傍に居た筈のみほの姿が消えていた。
「みほ?‥‥みほ!?どこ!?どこに居るの!?みほ!!みほ!!みほ!!」
(まさか、強風に煽られて、足場から転落したんじゃあ‥‥)
最悪のケースがまほの脳裏を過ぎる。
急ぎ、鉄塔の下を見るが、みほが転落した様子はない。
「西住さん!!危ないから!!ジッとして!!」
やがて、入江が足場に到着し、まほの身柄を確保しようとする。
「みほ!!みほ!!どこに居るの!?みほ!!みほ!!」
「西住さん!!まだ、分からないのか!?」
入江の剣幕にまほは呆然としながら入江の顔を見る。
そして、入江は悲しげな顔で、まほにきっぱりと言う。
「よく聞いてくれ、西住さん‥‥君の妹、みほさんはもういないんだ!!」
「‥‥えっ?」
「みほさんは‥‥みほさんはもう、死んでいるんだ!!」
まほはその言葉がどこか遠くから言われているように聞こえた。
「死んだ‥‥?みほが‥‥?そんな‥‥そんなバカな‥‥」
その時、まほの耳にまたあのサイレンの音が鳴り響く。
「嘘‥‥嘘よ!!だって、みほはいつも私と一緒に‥‥」
狼狽えるまほに入江は手を差し伸べる。
「そこは危ないから、こっちへ‥‥」
しかし、まほは異様な気配を感じ後ずさる。
手に持っていた鉄パイプはするりと、まほの手から落ち、地面へと落下する。
背中に手すりが当たり、その外側を見ると、下にはどこまでも続く暗闇が大きな口を開けているように見える。
「ニシズミサン‥‥アブナイカラ‥‥コッチヘ‥‥」
振り返り入江を見ると、彼もまた顔面蒼白で目からは赤い血を流している異形に変身していた。
「い、いやー!!」
その姿を見て、まほはバランスを崩し足場から落下しそうになる。
とっさに手すりに掴まると、まほの脳裏にこれまで自分が封印してきた記憶が蘇る。
みほが登校拒否してから数日後、みほは自室で自殺した‥‥
常夫は仕事、しほは戦車道の会合、そして自分は学校で家を留守にし、お手伝いの菊代が買い物で家を出ている間にみほは自殺した。
みほは、刃物で首の頸動脈をバッサリと切り、出血多量で死んだ‥‥
菊代が見つけた時、みほは既に息絶えていた。
みほは、家に誰も居ない時間を見て、自殺を図ったのだ。
菊代が居たら、止められるか、すぐに救急搬送されて一命を取り留めてしまうかもしれなかったからだ。
まほが夜美島で見た海送り、そして入江が言った『お葬式』と言う単語を聞いた時、自分の脳裏にフラッシュバックした葬儀場の光景‥‥あれは、ドラマではなく、みほの葬儀だった。
そして、みほを虐めていた先輩に制裁している最中、エリカが驚いていたのは、先輩を制裁していたまほの姿に驚いているのではなく、あの時、まほは誰も居ない中、まるで、そこに人が居るかのように一人でエアーファイトをしていたのだ。
エリカが驚いていたのは一人でエアーファイトをしていたまほの姿だった。
なお、みほを虐めていた先輩たちは、みほを自殺追いやったと言うことで、まほが制裁をする前に転校していた。
エリカがまほに言った『お大事になさってください』は、みほへ送った言葉ではなく、まほ自身に向けられた言葉だった。
そして、先輩たち同様、これまでのみほの姿は彼女の死の記憶を封印していた為に出来た、まほが見ていた幻だったのだ。
夜美島に療養へ来たのは、みほ ではなく、まほ の方だった‥‥
島民たちが、まほを遠巻きから見ていたのは、そこに居もしない人間をまるで居るかのよう振舞っていたまほの姿にドン引きしていたからだ。
礼拝堂で見た常夫に関しても、あの日、徹夜で作業した常夫は、家に戻る前、あの礼拝堂を見つけ、そこで仮眠をしていただけで、まほの悲鳴を聞いて起きた後、家に戻った。
そして、入れ違いで、まほ、入江、前原が礼拝堂へやって来ただけであった。
ヴィットマンに関しては恐らく病気で死んでいたのを常夫が見つけ、まほが見つける前に、常夫が埋葬したのだろう。
みほが死に、可愛がっていた愛犬のヴィットマンまでが死んだと知るとまほの治療に何らかの悪影響あると考えたからだ。
しかし、良かれと思ったヴィットマンの密葬がかえって、まほに不信感を募らせてしまった。
「みほは‥‥死んでいる‥‥もう‥‥どこにもいない‥‥私‥‥私‥‥みほを守ってあげられなかった‥‥」
封印していた記憶を取り戻し、みほが既に死んでいる現実を思い出したまほの目には涙があふれる。
「西住さん!!思い出したかい!?」
「‥‥みほのいない‥‥世界に‥‥生きている意味なんて‥‥」
まほは掴んでいた手すりをパッと離すと、彼女の身体は暗闇の彼方へと落ちて、その姿は消えていく。
(みほ‥‥お姉ちゃんもすぐにそっちへ行くからな‥‥)
この時、まほにはもう、あのサイレンの音は聴こえなかった‥‥
そして、これから死ぬかもしれないと言うのに、まほには恐怖は一切なく、むしろ微笑んでいた。
「西住さん!!」
入江は急ぎ駆け寄るが、まほの手を掴むことは出来ず、空しく宙を切るだけだった‥‥
彼はあと一歩のところで、間に合わなかった‥‥