汚い猫耳親子を拾ったので虐待する事にした。   作:ハヤモ

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不定期更新。

なるべくコピー文章? にならないよう気をつけて書いてるつもりですが、上手く書けてないかも知れません……。


初仕事?

「隅々まで洗いましょう」

 

「うん」

 

 

お風呂。 聞いた事はあるけれど、入ったのは初めてです。

 

お湯って、こんなにも心地良いんだ。

 

温かい雨を浴びながら、お母さんが柔らかいスポンジで身体を、猫耳の裏や細い尻尾を丁寧に洗っていきます。

 

泡に包まれて、だけど気持ち良くて。 さっぱりしていく感じは新鮮でした。

 

 

「いい、人間さんなの?」

 

「……そうだと、信じたいわ」

 

 

あの人間さん、怖そうな言い回しでした。

 

でも、こうしてお風呂に入れてくれました。

 

まだ、あの人間さんの事は分からないけど、これだけは確かな事です。

 

 

「お風呂から上がったら……ううん、きっと大丈夫」

 

「お母さん……」

 

 

お母さんは不安そうにしています。 人間さんの事を私より知っています、信用できないみたいです。

 

お母さんだけじゃない。 私もとても不安です。

 

でも、私は人間さんの事、信じてみたいな……。

 

 

「お母さん、見て! あわあわ!」

 

「……ふふっ。 初めてだものね」

 

「うん!」

 

 

私はお母さんの不安を和らげようと、話を逸らします。 すると、少しだけ笑ってくれました。

 

先のことは一旦置いておいて、今を楽しむことにします。

 

願わくば、あの人間さんがいい人間さんでありますように。

 

久しぶりに笑えた表情を、絶対に絶やしたくない。

 

 

「気持ちよかったね お母さん!」

 

「ええ。 身体も綺麗になったし、これで怒られないわ」

 

 

お風呂から上がった私とお母さんは、置いてあった服……背広? というのに着替えて元の部屋に戻ります。

 

そういえば、お風呂から上がった時に置いてあったこの背広、誰が用意したんでしょう。

あの人間さんか、あの場にいた他の方かな。

 

 

「……人間にも色んな人がいる。 少しずつ信じていけば良いのよ」

 

「うん」

 

 

私も不安そうにしているのを見て、お母さんは話してくれます。

 

お母さんは心に隠している想いも見通してくる。 だけど、それで何度も助けられました。

 

そうこうしている間に、元の部屋にやってきました。

 

あの人間さん、まだこの中にいるんでしょうか。

 

お母さんは部屋のドアノブに手を掛けました。

 

 

「何かあっても、お母さんが守るから」

 

「……うん」

 

 

見れば、手が震えています。

 

多分、部屋に入るのが怖いのだと思います。

 

私だって、少し不安です。

でも、自分から前に進まないと。 見えている道を進むしかないから。

 

お母さんは、ゆっくりとドアを開けていきます。

 

片手は、私の手と固く繋ぎ合っていました。

 

ギギ、と、立て付けの悪くなったドアが開かれました。

 

部屋に射し込む太陽の明かりが、目に眩しくて。

そして、嗅いだことも無いような、とてもいい匂いが私の鼻を擽りました。

 

 

「来ましたね。 仕事の時間ですよぉ?」

 

 

 ……今日。 生きていて良かったと思えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂から戻ってきた猫耳親子が、不思議な顔で私を見てきます。

 

何が起きているか、理解出来ないのでしょうね。

 

本当に馬鹿な歯車です。 くくっ。

 

 

「あ、あの、人間さん……これ、何ですか?」

 

 

母猫の裏に隠れる手前の方にいたチビ猫が、テーブルの上のコンビニ弁当を指さします。

 

私の卓上に置かれたコンビニのハンバーグ弁当2つ。 因みに30円引きシール付き。

 

猫耳は、これが何かすら分からないのでしょうか。

 

 

「それは歯車を動かす為の燃料ですよ。 どうです、見窄らしいでしょう!?」

 

 

私の怒声に、猫耳親子は身を竦めます。

 

この反応、きっと今まで怒鳴られたことすらない温室育ちだったのでしょうね。

 

残念ですねぇ、もうそんな生温い生活は終わりなんですよッッ!

 

 

「これから貴女とチビに食事を与えてやります。 残さず全部喰うのです」

 

「えっ?」

 

 

そうでしょう、そうでしょう。

 

今まで当たり前に好きなもんを食えて、嫌いなものを避けたんです。

与えてやる、しかも全部喰えなんて畜生扱いされちゃあ、誰だってそういう反応しますよね。

 

 

「わ、私たちに!?」

 

「当たり前でしょうが、そんなの」

 

 

何言ってやがるんです。

 

こいつらはあれですか。 自分達の食いモンは自分達で調達したかったとか?

 

甘いんですよ、考えが!

 

 

「美味い物に ありつける と思ってませんかぁ?」

 

「でも良い匂いが」

 

「はいぃ?」

 

 

良い匂いですって?

 

ははん。 私用の飯の事を言ってやがるんですね。 畜生だから嗅覚が良いのでしょう。

 

ですが残念ですね。 こいつは私のです。

 

 

「それ、なんですか?」

 

「知らないんですか? 朝専用で売られている、目玉焼きバーガーですよ」

 

 

私が取り出したのは、近所のバーガー店から購入したホカホカの朝専用バーガー。

 

12時正午を廻ると買えない限定品。

 

紙袋を開けると良い匂いが漂う。

物欲しそうにこれを見つめる猫耳親子。

 

 

「はんばぁガー?」

 

「残念ですね! 畜生には一口もやりませんよ、これは全部私のモンです!」

 

 

ハンバーガー、この至高にして究極の、富を持つ者が許される逸品は、私専用です!

 

歯車には、お似合いの物を既に用意してあるんですよ!

 

 

「歯車には、このコンビニ弁当で充分です!」

 

「この弁当、全部私達のですか!?」

 

 

何言ってんの、この母猫。

 

他に誰が食うんです。 私は2つも喰えねえですよ。

 

 

「さあ、お待ちかねの絶望タイム! 社畜は毎日添加物たっぷりなコンビニ弁当を喰らうが良いです! 社畜の皆さん、頼みますよぉ!」

 

「えっ」

 

 

私の号令に、その他大勢な社畜の1人が立ち上がります。

 

こいつら消耗品の歯車は、私の崇高な命令と社会に理解を示す、場を弁えた素晴らしい歯車。

 

猫耳の背広の用意、弁当の購入を手伝ってくれました。

 

社畜は素早く私の席の弁当を猫耳親子に渡します。

 

そして、同時に空いてる応接室へ誘導します。

 

 

「これは……ハンバーグ!?」

 

「そうです。 どうです、美味しそうでしょう」

 

 

猫耳親子め、完全に絶望しきった眼で弁当を見てやがります。

 

くくっ。 醜い肉塊丸出しのを無理矢理喰わせられるワケですからね。

 

その顔を見たかったんですよ!

 

 

「こ、これが、あのハンバーグ!?」

 

「嫌だとは言わせませんよぉ?」

 

 

チビ猫は悍ましい肉塊を見て驚きを隠せないようですね。

 

そりゃそうでしょう。 この肉塊は今まで畜生が食ってきた物とはわけが違います。

 

 

「豆腐を肉塊に混ぜた、半偽のハンバーグです!」

 

 

猫耳は どうせ100パーセントビーフステーキを喰ってたんでしょう。

 

しかし、私が来たからには もうそんな高級品は喰わせません。

 

 

「す、すごい……」

 

 

そうでしょう、すごい騙された感があるでしょう。

 

明らかなコストダウンの現実にテンションも下がりますよねぇ。

 

しかし、絶望は続きますよ。

 

 

「しかも、ただ豆腐と肉塊が混ざっただけじゃないですよ! コレも喰らうが良いです!」

 

 

「……?」

 

 

私が持ってきたのは、プラスチック容器に入ったサラダパック。

 

猫耳は野菜嫌いそうですからねぇ。 嫌でも喰って貰いますよぉ?

 

 

「美味しそう」

 

「はっ! レンジでチンしただけの、歯車による歯車な大量生産品、真心ナシな食事がお似合いです」

 

 

美味しそう、ですか。

 

正に心にも無い事を言いやがりますねぇ、嫌味な歯車です。

 

だけど、まあいいです。

 

こいつらは私の命令に逆らう事は不可能です。

 

苦しみながら弁当を喰うが良いですよッ!

 

 

「は、早く食べよう お母さん!」

 

「……ええ、そうね」

 

 

ハーハッハッハ!

 

子どもは健気に空元気。

母親は明らかに喰いたくない表情。

 

だけどこの場を凌ぐ為に、しぶしぶ蓋を開ける猫耳。

 

だけど覚悟の用意をしておくと良いです!

 

コレが毎日続くんですからね!

どうあがいても絶望!

 

私の計画通り。

 

他のおかずなんて無い、肉塊だけの食事。

 

こんなひもじく非人道的な生活、送った事ねえでしょう!

 

絶望し過ぎたのか、猫耳の目には涙を浮かべています。

 

これです!

この顔を見る為に、私は猫耳を連れて来たんです!

 

さぁ、前座は終わりました。

 

歯車が、もっと悲痛に歪み軋む姿を見せて下さい!

 

そして壊れていくが良いですよッ!!

 

そして私は悲劇の始まりを意味する命令を、会社全体に響き渡らせました!

 

 

「さぁ、2人とも! ちゃんと『いただきます』と言って完食するんですよッ!!」

 




続くか未定。
書くのって難しい……。 書ける方々が羨ましいです……。

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