青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第三音 喪失と因縁と休憩と

 あれから僕は数日間放課後は自宅待機となった。病院から帰ってきた際にお嬢様に怒られ、無理するといけないからと自宅で出来ることのみを許され戦闘に行こうとすると黒服さん達が現れたりと本当に謹慎のような状態になった。

 現状天斗が出てきたり負けるようなことはないと報告を受け毎日安心しているが体の調子も戻って来たのでそろそろそっちの仕事もしたいと考える。それでもこの状況は仕方ないかと考えつつ今日の晩ご飯を作る。

 明日はお嬢様達のSMS本番が待ち構えている。謹慎状態もあって練習も見に行けてないがこれは見に行ってもいいと言われているので楽しみである。そろそろ帰ってくる頃だろうかとエプロンを外し玄関に向かうとちょうどのタイミングで帰ってきた。

 

「おかえりなさいませ」

「ただいま」

「お食事の準備は整ってますよ」

「今日は食事かお風呂かは聞かないのね」

「お嬢様が変な事をおっしゃいますのでやめておこうかと」

「失礼ね」

 

 とりあえず食事にするとのことで最後の準備をする。食卓に着くと一緒に頂きますと言って食事を始めた。今日の練習はどうだったか、体の調子はどうだとお互い話し合いながら食事を楽しく過ごした。

 

「明日、あなたはどちらで来るの?」

「客として行くつもりです。すでにチケットも購入しております」

「そうなの。ならちゃんと楽しみなさい。珍しく客席に入れるのだからそちら側からの感想も聞かせてちょうだい」

「かしこまりました」

 

 明日のためにも寝るとのことですぐに自室に戻っていった。明日ライブを観たら意見をちゃんとまとめてお嬢様達に報告しよう。そしてできることなら復帰できるように京君達に連絡を取ってみようと考えた。

 

 

 

 

 

 時は立ちライブの時間がやってきた。お嬢様達の健康状態はかなり良いらしくパフォーマンスにはうってつけとのことだった。しばらく練習に行けてないこともあってすごく楽しみだったりもする。お嬢様達の番になると歓声が湧き上がった。今回は一般客も同然なので買ってきたペンライトを用意して曲に合わせて降り始める。

 しかし違和感が襲ってくる。誰もRoseliaの音楽を聴いていなかった。最初こそノってはいたもののすぐに今日が覚めてしまったのか聞かなくなっていた。ある人は隣の人と話し、ある人はフロアから出ていってしまった。とりあえず僕は聴き続けようとしたが何か靄がかかったような感覚に襲われる。曲が終わるとRoseliaの皆は唖然としていた。そのまま舞台袖に履けて行く姿を見て僕もすぐにフロアを出て控室に行く。そこには浮かない顔をした皆の姿があった。

 

「新一………」

「お疲れ様です皆さん」

「新兄あれって………」

「僕にも分からない。けど皆はちゃんと演奏していたと思うよ。音とかは外していなかったし」

「完璧な演奏をしたと思うのですが………」

 

 みんなが不安に包まれる中扉が開くと運営スタッフが入ってきた。

 

「Roseliaの皆さんお疲れさまでした。緊張していたんですよね。もしよろしければ他の出演の方も見ていってください」

 

 申し訳なさそうに一言残すとすぐに部屋を出ていってしまった。そのまま空気は重くなり誰も声を出せなくなる。

 

「今日は解散にするわ。反省会は後日。それぞれ自分の課題と反省点を考えといてちょうだい」

 

 全員が納得する様子がうかがえたのでぼくは地球と歌う部屋の外に出る。一度ライブ会場の様子を見に戻るとRoselia以前のバンドと同じ状態に戻っていた。一体何が悪かったのかわからない。

 ただ一つ感じたことは、ここ最近嫌なことが続いている。これ以上続くことがないようにと願うばかりだった。

 

 

 

 

 

 あれから数日たった放課後、皆は練習に打ち込んでいた。僕も外に出ることを許可されたので練習の様子を見に行く。そこにヒントがあるのではないかと探ろうとしたが何度聞いてもそれがわかるはずもなく、ただ単に違和感だけが残っていた。

 

「あこ、今のところさっきから言ってるわよね」

「ご、ごめんなさい……」

「もう一回いくわよ」

 

 リサはいつもの元気はなく、紗夜さんは張積めた表情で、あこちゃんは追い付こうと必死で、りんりんは不安が見える。そしてお嬢様はまるで昔の頃に戻ったかのように厳しくなった。

 

「あこ!」

「ッ!」

「何度も言ってるでしょう!?」

「お嬢様、落ち着いてください。一度休憩を挟みましょう。やみくもにやったって成果は出ません」

「そうね……一度休憩にするわ」

 

 全員が楽器を置いて各々休憩に入る。一度外の空気を吸いに行こうかと思い扉に手を掛けると錠前がなる。ここから少ししたところに発生したらしい。とりあえず近くにいたリサに伝えてから外に出る。今回は機械兵が出たらしく三人同時に向かっているが途中で反応が消失する。それでも痕跡を確認しに行くとヤツが待ち構えていた。

 

「よっ、新一」

「天斗……!」

「まーだ敵意むき出しかよ」

「貴様が敵以外になることなどない!」

「そういうこと言うなよ~お兄ちゃん泣いちゃうぞ~?」

「ふざけたことを……」

 

 最後まで言いきる前にヤツが持っていたものに目が行く。手にあったものは機械兵の頭部。頸部あたりにあるコードからはパチパチと火花が小さく散っている。

 

「これを作ったのは誰だぁ?面白くなかったからもっとちゃんとしたの作れって言っておいてくれ」

「……」

「新一さんお待たせしま……!?」

「ただの人間があんなこと出きるのか?」

「二人ともあれを人間だと思わない方がいい。いっそのこと、人間の皮を被った本当の悪魔って思った方がいいよ」

「ひでぇ言われようだな。まぁ、仕方ねぇか」

 

 トントンとジャンプをすると天斗の姿は消え、後ろから声が聞こえた。

 

「人間やめてるからなぁ」

 

 突然のことに反応が間に合わなかった僕達は殴り飛ばされる。変身していないため生身にダメージを受け地面を転がる。

 

「お前達正義の味方ならもっとちゃんとやろうぜ?」

「本当に人間か……?」

「言ったでしょ、悪魔だと思った方がいいって」

 

 僕がイクサナックルに手を掛けると京君が止めてくる。

 

「いくら強くてもアイツは人間だぞ!?」

「それでも、アレは生半可な攻撃じゃ止められない」

 

 ナックルを装填してイクサシステムを身に纏う。この間のように制限解除すれば互角といったところだろう。けどそれをすればまた戦えなくなる。

 

「お前、ファンガイアならまだしも人間相手に」

「それは僕だけじゃないでしょ」

「ッ!」

「意地が悪かったね、ごめん」

 

 剣を構えて天斗に斬りかかる。余裕の表情で防ぐのが癪にさわる。

 

「そういえばこの前ライブを見に行ったんだ。Roselia……だったかな?」

「こんな時に何を!」

「すげぇ演奏力だったな。音は完璧、曲は成り立ってた。でもそれたけだ」

「は?」

「アイツらの音楽は上っ面ってことだ」

「そんなわけないだろう!」

 

 思い切り剣を振り下ろし鍔迫り合いになる。それでも片手で刀を持っている天斗は会話を続けた。

 

「はぁ?」

「あれだけ努力を積み重ねて練習したのに、そんなことが」

「だからぁ面白くねえつってんの!」

 

 剣を弾き返されそのまま打撃を食らった僕は崩れそうになる。けれど地面に剣を刺してなんとか姿勢を保った。

 

「……今日はここまでにしてやる」

「逃げるのか?」

「いいやぁこれ以上やってもお前が壊れちまうだけだからな」

 

 ククッと笑いながら天斗は背を向けて歩いていく。きっといつもなら追いかけていた。逃がすことなど許さずに。でも今は追いかけることはしなかった。

 どうしてもヤツの言葉が引っ掛かっていた僕は変身を解除する。

 

「新一さん」

「あぁ、二人とも無事?」

「そりゃあ今回は戦ってないから問題はねぇけどよ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」

 

 呆れながらもまっすぐ見てくる京君の言葉に目をそらせなかった。仕方ないかと思い気持ちに整理をつける。

 

「……あれは僕の兄だ」

「それは知ってる」

「邪魔すんなよ」

「帰ってもいい?」

 

 続けてくれと二人に頼まれ呆れつつも話続ける。

 

「名護家にいた頃、本来アイツが当主を継ぐ筈だったんだ。だけどアイツは才能に恵まれていて、その上で多くの同胞を殺した」

「えっ……」

「殺したってことは反逆か?」

「ううん、ただ単に面白くなかったかららしいよ」

「は?」

「現状に飽きたから殺した。こんなツマラナイところより面白いものを見に行くって」

「なんだそれ……どんな狂い方だよ」

「多くの死傷者を出したソイツを探し出そうとしたけど見つからなかった。それからは知っての通り僕が就任した」

 

 なるほどと納得する二人はそれでも納得し難いような、苦虫をすりつぶしているような顔をした。

 

「名護天斗は人殺しをして楽しんでいるような悪魔だ。人殺しだけじゃない、他人の不幸や絶望を望んでいる。そんな奴を僕は生かしてはおけない」

「まぁ大体はわかった」

「でもあの強さ半端ないっすよ」

「手段はいくらでもある。とりあえず今日は帰るよ」

 

 それじゃあと全員その場から解散する。大丈夫、例え刺し違えてでも、先に死んだとしてもヤツだけは地の底にまで引き摺り込んでやる。むしろこれは僕が戦う理由の一つでもあったのだから。

 サークルまで戻ってくると一度深呼吸をする。今のお嬢様達の状態にこんな空気を持ち込んではならないと雰囲気を入れ替える。入ろうと扉の前に立つと人が飛び出してくる。ぶつかった人はごめんなさいと言いつつすぐに走っていった。その後ろ姿を見るとあこちゃんにそっくり、いや本人だった。どういう状況だと急いで戻ろうとすると今度は部屋の近くで人にぶつかる。今度はりんりんだった。

 

「っ、新君」

「りんりん一体どうしたの?」

「ごめん………っ!」

 

 僕を突き飛ばすようにして走り去っていく。より心配になった僕は部屋の扉を開けると三人の姿を見つける。

 

「もう、クッキーはいらない……」

「お嬢…様………?」

 

 僕に気付いたお嬢様は荷物を持ってこちらに向かってきた。罰が悪そうに顔を逸らして二人を見ようともしない。

 

「帰るわよ新一」

「ですがまだ時間は」

「今日は自主練習にするわ」

「待ってください。りんりんやあこちゃんはどうしたんですか。僕がいない間に一体何が」

「私のいうことが聞けないの!?」

 

 突然のお嬢様の勢いに負け僕は謝罪して同意することにした。部屋を出る際に二人のことを見たが僕は何もできる事もなく静かに部屋の扉を閉めた。そのまま家に帰宅するとお嬢様は部屋に閉じこもってしまい何も話してくれなかった。食事を作ったと言っても風呂に入るよう促しても何も返事はなかった。仕方ないので僕だけ先に風呂と食事を済ませた。その後部屋に戻った僕はある人物に電話をかける。少しだけ時間はかかったものの電話には出てくれた。

 

「もしもし、今大丈夫?」

『………大丈夫だよ』

「よかった。昼にあったこと教えてもらってもいい?もちろん話せる範囲でいいからさ」

『………あのね』

 

 りんりんは戸惑いながらも全部話してくれた。いつまでもこの間のライブの反省会をしないこと、また皆が皆、他の人の音を聞いていなかったこと、二人が飛び出していったこと。どうやら事は思ったよりも深く複雑になっていたらしい。

 

「ありがとう。ごめんねこんなこと話させちゃって」

『ううん………私ね』

「ん?」

『…どうするべきなのか、わからなくなっちゃった』

「………そっか。じゃあ今は休もう」

『え?』

「色々とあって疲れちゃったんだよ。だから今は休憩。きっとそれはお嬢様達も一緒だよ」

『………うん』

「とりあえず今日は寝よっか、おやすみなさい」

『うん、おやすみなさい』

 

 電話を切って一度ベランダに出る。空には多くの星が煌めいているのに現実はこんなにも澱んでいる。天斗のこともあるが今最優先すべきなのはRoseliaのことだ。彼女らの原因がわからない限り何も変革は起こせない。ここ数日間マネージャーとしての活動も控えさせられていた。そんな僕が役に立てられるとしたらそれはきっと今しかない。

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