青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第八音 真実と需要と歓迎と

 次の作戦会議があると言われ集合場所に指定された森林公園に来たのだが他の人達はまだ来ていないようだ。普通に考えればこんなところで作戦会議等しないだろうから訓練を兼ねた遊びでもするのだろうか。今のうちにリラックスしておこうと体を休める。すると一分もしないうちに足音が聞こえてきた。

 

「新君……」

「りんりん、なんでこんなところに?」

「実は渡したいものがあって」

 

 鞄の中に手を入れるとすぐに手を抜いて何かを取り出す。それは白い手紙だった。おどろおどろしく渡す様子を見てりんりんからのではないと察する。

 

「誰からもらったの?」

「えっと、その……」

「中身を見てもいい?」

「う、うん……」

 

 封の固さからまだ一度も開けられていないことがわかる。身構えるように開けると一枚の白い紙が入っていた。文字が羅列しているのかと思いきや短い文に僕は身を震わせる。

 

──Come fill in the missing parts──

 

 書いた人はすぐに分かった。昔からそうだ、アイツは僕が欲しいものを失わずに得ている。その憧れはいつしか呪いになった。

 

「なんて書いてあったの?」

「大したことじゃないよ。それと、会ったんだね、あの人に」

「……うん………」

「何かされなかった?」

「なにもされてないよ……久しぶりだねって言われて…お兄さんだって分かったら大道さんがきて……」

 

 ナイスタイミングだ快斗君と心の中で感謝する。本当に何かされていないのかとよく見たが特にこれといって変わったところはなかった。

 

「ねぇ新君、お兄さんのこと……嫌い……?」

「……なんでそう思うの?」

「この間の話の時も……お兄さんの話はしなかったし、今…怖い顔してるから……」

 

 どうもアイツの事となるとポーカーフェイスを忘れてしまうらしい。誤魔化すように顔を作るがりんりんの表情は変わらなかった。

 

「ごめんね、怖かったよね」

「だ、大丈夫……」

「僕はね、アイツの事は嫌いだよ。僕が戦う理由の一つでもあるし許されていい人じゃない」

「何があったの…?」

「ううん、これは僕達の問題だから気にしなくて大丈夫」

「そうだな、これは俺達の問題だ」

 

 突然現れた気配から覆い隠すようにりんりんを守る。同時に気配のする方へ鞄を投げると地面に落ちる音は聞こえなかった。

 

「よぉ、新一」

「天斗…」

「お兄さん……」

「燐子ちゃんはさっきぶりだな」

「何しに来た」

「なぁに通りがかっただけだよっ」

 

 僕の鞄をこっちに投げ返してくる。威力は考えられているのか受け取りやすかった。パッと見どこにも武器を持っている様子はなかったがヤツの事だ、どこに隠しているか分からないと警戒してイクサナックルを取り出す。

 

「今日は話に来ただけだ。事構えるつもりはねぇよ」

「貴様の言葉など信用なるものか」

「まぁいっか。燐子ちゃん、ソイツの事はあまり信じない方がいいぜ」

「なっ……なんで……ですか」

「ソイツは隠し事が多すぎる。そうさな、例えば人殺しであることとか」

 

 天斗に対して怒りをぶつけようとした瞬間袖を掴まれる。そこには震えながらも僕の袖を掴むりんりんの姿があった。

 

「知って……ます」

「りんりん………?」

「じゃあなんでソイツの近くにいんだよ。ソイツは犯罪者だ、普通の人間じゃない、お前らとは別世界の化け物だ」

「どれだけ言われても、辛くても、新君は……逃げずに頑張って………来ました……」

 

 突然の大声に驚く。自分のことじゃないのに真剣なのが伝わってくる。

 違うんだ。本当は、君は僕のことを庇わなくていいんだ。アイツの言っていることは本当だ。だから気に止むこともないし身を投じる必要もない。なのに、なんで?

 

「それがどうした?所詮人殺しは人殺し、罪から逃れうる事はできない。どれだけの悲劇を並べても事実は変わらない」

「…………」

「もしかしたら全てが芝居で、楽しんでたかもしれねぇよなぁ?人殺しを」

「この人は、あなたとは違う………!!」

 

 袖を引っ張る彼女は震えている。きっとアイツを恐れていると思う。殺気全開で容赦しないということが肌で分かる、歪んだ笑み、それらを見ても泣き出さない彼女は本当は怖いと思う。今の言葉が効いたのか殺気を抑えた天斗はため息をつく。

 

「…だってさ新一」

「退け、此度はこの子に免じて攻撃しない。貴様が言ったことが真実ならばな」

「へぇへぇ、そうしますよ。あ、でも一つだけ」

「………」

「燐子ちゃんはいいかもしれないけど、お前の主人はどうかな」

 

 気持ちの悪い笑みを浮かべた天斗は姿を消した。念のため辺りを見回したが気配もなく見つかることもなかった。いなくなったことがわかるとりんりんは膝から崩れ落ちる。

 

「大丈夫!?」

「し、新君………」

 

 体を震わせながらも立とうとしているが足が動こうとしていない。

 

「こ、怖かった………」

「……ありがとう」

「え………?」

「僕のこと、庇ってくれてありがとう」

「私は、ただ言いたいいことを………言っただけ………」

「怖い思いをさせてごめんね。もう、そんな思いはさせないから」

 

 うん、と頷く彼女は僕の手を取って立ち上がった。そのまま一緒に帰路につこうとするがその前に一つやることを思い出す。

 

「ねぇ、二人とも、そろそろ出てきたら?」

「ちっ、バレてたか」

「そりゃあ新一さんのことだから気づいているとは思ってましたけどね」

 

 快斗君と京君が木の影と木の上から現れる。りんりんは気づいていなかったのかちゃんと驚いている。二人は変身を解除して降参のポーズをとる。

 

「何をしようとしていたの?大体察しはつくけど」

「じゃあその考えってことにしといてくれ。あと言いたいことはわかるがお前にちゃんと聞いてもらうにはこれが一番だと思った」

「その通りだったかもしれないけど、なるべくこういうことは避けてほしい」

 

 罰が悪そうな顔をして二人は目を逸らす。とはいえ今回は僕に非があるので仕方ない。とりあえずりんりんを家まで送ろうと連れて歩くと暫く沈黙が続いた。信号で止まっている時、話を切り出したのはりんりんだった。

 

「Roseliaのこと…なんだけど………」

「うん………」

「友希那さんは…戻ってくるよね………?」

「…あの人は今、答えを探してるんだ」

「答え……」

「どうするべきだったのかとかどうしたらいいのかとか。だからもう少しだけ待っていてほしい」

「………大丈夫だよ」

「?」

「皆、友希那さんのこと、待ってるから」

 

 そう言ったりんりんは僕より先に信号を渡っていく。その姿を見て僕は一安心しつつも後を追いかける。

 そのまま無事に送り届けた僕は湊家に戻る。家に入った僕はマッチを探す。せめてお嬢様が帰ってくるまでに見つけ出しておきたい。そうは思ったが以外にも早く見つかった。マッチを持った僕は自室へと向かいベランダへ出た。もらった手紙を取り出してマッチに火をつける。その火を手紙に近づけた。冬の夜空、燃え盛る炎は手紙を包み込んでいく。虚空に消えていくそれを見つめる。

 ──僕は、アイツとは違う。もう元に戻れなくても────

 完全に燃え尽きたそれを確認して家の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜も深くなっていく中潰れた廃工場の中に一人でいる。最近はここにいることが多い。静かなガラクタの中にいると何故だか妙に落ち着く。だからこそ余計なものは入れたくない。

 

「探したぞ、名護天斗!」

「なんだお前ら」

「貴様を処しにきた」

 

 ゾロゾロと姿を見せる連中に呆れる。どうせクズが集まったところで俺に何もできないで終わるくせに。それぞれが武器を構えるが特に何も感じなかった。

 

「あぁ、名護家の連中か。そういやどっかで……いやダメだな、思い出せねぇ」

「覚えてなくてもいい。貴様は今から殺す」

「まぁ所詮ゴミどもの集まりなら別にいっか」

 

 初撃がくることを感じた俺は寸前で避けてみようと考えたがいつまで経っても何も来なかった。それもそうだ、初撃は振り下ろされる剣ではなく銃弾、そして何よりそれが当たったのは俺ではなく振り下ろされようとしていた剣だったのだから。

 

「なっ………」

「はっ」

「貴様らどういうつもりだ!」

「最初からこういうつもりだよ」

 

 撃たれた一人を除く全員が俺に背を向ける。半数が発砲し残された奴は死んでいった。俺は体勢を変えずに背を向ける連中に目を向ける。するとその場に全員跪く。

 

「探しました、我らが王」

「おっと?」

「貴方がいなくなった日からずっと探し続けておりました」

「我らに変革を与えてくれる唯一の希望よ」

「どうか我らに御慈悲を」

 

 平伏す裏切り者達を見て笑いが止まらなくなる。まるで世界の正義を守っているように謳っている名護家の中に、俺以外に壊れている奴らがいるとは思いもしなかった。世の中報われないなと思いつつも俺は少し残念に思っていた。

 

「おい、そこのお前」

「はっ」

「さっきの言葉は本当か?」

「嘘偽りはありません」

「希望もか?」

「少なくとも私に二言はございません」

「そぉかぁ、残念だ」

 

 乗っていたガラクタの山から降りる。俺が地に足をつけると同時に目の前で首を垂れていたやつの頭は無くなった。血は噴き出して俺の体に飛び掛かる。

 

「何をお考えのつもりですか!?」

「我々は貴方様に忠誠を」

 

 一振りすればポトポトと首が落ちる。面白くないなぁと思いながらも塞がない口を切り落としていく。最後の一人になった時、刃を向けてもびくともしなかった。普通なら怯えてもいいのに首を垂れたまま動こうともしなかった。興味を持った俺は言葉をかける。

 

「お前は?」

「私は、希望など求めてはおりません」

「へぇ。じゃあ何が欲しい?」

「……希望より絶望を、幸福より不幸を、笑いより嗤いを、喜劇より悲劇を。私が望むのはそれにのみにございます」

 

 鳥肌が立った。この女、分かっている。俺の望むものが分かっている。刃を収めて再び声をかける。

 

「合格だ、お前は良い」

「嬉しい限りにございます」

「顔を上げろ」

 

 静かに顔を上げる女は思った以上に良かった。正直いろんなやつを見てきたがかなりの素材、それに加え俺のことを理解している。敵意も感じない。こいつは確定だ、狂ってやがる。感動した俺はそいつを連れて廃工場の奥へと案内した。

 

 

 

 

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