青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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というわけで前回ですね、念願のネオアスペクトを終わらせることが出来ました。彼らの時計の針を動かし始めるきっかけになる話だったわけです。これから少しずつ変化が訪れ始めますがそのあたりも温かい目で見守っていただけると幸いです。
これから少なくともリアルが暑い間は幕間だと思います。


幕間Φ
第一話 異国からの招待状


「で、あれから進展あったか?」

 

 天斗のロボットを倒してから平穏に近い日々が続いていた。1週間も動きがないと何か企てているのかと不安になるが時期的には年末まであと2週間もない。あちら側にも何か事情があるのではないだろうかとも考えるがそもそも化け物共にも年末行事ってあるのだろうか。

 そんな日々が続く中、お嬢様のあの命令を受けてからの変化について問われている。

 

「さして変わりなしかな」

「面白くねぇな」

「平和ボケしてるなら放課後組み手でもする?」

「やってもいいけどよ、その前に用事があるみたいだせ?」

 

 京君が指差す方を見るとお嬢様の姿があった。お弁当なら持たせたはずだから問題ない、次は移動授業ではない、忘れ物も今日はないはずだ。だとすれば何用だと考えていると目の前でブレザーを脱ぎだした。急いで立ち上がって制服を戻して肩を掴む。

 

「何を考えているのですか!」

「ボタンが外れてかけているのよ。授業中に気づいたから今言いにきたの」

「それならそうと先に言ってください。周りの目もありますし」

「お前の発言も気になるところあるけどな」

「あなた裁縫セットは持ち歩いているのでしょう?」

「勿論ありますよ。ただ今から直すと授業開始ギリギリになるので次の休み時間に返しますね」

「わかったわ」

「それまで体を冷やすわけにはいきませんのでジャージを着ていてください」

 

 裁縫セットをカバンから取り出して糸を針に通すと目の前から動かないことに気づく。

 

「湊さん?」

「今日はジャージを持ってきてないわ」

「そういえばそうでしたね。では申し訳ありませんが僕のブレザーをお貸しします」

「ありがとう」

 

 ブレザーを脱いで渡すとすぐにそれを着て自分の席へと戻っていった。取れかかっているボタンの糸を切ってボタンを押さえつけると器用だなと京君の方から声が聞こえてくる。

 

「これくらい誰でもできるよ」

「そうか?手の動きがかなり繊細だぜ」

「それはどうも」

「にしてもさっきのお前らまるで夫婦だな」

「夫婦?」

「会話のやり取りがな」

「半年暮らしてればこうなるでしょ」

「そうかぁ?」

 

 ボタンを縫い付けるとちょうど鐘がなる。次の授業の準備を急いで行い直したブレザーは畳んでカバンの中にしまって授業を受ける。期末テストは記憶がない期間にいつの間にか終わっており点数も安定して取っていた。記憶がないということは本当に怖いことだ。教師からは冬休みの課題はなしで最後の授業だしあとは自習でいいと言われそのまま教室を去っていった。自由となった教室は雑談で埋め尽くされていく。

 

「どうするよ?」

「せっかくだしブレザーを渡してくるよ」

「もう来たぞ?」

「ありがとう」

「早いですね、どうぞ」

 

 交換形式で戻ってきた僕のブレザーを着ると教室の前のドアが開かれる。教室は一瞬で静かになり入ってくる人間を見ると何事かと思うほどざわざわし始める。黒いスーツの男が一人入ってきた。教卓の前に立つと男はハンドガンを生徒達に向けた。

 

「今コノ教室ハワタシノ支配下ニアル。無駄ナ抵抗はシナイコトダ」

「なっ」

「聞キタイコトガアルヤツハ手ヲ上ゲロ」

 

 京君とアイコンタクトを取ってこれからの行動を打ち合わせする。するとすぐに教室の後ろを歩き始めて行動に出てくれた。

 

「皆とりあえず落ち着け。とりあえず質問だ」

「ナンダ」

「お前何系の人?話しやすい言語で話そうぜ?アメリカンか、それともブリティッシュか」

это россия(ロシアだ)

「なるほど新一、お前の出番だ」

Хорошо, так какова цель?(了解、それで何が目的ですか?)

「えっ、名護くんわかるの?」

「ちょっとだけね。ちなみにこれはロシア語、Это верно, верно?(あってますよね?)

Это верно(その通りだ).Давайте ответим на ваш вопрос(質問に答えよう). Наша цель с тобой, Наго Шиничи(我らの目的は貴様にあるのだ、名護新一).」

 

 予想外の解答に驚く。てっきりこのパターンだと誘拐とかテロの類だと考えていたがまさか僕だけが目的だとは思いもしなかった。しかしタイミングが良すぎやしないだろうか。まさかあの教員まですり替えられている、いやしかしあれは今までと同じ顔、変装の可能性もあるか。

 

「それで何の御用だって?」

「道に迷って混乱してるらしいから職員室まで案内して欲しいって」

「へぇ?」

「この人ハリウッドの人らしくてここまでドッキリなんだって。さぁ行きますよ」

「ミナサン失礼シマシタ」

 

 教室の外に出るとこっそり錠前を電話モードにする。会話内容を京君に届けて非常時に備えてもらうためだ。スーツの人を連れて屋上に連れて行く。逃げられることも考慮して屋上に設定したが当然捉えるつもりでいる。

 

「それで、僕に用事っていうのは?君の雇い主は一体何を考えているのかな」

「無礼を働いたこと、お許しください」

「なんだ、日本語上手じゃないですか」

「代表が名護様の場所を突き止めたからこれを渡してほしいとお預かりしております」

「何だって?」

 

 一通の封筒を渡される。警戒しながらその封を切ると中から折り畳まれた白紙の手紙が出てくる。中を開くとこれまたロシア語で書かれていた。手紙の内容は今までやってきたこととは考えられない内容だった。

 

『久しぶりだねMr.シンイチ、私からのサプライズは驚いてくれたかな?本来この手紙は名護家に送る予定だったがMr.キリギリがもう彼はいないというので探させてもらったよ。さて前置きはこのくらいにしよう。今週末私の別荘でパーティーを行うから是非来てくれ。同行者は何人でも連れてきたまえ、ジェットも用意しよう。いつ出立するかをそこにいる者に伝えてくれ。久しぶりに再開できるのを期待しているよ。 マクシム・スミルノフ』

 

 差出人の名前を見ると納得できる人物の名前が記載されていた。マクシム・スミルノフ──ロシアのマフィアのボスであり以前名護家に依頼してきた財閥だ。確か娘が誘拐された時に僕が任務を請け負って救出して以来良き支援者になっていたはず。ロシアでの任務はそうそう無かったけどある度に毎回宿を用意してくれた協力者でもある。その方が何故僕個人に対してこのような手紙を送ってきたのかは気になるところではあるがここまでされると誘いを断りづらくなる。

 

「あの、これの返事っていうのは」

「本日中にお願いします」

 

 やはりそう来たかと思いつつ手紙を見回していると屋上の扉が開かれる。そこから現れたのは単身のお嬢様だった。

 

「そろそろ私の執事を返してもらっていいかしら」

что?(何?)

「お嬢様、この方は敵ではございません」

「どういうこと?」

 

 今までの出来事と招待状のことについて説明すると訝しげな表情をしてスーツの男を見る。直立不動の彼を見て納得がいったのか招待状を僕から奪い取ってスーツの男に渡す。

 

「私と新一、二人で行くわ」

「よ、よろしいのですか?」

「次のライブはクリスマス、今週の土曜日は他のメンバーも都合が合わなかったはずよ」

「おっしゃる通りですが……お嬢様はよろしいのですか?」

「言ったでしょう。あなたのことを知りたいと」

 

 こういうところからも情報を得るつもりなのだろうか。本気で僕を知ろうとしているのが伝わってくる。ロシア語のカバーやその他諸々については僕がどうにかすればいい。ここまで来たなら覚悟を決めよう。

 

「名護様はそれでよろしいですか?」

「大丈夫です。フライトの方は夜の22時からお願いします」

「かしこまりました。では金曜の21時にこの学校にお迎えに参ります」

 

 スーツの男は上からやってきたヘリコプターからぶら下がっているハシゴに捕まってどこかへ飛んでいってしまった。とりあえず教室の戻るとクラス中からさっきの人はと問い詰められた。ハリウッドからきた特別講師で演劇の学校に行こうとしたら間違えてしまった、などと適当に誤魔化して納得させて席に戻る。

 チャイムが鳴り授業が終わったことから放課後になる。今日はRoseliaの練習があるためお嬢様とリサと待ち合わせて練習に向かうと京君までついてきた。

 

「俺はハッピーセットじゃねえぞ」

「ハッピーではないよね」

「違うそうじゃない」

「そういやさっき黒いスーツの人と一緒に歩いてたけど何かあったの?」

「まぁその辺は後で話すよ」

「例の新一の家の人じゃないの?」

「どっちかっていうとその類の知り合いかな」

「その辺の話もさせてくれ」

「なるほど、それが目的だね」

「ザッツライト」

 

 サークルに着くと早速Roseliaの練習は始まった。邪魔をしないように一度ロビーに出て京君とさっきのスーツの人の話をする。

 

「一応言っておくがちゃんと話の内容は聞いていた。今週末湊とランデブーってことでいいんだな?」

「最初五文字しかあってないけど指詰める?」

「おっとそれは冗談きついぜ。湊を連れてロシアの知り合いのところに行くってことでいいんだよな?」

「その通りだね。申し訳ないけど約二日間出勤出来なくなりそう」

「今の所相手側に変わった動きはないから大丈夫だ。何かあったら連絡する」

「快斗君には僕の方から連絡する」

「呼んだっすか?」

 

 二人揃って後ろを見ると快斗君が普通に立っていた。何故いるのか聞くと今日はハロハピもサークルで練習らしい。納得すると今度は何を話していたのかを聞かれそのまま事の経緯と週末不在であることを伝える。納得してくれた快斗君を交えて練習が終わるまで何をするか話すとトランプをやることが決定した。ロビーの一角を借りてやることを念の為まりなさんに伝えると混ぜてくれというので一緒にやることに。

 

「そんでトランプで何するの?」

「私は何でもいいよ〜」

「快斗君何できる?」

「じゃあ無難にババ抜きしますか」

「シャッフルは任せとけ」

 

 そういえばいつの間にか京君の手に発生していたトランプはどっから出したのだろうと聞くと京君がいつも持ち歩いてると言っていた。理由は暇つぶしに確率論をやるためらしい。その日の運試しでもあるんだとか。

 

「罰ゲームとかつける?」

「男同士だったら限界までできるけど女の人いるからな」

「何するつもりだったのさ」

「野球拳の要領」

「あはは、流石にお店の中だからやめようか」

Vamos(行こうぜ)!」

「じゃあ先行は快斗君でその次僕、まりなさん、京君の順番で回していこうか」

 

 多少雑談を交えながら札を引いていくと皆テンポ良く手札が減っていく。ゲーム中まりなさんはずっと笑顔だったため何かいいことでもあったのかを聞いてみた。

 

「若い子たちと一緒に遊べてお姉さん嬉しいんだよ」

「ハハハ、まりなさんそんな歳いってないっしょ」

「え〜そう?じゃあいくつぐらいに見える?」

 

 逆に質問で返されると快斗君は真剣な顔つきになる。そして僕と京君にアイコンタクトを取ってきた。

 

『まりなさんっていくつでしたっけ』

『そういえば年齢知ってる人いないような………』

『俺は知ってるけどな』

『教えろよ』

『呪いのせいで言えない』

『呪い?』

『言ったらどうなんの?』

『さぁな、けど言われた時の恐怖心は未だに忘れられない』

『『こっわ』』

 

 どうやら極秘レベルの秘密らしい。てか彼はどうやってその情報を得たんだろ、そして何故知ったことをバレたんだろ。とりあえずそれっぽい年齢を出しておこうという結論になり快斗君に答えを委ねた。

 

「随分考えているみたいだけど思いついたかな?」

「あーそうっすね………(確か女性の年齢は見た目より五つ下げろって誰かが言ってた気がする!)24とか?」

「そんなに若く見えるの〜?もしかしてその気があるのかなーダメだぞ〜?」

 

 まりなさんは残りの札を置いて上がりながら嬉しそうにどこかへ行ってしまった。何が起きるかわからないがとりあえず危機は回避したと思った僕たちは速攻でゲームを終わらせてスタジオへ戻る。京君もついてこようとしたが入る前に扉の鍵を閉めて被害を抑えることにした。もし何かあってもあの人ならどうにかなるだろうと放置してRoseliaの練習を見る。

 残り十分になった時掃除が行われスタジオを出ると会計に行くためまりなさんとエンカウントする。さっきよりも笑顔になっていて少しばかり恐怖を感じる。

 

「まりなさんすっごい笑顔だね」

「何か……いいことあった…のかな………?」

「いつもありがとうね。次の予約はどうする?」

「できれば水曜日に入れたいのですが」

「大丈夫だよ。じゃあRoseliaは次の水曜日っと、同じ時間で大丈夫?」

「お願いします」

「畏まりました。ところで名護君はどう思ってるのかな?」

 

 きっと根拠を立てた年齢を当てると今までのが水の泡になる。だから崩さないようにしよう。

 

「快斗君と同じくらいだと思ってました」

「そんなふうに言われるとお姉さん照れちゃうな〜今度好きなジュース買ってあげるからね⭐︎」

「本当ですか?楽しみにしてます」

 

 会釈だけしてロビーを離れる。サークルが見えなくなるまで僕からは何も発せずに移動しているとリサがこっそり話しかけてくる。

 

「何かあったの?」

「生死をかけた駆け引きってやつ」

「どゆこと?」

「そうだ、新一あの話はしておいたわ」

「恐れいります」

「あー今週末いないって話?」

「そうそれ。こんな時期で申し訳ないんだけど無碍にも出来なくて」

「気をつけて行ってきてください」

 

 皆ちゃんと理解してくれていて助かった。ロシアって今どんな感じだろという話で盛り上がりいつもの分かれ道のところで解散すると近所のメンバーになる。

 

「ねぇ新一、さっき友希那がスーツの人がやってきた時変な言葉喋ってたって」

「ロシア語を話してただけだよ。ちゃんとした言語ですよ」

「聞きなれない言葉だったわ」

「発音が難しいですからね。白鷺さんも話せるはずですよ」

「そうなの?」

「他に何語喋れるの?」

「僕?そうだなぁ……英語は勿論だけど、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、オンドゥル語、グロンギ語、ジャマト語────」

「待って待って人間の言葉じゃないの混ざってる」

 

 そうだろうかと他の言語も教えながら家まで歩いて行った。帰宅後、お嬢様から難しい言語を話さないでくれと言われた。

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