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今回は新しい子猫が。 人間に恨みがあるようで……?
猫耳族の少女、タルトは激怒した。 必ず、残酷非道な人間どもに復讐せねばならぬと決意した。
懐柔された他の猫社畜生も、彼女も社会が分からぬ。 けれども悪意には敏感であった。
「人間なんて大嫌い!」
タルトは親姉妹がいない。 人間に陵辱されて衰弱死した。 それゆえ、人間を恨んでいる。
家族がいた内は良かった。 日も当たらぬ路地裏生活だったが、母の温かな愛と姉妹の太陽の様な笑顔に包まれて幸福であった。
しかしある日、終わりを迎えた。 ヘラヘラした人間の若者がやってきて、母と姉妹を犯し尽くしたのだ。
当然、抵抗はした。 その細木と見間違う程に弱々しい腕で。 一方で力の差は歴然である。
つまり欲のままに職と食にありつける邪悪に、飲み込まれるより他なかったのだ。
「人間は勝手よ!」
犯し犯され、なお生き延びたのは、タルトだけだった。
経緯は思い出したくもない。 ただ気が付けば事切れていた家族の、死んだ目がタルトを見つめていた。
生き延びた事を責めている様だった。 或いは託した目であるか。 今となっては、いよいよ分からない。
「何もかもを奪う!」
その後は痛む身体を引き摺って、人間という恐怖から逃げるのに必死になった。
人間は更に鞭打った。 家族の弔いをする事も許さぬ様にして、また人間が来ては亡骸を弄んだ。
別の者は玩具や実験動物の様にした。 薬品や雑多な物品を猫耳や口、陰部といった口という口に捩じ込んだ。 明らかに快楽と娯楽目的である。 もはや生命への尊敬もない。
「残酷極まりない!」
タルトは、みゃあみゃあと泣いて逃げた。 力無き彼女には、それが最善だった。
それを見た人間は自分達を棚に上げるようにする。 さも滑稽だ、家族を捨てた屑だと後ろ指をさして下品な笑い声を上げた。
酒の肴や話の種に口々に伝い、とうとう一周回って路地裏に戻ってきた。
多くの人間に家族の死と自身を笑われた。 そして同じ種族にも伝わったのだと思うと、酷く辛く悲しく、耐え難かった。
そうして、幼き猫耳少女は決意したのだ。
「復讐してやる!」
讐活…………復讐活動の始まりである。
「今日も社畜生探しですよぉ!」
温泉から戻れば、いつもの虐待社会生活の再開ですよ!
甘い世界を悪に塗り替える我が社。
人材は幾らでも必要なんでね。
今日も路地裏で暇ブッ超えてる畜生を攫いますかぁ!
と、そんな時。
「ねぇ人間さん♪」
「はいぃ?」
声がしたので、振り返れば。
路地裏の闇からヌッと猫耳族が。
ボロ布に身を包み、されど綺麗な肌をした子猫。
金色のショートヘアと細長い尻尾は、汚れより主張して腹ただしい。
「私と良い事しない?」
「この奥に、良い所があるんだ」
ほぅ?
猫を被った言い方で誘ってきました。
コイツ…………私を虐待会社のスカウトと見抜きましたね。
だからワザと身体を晒し、自身を売り込んできたのです。
今まで労働を避けて来た畜生にしては、中々良い根性じゃねーですか!
「良いでしょう」
「見せてもらいますよ、貴女のテクをねぇ!」
さぞ自信があるのでしょう。
私を期待させるように、尻尾とお尻をフリフリしながら「ついて来い」とチビな背中で語ります。
その先は日も届かぬ闇の空間。
虐待好きな私好みに合わせたとは、事前調査もしていますねコォレは…………。
興奮するじゃねぇですか!
猫畜生を束ねる係長や部長クラスの社畜に匹敵するやも知れません!
面接としゃれこみましょうかねぇ!?
「おや?」
闇の中でキランと光ります。
刹那、ナイフが飛んできました。
それは低身長の猫耳の頭上を抜けて、私の額に刺さろうとしてきます。
「死ね人間ッ!」
チビが叫びました。
成る程。
力無きチビの自己PR。
目には目を。
虐待好きな私に、虐待を評価して欲しいンですね?
ですが。
「甘いンですよ」
ピースサインから、指の間を閉じ。
ナイフを白羽取りの様にしてナイフを止めます。
「なっ、獣人族でも反応が難しいのに!?」
驚く金髪チビ。
私を一般社畜として舐めてませんかね。
「くくっ、こんなモンですか?」
「まぁ、ナイフの射出装置を製作する器用さは褒めてやります」
「くっ! まだよ!」
金髪チビは弾丸の様に突っ込んできました。
手にはいつのまにかナイフ。
薄いボロ布のどこに隠してたのやら。
私の虐待眼を誤魔化すとは、キレ者として認めましょう。
「ですが、虐待スキルは私が上です」
「ッ!」
素早くナイフの持つ手をつかんで捻り上げ
、ナイフを落とさせます。
すると怯むことなく、間髪入れない金的。
それを内股気味にして防ぎます。
生憎、温泉での経験から股間への防御意識を高めてます。
ザコめ、残念でしたねぇ!
「くくっ、実技は終わりですよぉ!?」
「こ、この!」
猫首を捕まえて、軽い身体を持ち上げます。
ジタバタと空中で暴れる金髪チビ。
今までの面接で1番の威勢の良さ。
そして器用さと声の高さです。
私と比べたらザコに違いありませんが。
これは良い拾い物かも知れませんよォ!?
次は質疑応答の時間です。
虐待会社に入るハードルは他社に比べると高いですよ?
なにせ簡単な虐待で挫かれては、仕事になりませんからねッ!
「お前は何故、私に声を?」
先ずは入社希望理由ッ!
現代に蔓延る虐待社会。
意思が死んだ傀儡じゃ、虐待する価値がないので却下です。
さあ、私のお眼鏡に叶いますかねぇ!?
人間に復讐するなら偉い会社の頭を潰せば良い。
特にこの辺一帯を支配して、実権を握る人間を。
そうすれば私や獣人族の、人間への怒りや恐怖を理解してくれる。
そう考えて行動し、探した。
(いた)
ソイツは直ぐに見つかった。
働く獣人族を指さして、悪そうに笑っている。
虐待好きとして認知され、獣人族を拉致しているヤツ。
中性的で性別不明。
でも目つきや笑みが恐ろしく、間違いなく悪の人間。
その見た目や行動から、拉致された仲間は毎日酷い虐待を受けているに違いない。
それこそ、私の家族にしたように。
だから最初に殺すと決めた。
その辺の建造物の台所などからナイフを盗み、本や雑誌から得た1の知識から10を知り、それで人間を殺すキル・トラップを作った。
体術にも自信があった。
コンビニ裏で、廃棄された弁当を巡る戦いでも、大きな子相手に負けた事がないから。
そして、殺す日がやって来た。
「ねぇ人間さん♪」
「はいぃ?」
猫撫で声で、ターゲットを誘惑します。
男かは分からないけど、悪意の塊な人間なら簡単に靡く。
「私と良い事しない?」
「この奥に、良い所があるんだ」
案の定、ヤツはホイホイ承諾してついて来た。
「良いでしょう」
「見せてもらいますよ、貴女のテクをねぇ!」
え、笑みが怖い……。
でも怯むな!
絶対に復讐するんだ!
心の中で えい、えいと言い聞かせて路地裏へと誘います。
人間め、ココがお前の墓場だ!
「死ね人間ッ!」
ナイフの射出装置を反応させる。
身長差で、私の上を抜けるナイフは、直ぐに人間の頭に刺さる筈。
その高速で飛翔する刃物は、能力の高い獣人族でさえ反応するのは困難。
ならば、劣る人間なら認知する間もなく終わる。
この一撃で全て終わるんだ。
痛みを味わう間もなくね。
優しいでしょう?
人間と違うのよ。
感謝して、逝ってね。
そう心の中で笑みを浮かべたら、
「甘いンですよ」
(えっ!?)
なんと、人間は片手で、ピースサインをする様にナイフを止めてしまった!
そんな馬鹿な!?
人間に、そんな芸当が出来るなんて!?
「なっ、獣人族でも反応が難しいのに!?」
驚く私。
対して、それを嘲笑う人間。
ナイフを足元に落としながら、余裕のある声で話しかけてくる。
なんて…………なんてヤツだ!
「くくっ、こんなモンですか?」
「まぁ、ナイフの射出装置を製作する器用さは褒めてやります」
「くっ! まだよ!」
直ぐに次の手を打つ。
その顔を歪ませてやる!
隠し持っていたナイフを振りかざし、猫耳族の俊足で相手の懐に入り込む。
今度こそ反応出来ない突きで、刺し殺してやる!
「ですが、虐待スキルは私が上です」
「ッ!」
ところが、それも防がれた。
腕を軽く捻られて、ナイフを落としてしまう。
でも、ゼロ距離に違いない!
片足を垂直に蹴り上げ金的を行うも、内股になって防がれた。
そのまま猫掴みの容量で、首を掴まれて持ち上げられて無力化されてしまう。
あまりに呆気なく、一瞬だった。
「くくっ、実技は終わりですよぉ!?」
「こ、この!」
逃れようと暴れるも、弱い私じゃ人間如きに勝てない。
挫けそうになる。 涙がこみ上げてくる。
家族を惨殺され辱めを受け。
復讐してやると意気込んでこの有様。
やっぱり………人間には敵わないの?
神さまは、私を見放すの?
認めたくなくて。
必死にジタバタしていると、不敵な笑みでヤツは話しかけて来た。
「お前は何故、私に声を?」
ふざけた質問を……ッ!
「そんなの決まってる!」
「虐待好きな人間を皆殺しにする為よ!」
「お前はこの辺じゃ有名な虐待好き!」
「なら、最初に殺してやると決意したのよ!」
散々、猫耳を虐待してきた人間め!
私が皆の代わりに、正義の裁きを下してやる!
怒りが再燃する私。
だけど人間は、冷酷な現実を言ってきた。
「くくっ、それがこの体たらく」
くっ!
悔しい……!
でも泣くな!
泣いちゃダメよタルト!
泣いたら、コイツの思うつぼ。
せめての抵抗。
絶対に心だけは折れてやらないもん……!
「虐待も、痛みも与えず一撃で終わらせようとは……私好みではありませんねぇ」
「お前の好みなんて、知るかッ!」
細い腕を振り回して、引っ掻いてやろうと暴れる。
だけど、人間は丁度良い距離で爪を避ける。
このっ!
うぐっ……このぉ!
「しかし、その器用さ、行動力」
「なにより正面から虐待しようとする心意気は評価に値します」
「そこで、我が社としては貴女を私の道具として迎え入れたいと思いますが……どうでしょう?」
ふざけんな!
誰がお前の道具になるか!
「人間に虐待したくないのですか?」
「えっ!?」
急に、虐待の提案をしてきた。
コイツ……何を言ってるの?
唖然として、無抵抗になる私。
人間はそれを感じてか、私を解放して言葉を続けます。
「世の中、生ヌルい虐待や偽善の正義に満足している人間が巨万(ごまん)といます」
「我が社は、ソイツらに虐待するべく日々真の悪、虐待侵略を行なっています」
「しかし、人間も虐待返しを行い、偽善の正義で歯向かって来るのです」
「それには貴女のような虐待の原石が重宝するのですよ」
「人間に臆する事なく、戦える貴女が」
「貴女にもメリットは大きい」
「会社包みで貴女を守りつつ、して皆で人間に虐待出来る」
「ながく、ながく……皆と共に」
話を纏める様に人間はニッと笑って、手を伸ばす。
「採用したい。 我が社に来ませんか?」
なんて……ヤツだ。
思ってたヤツと違う。
殺しに来たヤツを笑顔で赦すどころか、採用したいなんて。
守りたい……だなんて。
私は頭がクラッと来るのを感じながら、何とか言葉を返す。
「裏切る、かも知れませんよ?」
「貴女の自由です」
笑顔のまま、即答された。
「寝首を掻くかも知れませんよ?」
「出来るものならねぇ!」
悪そうな笑顔。
コレはイラッときた……。
「わかった。 コレは取引よ」
「べ、別にアンタに屈したワケじゃないんだからね!」
私はソイツの手を取った。
今から私の、虐待好きのクソ上司。
「くくっ、虐待会社へようこそ!」
笑顔で、玩具を与えられた子どものように喜ぶコイツ。
手を繋いだまま、日の当たる大通りへ連れられる。
日が、暖かい。
なんだか今までの怨念がアホらしくなっちゃって。
私は耐え切れず、涙した。
でも。
久し振りに笑えた。
神さま。
拾ってくれた神さま。
「…………ありがとう」
近くで、悪そうな、でも嬉しそうな笑みが聞こえた。
結局、懐柔されるんかい! ヤダ……彼女の恨み度低過ぎ!?
最近、虐待が薄味過ぎるかも……。
今後のますますのご活躍を期待します(白目