青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第二音 幸せと夢と兄と

 爆発により煙が上がる。変身を解除していたから即死の可能性だってある。全員の視線が釘付けになっていると次第に煙は晴れた。そこにはライダーシステムを纏った新一さんの姿があった。

 

「なっ」

「新一!」

「夢を見せてくれてありがとう」

 

 新一さんはイクサナックルを持って機械兵目掛けて殴りかかる。咄嗟の動きかそれとも元々戦闘用ではないためか機械兵は反応に遅れて避けられなかった。爆発が聞こえると、機械兵は微塵も跡形がなくなった。

 

「どうする?」

「……」

「今なら見逃してあげるけど」

「おまっ」

「ではお言葉に甘えさせていただきましょうか」

 

 ビショップは余裕を見せつつも少し焦った様子で姿を消した。刃を納めるように剣を腰の近くに持っていくと同時に変身を解除する。

 

「新一さん、大丈夫っすか?」

「精神干渉とかはされてないみたいだから大丈夫」

「念のためだ、今日はもう家帰って休んでろ」

「ありがとう。そうさせて貰うよ」

 

 送っていった方が良いのではないかとついていこうとすると京が肩を掴んだ。

 

「何すんだよ」

「今は一人にしてやれ」

「……そう、だな」

 

 なんだかやりきれない気持ちになりながらもその背中を俺は見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後からずっと考えていた。僕が戦うことは贖罪なのか、それともただの自己満足なのか。勿論契約で戦っていることはわかっている。けれどそうではない別の理由を求めている自分がいるのだ。皆を守るために戦うのは当然のこと、それ以外の何かを。

 家に着く頃には夕暮れ時だった。お嬢様は練習に出ていてそろそろ帰ってくる頃だ。それまでに執事の業務を行う。食事を作っているとただいまと言う声が聞こえてくる。すぐに玄関に向かうとお嬢様の姿があった。

 

「おかえりなさいませ」

「既に帰っていたのね」

「はい。お食事になさいますか?それともお風呂になさいますか?お食事の方が少し時間がかかりますが……」

「新一、今のもう一度やってちょうだい」

「え……お食事になさいますか?それともお風呂になさいますか?」

「なんだか新妻みたいね」

「前からやっているとこですが……」

 

 変な茶番があったがお風呂にするということでそのまま促した。今日の食事はオムライスとコーンポタージュという簡単なものにした。出来上がると同時にダイニングにきたお嬢様を見てすぐに準備する。食卓の準備が終わると食べ始めた。

 

「今日も美味しいわね」

「ありがとうございます」

「そういえばだけど、そろそろ名前で呼んでくれてもいいんじゃないかしら」

「もう少しお時間をいただけると幸いです」

「そう。それとは別の話だけどSMSに出ることになったわ」

 

 SMS──SWEET MUSIC SHOWER、FWFに繋がるステージだとも言われている。話を聞くと帰る途中で出てみないかとスカウトがかかったらしい。意見は満場一致で出るということになったらしく期間も短いため忙しくなるとのことだった。

 

「できる限りでいいわ、サポートできる範囲でお願い」

「畏まりました」

 

 練習を詰めるとなれば僕がすべきことはと頭の中でまとめていく。食べ終わった食器を片付けて皿洗いをしているとお嬢様がコーヒーを飲みながら話しかけてくる。

 

「昨日の話、考えてくれたかしら」

「そちらの件ももう少しお時間をいただきたいです」

「引っかかることでもあるの?」

「………そういうお嬢様こそ何故急にそのような事を?」

 

 蛇口を捻りタオルで食器を拭く。おそらく昨日話していたことが大体のことだろうがそれ意外に何かあるのではないかと探る。

 

「昨日話した通りよ。私は貴方に何かをしてあげたい」

「それでしたら十分に受け取っています。お気持ちだけでも嬉しゅうございます」

「それは、断るということでいいのかしら」

 

 一瞬言葉が詰まった。けれど僕の答えは変わらず頷いた。お嬢様は少し残念そうな顔をしながらも「そう」とだけ言い残して部屋を出ていった。

 何も間違っていない。昼の戦いの時に決意したんだ。たとえ疲れていても、あのまま時が止まってしまえばいいと思っても、僕の贖罪が終わることはない。誰かを救うことが贖罪になるなら、僕が戦いことが罪滅ぼしになるというのならそれを続ける。一度決めたことは最後までやり通す。そうだ、罰なんて関係ない。アイツを倒すまで僕は死ぬことすら許されない。そんな僕に、家族というのは都合の良すぎる幸せ(・・・・・・・・・)だ。

 ──幸せになってはいけないはずの存在がここまで幸せになること自体が

 

「贅沢すぎる」

 

 

 

 

 

 

 翌日、土曜日の今日は練習付の一日だった。SMSに出場するということもありお嬢様達は夕方まで練習するとのこと。できる範囲のサポートを頼まれたがRoseliaのマネージャーをさせて貰っている身故全員分のお昼ご飯を用意する。持ってこないようにと事前に連絡したので多分大丈夫だとは思うが軽食用のも作っっているのでその辺りは問題ない。詰め込んだ弁当箱を風呂敷に包んでサークルのスタジオにまで運ぶ。音が鳴り止んだ瞬間を狙って扉を開けた。

 

「お疲れ様です」

「新兄おっはよー!」

「おはよう…」

「おはようございます」

「お昼ご飯持ってきましたのでキリのいい時に食べてください」

「えっ、本当に作ってきたの?」

「これでもマネージャーだからね。それなりのサポートはさせてもらうよ」

 

 荷物を置いた瞬間錠前が鳴る。発生位置を確認すると意外とすぐ近くだった。ここに近づけさせないように戦う事を考えながら外に出る準備をする。

 

「また出たの?」

「彼らには休日がないらしいからね」

「気をつけて行ってくるのよ」

「はっ」

 

 走り出した勢いでサークルを飛び出し近くの森林公園に向かう。公園にいたのは子供やその親を狙うヘラジカのようなツノを持った赤いファンガイアだった。すぐに変身して戦おうとすると後ろから京君と快斗君がやってくる。

 

「今回は一匹みたいだな」

「さっさとやりますか」

「二人とも油断しないようにね」

 

 全員が変身して戦おうとすると今度は僕達とファンガイアの間に人が現れた。突然のことに動揺して硬直状態が続いた。人は黒いコートとスーツのズボンに白いワイシャツ、そして黒いネクタイをして顔に黒い楕円形の面をつけていた。手には日本刀を持っており体格からして男のように思えた。

 

「おいアンタ、ここは危険だから逃げたほうがいいぜ」

「__?」

「ガチで危ねぇからさっさと──」

 

 快斗君が話している間にその男は姿を消したかと思うとファンガイアの後ろに立ってファンガイアを素手で殴って(・・・)いた。その光景に全員が驚く。

 

「なんだアイツ?」

「化け物かよ!?」

「まさか………」

「新一、知り合いか?」

「いや、そんなはずは」

 

 その力を見てある人物が頭の中を過ぎる。されどそのようなことがあるのだろうか、人の身でファンガイアを殴り飛ばすことができる。そんな出鱈目なことが可能……だとすればやはりあの人しかいない。そう考えがつくと男は持っていた日本刀でファンガイアを貫いていた。当然ステンドグラスになって爆散する。色とりどりのガラスの中、男は顔に手を掛ける。仮面を外して見せた素顔に僕は目を見開き、すぐに刃を構えた。

 

「久しぶりだな、新一(・・)♪」

やはり貴様か、天斗(たかと)

 

 無我夢中になった僕は構えた刃を天斗に勢いよくぶつける。いっそこのまま殺そうかと思ったがやはり殺せなかった。

 

「おいおい、もう少し違う反応があっただろ。感動の再会だというのに………お兄ちゃん(・・・・・)悲しいぞ」

「黙れ!」

 

 重ねた剣に重さを重ねても奴は怯むことなく受け止めている。ギチギチと音を立てる中会話は続く。

 

「今じゃたった一人の肉親だぜ?」

「貴様との縁など遠の昔に切っている!」

「もしかしてあれって、新一さんの兄ちゃん!?」

「いや、アイツに兄がいたなんて話」

「この間紗夜さんを説得するときに話してた。けど話の通りなら……」

 

 剣技を何度も撃ち込むが全て防がれる。余裕な顔が僕の神経を逆撫でる。元々コイツに勝ったことなんて一度もない。だからといって今見逃すはずもなく仕留める気でいる。

 

「何故あんなことをした!」

「あの時も言っただろ、あそこにいてもつまんねぇからだよ」

「貴様がそんなんだからあの時多くの者が悲しんだんだ!」

「だとしたら悪いのは俺じゃねえ。弱いお前らが悪い!」

「貴様ァァァ!!」

 

 強い一撃を振り下ろすと簡単に避けられる。やはり一筋縄ではいかない。この人は本当に腹が立つ。このようなことが簡単にできる癖にそれを自分の快楽のみに使い、他者の不幸を喜ぶ。もはや存在自体が害悪でしかない。

 

「もっと本気で来いよ。人間を捨てなきゃ俺には勝てないぜ?」

「言われなくてもやってやるさ──制限解除(リミットブレイク)

 

 今まで制限してた自分の限界を解放する。時間は少ないけど普段の数倍の力を加減なしで発揮できる。地を蹴り目の前まで近づいて斬りかかるとその剣すら防がれる。ありえないはずだとすぐに剣を離して違う剣技を撃ち込むがすぐに防がれる。そもそもこの力は僕が実験によって植え付けられた力だ。この力に追いつくのなんて天然の天武を持つものしかありえない。

 

「それくらい俺だって持ってるぜ。何せ元はといえば俺の本来の才能からコピーした紛い物なんだからな」

「なっ!?」

「要はその力のオリジナルは俺ってことだ。まぁ厄介な手術をされて俺はそれを勝手に加算されたけどな」

「そんな出鱈目が!」

「それをやった奴にお前は心当たりがあるだろ?」

 

 考えればそれは必然として答えが出てくる。されどそこまでの非道なことをしたという記録は見ていない。………いや違う、消されたのか。僕が就任する前に都合のいいように書き換えられたんだ。

 

「今更わかったところでお前には何も出来ないけどな」

「されど貴様を止めることくらいは」

「あー、そういえばなんだけどお前、こんなに弱かった(・・・・・・・・)っけ?」

 

 ピキっと頭の中で何かが切れる音がした。その場で最大限の力と速度で殴りかかるとその手を受け止められる。

 

「駄目だぞ新一、もっとまわりを理解しないと勝てるモノも勝てない……まだまだだな」

 

 かつてこの人に言われた言葉。純粋だったあの頃、この人の支えとなるために鍛えていた時に言われた言葉。しかしそれは今やピエロのように歪んだ笑顔で僕に語りかける。

 

「もっと地の利を生かそうぜ。そうすれば傷くらいはつけられ………いや、今のお前じゃ無理か」

「どういうことだ」

「お前は圧倒的に欠けているから」

「何を」

「人としての感情が」

「!」

「ハハッ、仕方ないよな。〈朱雪の執行者〉は愛を捨てることで成る悲しき存在、愛知らぬ悲しき人、とでもいうべきか?」

 

 ニヤついた顔を壊すために足を引っ掛けようとするが跳ばれた挙句そのまま蹴られて吹っ飛ばされる。そのまま壁にぶつかった僕は変身を強制的に解除される。すぐに立ち上がって反撃に出ようとするとフィードバックが襲い掛かってくる。

 

「ゴフッ」

 

 口の中から重い液体が出てくる。赤黒い少し粘ついた液体。制限解除による負のフィードバック、体を無理矢理にでも限界の力を出させる事による体の拒否反応。それを克服させることができない上必要ないと判断されたため極力使わない方向で行くという形で僕の体に残された。つまるところ諸刃の剣とほぼ変わらないのだ。それで倒せなかったということは死を意味する。

 

「ほらほらそんなことするから。ま、やらせたの俺だけど」

「貴様……そこに直れ」

「もう少し強くなってから言うこったな」

「逃げるな………!」

「また今度遊んでやるよ。もう少しでおもちゃが届くはずなんだ」

 

 天斗は刀を鞘に納めて歩き出す。まるでおもちゃで遊び満足した子供のように。何を思いついたのか立ち止まり振り向く。

 

「お前らは新一の友達か?なら今度一緒に遊んでやるよ」

「アンタ本当に新一さんの兄ちゃんなのか?」

「そうだぜ。まぁ残念ながらお兄ちゃんとして認めて貰えてないみたいだけどな」

 

 薄く笑いながら何処かへと歩いていった。どうにか立ち上がろうとすると二人が肩を貸してくれる。足に上手く力が入らず二人がそのまま近くのベンチまで運んでくれた。

 

「ありがとう………」

「とりあえず病院で検査だな」

「それじゃあ仕事に差し支え…」

「入院しなくてもよかったら薬だけにしてもらいますから。でもしばらく戦わないで下さい」

「なっ」

「今みたいに取り乱してまた面倒な事になったらどうすんだ。こっちの身にもなってみろ」

「……ごめんなさい………」

 

 そのままの空気のまま僕は迎えにきた黒い車に乗って病院へ向かう。なんとか薬のみで許して貰えたが絶対安静らしい。けどこのタイミングで奴が顔を出したことが一番気がかりになっていた。どうして僕が狙っている一人であることとわかっているはずなのに出てきたのだろうか。そこだけが本当に気になっていた。

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