俺と運命の物語(仮)   作:桜井舞人

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失いしモノ→両儀式⇔相楽香耶←矛盾存在

「言語療法士の蒼崎です。」

「助手の相楽です。」

「お待ちしてました。病室はあちらです。」

 

看護婦に案内され、病室を訪ねる。

誰を訪ねるって??

知ってて聞いてるでしょ。

あの“式”だよ。

 

まぁどうしてこうなったかというとだな。

 

 

 

「ねぇキョウ。ちょっと一緒に病院行ってくれないかしら。」

「え?いいですけど何でいきなり。」

「ちょっとね……面会謝絶の子に会って欲しいのよ。

カウンセラーの助手としてね。」

 

あぁーきましたね。

両儀式とのご対面ですか。

困っちゃうなー。

 

「わかりました。行きましょう。」

「ありがとう。」

 

とまぁこんな感じだよね。

まぁきっかけなんてそんなもんさ。

さて現実に戻ろうか。

 

ノックをして病室に入る。

何をするかと思ったら、橙子さんはいきなりお茶らけてみた。

 

「はぁ~い♪元気ー?

へぇ、やつれてるかと思ったけど、肌のつやとか綺麗なのね。

話を聞いた時はね、柳の下にいる幽霊みたいのを想像しちゃってあんまり気のりはしなかったけど……

うん。私好みの可愛い子でラッキーじゃん。」

「先生、そろそろ本題に。」

 

そういうと橙子さんは咳払いをした。

 

「初めまして、言語療法士の蒼崎橙子です。こっちが相楽香耶。

貴方の失語症の回復を手伝いに来ました。よろしくね。」

 

いやいや、目に包帯してるんだから手ぇ振っても意味ないでしょ。

とかつっこんだりしない、しないんだからなっ!

 

「失語症って誰が。」

「大丈夫分かってるから。

誤診だってことも、貴方がめんどくさがりだって事も。」

 

そういう話はカウンセリングにかかる前に黒桐に話を聞いたからね。

まぁ間違いないよね。

 

「でも、貴方も良くないのよ。

事故で脳をやっちゃってるんだもの。

黙ってたら失語症だって思われて当然でしょ。

じゃぁ何で私がここにいるかって、話せば長くなるんだけど……」

 

式がナースコールを押そうとする。

それを見こうして俺を取り上げる。

 

「私達は敵じゃない。話だけでも聞いてくれ、興味深いと思うぞ。」

「危ない危ない。一分で失業するところだったわ。ありがとね、キョウ。」

「お前ら……」

「はい?」

「お前ら医者じゃないだろ。」

 

やはり感が良いな。

流石は両儀式といった所か。

 

「ええ。本業は魔法使いなの。」

「手品師に用はないよ。」

「フッフッフ、確かにそうね。貴方の胸の穴はマジシャンじゃ埋められない。

埋められるのは普通の人だけだもの。」

「胸の穴??」

「そう……気づいてるんでしょ?貴方はもう一人何だってことを。」

「!?」

 

そうして式は始めてこちらを向いた。

 

「まだ早すぎたみたいだから今日はここまで。また明日ね。バーイ。」

 

橙子さんは病室を出た。

だけど俺はコイツにまだ用がある。

 

「両儀……七夜が生きている。お前のように大切なものを失いながら生きている。

もう少しだけ待っていてくれ。

悪いようにはしない。ただいいようになるかは……」

 

俺も喋りながら出口に向かう。

 

「お前次第だ。」

 

こうして俺も病室を後にした。

 

その後も毎日毎日両儀を訪ねた。

気づくと、いつの間にかこちらとの会話を拠り所にしているようだった。

 

「成程ね……識君は、肉体の主導権がなかったんじゃなくて使わなかっただけなんだ。

ますます面白いな、貴方達は。」

「二重人格に面白いも何も……」

 

突然橙子さんはチッチッチと否定をする。

 

「貴方達はね二重人格可愛いものじゃないわ。

同時に存在して、それぞれが確固たる意志を持って。

なおかつ行動が統合されている。

うん、こんな複雑怪奇な人格は他に例がない。

………複合個別人格というべきね。」

「複合、個別人格??」

「そう、けどそれでも少し疑問が残る。

複合個別人格であるなら、識君は眠ってる必要なんてないのよ。

彼はいつも眠っていたそうだけど、ん、そこがちょっとね。」

 

会話していくうちに式は何かを思い出そうとしてるのが分かった。

確か原作では黒桐幹也の名前が思い出せないんだったっけ??

可哀想な忠犬コクトー。

 

そしてこれが最後のカウンセリングの日。

この日だけは原作と違っていた気がする。

 

「えぇ、彼が失われてしまった以上、貴方の記憶にある欠落は取り戻せない。

“リョウギ シキ”が2年前の通り魔殺人にどう係わっていたかはこれで本当に闇の中に消えてしまったわ。

フフフ、でも識君が消える理由は無かったのよね。」

「え??」

「だって、黙っていれば消えていたのは式さん貴方だった訳で……

彼はどうして自ら消える事を望んだのかしら。」

「知らない。それよりハサミは?」

「やはり駄目だそうだ。君には前科があるから刃物は厳禁だそうだ。

切りたければさっさと退院することだね。それとも私が切るかね。」

 

冗談のつもりだった。

無論、ここではいい、他人の手が―――と続く予定だった。

所がだ。

 

「そうだな、切ってくれ。

お前以外の奴が髪を触れるなんて想像もしたくない。」

「むっ、分かった近いうちに切ってやろう。」

「貴方って可憐だわ。」

 

そう言いながら俺の足をヒールで踏みつけ、手を抓る。

痛いよ、橙子さん。

 

「それじゃ、私はこれで。

明日からは別の人が来るかもしれないから。その時はよろしくね。」

「いい、いらない。お前ら以外とは喋る気がない。」

「ふ、個人的には見舞いに行くさ。楽しみにしててくれ。」

 

そう言って部屋を出た。

出ると橙子さんにすごく睨まれた。

何もしてませんよポーズをとっても許してくれないらしい。

困ったものです。

 

夜……

いつの夜だったか忘れたが、退院が近い日だったかな。

気がつくと式が目に手をあてていた。

 

「待て、思い切りがよすぎるよお前は。」

 

橙子さんを手こちらに引き寄せた。

 

「何が見えた?」

 

橙子さんには言ってないが俺もその魔眼を持っている。

ひどく醜い世界。

一瞬で色々なモノが死にゆく世界。

通常の奴なら発狂ものだ。

 

「“直死の魔眼”か。それを無くすのは勿体ないぞ式。

第一潰した所で、見えてしまうものは見えてしまうんだ。」

 

手荒く手を払いのける。

そうして、あまりにも阿呆な質問が来た。

 

「お前は人間か?」

「フフフ、私は魔術師だよ。」

「橙子か!?」

「お前に、その目を使い方を教えてやろうと思ってな。」

「香!お前も。」

「万物には全て綻びがある。完璧な物体などない。

皆壊れて作り直されたいという願望がある。

不老不死とされる吸血鬼にもな。

二年前の事故の所為でお前の眼にはその綻びが見えるようになった。

我々では視認できないような線が見えて……

かつ死に長く触れていたお前は、脳がそれを理解できてしまう。

結果死が見えてしまう事になる。

そればかりか触れることもできるはずだ。

一度は何かで試しただろ?

花か何かだと思うが、簡単に崩れたのはそういう事だ。」

 

俺がここまで言うと、橙子さんは煙草に火を付けた。

 

「そうだ、いい加減に目を覚ませ両儀式。

お前は元々私達側の人間だろ?

当たり前の幸福人並みに生きようなんて夢を見るな。」

「生きる意志なんて……私は持っていない!」

「っふ、心が空だからか。

識を失い、別人として再生したお前の違和感も分かる。

だが、それはただ、それだけの話なんだ。」

 

その言葉は冷たくて重い。

そして胸倉をつかんだ。

 

「なのにお前は生きる意志が全くないくせに死ぬのだけはごめんだという。

生きる理由が全くないくせに死ぬのだけは怖いという。

生と死のどちらも選べずに境界の上で綱渡りだ。

心が伽藍堂にもなるさ。」

「知ったよう口をよくも……!!」

「やめるんだ両儀!見えてしまうぞ。」

 

死の線と点が見えてしまったらしく頭を押さえる。

それを引き寄せ抱きしめる。

 

橙子さんの米神がピクピクしてるのが分かる。

 

「後は勝手にしろ……!!

でもさ、“識君”は本当に無駄死にだったのかい?

“リョウギ シキ”。」

 

「気を付けるんだぞ、両儀お前は今狙われやすい。

何かあったらこれを強く握るんだ。

すぐに助けるから。」

 

部屋を後にした。

つま先で尾骨を蹴られた。

すごく痛い。

何故ですか橙子さん。

 

外木の下で両儀の部屋を観察していたら、ワイヤーアクションで降りてきた。

受け身を取りきれてない。

まずい!!

あわてて抱え込む。

いわゆるお姫様だっこって奴だ。

 

「大丈夫か?」

「あ……あぁ、問題ない。」

「驚いた猫かお前は。」

「橙子か。」

「霊体が通れないように病室に結界を張ったが、それを破るために体を得るとわね。

普通連中にそんな知恵はないんだが……。これは私のミスだな。」

「ならお前が何とかしろ。」

「しょう「承知!」キョウ!!ック!全くもぉ!!

フィフ ウルズ スリサズ!」

 

ルーンによって死人の心臓は焼かれた。

が、燃焼が足りない。

 

だから……俺が……貴様を……ぶっ殺すっ!!

 

「ハァァァッ!!」

 

まず二太刀で両腕を切断した。

次に袈裟、逆袈裟。

腹等の可動部全てを切断する。

 

「しまった!式逃げろ!!」

 

中にいた怨霊が式に迫る。

詰めを誤った!

式に中に怨霊が入ったが、そこは原作通り何故か持っていたナイフで胸を刺した。

そして中の怨霊だけを殺した。

 

「俺にこの目の使い方を教えると言ったな。」

「あぁ。条件付きだがな。私の仕事を手伝ってもらう。

使い魔を無くしてしまってね、ちょうどいい手足が欲しかった所なんだ。」

「そう、それ人は殺せる。」

「俺の手伝いなら殺す仕事もある。」

「ならやる。好きに使え。どうせそれ以外に目的がないんだ。

香……お前の顔、俺そっくり……なんだな。」

 

そう言って崩れ落ちてしまった。

目的がないか……俺と同じだな。

 

 

 

 

After

 

「僕の事わかる?」

「黒桐幹也……フランスの詩人みたいだ。」

「晴れてよかった退院にはもってこいだ。」

 

幸せそうでよかった。

これ以上無粋な真似はしないと俺はまた旅に出た。

 




お久しぶりです。
伽藍の洞は一発で終わりました。
終わらせました。

どちらかというとシリアスな話になりましたね。
まぁ元々そうなんですが。

タイトルの意味は両儀と相楽の場所を変えても意味は変わらない。
どちらも矛盾存在であり、失ったものである。という意味です。

今回は色々匂わせたけどどうなんですかね??
僕はどんな副作用があるのか分からないです。

ちなみに浅上藤乃編には参加しないつもりです。
なんでって??
主人公が万能過ぎて全部解決しちゃうから。
式の義手の行がなくなってしまうじゃないですか。
とか色々です。

次の更新はまたいつになるかわかりませんが楽しみにしてて下さい。

ではみなさん、また来世。






P.S.
桜井舞人どしどし書いてって下さい。
お待ちしてます!!
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