青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第三話 女心を手に入れて

 学校の放課後、本来ならお嬢様達に付き添うはずだが僕達は教室に残って作業をしていた。体育祭のプリントの仕分けのためだ。帰ろうとした僕と京君を目にした教員がその仕事を任せてきた。本来なら断るはずだったが目の前で倒れた為とりあえず保健室に運んで様子を見てもらうと過労らしい。京君は怪しいと思ったのか身辺調査をするとこの人は新任の教師で他の教員の方々から仕事を押し付けられてたしい。それを押し付けていた教員達に突きつけ脅していた。それでもこれだけはやっておこうという話になり今に至る。

 

「それで脅してたけど何と取引したの?」

「それが運のいいことに俺たちの授業をやってる連中でよ、ライダーの仕事の時は出席にしろって言ってきた」

「それ倒れた先生にはなんの得にもならないよね?」

「まぁな。けどこれ以上押し付けたら教育委員会とマスコミにお前らの知られたら嫌な話叩きつけるって言っといた」

「一気にレベル上がったね」

「マイティジャンプじゃつまんねえからな」

「マキシマムまで上がってるけど?」

 

 なんて雑談しながら作業をしていたらいつの間にか全部片付いていた。外の景色を見るともう日も沈みかけていた。秋というのは本当に季節の中で夕暮れを感じやすい。

 

「もうこんな時間か」

「でも早く終わった方でしょ」

「余興もすぐに終わったしな」

「余興って………というかいつの間に脅せる情報を持ってたの?」

「お前、学校ってのは教員を脅すために情報を集めるところでもあるんだぞ」

「そんなわけないでしょ」

「なんてな、転校してきた時からちょいちょい情報は集めてた」

「なんでさ」

「面倒臭いことに巻き込まれた時に罪悪感を増やさせるため」

 

 そんなことに探偵の力を使うなと言いたいところだけどまぁそれはそれで正解だろうと納得する自分もいた。さてさてと学校を出ようとすると錠前から連絡が入る。なんでも今から弦巻家にきて欲しいとの連絡だった。迎えを既に近くに置いてあるとのことでその車で向かった。当然快斗君も乗っていたが呼ばれた理由はわからないらしい。ついてすぐにブリーフィングルームに案内されると珍しくプロフェッサーが真面目に座っていた。

 

「アイツ病気か?」

「いきなり失礼だな」

「いやアンタが真面目に座ってるの見てそう思わない奴いないだろ」

「それはそうかもしれんがね」

 

 納得するのかと呆れつつ席に着くとモニターに城のような建物が映し出される。

 

「これは?」

「次のキミ達の任務先だ」

「ほぉ?」

「今度ここの屋敷でパーティーが主催されるらしい。中にはオークションもプログラムとして入ってるらしいが」

 

 その言葉を聞いて全員が察した。目つきが鋭くなったのを感じたのかプロフェッサーはパンと手を叩いて話を続けた。

 

「察しが良くて助かる。ここに潜入するのは二人だ」

「全員行くとこっちで何か起きた時対応出来ないからな」

「配役は?」

「本会場でのダミー、裏で探索する人の二つだ」

「なるほどな」

「そういうわけで誰が行くか決めてくれ」

 

 三人で協議した結果、僕がダミーで快斗君が捜索になった。実際僕よりもガイアメモリに詳しい彼の方が適任だろう。その後作戦内容を確認する。僕が表の動向を見張っている間裏で快斗君がメモリの捜索と破壊を行う。

 

「あ、言い忘れてたけどダミー担当には女装して貰うから」

「…………は?」

「乙」

「なんかすみません」

「今日はドライな感じだね。代役とかいないんですか?黒服さんとか……」

「仕事上素顔は晒すことは誰にも許されてないからそれは無理だね」

 

 通りでいつもサングラスを外さないわけだと納得しつつもそうじゃないと頭を切り替える。この状況、つまり僕が女装することになる。一度もそんなことしたことないがしたくもない。

 

「どうしてもというなら一般人の誰かに」

「それは却下で」

「なら答えは決まってるよね?」

 

 下唇を咬みながらも任務のためと言い聞かせて大人しくいうことを聞く。一応服装を見せてもらうと女装ということもあり男っぽい体つきがわかりづらい和服のようだ。そこのあたりちゃんと配慮されててよかったと安心して予定日を確認する。因みにメイクもちゃんとしてくれるらしい。全て確認し終えた僕達は解散となりその日はそのまま家に戻った。空いた時間で女の人らしくするにはどうするべきか考えたがわからなかった。

 翌日昼休み、お昼ご飯を食べながら京君に相談した。探偵ならおそらくコツを知っているだろうと頼った。

 

「ねぇ京君、女の人っぽくなるにはどうしたらいいかな?」

「そうだな、女っつってもいろんな種類がいるからな。お前(がやる感じの役)ならお淑やかな感じじゃないか?」

「そう?」

「ああ、元々の言葉遣いや性格ならそれ(の役)がいいはずだ」

「なるほどね………てか(メイクするとは言ってたけど)顔は大丈夫なのかな」

「元々中性的だし問題ないだろ」

「でもそういうこと(女装)とかしたことないから」

「任せとけ、俺が教えてやる。明日には女に(も)なれる(ようになってる)さ」

「二人ともさっきから何の話をしてるの!?」

 

 目の前でご飯を食べていたリサが大声を出して聞いてくる。特に問題ない会話をしていたと思うのだが。

 

「新一はどこか壊れてるみたいだし、京も京で何ふざけてんの!?」

「僕達は(任務について)真剣に話してるけど?」

「ああ、何か問題か?」

「問題でしょ!そんな真っ昼間から堂々と!」

「えー………でも(忙しすぎて)夜にこんな会話できないよ?」

「そうだぜ。コイツ夜は大変なんだからな」

「ちょっと待って、三人とも何の話をしているの?」

 

 この状況を理解していなかったお嬢様が手をあげて発言する。正直僕達は任務についての話しかしていないのだがリサは別の話をしているのだろうか。とりあえず自分達の考えを公開してみると京君との意見は合致していたのだがリサはどうやら僕が女の子になりたいという風に聞こえていたらしい。一部無くしたら本当にそう聞こえてもおかしくないと感じた。確かにこれは誤解を招く会話内容だと一度謝罪した。それについてリサも勝手に誤解してしまったことについて謝罪してくる。

 

「今井は新一が女になることを………」

「望んでない!」

「それは勘弁願いたいね」

「本気にしないで!?」

「ま、冗談だ。だがさっきも話した通りコイツは任務で女を演じなければならない。だから相談してきたんだ」

「なるほどね。京が探偵だからということなのね」

「はい、それで京君は打開策があるの?」

「ああ、この台本通りに一度演じてくれ」

 

 京君はどこからか冊子のようなものを取り出して僕達に一つずつ渡してくる。題名が書かれていないところを見て不審に思いつつも中身を見ると演劇の台本のようだった。

 

「これは?」

「俺著作台本」

「燃やしてもOK?」

「ダメです」

「碌なことなさそう」

「いつも言ってるのよりかはマシだ。今回はDV夫とかチャラ男とかそういう感じのはない」

 

 本当なのだろうかと一度読んでみると特にドロドロしたようなことはなさそうだ。胸糞展開でもないらしい。仕方ないかと皆やる気を頑張って出しながらも配役を決めた。

 

「ところでお嬢様は演技とか大丈夫ですか?もし苦手ならこの阿呆探偵に……」

「失敬だな」

「大丈夫よ、私の中の人はいろんな役をやっているもの」

「友希那、中の人とか言っちゃダメ」

 

 それから寸劇のように軽く動きをつけながら感情を込めて台本を読んでいく。

 

「名護さん、なんでその人なんかと一緒にいるんですか」(優しいがダメ男の湊)

「ごめんなさい湊さん……でもこうしないと父の会社が」(事情ありの女性名護)

「諦めなお嬢さん、この子の意思で来るって言ってんだ。この子は悪いようにはしないから安心しな」(ノリノリの今井)

「でも明らかに嫌そうな顔を」(抗議しようとする湊)

「それ以上は近づいちゃダメだ。大丈夫だ、お前が出来なかった分楽しませてもらうからよ」(ニチャアという笑みを浮かべる今井)

 

 リサは肩に手を回してくるがその顔は悪役そのものだった。この子そんなにハマったのかな?にしては笑顔すごくない?計画通りとか言った夜神月と同じ顔してるよ。

 

「名護さん!」

「湊さん………ごめんなさい、さようなら………」

「はいカットぉ」

「結構作り込んでるわね」

「最初の展開からは考えられませんでしたね」

「いや結構読めてたよ?」

「ううん、リサの行動が」

「アタシ!?」

「今井は親友ヅラして親友の湊を絶望に叩き落とす役にしてみようかなって」

「トンデモナイ役だね!?ノリノリだったけどさぁ!」

「お嬢様にはとても好感のある部分があったと思います」

「そうね、この主人公やるときはしっかりやってるものね」

「普段鍛治してくれないのがマイナス点ですね」

「そこを見るなよ」

 

 その後どこがどうだったなどと話し合った結果少しは女心が掴めたのではないかと感じた。もう少し本を読んでみるなどして対策を積んでから任務にあたることにする。

 と思っていたのは数日前、とうとう本番が来てしまった。役割と設定を再確認して任務地へと向かう。その車の中快斗君は黒服さんと同じ格好をしている。

 

「新一さん、大丈夫っすか?」

「んー、あまり乗り気ではないけど仕事だから。ちゃんと勉強もしてきたし」

「今更ですけど真面目が過ぎません?」

「そんなことないよ。手を抜いて失敗したら大変だからせめてものことをやってるだけだよ」

「その心意気をこのバカにも教えてあげてください」

「先輩、俺これでも結構真面目にやってるんすよ?」

 

 黒服さんがいつもの声のトーンで言うと快斗君は申し訳なさそうに言う。目的地に着くと一度深呼吸して車を降りる。

 今回の任務は僕はホールでダミーの役割、とはいえガイアメモリの乱闘になれば取り押さえる役。そして快斗君はオークションに出されるガイアメモリの奪取と破壊だ。裏に人がいることを極力気づかれないようにしなければならない。だからこそのダミーである僕だ。

 指示に従って会場に入るといくつものテーブルを囲む人だかりが見える。人が少ないテーブルの近くにいると飲み物を差し出してくるウェイトレスがいたが未成年だと断ると引き下がっていった。その代わりにリンゴジュースを持ってきたのでそれを受け取り引き退らせる。一口それを口に含み違和感を感じないことを確認すると飲み込む。

 グラスを口から離すと一人のスーツの男性が近づいてきた。

 

「初めましてお嬢さん、あまり見ない顔だね」

「初めまして。(わたくし)初めて来ましたの」

「それじゃあ新参者というわけだね。今日は面白いものが見られるから是非楽しんで生きたまえ」

「ありがとうございます」

「何処の家なんだい?」

「申し遅れました。私、貴杉コンツェルンの社長が娘、貴杉真奈と申します」

 

 女性らしく慎ましく挨拶する。ありそうな名前だが偽名だ。そのまま読めるし使い捨てにはちょうどいいだろうと用意されたただの記号。もちろん招待状なども全て偽造だがコンピュータをハッキングして本物と何ら変わりないものを製作したらしい。今の声だって相手の死角にあるボイスチェンジャーで変えている。やっぱ恐るべし弦巻家。

 

「聞いたことがないな。最近できたのかな?」

「祖父があまり表には出ないように勤めてましたので。このような場に出るようになったのは父が当主になってからですね」

「なるほどなるほど。それにしても父君は君のような若い娘にこのような席を任せたんだね。とても信用していると思う」

「いえ、社会勉強としていさせていただけてますの。実際は別の人が見に来てましてよ」

「そいつは驚いた。もしよければ少し商談をしないか?」

「申し訳ございません、そこまでの許可は出ておりませんので」

 

 今この場で話すかそれとも別の部屋に行くのかは関係ない。シンプルにいざとなった時に動けなくなることが一番の危険だ。

 

「社会勉強をしなくてもいいのかな?」

「お気持ちだけ受け取らせていただきますわ」

「今君が商談を持ち替えればきっとお父上もお喜びになられると思うが?」

「………」

 

 めんどくさいな。この人の目がさっきから邪なものまで含んでいる目つきになっている。どうにか振り払う方法はないかと探る。この手のタイプは一度怒らせると厄介なことにしかならない。

 男が声をかけてくる中耳につけていたインカムに雑音が入る。通信がきた証拠だ。

 

『新一さん、任務完了です。撤退の準備を……って何してるんすか?』

 

 今声を出すと怪しまれるだろうと何処にいるか探すように目を動かす。すると後ろにいると言われたので片方の手を後ろに回してハンドサインを取る。

 

『?……この男に、絡まれてる………?』

 

 親指を立てるとおぉーと納得した様子だった。

 

『じゃあ任せてください。何とかしてみるっす』

 

 この場は快斗君を信じるしかないと考え男に対して悩む様子を見せる。手を差し出してきたがそれに対しては反応せずそのまま抗議を続ける。するとテーブルまで移動してくれと言われたので少し移動しましょうと言って移動する。

 当然男は何も知らないままついてきているが僕がテーブルにグラスを置いた瞬間部屋は真っ暗になった。ざわざわと人の声の中風が僕を襲い掛かる。手を伸ばすとそれに引っ張られるがすぐに同じように走る。しかし着物のせいで若干走りずらい。致し方ないとそのまま繋がれている方へ走ると非常用のライトに照らされた時に快斗君の顔が見えた。

 

「さすが暗殺班、大衆からの脱却方法も備えてるね」

「でもこれやり方としては下の下っすよ」

「でも手に持ってるものを後ろに投げるんでしょ?」

「まぁね⭐︎」

 

 カチンと音を鳴らして後ろに投げたそれは煙を発しながら僕達の姿を後ろから隠していく。そのまま建物の二階へ向かうと開け放たれていた窓があった。そこへ飛び込んだ僕達は黒服さん達が用意してくれたマットの上に飛び落ちそのままそれがシーツのようになって僕らを包む。視界がシーツから解放されるともう車の中だった。

 

「名護様、お疲れ様です」

「ありがとうございます。快斗君例のものは?」

「ゲットしましたよ。見たことあるやつは全部ぶっ壊してきました」

「ご苦労様。お二方本日はお疲れ様でした。移動中のみになりますがゆっくり休んでください」

 

 礼を言ってシートベルトをつけると快斗君は滑るように姿勢を崩した。

 

「お疲れ様っす」

「お疲れ様。ありがとうね、脱出させてくれて」

「いえいえ、このくらい大したことないっすよ」

「あんなのに絡まれなければもっと楽に出れたのにね」

「結局何処いってもあんなのはいるんすよ。モテるのはあんな奴より俺みたいなスマートな奴だと思いますけどね」

「ははっ、そうかもね」

「快斗、後ででいいから報告書をまとめておきなさい」

「ういっす()」

 

 それから雑談しながら帰路についた僕達は任務後とは思えないほど笑っていた。

 

 

 

 

 

〜後日〜

「で、新一の女装は?」

「それがよ、何回撮っても黒くて何も写らねぇんだよ」

「新一何かしたの?」

「黒服さんが写真とかどうしますかって聞いてきたからナシでって言ったら了解としか言ってなかったよ」

「チッ、お前の女装写真売り捌こうと思ってたのに」

 

 本当にありがとうございます黒服さん!

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