「提案ってのは?」
「私を…名護さんの元へ連れていって下さい」
氷川が突然変なことを言い始めた。予想は出来ていたが頭が一瞬真っ白になる。
「えっ、ちょ、氷川先輩正気ですか?」
「ええ、正気です」
「氷川さん……危ないです……」
「そうよ紗夜ちゃん。あなた何言ってるか分かってるの?」
「勿論です。ちゃんと分かってて言ってます」
「バーカ、それで分かった行こうぜってなるわけねぇだろ。お前がなんでそんなこと言ってんのかは知らねぇけど簡単に連れていけるはずねぇだろ」
確かに囮には使えるかもしれない。アイツの特性上一般人には手を出せないはずだ。しかしそれをして新一を救ったとしてもアイツはきっと許さないだろうな。それに万が一のことも考えると余計連れていけない。
「氷川様、新一様のことでそのように考えられているのでしたらそうする必要はございません」
「ですが」
「もしアークのせいでお前がひどい傷を負ったらアイツはどう思う?」
「それは……」
「きっとご自身をを責めます。ですから危険な真似はお辞めください」
氷川はやめろと言われて黙り込んだ。だがこの状況ではこれが最善かもしれない。無理に止めるよりかはこっちの方がきっと分かってくれる。
「そういえば……なんでアークは仮面ライダーにならなかったんだろう……」
「名護君も仮面ライダーなの?」
「ええ……言われてみるとそうですね」
「それは新一さんがベルトを壊されたからあれを使ったわけで…」
「なるほどね……そのベルトは今どこにあるの?」
「……修理に出しております」
「!そのベルト、直れば使えるんですよね?」
「氷川様、まさかとは思いますが」
「それを渡してください」
その発言を聞いて流石に呆れた。言っていることの意味を理解していないのか、それとも無視しているのか。いい加減にしろと言おうとすると先に一条さんが話し始めた。
「氷川様、その台詞は聞き捨てなりません。正気ですか?」
「何度も言いますが本気です」
「何故そのようなことを」
「私は、助けて欲しいと言えなかったのに彼は手を差し出してくれました。そして私だけでなく日菜も救ってくれた。今の彼は私と同じだと思うんです。だからこそ助ける手伝いをしたい。出来ることは少なくても、身体を張ってでも助けたいんです」
「氷川さん……」
「先程、鳴海様は言葉を優しくされましたが、もしかしたら命を落とすかもしれないのですよ」
それでもやるとやる気に満ちた目をしていた。だとしても今出来ることなどないと俺は思った。
「畏まりました、少々時間を下さい。放課後に迎えに参ります」
一条さんが後ろを向いて歩いていくと予鈴がなった。とりあえず後で話そうということになり全員校舎に戻っていった。しかし俺はゆっくりと学校を出ていく。それはそうだ、もう遅刻確定だし今から急いでもどうしようもないだろう。
歩いている最中どうしてもあの言葉が気になった。時間をくれという言葉、もしやとは思うがそれはないだろうと否定する。余計な考えは辞めといた方が良いだろうか。しかしそれが気になって仕方なかった。
放課後になり念のため花咲川に向かうと一条さんと同じタイミングで校門前に着いた。背中には大きめの黒いリュックサックを背負っている。そのまま何も触れずに氷川を待つと昼間と同じメンバーを連れて出てきた。
「お待たせしました」
「いえ、大丈夫です。あまり人目に着きたくないのですがどこか良い場所はありますか?」
「それでしたら……」
白金が校内に案内すると連れてこられたのは生徒会室だった。
「今日は生徒会はないそうなので……」
「あれ、燐子先輩って図書委員ですよね?」
「クラスメイトの人が……言ってたのを聞いて……」
「なるほどね、とりあえず入りましょう」
ガラッとドアを開けると本当に誰もいなかった。鍵は快斗がピッキングして開けた。取りに行くのも面倒だし何か聞かれたら尚更めんどくさいと気を利かせてきた。やってることは犯罪だがこの際気にしなかった。それぞれが席につくと一条さんが話を切り出した。
「時間もないので本題に入りますが氷川様、昼に仰ってたことは本気ですか?」
「本気です」
「こちら側に踏み込めばもう二度と同じ世界に戻れない。それでも二言はないと言いきりますか?」
「私の意思は変わりません。何度言われようとも諦めません」
「分かりました。では、貴女にこれを」
そう言って一条さんは鞄から銀色のアタッシュケースを取り出して机の上に置いた。それを氷川に渡すと開けるように促す。パチンパチンと開けると中にはこの間壊された新一のベルトが入っていた。
「これは……!」
「なんで直ってんだよ!?」
「これは……本来名護家が独自に開発していたシステムです。ブラッシュアップの為に海外支部に送っていたのですが海外支部は使用者を偽名を使用して報告していました。私が初めて見たときに発覚し、新一様には報告せずに経過観察に回しました」
「じゃあ今までのデータは全部」
「こちらで回収済みです。一応極秘のため皆様にも黙っておりました」
「まるで仕組まれてたみたいだな」
しかしそうなるとアイツはどうやって……いや、今はそんなことはどうでも良い。それよりも目の前の事だ。
「で、アンタはそれを氷川に渡してどうするつもりだ?」
「お望みならば渡して差し上げようと」
「何考えてんだ!」
「我々名護家はそういった意思を持つ皆さんを後押しする財団でもあります。故に氷川様が望むのであればと用意したまでです」
「だからって」
「一条さん、ありがとうございます」
「紗夜ちゃん!?」
氷川は一緒に入っていた説明書らしき冊子に目を通し始めた。時々部品を掴んで物を照らし合わせている様子に全員が愕然としていた。こうなってしまっては仕方ないかと腹を括る。今の氷川を止めることは出来ないいやむしろ止めることなど出来ないだろう。
「おい、いいのかよ」
「よかねぇよ。けど割り切らなきゃいけないって事もあるって話だ。おい氷川、聞いてくれ」
「何でしょうか」
「もうお前を止めるのはやめだ」
「いいんですか?」
「何言ったってお前の意思はどうせ変わらない。だったら好きにさせるのが一番だろ。だからこそ条件がある」
条件という言葉を出すと氷川は目を鋭くさせる。難しいことは要求しない、戦場に初めて行く、成り立て一般人び要求することと言えばこれだと思う。
「勇気と無謀を履き違えないこと、無理はしないこと、危険だと思ったらすぐに助けを呼んで逃げること、いいな?」
「分かりました」
「ちょっと鳴海君?あなた本当に紗夜ちゃんを連れていくつもり?」
「そうだが、文句あるか?」
「文句も何もそんな危険なこと許されるはずないでしょう!?」
「意思を固めた人間を他人がどうこうできるはずがないって事はお前もわかってんだろ」
「っ」
「だからこそ連れて行くんだ。何かあった時は俺が責任を取る」
「白鷺先輩、俺も氷川先輩のことサポートをしますんでここは任せてもらえませんか?」
「……わかったわ」
白鷺は引き下がるように席に着いた。まぁ納得出来ないところは多々あるだろうけど俺達もその分きちんと働く。先ほどから静かにしている人物に目を向けると何か言いたそうだった。
「白金は言いたいこととかあるか?今のうちだぞ」
「!私は……氷川さんみたいに…強くないから……けど、その分応援したいです……!」
「白金先輩……」
「だから氷川さん……新君のこと、よろしくお願いします…!!」
白金は氷川に向かって礼をすると氷川も礼をした。これは余計頑張らないとだなと考えつつある程度パターンを作っていた。どんな状況なら助けづらいか、逆にどうすれば守りやすいかなどを考えた。氷川が冊子を読み終えると片付け始めた。保管は一条がしておくとのことで戦場では二人が合流したら参加することになるだろう。学校を出て解散すると俺は一条の元へと向かった。すでにバイクに乗り始めていたヤツに声をかけた。
「ちょっといいか?」
「構いませんが」
降りるようにサインすると大人しく降りてくる。その瞬間をグーで顔面狙って殴るとバイクの方に後ろから倒れ込む。
「今の、避けられただろ。何で避けなかった」
「今回のは避けずに受けるのが通りだと考えました」
「理由はわかってるみたいだな。アイツの意思とはいえ新一が傷つくだろう手段を取るのはのは避けるべきだっただろ」
「らしくないと言われるかもしれませんが、賭けに出ています。新一様の意識があるなら彼女は絶対に傷つけまいと」
「フン、その賭け、一緒にベットしてやるよ」
手を出して立ち上がらせて俺は帰路に着いた。
新一、お前の意識がまだあるのなら、絶対に戻ってこい。でないとお前が──────
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夢を見ていた。辺りは荒野一帯で多くの武器が地に刺さる。人の山に立つ
起き上がり時刻を確認する。A.M.05:00、早くに起きてしまったがいいだろう。あれから約三日経つ、服装を変えるべきだろうか。きちんと水で洗いユニットを使い乾かしていたがそれだけではダメなのかもしれない。一度湊家に行って服を帰るべきと判断して移動する。
湊家に着き鍵を開けて入る。家の中は物静かだった。当然だ、この時間湊友希那は起床していない。だからこそ今のうちにと部屋に行き着替えを取る。他に回収すべきものを考え回収して部屋の外に出ると階段下にいるのを確認する。正体は湊友希那だった。センサーが鈍った、いや、ユニットを外に出しているからだろう。まだ人の気配には感覚的に気付けないらしい。
「戻っていたのね」
「ええ、今しがた」
「どうして帰ってこなかったの?」
今の私の正体を言えばどうなるだろうか。おそらく面倒は避けられない。ここは穏便に済ませよう。
「少しばかり手間取らせてしまって」
「らしくないわね。まぁいいわ、帰って来たのなら仕事をしてちょうだい」
「……畏まりました」
すぐにでも戻るなんて言えばより面倒なことが起こると考え
「新一どこ行ってたの〜?友希那すっごい心配してたんだよ?」
「ごめんね、ちょっと色々とあってさ」
「ホント心配したよー、けどこれで大丈夫だよね」
「うん、しばらくは大丈夫だと思うよ。ごめんね」
「ここのところ友希那ウチでご飯食べてて少し物足りなさそうにしてたんだから」
「申し訳ございませんお嬢様」
「いいえ、仕方ないわ」
なんの問題もなく会話ができている。これなら難なく抜け出せるだろう。一般人を巻き込まないようにするためにもこの手段は致し方あるまい。少なくとも用が済めばこの体は返すつもりだ。終わるかどうかはまた別の話だが。
「ところであなたは誰なの?」
「……」
「友希那?何言ってるの?」
「お嬢様、何方に対しておっしゃられているのですか?」
「あなたよ、新一」
体は名護新一、中身は
「何をおっしゃっているのですか。僕はこの通り」
「少し、言葉が丁寧すぎるのよ」
「?」
「私はあなたに対して直すように伝えていたはず。最近砕けてきてはいたけど前に逆戻りしているわ」
「それは先の件から少し気を引き締め直そうとですね」
「それにあなたは
「………」
「いつものあの顔じゃないの。私が何を言っても笑っていたあの顔じゃないのよ。まるで機械のようになってしまったみたい」
「で、でも友希那、新一だって疲れてるかもしれないじゃん」
「あの人が疲れているくらいで表情を変える人だったかしら」
そこまで再現できていないとは。油断、いや、他者からの情報は名護新一の脳からは取れない。それに笑うとはどうすればいいのか。なるほど、機械の私にとって弱点はそこだったか。バレる前にどうにか挽回するべきだろう。どう声をかけるべきかシュミレートしかける言葉を決めた瞬間邪魔するものが現れる。
「湊、今井、ソイツから離れろ!」
「え、京!?」
「ソイツは新一じゃねぇ!」
「…………」