穴だらけな野望。
ハンバーグ。 とても美味しかったです。
あんなに美味しいものを食べたのは初めてでした。
まるで別の世界にいるかのようです。
「でも、どうして良くしてくれるの?」
「分からない。 でも、きっと良い人間さんだと信じましょう」
お母さんは言います。
人間さんの事は私より知っています。
人間さんは、悪いばかりじゃない事も。
ふと、昔話をしてくれたボランティアの人間さんの話を思い出しました。
そうです。 良い人もいるのです。
私は思います。
私達は きっと、良い人間さんに会えたんだって。
「どうですか? 美味かったです?」
豆腐ハンバーグを喰い終わった猫耳親子に、イヤラしく尋ねます。
くくっ。 コストダウン弁当で不満足なまま仕事。
こんな苦痛、体験した事ないでしょうねぇ!
「はい! 美味かったです!」
子猫が言います。
美味しかった?
チビの癖に嫌味な事を言いやがりますね。
あのコストダウンの、イカリングかと思わせてのオニオンリングだった絶望感を感じずにはいられないでしょうに。
まあ良いです。 これから働き続ける現実に変わりはないんですからねぇ。
私からは逃げられませんよッ!
「そ、それでその。 私達は何をすれば良いのでしょうか」
母猫が尋ねます。
子猫と違い、なかなか殊勝な心掛けです。
そういうヤツは嫌いじゃないです。
ただし。 歯車という事に変わりありませんがね!
「虐待ですよ!」
「虐待!?」
くくっ。 あまりに唐突の単語に戸惑っていますねぇ。
「それも貴女ら同種に対してね!」
「嫌とは言わせません。 実行している様は私が監視しますから、誤魔化しも効きません」
「なに、簡単です。 私が手本を見せますから来るが良いです」
突然過ぎましたかねぇ。
そりゃ、イキナリ虐待しろなんて言われたら、ポカンとなるなり狼狽えますよね。
「やらずに クビになって逃げられる等と思わない事です」
「会社と私に生殺与奪権を握られている事を自覚して下さい!」
「試しに飲料物の選択の余地が無いのが証拠!」
そう言って、共用冷蔵庫から未開封のペットボトル麦茶(コンビニ限定増量版)を猫耳に そのまま渡します。
「こ、これは?」
「はい? 麦茶ですよ知らんのですか」
甘い。 甘いですね畜生の分際で!
どうせ炭酸飲料とか100パーセントオレンジとか飲めるとでも思ったのでしょう。
甘い。 甘いんですよッ!
「ジュースなんて甘い考えですッ!」
「会社で支給される飲み物は それだけですよ!」
「他のが欲しけりゃ、金を稼いで自分で買うが良いですッ!」
「それも虐待しなきゃ手に入りませんがねぇ!」
くっくっくっ。
他者を蹴落とし、その罪悪感に苦しみながら生きるが良い!
でも社会とは そうでしょう?
貧富の差が出るのは当然ですねぇ?
「では外に出発」
「そ、外に行くんですか?」
はいぃ?
猫耳が、また寝ぼけた事を言いやがります。
生憎と社内の仕事は間に合ってるんですよ。
問題なのは会社外活動。 悪を広めねば。 即ち虐待。
そして……拉致。
甚振り、拉致し、強制歯車にして労働力を確保。
して、社会全体に「あれ? 獣人族減ってね?」と思わせていきます。
次に公僕がダラダラ動き、我が社の存在が知れる。 して、社会の酷さと自分達が如何に戦力となる獣人族を放置虐待していたか知るのです。
そして他社も真似るようになり。
虐待の素晴らしさが伝播する。
即ち悪で悪が広まるのです。
まあ、その頃には我が社が台頭しているでしょう。
楽しみですねぇ!
「社内は今いる社畜で間に合ってます」
「くくっ。 外へは、ちょっとした営業活動ですよ」
「業績拡大ッ!」
私は猫耳を連れて外へ繰り出しました。
コイツら畜生は、まだまだ外に溢れてます。
虐待して楽しみ、プラス世界の糧になる……これ程素晴らしい仕事が他にあるでしょうか?
いや。 無いですね。
「さあ、駄弁るのはココまでです! さっさと虐待しに行きますよぉ!」