青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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今回はちょっと短めです。そして今年中にこの章の前編を終わらせたい!


Eight noise 決戦前夜

 a.m. 00:00

 決戦とも言える日になった。二人には寝るように伝えたが僕はまだ起きている。眠れないのではない。彼らの事だ、何が起きるか分からないとパターンを作り出しては対処法を考えていた。弦巻家の人達より彼らのことを知っているのはこの場において僕だけだと思う。園崎さんが今回の騒動に関わっているかは分からないがおそらく名護家関係者が出てくるのは間違いない。だからこそ想定できる範囲のものは今のうちに策を練っておきたい。

一人会議室の中でタブレットを操作しているとドアをノックする音が聞こえる。どうぞと答えると黒服さんが入ってきた。

 

「失礼します名護様、お取り込み中でしょうか?」

「いえ問題ありません。何かご用でしょうか」

「はい。今回の事件念のために動員を増やすべきだろうと高城が申していたので勝手ながら作戦メンバーを召集させていただきました」

「構いませんが僕に許可を取ろうとはしなくていいですよ。今の僕はただの執事ですから」

「(ただの執事は戦場に赴かないのでは……?)畏まりました。こちらからも十数人ほど出しますが五人ほど名護家から送られてきました」

 

 家の名前を聞いた瞬間体が少し反応した。確かに今回の場所を考えるに人数が必要なのはそうだが一体誰か差し向けられたのか気になってしまう。入室許可を求められたので応えると複数の足音が部屋に入ってくる。スーツを着た男女が並ぶと黒服さんが紹介してくれる。

 

「今回の召集に応じてくださった皆様です」

「一条、伊達、橋本、切姫、春川の五名、ここに参上いたしました」

「助っ人とは貴方方でしたか。ありがとうございます」

「此度共に戦えること心より誇りに思います」

「畏まらないでください。今回は同じ立場のようなものですから。共に戦いましょう」

「坊っちゃんと共闘するのは夏ぶりか~!」

「俺達は数年振りだな」

「全力を出しますわ!」

「私たちが着たからって気抜くんじゃないわよ」

「皆さん、ご協力よろしくお願いします」

「新一様ご指示を」

「その様な立場ではないと先程……」

「いや俺達元々坊っちゃんの指示しか聞く気ねぇから」

 

 ここまで来てそうなるのかこの人たちは。とりあえず作戦内容を伝えて時間まで休んでいるように伝える。名護家メンバーは納得すると部屋を出ていった。どうやら指定の部屋に戻ったらしい。黒服さんも一緒に出ていくと部屋に一人取り残される。一息ついて先程の作業を再開した。

 

 

 

 a.m. 01:30

 とりあえず出しきれるものを出して対処法も出来たので一度タブレットを閉じた。するとまたドアをノックする音が聞こえる。この時間に誰だろうかと警戒しながらドアを開けると夜架ちゃんだった。

 

「今お時間よろしいですか?」

「いいけど法に触れそうだったらすぐに追い出すからね?」

「あぁ、そんな風に断られると少し傷ついてしまいます」

「にしては嬉しそうだけどね」

 

 複雑な気持ちになりながらも部屋に招き入れる。椅子を引いて座らせると礼を言って座る。

 

「ごめんね、ここの物まだ把握しきれてないからお茶とかは出せないんだけど」

「いえお構いなくですわ」

「それで何の用かな?この時間に尋ねてくるってことは火急を要することな気がするけど」

「それは勿論新様の世継ぎを」

「よし今すぐ追い出そう」

 

 いつもならここで慌てる夜架ちゃんだが今日は違った。何かをボソッと呟くと真剣な顔をしてこちらを見る。いつもの目と違っていたことから真面目な話だと理解した僕は冗談だと言う。

 

「この間の当主の話を覚えてますか?」

「チェックメイトフォーの話?それとも」

「はい、贈り物の話です」

 

 彼女はスーツの内ポケットから長い箱を取り出して僕に渡してくる。受け取った箱を開けるとネックレスが入っていた。瑠璃色をしたクリスタルのついたネックレス、一見綺麗に見えるが中にある逆三角形のチップが姿を見せる。

 

「これは……」

起動装置(・・・・)にございます」

「ッ!」

「これからの戦闘で何が起こるか分からない。だからこれは貴方様が持っているべきだろうと現当主様が」

「だけど…これは……」

「自我を保てるのは十分です。時間がくる前に解けば問題はない、とのことですわ」

「……分かった。ありがたく受け取らせて貰う」

 

 ネックレスを箱の中に入れて箱をしまおうとするとその腕を捕まれる。

 

「新様が──主様が望であれば、私がここで壊しますわ。出来ることならばもう、貴方様にあんな苦しみを与えたくありません」

「ありがとう。だけどこれは持っておくよ」

「どうして……」

「それが、僕の罪だから、かな」

 

 掴む手が弛んだのを感じて箱をしまうと夜架ちゃんは俯いた。その頭にそっと手を置いて撫でる。途中から頭を押し付けるように動かしてきたが拒むことなく彼女が満足するまで続けた。ようやく手から離れた時すごく満足気な顔をしていた。

 

「ごめんね、でもありがとう。これは極力使わないようにしておくよ」

「分かりましたわ。私も新様に撫でられて満足ですので」

「そ、そう」

「ですがもし……塗りつぶされてしまった時は私が殺しに参ります」

「うん、お願いするよ<夜剣>」

「畏まりましたわ」

 

 それではと言って席を立ち部屋を出ていく。彼女を見送った僕は箱を取り出しネックレスを見る。部屋の明るさのせいか普段綺麗に見える瑠璃色の宝石は深く暗い海の底を表しているようだった。

 今一度再確認した僕はネックレスを取り出して自分の首に着ける。宝石を中にしまい誰にも見られないようにする。二度と過ちを犯さない為に、自らを戒めるように────

 

 

 

 a.m.04:00

 全員がブリーフィングルームに集まる。三人ほど眠そうにしているが寝ている時間もそんなになかったので仕方ない。

 

「おはようございます皆様、体調の方はいかがですか?」

「名護家問題ないです」

「こっちもだ」

「俺もです」

「私も大丈夫です」

「では作戦の再確認です。正面入口より京君と快斗君を前に伊達さんと一条さんで突入してください。人間の敵なら一条さん達で、メモリの敵なら京君達でお願いします」

「任せとけ」

「よろしくお願いします」

「陽動を行っている最中に裏から橋本さんと夜架ちゃん、魔姫ちゃんの三人で突入してください」

「了解した」

「分かった」

「畏まりましたわ」

「京君が合図をした五秒後に僕と紗夜さんが突入します。探りながら進んで行きますので各自異変などに気付いたらすぐに報告してください。一条さん達は余裕があったら敵方を殺さず生捕りにしてください。最悪の場合は殺しても構いませんが善処の方をお願いします」

「おう」

「敵戦力は戦闘兵、メモリ使いがメインで機械兵が出てくる可能性も大いに考えられます。もし機械兵が大量に出てきた場合はこちらのメモリ使いに任せてください。他に質問事項はありますか?」

 

 全員が満場一致でないと答えるので各自最終チェックに移るよう指示をする。ゾロゾロと部屋を出ていく中紗夜さんだけが部屋に残る。ただ今の紗夜さんは昨日までの紗夜さんとは違いちゃんと前を見ているようだった。

 

「もう、大丈夫なようですね」

「はい。私はもう迷いません────あの子を助けます」

「いいんですか?貴女がこれから行く先は地獄かもしれないんですよ。簡単に命を落とすかもしれない」

「だから私はあなたにお願いしたいんです。あの子を、日菜を助けてください」

 

 紗夜さんは頭を深々と下げた。迷ってる声ではない。話している時も真剣な眼差しだった。それを見た僕はふと口角が上がってしまう。

 

「助けるのは貴女ですよ、紗夜さん」

「!」

「僕は貴女を連れていきます。勿論邪魔する人がいれば倒します。ですが最後に手を差しのべるその役は貴女です」

「ありがとうございます」

「さて、そろそろ僕達も移動しましょうか」

「ええ、行きましょう!」

 

 僕達はブリーフィングルームを出て黒服さんに移動用の乗り物の場所まで案内して貰う。

 

「そういえば突入方法ってどうするんですか?」

「そういえば説明してませんでしたね。流石に空からは行きませんよ?死にたくありませんし」

「ではどうやって行くんですか?」

「それはですね──」

 

 突入時の作戦を告げると大きな声で驚かれるが淡々と話を進める。確かに驚かない方がおかしいが逆に回りがそういう反応を取るということは相手にも同じ衝撃を与えられるということだ。安全の保証をすると信じられないと言うがその割には落ち着きを取り戻していた。

 これなら問題ないだろうと案内されたトラックに乗り込む。そこにはいつも使っているイクサリオンではなく、弦巻家から支給されたバイクがあった。ちゃんと動作することを確認して準備する。

 

 

 

 a.m.06:00

 移動が始まり車内は静まり返る。そもそもこのトラックの荷台には二人しか乗っていないのが事実だが。紗夜さんの様子を見ると少し体が強張っているように見えた。

 

「緊張してますか?」

「は、はい……」

「もう覚悟は決めたんですよね?」

「それは勿論です。今度こそ迷いはありません」

「なら大丈夫ですよ」

「いえ心配してるのはそちらではなくその……」

「ハハッ、確かにそれは緊張しますね。もし嫌なら後から追いかけてきてもいいですよ?」

「そういうわけにはいきません!」

「じゃあ僕の運転技術を信じてください。そうすれば大丈夫です」

「そうでしょうか……」

 

 苦笑いしながらも納得した紗夜さんは深呼吸をして落ち着こうとする。その横で僕は最善の方法で終わらせることだけを考えていた。

 

 

 

 a.m.06:50

 僕達を含め各班が配置についたらしい。インカムを通して確認する。

 

「名護です、皆様準備はよろしいですか?」

『こちら一条、伊達、鳴海、大道、準備完了です』

『橋本、切姫、春川、待機完了』

「了解です」

『じゃあ坊っちゃん、決起させるということで一言!』

「結構です」

『そう言わずにだな』

『やって見せろよ新一!』

『なんとでもしてください!』

「僕はマフティーじゃないんだよ?」

『アホみたい……』

『ですが久しぶりに新様に士気をとって貰いたいですわ』

「名護さんは本当にいろんな人に好かれてますね……」

「まぁそういうことにしておきましょう」

 

 一度バイクから降りて前に立つとコホンと咳払いをしてから深呼吸をする。

 

「これより、我々が向かう戦場(いくさば)はそこらのテロリストよりも強く、各国の軍人よりも猛き者のいる地獄(戦場)である。戦場において生を望むものは死に、死を望むものは生へ。つまり戦いにおいて生死とは考えても仕方ないこと。ならば我々は己が忠義を、欲を、願いを賭けて戦おうぞ!さぁさぁとくとご覧あれ!勝つのは誰が願いか!消え去るは誰が願いか!ここに正義はない!勝利を納めた者のみが正義なり!」

『しかと、胸に』

「皆のもの、ゆめゆめ忘れるな」

 

 ふー、と息を吐くとインカム越しに拍手が聞こえてくる。こういうことはもうしないと思っていたのだが久しぶりにやるとなんだか不思議な気持ちになる。そろそろ時間になることを確認してバイクにまたがる。

 

「紗夜さん、今一度確認します。覚悟は──よろしいですか?」

「ええ、参りましょう」

「それでは皆さん、行きますよ」

 

 紗夜さんが体にしがみつくのを感じながら目の前で開く扉を見つめた。さぁ、開戦だ。

 

 

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