第一話 感想会
「そういえば一条さん、最近ソニア様とは上手くいってますか?」
「はい、問題ないどころか良好であると考えます」
「ここ最近僕のことばかりでソニア様との時間を削ってしまい本当に申し訳ありません」
「そんなことありません。その期間のうちに妻は家事が上達した上に趣味を持ったようです」
「妻ですか、随分生活に慣れたみたいですね」
「そうみたいですね。私自身驚きを隠せません」
「ハハハ、一条さんらしい。それでご趣味というのは?」
「それなのですが、最近妻は王様戦隊キングオージャーというのにお熱のようです」
「王様戦隊?新しいスーパー戦隊なのですか?」
「はい、日本の特撮に興味を持たれたようです。日々連絡入れていたのですが久方ぶりに家に帰ってみると是非見て欲しいと言われまして」
「ご覧になったのですか?」
「ええ、まだ始まったばかりなのですが第一話から物語の掴みがとても良かったと思います。最新話まで見たのですが私も話に引き込まれていました」
「一条さんがそうなるということはかなり期待の作品ですね」
「新一様にもお勧めします。テレビで見られなくてもAbema TVなどのインターネットでも見られるそうですよ」
「なるほど。そういえば一条さんは他の戦隊物は見られましたか?」
「ええ、妻にそのまま他の作品も見ようと言われまして今は侍戦隊シンケンジャーというのをDVDを借りて見ています」
その後も話していたが妻に妻にという一条さんを見てかなり安心した。この人も普通の生活を手に入れようとしているのだと考えつつもオンオフのしっかりした人だとも捉える。ただ少し表情が前より緩んだようにも思える。ソニアさんの話をしているからだろうか?
「で、なんで俺達ここに集められてんだ?」
話を途切らせるように声を掛けて来たのは京君だった。僕達が集められたのは弦巻家のブリーフィングルーム。いつもの作戦会議のような暗い感じではなく全ての電気がつけられている。しかもメンバーはライダー組だけではなく、一条さんと紗夜さん、そしてお嬢様がいる。
「このメンツだと前回の章の主要だよな?」
「だね、集めたのはプロフェッサー?」
「いや、今日アイツ新作のゲーム買いに行くから有給取ってるっす」
「意外と自由だね」
「誰か入ってくるみたいですよ」
一条さんが扉の方を見ると紙袋に天秤のような絵を描いたふざけたものを被った人が現れた。手にはタブレットを持っており何だか不思議なオーラを感じた。
「こーんにーちはー」
「「は?」」
「元気ないな皆。まぁいっか」
「あなたは誰なんですか?」
「僕?そうだなー……干渉できず見ることしか出来ないからウォッチャーとでも名乗っとこうか」
「ウォッチャー?」
「さて、僕の事は置いといて、今日集まって貰ったのは他でもない前章の主要キャラの君たちに色々と説明しておかなきゃなって」
この間の事件についての説明?特に残ってる部分などもう無いような……。
「まずはそうだな、鳴海君の話をしよう」
「俺?」
「伏線回収をちゃんとしたと思うんだ」
「あぁ、やったな」
「本来君はあそこで死んでるはずなんだ」
「えっ、じゃあコイツゾンビなん?」
「違う違うそうじゃない」
「ゾンビバックルもデンジャラスゾンビも使ってないからな」
でも普通の人間の京君が何故生きているのかは確かに不思議だ。殲滅天装を確実に受けたはずの京君は何故か生きている。まともに食らえば生きているのはおかしい。
「あれは彼のメモリの能力だ」
「どういうこと?」
「スカルメモリは使用中、使用者を死んでいる状態にする。いわば仮死状態だよね。だから気温や熱変動などに鈍感になっているから温度系の敵には立ち向かえる。あと骨の強度も上がってるから防御力も上がっている」
「それ反則じゃないですか?」
「けどな、温度に鈍い分反動に気づくのが遅れるんだ。いつの間にか凍ってる、何て事もあり得る」
「確かに……」
「ベルトが外れなきゃ彼は死なないね。ま、メモリの気分もあるだろうから外れる時はあるだろうしライダーシステム自体に負荷が掛かれば勝手に外れるからそこは要注意だね」
これで京君生き返り問題は解決された。他の問題は何か無いかと考えると二つ出てきた。
「そういえば乗っ取られてる時夜架ちゃんが来なかったね」
「彼女は別任務で国外に出てたからね。勿論来ようとはしてたけど外せない任務だから回りから止められてたよ。急いで任務を終わらせたけど間に合わなかったね」
「なるほど……最後の反撃をするチャンスの時にアークの動きが止まったのは何故なの?」
「それに関してはなんとも言えないなぁ。外の状況は確認できても中身に関しては何も見えてないから」
「それもそうか」
「でもあの時動きが止まらなかったらおそらく……」
『それは私が説明しましょう』
ウォッチャーから別の男の声が聞こえてくる。彼がタブレットと何か喋ると納得した様子でタブレットの画面を見せてくる。黒い画面に白いマークが浮かび上がり話し始めた。
『こんにちは。初めまして、或いはお久しぶりです』
「あぁ?新手のお遊びか?」
『私はARtifact Clear UNIT、通称ARC』
突然悪寒が走り僕達は構えた。ウォッチャーはタブレットで顔を隠して僕達から隠れようとする。
『失礼しました。正確にはその次世代型です』
「ビックリした~脅かせんなよ」
『私はARCの演算領域のみをコピーした存在です。ですので戦闘力はありません』
「ネットの海に逃げる事だって出きるはずです」
「その辺に関しては大丈夫。そんなことになったら僕が責任持ってコイツを消すから。それに複雑に制限をかけてるしね」
彼の言葉は異様な程信じられた。しかし疑う余地も無かったので構えを解く。
『さて先ほどの話の続きですが、先代はおそらく障害がなければ全員を抹消していたでしょう』
「マジかよ……」
「でもあなたとARCは別のものですよね?」
『次世代型といえどデータは引き継がれておりますので状況は確認済みです。それにあの状況ならユニットを全解除して機動すれば瞬時に事足りたでしょう』
つまり本当に奇跡だったということだ。あの時何かが入らなければ京君達は全滅し紗夜さんとお嬢様も死んでいたかもしれない。そうなればもう僕は戻ってくることは無かっただろう。そうなれば
「バッドエンドだったね」
思考を読まれた、いや、この状況なら察しやすいだろう。
「今までであったうちの最悪のバッドエンドルートだろうね」
「ガチで奇跡かよ」
「今でも思いますが、あれはやはり恐ろしかったですね」
「想像したくもねぇ~」
『私からすれば恐ろしいという感情は解りませんが言葉の定義に添えるのであれば貴方方の方が恐ろしいと考えますがね』
「おや、それは何故?」
『圧倒的な力を見せつけられたのに立ち向かってくる胆力、突然の戦士への変性、衝動のみで動く活動力。私であれば到底真似出来ません。とても危険ですので』
「それは人間の性というかなんというか……」
「人間の怖いところだよね~」
皆苦笑いしつつもかなり危険なことをしていたことに自覚を持つ。僕も人の事を言えないので黙っておくが本当に危険なことはやめておくべきだと思う。
「あの状況でもしそのルートに入っていれば……」
「多分僕の心は折れてましたね」
「んー、じゃあその光景を見てみる?」
「は?」
「あ、あくまで推測されたデータを基に作った映像だよ?」
なんでそんなもの持っているのだと聞いたが既にプロジェクターに映し始めていたためとりあえず一度置いて映像に集中した。
映像にはあの瞬間に身体が止まらなかったところから始まった。お嬢様は胸をビームで貫かれ、快斗君と京君はベルトごと貫かれた。紗夜さんは奇跡的に避けていたがビームの雨が止むと悲鳴を上げていた。それから狂ったように攻撃を仕掛けるも全て躱された上に槍で腹を貫かれた。
その後は想像通りだった。世界の驚異を全て消し去り、全てが終わった後に僕の身体は返された。身体を返された僕は跡形もない只の荒野を見つめ続けてエンドロールが流れ始めた。
「どう?編集結構頑張ったんだけど」
「かなり悪趣味だな」
「やめてよ、褒めても何も出ないよ」
「褒めてねぇだろ」
「実際その世界線も見てきたけどかなり悲惨だったね」
「見てきたってことは他の世界線も見られるってことですか?」
「まぁね。一応
「じゃあ他のバッドエンドの可能性も見れたってことか?」
「うん。例えばそうだなー、第三章の時に鳴海君が大道君を撃たなかったでしょ?あれの撃ったパターンとか」
「じゃあ俺が死んでた可能性も」
「まぁあるにはあるね。勿論そうじゃない可能性も」
ウォッチャーは他の世界線も複数あるように話した。一つ選択肢を謝れば全部バットエンドだった可能性もあるらしい。本人は途中から異聞帯、ロストベルトがなどと話し始めたが名称に関しては理解し難かった。何処かの特異点でも救ってきたのだろうか。
「質問です」
「どうぞ氷川さん」
「様々な世界線、いえ、作者によって切り捨てられた
もう使えるようになってるのかこの人。
「名護さんの主人が私に変更されている世界もあるということですか?」
何聞いてんだこの人。
「あるよ」
いや何言ってんの?
「嘘だろ!?じゃあ他の面白世界線もあるってことか!」
京君までふざけないでよ。収集つかなくなるから。
「勿論あるとも」
そこはないって言って欲しかったけどまぁあるよねそうだよね。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!見たかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
駄目だこれ。
「せめて、せめて映像だけでも見られないんですか!」
「本当なら現場に行きたいがもう映像だけでもいい、見せてくれ!」
「いやいや二人ともそんな都合のいいものが」
「あるよ」
「捨ててしまえ」
「どのハードなら見れる!」
「早く見せてください!」
「いや流石にね?プライバシーってのがあるじゃん?」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」
「あんた人のこと言えないけどな?」
「それもそうだね」
「それで、その世界線だと氷川様はどうなるのですか?」
二人が絶望して五月蝿い声を出している中一条さんは疑問を投げた。正直僕も気になってはいる。今とは違う未来、考えてもあまり想像出来ないものだ。
「えー、事細かなことは省くけど、氷川さんが自身のうちに秘めるものに気づき名護君を無理やり従わせ己の肉欲に溺れるっていうエンディングが待ち構えているよ」
「うわぁ」
「聞きたくなかった」
「紗夜、あなた………」
「だそうですお二方」
「クソ、そこだけネタバレされても面白くない!」
「どうしてそうなったかというところを理解しなければ納得いきません!」
「なんだコイツら」
その後しばらく絶望して叫んでいる二人を放置して別の話を聞いていた。分岐した世界線のある程度はもう未来まで見えるらしい。けど今いる僕たちの世界線はまだエンディングまで遠いらしい。
「ウォッチャーさん」
「何?」
「もしかしてですけど今あの人がどこにいるのかっていうのは」
「知ってても教えないよ」
「そうですか………」
「教えたいけども教えられないんだ。だってあくまで観測者だから」
不干渉故の観測、なるほどね。だったら自分で見つけるしかないか。ありがとうと言うとウォッチャーはタブレットを持って立ち上がり扉の方へ歩く。
「さて、時間のようだ」
「帰るのか?」
「うん、今日は特別だったから。二人には悪いけどこの世界線で楽しんで」
「え、待って、映像は!?」
「だからプライバシーがね?」
「一切持ってなさそうな人が言うとなんだか複雑ね」
「お嬢様、それは言わないお約束です」
「それじゃあいずれ会う事があれば」
扉を閉めると一瞬静かになった。がしかしすぐに騒がしくなる。
「見゛た゛か゛っ゛た゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「快斗君ハザードトリガー持ってない?」
「オーバーフローするんすか?」
「もうそろそろ静かにさせようかなーって」
「名護さんやるのなら私にやってください」
「紗夜は何を言ってるの?」
紗夜さんはいつもより表情がおかしくなってるがさっきよりかは遥かにマシだと思う。まぁ結局オーバーフローはしなかった。とりあえず僕達も帰ろうかと言った瞬間紗夜さんも嘆き始めもう二人は放って帰ろうと言うことになった。
実際問題、今日振り返って改めてわかったが一つでも選択肢を謝れば僕達はバッドエンドにも、今いる世界線にも辿り着けなかったんだろう。だからこそこれからもきちんと考えて行動しなければならないと改めて思った。
「「あああああ見たかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
いや後ろうるさ。
スキルが解放されました。
鳴海京
『???』→『死なずの骸』
弱体無効(一回)付与&相手にバスター体制ダウン(1ターン)付与