事件翌日の十一月一日の放課後。弦巻家にて事件の報告を行っている。今回の騒動は僕が一番中心に近かった事から僕が代表してライダー組の報告書を提出しに行った。当然ながら詳細を話すことにもなった。
「以上が今回の報告となります」
「うむ、ご苦労だった。戦闘員の生捕りに怪鳥の討伐か…よくやった。しかし伊坂が逃げたというのは難儀だな」
「申し訳ございません。全ては僕の不徳の致すところです」
「問題ない。君も想定内ではあったのだろう?」
「ええ、まぁ。逃げる所を仕留める算段までは出来ていたのですが」
「映像でも見たが、流石にあんな化け物を見れば気を引かれるだろうな」
「重ねてお詫び申し上げます」
「いいと言っている。それより君が気にかけていた娘はどうした」
「はい。妹君と仲直りしたらしく今は普段の生活に戻っています。妹君も検査に異常はなく無事に戻られたそうです」
「それはよかったな」
報告書を机の上に置いた弦巻家当主はコーヒーを飲んで一息つく。君も座りたまえと言われたが丁重に断りを入れる。少し残念そうな顔をするとすぐに切り替えて話を戻す。
「一つ質問よろしいですか?」
「ああ構わないよ」
「今回の件、名護家の者を呼んだのは貴方ですよね?」
「そうだが」
「何故呼んだのでしょうか?勿論、戦力的には申し分ありませんでしたし降伏してきた人達もいるおかげで死者は少なく済みました」
「それが目的ってのもあるが何より手の内を知っているものが多いに越したことはない。だがあの件は想定外だった……すまない」
「いえ、もとより彼らもそれを想定して戦場に身を投げている筈ですから」
「そうか。他に聞きたいことはあるか?」
「こちらはございません。当主殿も何もなければ僕はこれにて失礼させていただきます」
一礼をして部屋を出る。扉を閉めて数秒後、僕は大きく息を吐いた。一度頬を両手で叩いてから屋敷の外まで歩いていく。
今回の事件──秋雨のハロウィンと呼称される事件は幕を閉じた。死者はマスカレイドに変身した園崎家の人間と怪鳥にやられた数人。それ以外は重傷者と軽傷者が合計で三十を満たないくらいらしい。しかし作戦中行方不明者、MIAが一人出てしまった。事件終了後、春川魔姫との連絡が取れなくなった。他の暗殺部隊の二人は無事というものの何故か魔姫ちゃんとの連絡だけが途絶えた。何があったかも確認は取れない。名護家にもまだ戻っていないらしくそちらからも連絡は取れていない。しばらく捜索班を出すらしいが結果はどうなるかはわからないとのことだ。少なくともスタジアムで遺体は発見されなかったことから生きているだろうと推測は立っている。無事でいて欲しいと思いながらも僕はいつも通りの生活に戻ることにした。
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私は恐る恐るライブハウスに足を運んだ。今日も練習があるから来れるのであれば来て欲しいと今井さんから連絡を受けた。勿論参加したいと考えたのだがあれだけ迷惑をかけて皆は受け入れてくれるのだろうかと考える。それでも参加したいとここまで来てしまった。やはり引き返そうかと考えるとライブハウスのドアが開かれた。
「紗夜!」
「今井さん…」
「来てくれたんだね!行こうよ」
「あの、行ってもいいんでしょうか?」
「え?」
「皆さんに迷惑をかけたのに私がいていいのかなと」
「そんなの皆に聞かないとわかんないよ。でもアタシは戻ってきて欲しいかな」
今井さんに腕を引かれてそのまま中へと足を運ぶ。スタジオの中には他の三人がいて練習の準備をしていた。
「紗夜さんだ!」
「お疲れ様…です……」
「来てくれたのね」
「皆さん……すみませんでした」
「別にいいわそんなこと」
「え?」
「戻ってきたのなら練習をしましょう。あなたが抜けていた分、早く詰めてもらうわよ」
湊さんは興味がなさそうにマイクの調整をしている。他の人たちも気にしないでと声をかけてきた。私も気持ちを切り替えて練習に励むことにした。今までよりも遥かに音が乗りやすく弾いていて気が楽なのを感じる。後から聞いた話、昨日の練習の際に名護さんが事情を説明してくれたとのことだった。事情を理解してくださった皆さんは私のことを受け入れると決めてくれたらしい。ならば私も期待に応えねばならないだろうと決意した時扉が開かれ人が入ってきた。
「皆さんお疲れ様です」
「新一お疲れ〜」
「お疲れ様……」
「新兄どこ行ってたのー?」
「ちょっと野暮用がね。あ、紗夜さんこんにちは」
「こんにちは。その、いろいろとありがとうございます」
「いえいえ、大したことはしてませんよ」
笑顔で返してくるが今回は本当にお世話になった。この人にもいつか恩返しをしなければ。
「さて、二人が揃ったみたいだから始るわよ」
「何をです?」
「勿論これについてよ」
一度互いに顔を見て何か知っているかを確認したが分からず、湊さんが指すものを見てみた。そこには私と名護さんが手を握っている写真があった。
「なっ!」
「まさかこれは」
「これは今朝京に渡されたものよ。昨日日菜を助けに行っていたのは知っているわ。しかしこれはどういう状況なの?」
「京君から何か聞いてませんか?」
「そのことについてはリサが動画に収めてるわ」
「なんで?」
今井さんは半分面白がりながらもスマホの画面を見せてくれる。そこには中庭を背景にしめに黒い線を入れた鳴海さんの姿が映っており、インタビューを受けているようだった。なんでこんなにしっかりしてるのかしら。
『この写真?ああこれね!あの戦いが終わった後に二人して強く握り合ってたぜ。もう離さないだとかなんだとか愛を語ってたな!』
『なんで私に見せたの?』
『一応新一の主人だろ?ここだけの話なんだけどよ、アイツお前のところから氷川のところに行こうとしてるみたいだぜ』
なんだこの映像はと叫びそうになりながらも落ち着こうと咳払いをする。
「というのが提供者Kさんからの情報だよ♪」
「異議しかないんだけど。まずそんな会話してないし。てかKってこのシルエット見れば一発で確定するじゃん」
「それで新一は私のところから紗夜のところに行くのかしら」
「待ってください湊さん!そもそもそんな話…」
いや、よく考えればそれはそれでアリなのではないかと考えてしまう自分がいた。名護さんは契約で湊さんの家にいる。ということは私と契約すれば私の家に住むことになる。そうすれば恩返しも出来る時間が増えるのではないだろうか。
「というよりアタシが聞きたいのはこっちかな。なんでこんなにアツく紗夜の手をを握りしめてるの?」
「僕は答えるつもりで軽く握ったんだよ。それで紗夜さん自身が出来たことなんだって伝えられたから手を離そうとしたら離してくれなかったんだよ」
「といってますけど紗夜さん本当ですか?」
「いえ、その……」
「氷川さん、まさか……」
──言えない。その時名護さんの手の大きさに驚いた上にその手で掴まれたり蹴られていたって考えたら少し興奮した自分がいたなんて口が裂けても言えない。あの時から体が少しおかしい。名護さんを見ただけで私の心が揺さぶられる。殴られている時でさえ彼の優しさを感じた。取り調べられている時もずっと私のことを見ていてくれた。もし一緒に暮らしたらその秘密がわかるかもしれない………?
「名護さん」
「急にどうかしたんですか?誤解は解けそうですか?」
「湊さんとは解約して私と契約しませんか?」
「紗夜さんっ!?」
「紗夜どういうつもり?」
「私はこの人に今回のことで恩を返さなければいけません。しかしこの人の欲しがるものを私は知りませんので一緒に暮らしているうちにわかると思いました」
「で、でも……それは……!」
「そうだよ紗夜!普段ならそんなの風気がーとかいうじゃん!」
「もしかしてまだ紗夜さんに怪物の影響が!?」
「紗夜、本気なの?」
「勿論です。どうしますか名護さん」
「どうしますかも何も、何状況を悪化させてるんですか!そもそもそんな話一切なかったでしょう!?」
どうやら私の気持ちをわかってくれていないらしい。少しくらい乱してもいいでしょうか?そうでないとこの人はわからない気がする。勿論節度は守りますが。彼の腕を引っ張ってこちらに近づける。
「ダメでしょうか?」
「そういう話ではないと」
「ダメよ紗夜、新一は私のだから」
「ですが湊さんは名護さんに負担をかけていると思います。基本的な家事はやらせているそうですし、でしたらうちに来させて少しは楽させたいです」
「だけどあなたの家には親や日菜がいるじゃない。新一は別に働かなくても」
「紗夜まさか」
「そうです。新一さんは仕事をしなくてもいい世界を作れる可能性があるのはこちらの方です。私はカラダ目当ての湊さんとは違います」
「紗夜…それじゃあ友希那がイケナイことしてるみたいだから///」
「別に私はカラダだけが目当てじゃないわ」
「では心までもう自分のものにしてしまおうというのですか!?そんなの風紀が乱れてます!」
「貴女の方がよっぽど乱れてますよ!」
「紗夜さんが闇のなんとかに……」
「あこちゃん、あっち行こう………」
「新一、あなたは私の元に戻るわよね」
「いえ、名護さんは今日から私の執事です」
「二人とも落ち着こう?ね?」
「「リサ(今井さん)は黙ってて!」」
「新一〜」
「僕にもどうしようも出来なさそうだし外行ってくるね。タイムセールもあるから」
「うん…?あっ!逃げるな元凶!」
私と湊さんが言い争っている最中に名護さんの姿は消えていた。この話はいずれ決着をつけるということで全員で名護さんの捜索が始まった。
いつか必ず、あの感覚の正体を掴んでみせる。だけどそれよりもずっと気になることがあった。彼は何故あそこまで人のためになれるのか。そしてあの時言っていた事は本当なのか、真相を確かめたい気持ちもある。そのためにもあの人を逃すわけにはいかない!
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「って、いうことがあったんだけどどうする京君?」
「いやあそこまで面白くなってるんだったら呼んでくれよ!」
「よし、モアイ像になる準備は出来たみたいだね♪」
「マジですんませんでした」
「答えは聞いてない♪」
「聞いてくれ!」
「残念だよ。快斗君はすぐに謝ってくれたのに」
「だから聞けって!」
京君の体を縄で結んでいると必死に抵抗された。いっそのこと一回モアイになればいいのに。とりあえず手足を縄で拘束した状態で座らせると急に真剣な顔つきになった。表情は真面目なのに全体を見ると少しだけ笑える。
「実はな、一昨日の戦闘の時に獅郎が来たんだ。それで一戦交えたんだけどよ…おい笑うな」
「ぎりぎり笑ってないよ。続きをどうぞ」
「……デカ鳥が出てくるまでは全力でやってたんだけどよ、出てくる寸前でアイツの様子がおかしくなったんだ。目の前まで超高速で接近してきたんだろうな。ヤベって思った途端膝から崩れ落ちたんだ」
「どういうこと?」
「俺も不思議でしょうがない。周りの奴らは何もなかったしなんでアイツだけ様子が変わったのかさっぱりだ」
「何かが体を蝕んでいるとか?」
「持病はなかったはずだ。それに、快斗の時で分かっているがアイツは他人に体をいじらせたりはしない」
「訳が分からないね。ならどうして皇の様子が一変したのか」
「さぁな。だがそれがわかれば勝ち筋につながるかもしれない」
一体何が起きているのかよくわからないが勝機につながればそれはそれでラッキーだ。しかし皇は京君が殺すと言っている。個人の問題としてはそこだが今は黙っておこう。
「それで皇は?」
「鳥ヤロウが出てきたら撤退した。当たり前っちゃあ当たり前だがな」
「それもそうだね。とりあえずそのことはまた今度考えよう」
「オーケー、じゃあこの縄解いてくれ」
「丁重に断らせてもらうね」
「ごめんて!本当ごめんて!俺もしかしたら作家の才能あるんじゃねとか思っちゃったけどマジごめんて!」
よし、今日はこのまま放置して帰ろう。たまにはこんなことしても怒られないはずだ。
しかしそれはそれとして皇の件は気になるな。ガイアメモリに関しては僕が一番情報を掴んでいない。もしかしたら京君達も掴んでいない情報かもしれないが一応得られるように軽く調べようかな。
でも今回は本当に
今年も読んでくださった皆様、今年から読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
来年はネオアスペクト編は絶対やります。てかこの章終わったら基本的にそうなる予定です。また1、2週間だけ空いてしまうことがあるかも知れませんがその時はまた報告させていただきます。来年もまた歌騎士をよろしくお願いします!(呪術も並行して書けるよう善処します)
今年も残り少ない時間ですが皆さん良き終ま、ゲフンゲフン。良いお年を!