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猫耳親子を助けに行きます。 そして、警官?と対決。 ツッコミどころ、矛盾、現代社会、法律、手順がリアルと異なるかと思いますが……ご容赦を。
「大変よ! 猫耳親子が逮捕されたって!」
「クソ上司も行方不明!」
いつものオフィス。 事務机が規則正しく並ぶ空間にて、その声は響きました。
最近仲間になったタルトが、慌てた声を上げて入室してきたのです。 皆は思わず立ち上がります。
「そんな!?」
猫耳達は、叫びます。 ついこの間にも事件があったのに、また起きるなんて。
前回は拉致の件で騒がれました。 今回もそうでしょうか。 いや、もう済んだはず。 上告もない。 なら、別の件?
獣よりの頭を人間基準に合わせて思考する獣人族。 だけど、今回の案件は重く、理解するのに時間がかかったのです。
「…………その、人間を殺害したって」
タルトは重く、言いました。
しん…………。 場が凍ります。
さつがい?
ころした?
理解するのに時間を要しました。
なんで。 嘘でしょ。 そんな馬鹿な。
虐待されても、恨みを持っても殺しまで滅多に発展しない獣人族が?
猫耳親子は、1番やらなそうなのに。
そんな言葉が頭に浮かんで、だけど言葉にできず。 衝撃が強烈で立ち眩みが起きます。
それでも。 なんとか。 なんとか、皆の気持ちを代弁するようにタルトは声を出します。
小さな声でしたが、静まりかえった部屋全体に響かせるのには十分でした。
「アイツらがいなくなったら、会社が成り立たない」
「……皆。 証人を探して……弁護しなきゃ。 なにより親子は、そんな子じゃないもの」
皆はハッとし、頷きます。 気持ちは同じです。 恩人さんは良いのかよというツッコミは置いておきます。
「そうだよ。 なんとかしなきゃ!」
「わ、私! その部署に問い合わせてみるね!」
「私は事件現場!」
ザワザワと、現在の仕事を止めて動き出す仲間たち。
「皆、気を付けて。 なにか分かったら連絡して」
タルトは真顔で強く言い放ちます。 幼いのに強い子です。
敬語が変で恩人さんも変に言うけど、内心は感謝しているからでしょう。
同時に、この件については心の隅で仲間を信じきれてない部分もありました。 自身が人間を殺そうとした事があるからです。
ですが、それでも。
人間の卑劣なやり方を知っているからこそ。
タルトは立ち向かう勇気があるのです。
「さあ、みんな仕事よ。 卑劣な人間どもは待ってくれないわ」
手をパンパンと叩いて元気付けるタルト。
今度は私たちが恩人さんを助けるんだ。
そして、人間に立ち向かうんだ。
拘留所という名の拷問部屋。 薄暗く、冷たい金属製格子が並ぶ牢屋空間。
いつもなら、警官らに静かな事が望まれる闇の間。 世間様に迷惑を掛けた犯罪者に騒がれたって不愉快極まりないからだ。
ところが、今日は真逆。 警察自らが立ち入り、私的に虐待を繰り広げて悲鳴を上げさせていたのだから。
「さっさと『殺しました』って言うんだよアクしろよ」
「やってない! 冤罪よ!」
「そうだよ! やってないもん!」
「黙れ畜生ッ!」
「イタッ!?」
「ショコラ!? お願い止めて!」
猫耳親子は、その狭い牢屋にいた。
警察の格好をした人間が、背広を纏う子猫を警棒で一方的に殴っている。
母猫は悲鳴をあげるも、助ける事が出来ない。
腕が壁から生えている鎖に繋がれているからだ。 それは子猫も同じ。
故に逃げる事も出来ない。 声で抵抗するのがやっとだ。
「痛いだぁ? 殺された人間は、もっと痛かっただろうなぁ!!」
人間はそう言って、もう1度殴り、痛みと理不尽で子猫は泣いた。 母猫に至っては、子が痛めつけられる光景に心を痛めて涙を流す。
「なんで……? なんでこんな事を……!」
「殺された人間も同じ事を思ったろうなぁ!?」
「証拠は!? 証拠はあるの!?」
「その言い回しが何よりの証拠なんだよなぁ」
理不尽よ!
それを言ったところで猫耳親子に救いは無い。 だからか、言わない。 いつも主導権を握るのは人間側だ。
目の前の人間としては、獣人族の社会進出を快く思っていない。 優秀な猫耳が来るほど役に立たない者が職を失うというサイクルが加速しているのだ。 公僕も例外ではない。
この世界では経営難で社員の生活保証が出来ない場合や、重度の職務怠慢者が弾かれている。
が、労働者からしたら お上、経営の都合なんて知らぬ者の方が多いだろう。
絶対の終身雇用で無条件に多額の保証金等で保護されるべきという利権と世界を主張したがる思考にドップリ浸かって疑わない者もいる。
その思考で生きてきた者にとって、目の前の猫耳親子、獣人族は不利益に違いない。 コイツらの所為で人間の失業率は上がる気がする。 憎むべき社会の敵、人間の敵だ。 本当は逆だというのに。
そして、それを裁くのは警察として当たり前という歪んだ正義。 それを執行することで得られる快感。 暴言や暴力は許されるんだという、腐った結論に至る。
逆に言えば、そう考えている人間は自分に後ろめたいものがあるのを自覚しているのかも知れない。 それを認める事は出来ないから、その矛盾や怒りを猫耳にぶつけているのだ。
「ぐすっ。 ひどいわ……悪くないのに」
「法廷で主張すれば良いさ。 でも自称虐待好きは、お前らを見放して出てこないだろうさ」
暗闇の中、ニタニタと笑う人間。 対して猫耳親子は悔し涙を浮かべた。
迫害を受けてきた身として、権力や集団心理には敵わないのを知っているから。
世間の目は猫耳を社会進出するキッカケを作った虐待好きに対する非難が多い。 本当の殺人犯も猫耳だと盲信して疑わない。
心理としては、証拠が有る無しに関わらず、猫耳は共通の敵という世間の認識が強くなっている中、皆で仲良くムカつくヤツを潰してスッキリしようというだけだ。
今回行われる予定の裁判は、憎き猫耳親子や虐待好きを吊るし上げて集団"虐待"するイベントに過ぎない。
それを察する母猫。 涙も増して、悲しさも増す。
恩人さんが出てこない可能性もある。
最悪、私たち親子を会社から切り離して被害の軽減に当たるかもだから。
もう駄目だ。
目を閉じかけたその時。
いつものようにして、外への扉が勢い良く開かれた。
「ドーモ、偽善に塗れた おまわりさん!」
「愛猫が世話になりましたぁ!」
扉が開かれて、後光と共にやって来た自称虐待者の恩人さん。
例え一時的なものでも。 その挑発的で優しい声に、安心する猫耳親子であった。
全く。 コソコソしているヤツらは虐待の風上にもおけませんね。
目の前の警察モドキなんて、こんなトコで虐待に走ってますし。
私を案内していた偽善者なんて、ワザとらしくカフェで示談交渉しよーぜとか抜かしました。
半端な虐待の目をしていたので、コレは出されたコーヒーに仕掛けがあると見抜きましたよ。
素早く私のと偽善者のを交換。 すると、どうでしょう。 案の定、ヤツは腹を抱えてトイレから出て来ません。 下剤が仕込まれていたようですねぇ。
虐待返し成功★
正当防衛ならぬ正当虐待として いただきましょう。
そんで、お馬鹿な事に、私と勘違いしたのか、ソイツのいるトイレに怖い人が突入して虐待を始めた様子ですが…………。
私の知るところではございません。 自己責任でお願いします。
それよりも、今を解決しなければ。
「なっ、虐待好き!? もうひとりは どうしたんだ!? 話が違う!」
分かりやすい動揺ですね。 虐待心が踊りますよぉ〜!?
「何のことでしょう?」
「とぼけるな! ここの近くまで案内していたヤツがいただろ!」
「それなら怖い人達と『OHANASI』を始めましてね。 戻ってくる保証がないので、先に来ちゃいましたよ」
「なんだと!? くそっ、アイツらナニしてやがる……!」
「それよりも良いんですか〜? おまわりさんなら、見に行った方が良いかと?」
「他の警官がやる。 俺はココの担当なんでね」
ハッと薄笑いする警官。 おそらく、私が警官を退けた後に脱走させる気だと考えたのでしょう。
いやいや。 そんな姑息な手段をするワケないでしょう。 後で捕まえに来るでしょうし。
「ああ、そうですか。 なら担当のアンタに言います。 直ちに牢の猫耳親子を釈放しやがれですよ」
「ハッ、馬鹿言うな。 コイツらは殺人を犯した危険な畜生親子だぞ?」
牢の中にいる親子を嘲笑する警官。
視線を受けた猫畜生は、キッと睨み返しました。
さすが我が社の社員です。 上司である私の前で「私たちは強い」とアピールしてるんです。
普段から強ければ こうなりませんでしたがね。 生意気なんですよ。
ですが。
目の前のコソコソ系警官が1番 生意気なんですよッ!!
なので、堂々たる犬系警官を呼びますか。
事件に真っ先に放り込まれるのが畜生です。
私は携帯を取り出して、110番します。
「もしもし、国家の犬ですかぁ? 〇〇〇〇で暴力を振るっているヤツがいましてぇ、はい。 大至急お願いしますぅ」
さっさと言って、犬どもに来てもらいます。
それを聞いていた警官、相変わらず見下した笑みで話しかけてきます。
「おいおい、暴力? 誰がそんな事を?」
「アンタですよ」
「俺じゃない。 畜生の傷は投獄された時点でついていた。 被害者からの抵抗跡だろ」
「にしては血が乾いてませんねぇ?」
「直ぐに捕まったからだ」
「警棒から血が滴ってますよ?」
「そ、それは……コイツらが抵抗したからだ!」
「抵抗? 鎖で両手が使えないのにぃ?」
「…………話にならん。 出て行け。 不法侵入で捕まりたいか?」
自身のガバガバで都合が悪くなり、追い出そうとしてくる警官。 悪いですが、虐待を完遂しなければならないので。
「通報者なんで。 いちおう形で残った方が良いでしょう」
「警官がひとり居れば十分だ」
「その警官で不十分だから、この始末なんですがねぇ〜!?」
「…………お前、マジで警察舐めんなよ」
沸点の低い警官ですね。
職権を乱用する事しか出来ないようです。
警棒を振りかざし、襲ってきましたが素早く避けます。
そのまま足を転ばせてあげました。 弱いにも程があります。
「ぐっ!?」
「その程度ですか。 虐待の仕方といい、色々とザコですね」
「ッ、テメェ! ブッ殺してやる!」
その時。
ゾロゾロと犬警官が群れて突入してきました。
早いですね。 流石は犬畜生ってトコです?
「動くな警察だ!」
「なんだコレは! 猫耳親子が!」
「手当するんだ!」
「通報者は?」
口々にワンワン吠え始めて喧しいですね。
「ああ、私です。 というか、格好的に私でしょう」
「おい犬畜生ども! コイツは かの虐待好きだ、犯人はコイツで違いないぞ!」
それ以上に喚く人間がウザいですね。
それは犬畜生にとっても同じ事。 特に嫌いな奴に同情なんてしません。
権力を悪用していると、どこでツケを払わされるか。 今でしょ。
「猫耳親子含めて全員、参考人として署まで連れて行きます」
「はぁ!? おい、人間様の言う事に従えや! 俺は警官だぞ! お前らより立場が上だろうが!」
「アナタは通報前から、この場にいたにも関わらず報告も応援要請もナシ、警棒やアナタの警官服は血が付いている。 事態は悪化したと見ます」
「血の臭いも、猫耳親子以外じゃアナタからしかしない」
「それに、ブッ殺してやると発言したのは、紛れもなくアナタですね。 犬耳の聴力を舐めないでくれませんか」
「一方で虐待好きと言っているこの方は、争った形跡がない」
「虐待好きと言っていますが、そう言うアナタは職務怠慢が目立ちますよね?」
「鑑識に直ぐに調べて貰いますが、白状した方が情状酌量の余地があるぶん、罪は軽くなりますよ?」
おやおや。 ここぞとばかりに犬歯を剥き出しにされて言われたい放題ですね。 心底嫌われていたようです。
それから、畜生の能力。 こういう時に役に立ちますねぇ。
私にもそのチカラがあれば、虐待の幅が広がったものを。 素直に羨ましいところです。
「ふ、ふざけんなよ! おい、耳が良いってんならよく聞け! お前らが人間に歯向かえばな、直ぐにお前らはクビに出来んだよ、クビだクビ!」
くくくっ。 見苦しいですね。
必死に抵抗してるようで、自身の首を自ら絞めている。
虐待に飢えた現代社会。
ちょっとした事で皆は叩きたい。 特に権力者はボコボコにしたい。
ここでいう権力者は私でありませんよ。
「クビになるのは、果たしてどちらでしょうかね」
「は?」
ここで私は携帯のボイスレコーダーを再生。 ポチッとな。
『話が違う……アイツら……他の警官が……殺人を犯した危険……お前、マジで警察舐めんなよ……テメェ! ブッ殺してやる!』
「な、なんだコレは」
「ナニってアンタの声を録音したんですよ。 より私や猫耳親子、犬耳警官の証言は信用できそうですねぇ」
「は、ははっ! 世間様は畜生を支持しねえよ、それに、それのどこが殺人を晴らす証拠になるんだバーカ!」
「勘違いしてますねぇ」
「あぁ!?」
「確かに、これは殺人容疑を晴らす証拠になりません。 ですが、偽善者気取りの世間様は権力者の横暴を叩くでしょう。 そんな虐待が大好きですから」
「う、上のモンが揉み消すだろ。 人間の沽券に関わる」
「下っ端の、それも職務怠慢かつ乱用者の為にぃ? 組織に置いておくとでも?」
言葉を詰まらせる警官。 私は言葉による虐待を続けます。
「組織は世間様の虐待する勢いのまま、責任を取らされるでしょう。 さて、ここで問題です。 組織はどう責任をとるでしょう! ヒント! よく人間もやりますよぉ!?」
「黙れ! 畜生をクビにするだけだ!」
「残念! そうはなりませんよ。 騒がられなければ、罪を畜生に押し付けられたでしょう、しかし! 今回は そうはいかない。 証言者が私と猫耳親子、優秀な犬のおまわりさん、そしてボイスレコーダーがありますから。 他の証拠としては……せめて猫耳親子をあんなにしなければ。 よよよ」
「…………な、なんだよ。 俺が、猫畜生を虐待しなければ良かったと!? したから、それくらいでクビになるって言いたいのかよ、アァ!?」
自ら言わせた瞬間、私は大きく手を叩いて拍手してやります。 煽りますよ〜?
精神的虐待ッ!
「ご名答! せいかーい! そんなアンタにはワッパのプレゼントですよ!」
私と変わるようにして、犬耳警官が手錠を警官……いや、元警官の虐待者にかけます。
喚き暴れる虐待者。 しかし、犬畜生のパワーによって押さえつけられました。
おうおう負け犬と勝ち犬の図ですかねぇ!?
「ふざけんなよ犬畜生どもがぁッ!! なんでワッパ掛けられなきゃなんねーんだ!! オカシイだろうがぁ!!」
「ナニもおかしくないんですよねぇ? だって、アンタ、自白したじゃないですか」
「はぁ!?」
理解してないので、ボイスレコーダーを再生します。 ポチリ。
『俺が、猫畜生を虐待しなければ良かったと!?』
はーい、自白しちゃったね〜❤︎
「こ、こ、こ……!」
「こ? 降参宣言ですかぁ!?」
「これは罠だ! 俺を陥れたいヤツらがいるんだ! そうだ、お前を案内したヤツがそうだろ! そうだと言え!」
「そんなの私に聞かれても困りますぅ〜。 んじゃ、後は国家の犬に任せます」
そう言うと、犬耳は私に敬礼して表のパトカーに連れて行きました。
道中も見苦しく暴れていた虐待者ですが、犬畜生には敵いません。 そのままパトカーに放り込まれていました。
我が社員に引けを取らないくらい、頼りになりますねぇ!
そんな社員の猫耳親子。
牢から解放されて、私のもとへ。 与えた背広が血と汚れで酷い有様です。
「あ、あの……助けに来てくれてありがとうございました」
「ありがとう恩人さん」
健気にも、礼を言ってきます。
我が社員なんですから、当たり前ですよ。
それと、こんなにもしたヤツには報いを受けるでしょう。
「今度はアイツが牢屋行きですね。 元警官なんで、酷い目に遭い続ける事でしょう」
「うぅ……虐待されるの?」
「勿論です! アイツは牢屋の中でwifi環境がなく、朝起きたら低速通知が来る絶望を味わっていただきます!!」
「あの……環境云々の前に、携帯没収されるんじゃ?」
「恩人さんの思う絶望って、時々微妙だよね」
ボロボロにされた癖に、みゃあみゃあ言う猫耳親子。 見た目の割に元気そうで良かったですよ。
まぁ、でも。
本当の戦いはこれからですよ。
「すいません猫耳親子と上司さん。 署までご同行願います」
「くくっ。 良いでしょう」
我が社員の殺人容疑を、晴らさねばなりませんからね。
それが無理なら……会社や畜生どもと お別れです。
でも。
抵抗しても、良いですよねぇ!?
この先、どうなってしまうのか。