艦これ物(仮タイトル)   作:まうまうのマウス

2 / 3
お気に入り登録ありがとうございます。

気まぐれに更新


着任

20XX年5月26日 時刻 1155

 

「まもなく呉第3鎮守府です」

 

「やれやれ、ようやくか」

 

海軍憲兵の装甲車の後部座席で装備を確認する

物騒な格好だが襲われる可能性もあるならやむ終えない

 

もしもの場合は発砲も許可されているが急所は外すよう義務付けられている

 

「ゴブリンよりワーカーへ、まもなく到着する」

 

『了解。正面玄関で中野大尉が待機している』

 

無線でのやり取りを尻目にM4ライフルにマガジンを装填する

それと同時にキッとブレーキ音が響き車が停止する

 

「到着しました!」

 

「ご苦労、ゴブリンは駐車場に車輌を止めてから元の任務に戻れ」

 

「了解」

 

ドアを開け装甲車を降りる

 

「神崎少将ですね!中野大尉であります!」

 

「出迎えご苦労、早速だが状況を説明してくれ」

 

簡単に挨拶をすませ鎮守府に入っていく

 

「工厰やドッグ、執務室などは確認しましたがまだ艦娘の宿舎のクリアリングと修復作業が完了していません」

 

「動かせる人員は?」

 

「海軍憲兵の樋口中佐が数人憲兵を連れて執務室でお待ちしています、おそらくそれだけかと」

 

「わかった。艦娘に襲われた報告はないな?」

 

「今のところはありません」

 

「よし、まず執務室に案内してくれ」

 

 

 

 

鎮守府の修復、再建は八割ほど進んでいた

ただ艦娘の宿舎のクリアリングが終了しない限りこの鎮守府の修復と修理は完全に終わらない

 

執務室で海軍憲兵中佐、『樋口 啓』中佐と執務机の上に広げられた宿舎の見取り図を見ながら段取りを進めていく

 

「実のところ一階のクリアリングは終わっているんだ。二階から四階が艦娘の住んでいたところで一階はほぼ未使用だったらしくてな。簡単にできたが……問題は二階より上、ここに艦娘が少なくとも居る」

 

樋口との会話に敬語等は存在しない。基本神崎は憲兵とは階級関係なくこう話す。理由は「手っ取り早いから」、だそうだ

 

「証拠は?」

 

「妖精さんだ。彼女らは艦娘の存在を認知できる」

 

確かに証拠としては充分だ。しかしながらどこに居るまでかはわからないという

 

「こればかりは入ってみるしかないか……」

 

「だな」

 

と樋口はライフルを確認する

 

「とりあえず行こう。俺と樋口中佐でクリアリングしてくる。中野大尉等はここで待機、いいな?」

 

「「了解」」

 

返事を聞きながら樋口中佐と執務室を出る

 

「ここの艦娘の行方不明は確か四人だったか、その内の一隻だったらいいが…どう思う?樋口中佐」

 

「そもそも周りが工事の音とかでうるさいしこんだけ重機も動き回ってる。普通なら出てくる筈だが……もしかしたら…」

 

とそこまで言って樋口中佐はやめようと切り上げた

小さな希望でもあるなら賭ける、それが人間だ

だから生きて居てくれと願うばかりである

 

 

 

 

 

「………暗いな」

 

「ブレーカーは全部落としてあるからな」

 

宿舎の二階は暗い。通路を挟む用に両側に部屋が配置されてる為に日の明かりは入ってこない

 

「怖いのか?少将殿?」

 

「まさか、むしろ好物だ」

 

そう言いながら暗視装置をつける

 

樋口が左側の部屋を一つずつ、神崎が右側の部屋を一つずつ確認していく

 

三個目の部屋、ここで初めて生活感のある部屋が初めて視界に入ってきた

 

「………クリア。しかし」

 

床に散らばった服に下着、ぐちゃぐちゃの布団、とても清潔とは言いがたい。

 

「……?これは日記か?」

 

机の上にある日記帳らしき物を手に取る

表紙には何も書かれておらず少し痛んでいた

適当に日記を開き少し読んでから……そっと閉じ元にあった場所に戻す

 

「………」

 

あれは決して安易に読んで良いものではなかった、とだけ言っておこう

あんな事を書くような事が2年も続いたのだ、正直よく持ったと言いたい

普通なら発狂するか何かしら精神的に異常をきたしているはずだ

 

色々思うところがありながらその後もクリアリングは続いた

 

そして三階の最後の部屋を開けた時だった。

 

「少将、来てくれ」

 

「ん?」

 

反対側の部屋をクリアリングしていたはずの樋口が廊下の隅を銃口で指した

部屋から出て指した方向を見てみる

 

「艤装……か?」

 

「らしいな」

 

周りを確認しながら恐る恐る近付く

 

「駆逐艦の艤装だな……傷だらけだ、なんでこんなところに」

 

「修理も整備もしてないようだな……いつ壊れてもおかしくない」

 

そして艤装に触れたとき明らかな違和感があった

 

「まだ暖かいぞ」

 

そう、暖かったのだ

艤装が暖まるのは使った証拠だ

つまり

 

 

(ガタッ

 

 

「!!誰だ!!」

 

瞬時にライフルを構える

音がした方は三階の倉庫部屋だった

樋口中佐とハンドサインでやり取りして扉に近付き、ドアノブに手をかける

 

ギィ……と音をたてる扉をゆっくりあける

 

誰か居る

 

暗視装置を外してライトを照らす

そこに一人、震えている少女がいた

 

「……駆逐艦『夕立』、だな?」

 

その艦娘に見覚えがあった神崎はそう言った

といっても、神崎の知っている駆逐艦夕立とは容姿がかけ離れていた

ボサボサの髪にボロボロで汚れた服………恐らく改二の状態だが、その好戦的だった容姿は欠片も残されていない、ただ恐怖に怯えてる子犬のようだ

 

怯える少女に手を伸ばすとギュッと貯めていた涙を流しながら瞼を閉じた

 

しかしその手は彼女の頭にポンッと乗っただけで終わり不思議に思ったかのように夕立が神崎を見上げた

 

「助けにきた、助かったんだよ。よく頑張ったな」

 

その言葉に夕立は少し目を見開いてから……泣き付くように神崎に抱きついた

 

「俺だ、艦娘を一人発見した。ああ、駆逐艦夕立だ」

 

後ろでは樋口が執務室に無線で連絡を入れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『駆逐艦 夕立が無事だったか』

 

「ええ、負傷していますが命に別状はないかと」

 

一度執務室に夕立を抱えて戻り自分の父親である元帥に連絡を入れていた

 

『他の艦娘は見つかったか?』

 

「今入れ替わりで樋口中佐と部下二人が四階のクリアリングをしています」

 

『そうか。わかった』

 

「それで、彼女はどうしますか?」

 

どうする、とは一度横須賀に送るかどうかという意味だ

彼女以外の艦娘はすでにメンタルケアを行うのが鉄則になっている

 

『明石と間宮をそちらに送った。護衛と一緒にな。明日にはつくだろう。当分呉第3鎮守府は戦線復帰できないだろうし復帰できても数ヶ月、その間に明石にメンタルケアをしてもらう。無論明石にもこの話は通してある』

 

手際のいいというかなんというか………

 

「わかりました。ではそのように。明石と間宮の件はありがとうございます」

 

『構わん、息子の頼みだ。無茶な頼みじゃなければ断る理由もない』

 

「親父………」

 

『頑張れよ。一度経験があるとはいえ最初からだ。焦らずにな』

 

「…了解」

 

受話器を置くと同時に背中をグイグイと引かれた

 

そう、実は先ほどからずっと夕立がくっついて離れないのだ

執務室に入ってからは中野大尉や他の憲兵から隠れるようにまるで人見知りの娘のような感じで背中に引っ付き離れなかった

 

「ん?どうかしたか?」

 

「もしかして新しい提督さん………っぽい?」

 

そういえば自己紹介をしてなかったか…さっきの元帥との会話を聞いてある程度は把握したのだろう

 

 

「ああ、ここで指揮をすることになった神崎 四郎だ。階級は少将、前に提督の経験もある。よろしくな夕立」

 

「……酷いことしない?」

 

「しないさ。君を助けたんだ、酷いことする奴がそんなことすると思う?」

 

フルフルと横に首を振る夕立

うむ、物分かりがいいようでなにより

 

「夕立、この鎮守府は生まれかわる。もう君たちを酷い目に合わせた奴もここには居ない。新しく、一から始めるんだ」

 

夕立の肩に手をおき目をあわせて語りかける

決して目をそらさないように

 

「そして、その最初の艦娘として君に着いてきて欲しい。まだ嫌な思い出とかも信じきれない所もあるだろうけど着いてきて欲しい。俺は君に絶対に酷いことはしないと約束する、だから着いてきてくれるか?」

 

後に『○○の鬼神』と呼ばれる駆逐艦夕立と提督のファーストコンタクト

 

夕立はこの時の事を後にこう語る

 

『信じきれないっぽいところもあったけど…提督さんの目は何故か信用できる不思議な感覚があったの。だから着いていってるっぽい!』

 

 

 

 

 




海軍憲兵

警備員的存在。
小説によってはただのモブだったり主役だったりブラック鎮守府の提督に買収されてたりそもそも陸軍組織だったり……さまざまです

駆逐艦 夕立

ソロモンの悪夢で有名……なのだがこのソロモンの悪夢は台詞、ファンの愛称に過ぎず史実と絡めるとややこしくなるのでやめよう。なぜこの小説の最初の艦娘に選ばれたのかって?夕立は横須賀だろって?作者の趣味です本当にありがとうござ(ry
あとアトミックバズーカもって「ソロモンよ、私は帰ってきたぁぁぁ!!」の悪夢とは関係ないです。ないです。


しばらくはほのぼの(?)とお仲間追加かなぁ。戦闘はかなり後になりそうです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。