青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

107 / 181
Fifteen noise 災厄のJOKER

 息の揃えられた足音、空を切る重い音の正体は一個の軍隊だった。この間と今日戦った機械兵、以前とは姿の異なるマスカレイドの集団、武装を付けたヘリコプター。

 向かってくる軍勢は空から陸からやってくる。相手の数は数え切れないだろう。

 

「もし、かして、あれが……?」

「多分、僕専用の討伐隊だろうね」

「新一、逃げ、ろ…この数を一人、じゃ……」

「いや、君達を無理に動かすわけにはいかない。それに狙いは僕だから」

「やめろ……!」

「死んじゃい、ますよ…!」

「二人は動けるようになったら逃げて。いいね?」

 

 イクサナックルを掌に当てて変身する。手にイクサカリバーを持ち敵陣の中に突っ込む。多勢に無勢、だが相手はそんなこと一切思っていないようだ。それもそうだろう。僕の異名は〈朱雪の執行者〉、単体では絶対勝てないと踏んだと思われる。そして戦闘しているうちにわかってきた。異質なマスカレイドの正体は体のところどころがアームズドーパントになっていることだ。装備をつけることによる戦闘力の強化、確かに本気で本気で潰しにきているのがわかる。この状況を続けるのはかなり部が悪い。一掃しようとイクサナックルを手に取るとその隙を狙って攻撃してくる奴がいた。それは見えていたから避けることが出来た。

 しかしその油断が足元を掬われる。後ろにいた機械兵に背中を撃たれる。幸いイクサシステムにより貫通は防がれたがイクサナックルとイクサカリバーは手から離れて丸腰になる。

 

「皆今だ!」

「今こそコイツに復讐を!」

「この罪人に罰を!」

 

 飛んでくる攻撃を瞬時に避け拳と体術で捌き続ける。当然そう簡単にやられるとは思いもしなかった。しかし現実はそこまで甘くなかった。必死になりすぎていた僕はフェイクの動きに騙されある一撃に吹っ飛ばされる。壁にぶつけられ変身が解除された。セーブモードでいいからともう一度変身しようとするとイクサナックルがない事に気づく。そして何よりあっても無意味という事に気づく。

 ──ベルトが壊されていたのだ。原型はなんとかあったがイクサベルトが機能できないのがわかるくらいに破壊されていた。

 奴らの方を見るとまだ七割も残っている。戦おうと立ち上がるが戦う道具がない。けど今のままだと負けることは確実だ。でも僕がここで死ねばそのまま京君と快斗君が死ぬ可能性がある。どうにか出来ないかと考えるとあるものが脳裏を過ぎる。

 

「これなら、二人を救える……」

 

 首から下げている宝石を取り出し手に乗せる。しかしこれを使えば後戻りできる確率は限りなく低い。あの時のような奇跡が起きなければ僕が死ぬ可能性だってある。それでも僕は二人を死なせたくない。

 

「京君、僕に何かあったらお嬢様達をお願い」

「新一テメェ、何するつもりだ」

「あれを破壊する。そのために僕は……禁忌を破る」

 

 ネックレスの鎖を引きちぎり、碧く光る宝石を握り、コードを呟く。

 

「我が力は人に非らず、この力は人を守りし物、この身が果てるその時まで役目は終わらず、人類を仇なす者、破壊する物全てを焼き尽くそう」

『認証完了』

 

 宝石から冷たい機械の声が聞こえる。その数秒後、僕を囲うように八本の光の柱が現れる。眩い光が僕を包み、明るさが元に戻ると一本の槍と七本のそれぞれが形の異なる板が浮いていた。その中の槍を振り下ろす。

 もう、後戻りはできない。その思いを胸に秘め、呼び出したものの情報を読み取る。

 

「簡易武装装備、機能確認、(ミウム)から(フェルミオン)までの起動完了、任務……開始」

 

 禁忌の装備を身に纏い、迫り来る軍勢に光を放つ。七つの光があたりを更に焼き尽くす。光を空に上げ、Ⅷを持って敵陣に突っ込んでいく。敵の攻撃なんて当たることはなかった。否、当たることを許さなかった。突き、薙ぎ、裂き殺す。囲まれたところで問題など何一つなかった。浮遊する武装の光が邪魔な物を焼き尽くす。

 

「まさかあれって!」

「嘘だよな?なんでアレ(・・)が動いてんだよ!」

「封印はどうなってんだよ!?」

 

 マスカレイド達は攻撃して来なくなった。話している内容から察するにこの武装についてだろう。近づいた者は容赦なく殺していく。例えそれが攻撃の意思を持っていなくても。僕の目の前に立った瞬間から、これを纏った瞬間から、もう彼らに残された時間は少なかった。

 ──やめてくれ。せめて抵抗してくれ。でないと、ただの虐殺になってしまう。

 流石に気まずかった。今までも多くを殺してきたが虐殺は心地悪い。やがて空の船も焼き終わった時、地上にいる軍勢もすべて始末を終えた。もはや辺りにはあれだけいたマスカレイド達のいた痕跡も機械兵やヘリの破片の一つ残っていない。

 

「終わった……のか」

「なんだよその姿」

「これが、僕が化け物だっていう証拠だよ」

 

 先ほどより回復したのか京君と快斗君は立ち上がって僕を見ている。振り向いた瞬間フィードバックが始まる感覚が襲ってきた。急がないと危険だと武装を解こうとすると錠前から連絡が入る。

 

『ライダー諸君、緊急事態だ。上空にミサイルを確認した。今も速度を上げてそちらに向かっている』

「ミサイル!?」

『ああ、既に上空に見えているだろう。あれが例のミサイルだ』

 

 わずかだか音が聞こえる方を見ると一個の大きなミサイルがこっちに向かってきていた。先ほどのヘリコプターよりかは小さいが空で迎撃しなければ危険だろう。

 

「わかりました。こちらでなんとかします」

『待ちたまえ、どうす』

 

 言葉を遮るように錠前を閉じてしまう。武装の再確認をしてから破壊方法を決定する。二人はきっとあそこまで行くことはできない。例え射程距離になってもあたりに被害が出ないとは限らない。

 

「新一…」

「大丈夫、ちゃんと破壊してくるよ。──結合武装(ディオス)(ベリオット)

 

 背中に飛ぶための翼を生やして上空に飛ぶ。高度五千メートル、前方七百メートル上方に目標を確認する。ここなら爆破してもあまり問題ないだろう。各武装を呼び出してⅧを基点に合体させる。大きな弓となったそれをミサイル目掛けて照準を合わせる。

 

I(ミウム)II(ロード)(ディオス)(フェルミオン)装填(セット)照準(ターゲット)確認(ロック・オン)

 ─────────────対軍殲滅武装《殲滅天装(メタトロン)》、照射(ファイア)!!」

 

 掛け声と共に手を離すと大きな光となってミサイルを覆う。ミサイルは光の中で爆発し、大砲のような威力を持った光は次第に消えていった。プロフェッサーに確認するとミサイルの反応は消えたらしい。

 全て終えたと確信を持って地に降りるとフィードバックが襲いかかってくる。油断していた。早く武装解除しようとすると徐々に僕の意識は塗り潰されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戻ってきた新一はしばらく俯いたまま動かなかった。何か様子がおかしいと声をかけようとするがゆっくりと顔を上げていく。その時に見えた顔はいつもの真一の顔ではなかった。

 

「新一、その武装は一体…」

「──擬似人格形成、記録データ確認。鳴海京、ですね」

「新一さん?」

「貴方は大道快斗で合っていますか?」

「そうですけど……え、どうしたんすか?」

 

 新一は快斗の言葉を無視して辺りを見回す。落ち着いたように息を吐くとまるで軽い運動をするかのように準備運動を簡単にやっている。やはりおかしい。さっきの戦闘で脳に異常でも起こしたのだろうか。真相を確かめなければと新一に目を向けるとコホンと咳払いをした。

 

「先ほどの質問に答えましょう。この武装は私に与えられた武装、『ARC UNIT』」

「アーク、ユニット?」

「正式名称『ARtifact Clear UNIT』、〈人に造られし聖者〉。ARC UNITはこの身体の脳内にあるチップにより私の脳波によって動く物。破壊、防衛、飛行、あらゆる事を可能とします」

 

 手先を遊ぶように動かすとさっきまで様々な機構を見せた板みたいなのがクルクルと新一の周囲を回り出し自身も回転している。ただ器用に動いている分どうしても疑問が出てくる。

 

「そんなんタダでそんなことができるはずねぇよな」

「然り。少なからずとも脳に負担はかかるでしょう。そのための()でもあります。チップを入れることにより私というAIが名護新一の思考領域を増やし脳にかかる電気信号の負担を軽減させています」

「えっ、じゃあ今喋っているのって」

「今の口調からすれば新一本人じゃない」

「自己紹介が遅れました。私の名前は『ARC』。名護新一の脳内にあるAIチップです」

 

 驚くどころの話じゃなかった。今まで一緒に戦っていた奴の脳の中にAIが組み込まれていた。それだけでも驚く情報だが本命はそれにアイツが操られているってことだ。道理で表情は変わらない、いつもの新一と雰囲気が違うってわけだ。俺たちが驚きを隠せない中ヤツは淡々と話を始める。

 

「現在、私という擬似人格が上塗りを始めています。私の使命が終わるまでに名護新一の人格が消え去るか、私の機能が停止するまでこの状態は止まりません」

「テメェ自身が解除する気にはならないのか?」

「無駄です。名護新一はすぐに解除できると思っていたのでしょうが仮にも私は意志を持つAI。体があった方が効率が良いに決まっている。とはいえ、目的を遂行するのが私の使命。この体は壊しはしません」

「新一様……やはり使われてしまったのですね」

「アンタ、新一さんの」

 

 前に一緒に戦った新一の手下だった奴、一条が現れた。急いでここまで来たんだろう、少しばかり息が荒くなっている。それに自分の元主人の変わり方に驚いている。だがすぐに表情を変えて操られている新一の元へ距離を詰め始た。

 

「一条、次の任務をください」

「お引き取りください、貴方の出番はもう無い」

「この世の悪は既に消えたというのですか?」

「っ……」

「そうでしょうとも。さもなくば名護新一が私を呼び起こすことなどない。ならば私は」

「その前に新一の体を返して貰うぞ」

 

 言葉を遮って威圧する。しかしAI野郎は俺を見てすぐに目を瞑り首を横に振る。

 

「無駄なことです。貴方では私に勝てない」

「やってみなきゃ分らねぇだろ」

「そうですか、なら貴方には三本で十分でしょう。固有武装(ぺラード)(ディオス)(ゴール)起動」

 

 さっきまで浮かせていた板が三つだけ形を変える。一つは光の刃を伸ばし、一つは二つに分かれる。一つは光のキューブを纏う。残ったものは全てAI野郎から距離を取る。完全にナメられていることがわかった。

 

「五分以内にここから一歩でも動かせば貴方の勝ちとしましょう」

「ナメたこと言ってくれるぜ!」

 

 腹が立つ。早くアイツをぶっ壊して新一に説教してやる。変な動きをされる前に片をつけようと変身してマグナムを撃つとキューブになったやつが野郎の前に現れて光の壁を作る。

 

「無駄です。Ⅶは防御を得意とする武装、攻撃は全て防ぎます」

「チッ」

「行きなさい」

 

 野郎が合図をすると姿を変えた奴らが襲ってくる。光の刃は斬りかかり、二つに分かれた奴は交互にビームを撃ってくる。キューブに戻った奴は俺目掛けて身体をぶつけてくる。撃ち落とそうとも考えるが完璧な連携により避けるのが精一杯だ。

 

「既にご存じと思いますがⅢは近接が得意です。貴方方にわかりやすく言うのならソードビットというものです」

「じゃあこの撃ってくる奴らはライフルビットってか!」

「近からず遠からずですね」

「じゃあなんだよ!」

「これくらいは良いでしょうか………本来、ⅠからⅧは全てオート且つライフルビットとして使用できます」

「ずっけぇ!」

「ずるいも何もこの武装は私だけの物。使わずしてどうしましょうか」

「そうかよ!じゃあコイツを喰らいな!」

 

 そこら辺に適当に弾丸を撃ち土煙を立てる。視界に見えなければいくらビットでもやってこれまいと石破天驚拳の構えを取る。その瞬間風が流れる音がした。嫌な予感がした俺はすぐに技を撃つ。土煙を払いながら進んだおれの骸骨は光の壁によって完全に防がれた。

 

「なっ………」

「言ったでしょう?無駄だと。さて、タイムオーバーです」

「クソがっ」

 

 何一つ奴に当てることが出来ずに制限時間が過ぎてしまった。悔しい、ただそれだけでいっぱいだった。そんな俺を見たからか快斗は俺の肩に手を置いて前に出ていく。その手にはドライバーが握られていた。

 

「次は俺がいく」

「お相手はまた今度にしていただけませんか?どうやらこの体が限界を迎え始めています」

「じゃあ余計チャンスなんじゃねぇの?」

「そうですね。この体を壊してもいいのなら(・・・・・・・・・)

 

 言葉の意味に引っ掛かる。

 

「どういうつもりだ」

「そのままですよ。貴方達の目的はこの身体を名護新一に戻すこと。私を排除するためには私を倒すしかない。けれどいくらAI()といえど生身の人間を操っています。栄養補給をさせなければこの体は死体のまま動くことになりますよ」

「新一の体に拘る理由はないんじゃないのか?」

「ありますよ。理由は至極簡単、この体でないと瞬時に廃人と化してしまうから」

「なんだと?」

「通常このシステムを利用するためには高度な思考領域を必要としますがこの体に入っているチップがない者には容量を超えてしまい一回戦えば廃人と化します。その状態では私は動けない。故にこの体に拘りを持つのです」

「チッ、この馬鹿野郎が」

「恨むならこの力を、禁忌を破った名護新一を恨むのですね」

 

 アークはユニットを周りに浮かせ一つだけ目の前で宙に寝かせるとその上に飛び乗る。その時に気付いたのか俺たちの前にあるものを投げる。

 

「それはそうと、置き土産です。この体が帰ってくることを祈るであればどうぞご自由に」

 

 まるでボードを乗りこなすように飛んでいったアイツを俺たちは追いかけはしなかった。今の段階では戦力差はかけ離れている。なら今のうちにやるべきことは一つだ。俺は投げられたものを拾い上げる。

 

「それは……」

「新一のベルトだ。全く、面倒くさい事をしやがって」

「どうすんのこっから」

「まずはアレについての情報をもらわないとな、なぁ?」

 

 ボロボロに壊されたベルトを押し付けるように一条の前に持っていく。苦虫を潰したような顔をしながらそれを手に取る。しばらくするとその口が開かれた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。