俺と運命の物語(仮)   作:桜井舞人

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猫好きはきっとツンデレが好きになるに違いない。間違いない。

 

 

やれやれそろそろ痛覚残留か……

という事はもうすでに―――

 

「死者は4名。俯瞰している、ということだろうな。」

「おや、香耶はその類に興味を持たないと思っていたんだが??」

 

珍しく俺にコーヒーを持ってきた橙子さん。

もうすでに眼鏡をはずしている。

 

「自殺になんて興味ありませんよ。

ですが、あれは無理心中と同じたぐいでしょ?

そういうのはちょっとムカつきますね。だって死ぬつもりはないのだから。

結果的に自分から飛び込んでるのだから自己責任という気もするけどね。」

 

やれやれと肩をすくめた橙子さん。

 

「ウェットな部分が出てくるのかと思えばドライとは……

相変わらずおかしな奴め。」

「俺は死者の心を理解出来ないし、する気もないって事ですよ。」

「まぁそうだな。理解しようにもできないというのが真理だ。」

 

そう。

死者は語らない。語れない。騙る事すらできない。

一般的には。

霊能者という類の人間にしかそれをする事が出来ない。

だが、霊能者にもできない事がある。

それは、輪廻の輪に入り込んだ魂との対話だ。

たとえば俺とかな。

俺は元の世界から対話しようとも出来ない。

俺はこの世界でもう生きているからだ。

まぁこんな話をグダグダ続けてもしょうがない。

 

「それよりも俺の勘が正しいなら、また黒桐は厄介事に巻き込まれるな。」

 

ピっとTVを付けて、みるとちょうどニュースが流れた。

 

“現場となった地下のバーは、半年ほど前から空き家となっており、

被害者の少年たちが度々出入りしていたのが目撃されています。

死体は何者かによって手足を引きちぎられており、

警察では詳しい殺害方法を調べるとともに、犯人を行方を追っています。”

 

「これが?」

「そう―――厄介事さ。」

「どう厄介事なんだ??」

 

振り向くとそこに両儀式がいた。

 

「やぁ、式。早いね。」

「目が覚めてしまってな。で?どう厄介事なんだ。」

 

やれやれ。

両儀の前で説明するしかないか。

 

「一般的にどう考えても猟奇的な殺人事件にしか聞こえないよな。」

「あぁ。」

「確かにそうね。」

 

だからこそおかしいのだ。

 

「だが、だからこそありえない。

普通に考えてさっきのニュースはあり得ない事を言っていた。

手足を引きちぎる。これは人間ではあり得ない。」

「なんでだ??」

「人間の腕を引きちぎるチンパンジーの握力は200~300kgだ。

だが、ギネスに乗っている人でさえ192kgだ。

ちなみにその人の体格が、胸囲149cm、ウェスト104cm、上腕囲61cmだ。

つまり手足を引きちぎるならそれよりもっと上の記録が必要だ。

体格ももっとゴリラっぽくなる。

そんな人物が目撃されれば一発だ。

しかもこれは凶器が見つかっていなく、かつ断面を見て判断した。

そういう事なんだろう。」

「何が言いたいんだ??」

「つまり、これは俺やお前のような能力者の犯行である。

さらに、お優しい黒桐さんは嗅覚に優れており、助けてる場合がある。

という事さ。」

 

成程って……納得しちゃうんだ。

まぁいいけどね

それはともかく

 

「給料は来月送りってどういう事ですか!?」

「払いたくても金がないんだ。」

「そんなぁ……だってこの前、100万飛んで12万円の振り込みがあったでしょう。

一体何に使ったんですか!?」

「それ、飛んでないぞ。まっ、それ自体つまらないものでねぇ。」

 

と言いつつも嬉しそうな顔をする橙子さん。

 

「ヴィクトリア朝の頃のウィジャ盤なんだ。

効果はあまり期待できないが、なってから100年位経っているから、

あながち無価値という訳でもない。

どんなにつまらないものでも、そこに魔術の痕跡と長い年月」

「説明は結構ですっ!」

 

そんな不貞腐れた表情をする橙子さん可愛いな。

 

「突然の出物だったんで、勢いで買い付けてしまったんだよ。そう怒るな。

私だってこれで一文無しだぞぉ。」

「つまりあれですか。今月は冗談抜きで給料なしと。」

「あぁ、社員は各自で金銭を都合してくれ。」

 

そうさせて頂きますと黒桐さんは振り返った。

が橙子さんに呼び止められた。

 

「金、貸してくれないか、見ての通りおけらなんだ。」

「全力でお断りします。」

 

部屋を出るの確認した橙子さんはつぶやいた。

 

「全く……人間金の事となると心が狭くなっていけないね。」

「貴方のせいですよ貴方の。俺は彼を追いますから。」

「悪いな、頼むよ。」

 

はいはい、と言いながら俺は伽藍の堂を後にした。

と走って出って行ったが、もうすでに―――

 

「いないって、結構困ってたんだな。コクトーさん。

確か、知り合いの大学だよなぁ……出待ちしますか。」

 

大学の前で待っていたら、女の子や男の人にやたらと声をかけられた。

友人を待っていますのでの一点張りで断っていると。

やっと出てきた。

 

「黒桐さん!」

「あれ??香耶さん!どうしたの。」

「今月の給料立て替えて渡そうと持って追って来たんですが……

ちょっと遅かったみたいですね。」

「あぁ、うんでももらえるならもらっていいかな?」

「勿論です。こちらに入ってますので、後でご確認ください。

ここでは、まずいので。」

 

茶封筒に30万程入れといた。

彼ほどの働きなら妥当なところだろう。

 

「助かるよ。その、別件でお願いがあるのだけどいいかな?」

「何でしょう。」

「アーネンエルベは分かるよね?」

「えぇ。」

「そこに行って貰っていいかな??

本当は式に行って貰おうかと思ったんだけど。君の方が適任だし。」

「了解しました。鮮花ちゃんに謝ればいいですね。」

「その通りだよ。よく分かるね。」

「予想はつきます。」

 

面倒だ。実に。

式も連れて行こうかなー。

顔を見せといた方がいいだろう。

浅上藤乃にね……

 

 

 

「で?俺に着いて来いって?」

「あぁ、君の仕事に役に立つからな。」

「ふーん。まぁいいでけどな。」

「これ終わったら食事を一緒に取らないか?どうせ暇だろう?」

「いいけど。なぁ、髪伸ばすのやめろよ。違和感がある。」

「見分けがつかなくなるだろう。それにこれは俺の勝手だ。」

「まぁそーだけど。」

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

ちりりんと涼しい音が店内に響いた。

目的の人物は右奥の席にいた。

 

「鮮花さん。」

 

声に反応して振り向く鮮花。

 

「香耶―――式!?」

「幹也さん来れなくなったそうです。」

「すっぽかされたぞお前。」

「またそういこと「式――アンタの仕業ね……!」こうなるんだから。」

「はぁ?そりゃ言いがかりだよ。俺だって被害者なんだ。

いきなり香耶に鮮花に会いに行くからついて来いって無理やりここまで。

断る暇もなしにだ。」

 

無理やりではないぞ。

そして席を立つな鮮花。

皆がお前を見ている。

 

「あの、黒桐さん。」

「何!?あっ―――」

「その、皆さんが驚いています。」

 

式は気付いたな。

これでお役目終了。

後の事は任せて、俺は協会の仕事でもしよう。

 

「―――私の親友にもケチ付けようって言うの?」

「ごめん、俺がボーっとしてたからだよね。もう連れて帰るから。

そうそう、浅上藤乃さん。貴方が探しているの人は両方とももうすぐ合流するよ。

どちらか見つければそれで済む。」

「!!」

「では鮮花さん、御機嫌よう。行くぞ式。」

 

そう言って手を引いて店を出た。

なんか顔が赤い気がするがビックリしただけだろう。

 

「な、会えただろ。今状態ではなかったけど。」

「あぁ、アレだけど、アイツじゃない。」

「何食べようか……イタリアンにでもするかい??」

「いや―――たまには俺が作ろう。」

「―――了解しました。なんか手伝おうか??」

「皿でも並べてろ。」

 

どういう風の吹きまわしだっての。

まぁいいけどさ。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「「「このお人好し」」」

「えぇ、そろそろそんな風に馬鹿にされると思っていました。」

「啓太少年の話を聞いてそれでも保護してやるなんて、馬鹿がついてしかるべきだな。」

「仕方ないでしょ、場合が場合なんですから。」

「確かに特異なケースではありますね。

ですが、これからどうするつもりなんですか??」

「会って、話をしてみるしかないと思います。」

 

本当に……

 

「こんっ馬鹿!だからお人よしだって言うんだお前は。

あいつに話は通じないよ。完全に手遅れだ。

目的を果たすまで止まらない。いや、果たしたって止まるかどうか。」

「式、まるで浅上藤乃を知っているかのような口振りだね。」

「知ってるし!会ってる。昨日の鮮花の待ち合わせに同伴してたんだから。」

「鮮花と―――って香耶さん!?式も連れて行ったんですか!?」

「俺の勘は簡単には外れないよ。

両儀に浅上藤乃を会わせておきたかったからな、連れて行った。」

「だからって―――」

 

話がそれた。

修正、修正。

 

「彼女は事件の夜から、寮にも家にも戻ってないし、学校も休んでます。

そうですよね、橙子さん??」

 

こくりと頷くと煙草に火を付けた。

 

「私に捜索依頼が回って来るくらいなんだ。完璧な行方不明ってやつさ。

後は荒事になるから、黒桐は啓太少年とここに残る事。」

「荒事って……浅上藤乃をどうするつもりなんですか??」

「場合によっては戦闘もやむおえまい。」

「そんな!彼女は無差別な殺人を犯している訳じゃないでしょ!!

話し合いは可能だと思います!」

「それは無理ですね。」

 

ぴくっとなる黒桐さん。

 

「先程湊啓太を眠らせる時に白状させたんだが……

彼らのリーダーはね、最後の夜に浅上藤乃に刃物で襲いかかったそうだ。

その時、どうも藤乃は刺されてしまったらしい。

復讐の引き金はソレなんだ。

問題はここからでね、腹部を刃物で刺されたのは20日の夜。

式達が出会ったのはその2日後だ。

その時浅上藤乃に傷は無かった、完治していたというんだ。」

「お腹に刺し傷―――っ!!」

「だが藤乃は電話で、傷が痛むと言っただろう?

恐らく過去の凌辱の記憶が脳裏をかすめるたびに、

腹部を刺された記憶がよみがえり、藤乃は殺人を犯しているんだ。

話し合いの最中にそれが起きないと誰が言いきれる。」

 

ここで式が話に割り込んだ。

まぁ、事実違うんだからしょうがない。

 

「違うぜ橙子。アイツには本当に痛みがある。

浅上藤乃の痛みはまだ体内に残っているよ。」

「ん~?傷は無かったんじゃなかったのか??

完治しているのに痛む傷……か。

痛覚だけが残留しているとでもいうのか……」

「もしかすると無痛症って奴かも。」

「浅上藤乃がか??」

「啓太の話では浅上藤乃は何をしても動じなかったそうです。

彼女の不可思議な痛覚もあり得るんじゃ。」

「無痛症ね……だとしたら、何かしら彼女に変化を与える要因は無かったのか??

背中を強打したとか、首筋に大量の副腎皮質ホルモン打ち込むとか。」

「背中を……程度は知りませんが、背中をバットで殴られたことがあるそうです。」

「はっはーん、それか。

うっふふふ、連中のフルスイングが、浅上藤乃の無痛症一時的に直したんだな。

初めて知った痛みの感覚が、彼女の殺人衝動の一つだろう。」

「痛みが……ですか??」

「いいか感覚がないという事はね、何も得られないという事なんだよ黒桐。」

「あぁ……!」

「そうだ乱暴に言えば、体がないに等しい。生の実感さえ得るのが難しいだろう。

そんな彼女が痛みを知ったんだ。もっと痛みをっと思うだろう。」

「そんなぁ……っ!折角手に入れた痛覚が、復讐の引き金になってるなんて。」

「だが、式の話じゃ、彼女は無痛症に戻っていたんだろう??」

「そんなのはどうだっていい。俺は浅上藤乃が許せない。

アイツがまた人を殺すかと思うだけで吐き気がする。」

「近親憎悪か。やはりこの手の手合いは群れないな。」

 

さて、黒桐が動き出す。

式も動くだろう。

なら俺も自分の仕事に戻るとしよう。

 

「浅上藤乃の過去を調べてみます。」

「調べる価値はある……か。

あるいは浅上藤乃はただの被害者かもしれない。

問題はただ、どちらが先だったのかだ。」

「すこし遠出します。今日と明日は戻れないかもしれません。」

「いいだろう、いっといで。」

「式、それじゃ行って来るけど、無茶はしないようにね。」

「無茶はお前だ、全く……馬鹿は死ななきゃ治らないって本当だったんだな。」

 

黒桐は振り向きじっと式を見つめた。

それだけで意図が分かる。

 

「努力してみる。」

 

ソレが式の答えだった。

 

「さてでは橙子さん俺も別件で動きますから。」

「何!?何でお前が動く必要があるんだ!」

「従業員の給料を払う為にちょっと協会のお仕事をね。」

 

不満そうだが折れてくれたらしい。

 

「終わったらすぐ戻ってこいよ。」

「はいはい。では両儀も、気をつけろよ。

腕の1、2本ならどうにでもなるが、それ以外はどうにもならんからな。」

「たくっ、お前も黒桐もすこし過保護すぎじゃないか?」

「お前は過保護な位がちょうどいい。それが共通見解だ。

では行って来ます。」

 

 

 

こうして俺は伽藍の堂を後にした。

ってこれは行った気がしたな。

まぁいいや、今回の仕事は―――――

 

 

 

 

 

 




痛覚残留には最後まで係わりませんですた。
だってお金がないのは死活問題です。(キリッ

久々に書くと変な感じしますねやっぱり。
書いてて橙子さん成分が足りない。圧倒的な位に足りないです。
が、次回はもっと足りなくなる。
しょうがないよねー、だって協会のお仕事だし。

次回は俯瞰風景の導入まで入れればなって感じです。
ではでは、また来世。
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