青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第三話 パーティーに昔話をする人は付き物です

 眠りから意識を取り戻すように鳴り響くアラームの音を止める。

 時刻は三時半。予定通りの時間なのを確認して状況を確認する。

 約三時間の睡眠により体力の回復よし、身体異常なし、その他項目とりあえずよし。向かいにいるお嬢様が目を覚ましていないようなので起こす。

 

「起きてくださいお嬢様」

「ん……」

「準備を始めます。ドレスルームで着替えるかここで着替えるかどちらが良いですか?」

「着替えはどこにあるの?」

「せっかくですし借りましょうか。きっと上質のものばかりですよ」

 

 まだ眠そうにしているお嬢様をドレスルームに入れる。自由に選ぶようにだけ伝えて僕もすぐに着替える。色は主役より目立たないように控えめな色にした。参加するだけで良いならこれで十分だろう普段と色は大して変わらないが。

 やがてお嬢様もドレスルームから薄紫色のドレスを着て出てきたので最後に身だしなみのチャックをお互いに行う。問題ないと判断して部屋を出た。時間は四時四十分頃、大体予想通りの時間だ。早いのではないかと言われたがギリギリになるよりかは良いのではと話すと納得してくれた。ついでにいうとこの館は広いから少し早めの方がいい気がしたのだ。

 ホールの前に着くと名前の確認をされる。本人確認が終わるとそのまま中へと案内されて席に着く。

 

「さっきまで手際が良かったけどやはり慣れているの?」

「まぁ度々呼ばれていましたから」

О, разве это не Наго-сан там?(おや、そこにいるのは名護さんではないか)

привет давно не виделись(こんにちはお久しぶりです)

「知り合い?」

「そうですね。名護家に支援をしてくれているお家の一つです」

「交渉?はあなたがしたの?」

「あの家は僕ではなく先代ですね」

 

 少し興味があるのか周りの人を見ようとする。確かに半分くらい知っている顔があるから後で話しかけられるかもしれない。一周したのかお嬢様は僕の顔を再び見る。

 

「どうかしましたか?」

「私は言葉選びがうまくできないけど、あなたは上手よね」

「そうですか?まだまだだと思いますが」

「初対面の人やトラブルを起こした時の収め方が上手いわ」

「そうですね……お嬢様、交渉で大事なことをお教えしておきましょう。交渉では相手を引き出すことが大事です。相手が欲しいものを理解してそれを持っていることを勘付かせます」

「最初から出しちゃいけないの?」

「あまりいい手ではないですね。考える時間を与えてしまいますゆえ優先度の低い順番に出しつつ一番高いものも勘付かせるように出します」

「たくさんついてくれば嬉しいものね」

「ハッピーセットと同じ要領ですね。ですが自分が欲しいものと釣り合っていなければならないことに注意ですね」

「わかったわ、教えてくれてありがとう」

 

 すっきりした様子で姿勢よく座り直すお嬢様。そんな中別の人物が近づいてくる。椅子を引く様子を見て同じ席の人だとわかり顔を見ることにした。そこに座ったのは霧切さんだった。娘の誕生日パーティーとはいえこんなところの人まで呼び出すのか、いや僕やさっきの人を呼んでいる時点でそれはそうか。

 

「まさか君までいたとは」

「ははは、同じ言葉を返したいですね」

「この人は?」

 

 お嬢様がさっきと同じように知らない人を見る目で見ている。たださっきと違うのは日本語を話していることに驚いていることだ。霧切さんと面識があるのはりんりんだけだっただろうかと紹介しようとすると霧切さんが席を立った。

 

「申し遅れました。私は名護家第十七代目当主霧切仁と申します」

「じゃああなたが新一の後を」

「ええ、おっしゃる通りです。貴女が湊友希那さんですね。貴女の執事にはお世話になっています」

「っ!────」

 

 こっちの方を見てどうすればいいのかという目をしている。そもそも言われ慣れていない、性格上こういう機会があってもあまり興味がなかったのだろうか。

 

いえ、こちらこそ当家の執事がお世話になっていますと返してください

「い、いえ、こちらこそ、当家の執事がお世話になっています」

「社交辞令もできるとは出来た娘さんだ」

「それで霧切さんももらったんですか?」

「ああ、今日の昼に会談があるついでにと」

「なるほど。それで今日の護衛は伊達さんですか」

「よぉ坊ちゃんと嬢ちゃん久しぶりだな」

「おい伊達」

「構いません。お久しぶりです」

「しかしだな」

「霧切さん、私の主もこうおっしゃってますので。本日は少しばかり解きましょう」

「…よろしいのですか」

「私は堅苦しいのは、あまり得意ではないので」

 

 そうかと霧切さんは肩に入っていた力を抜いたように息を吐く。それからは伊達さんが気を紛らわすように話し始めお嬢様も次第に緊張が解けたように思える。

 時刻を過ぎたのかパーティーは始まり食事が運ばれてくる。椅子をしまい立ち歩く時間になった。いろんな人がスミルノフ嬢への挨拶に行ってるので僕は後にしようと食事を運んでお嬢様の元へと持っていく。

 

「お待たせしました」

「気を使わなくてもいいわよ。あなたが呼ばれたパーティーなんだから」

「いえ、だとしてもお誘いしたのは僕なのでエスコートくらいさせていただきたいです」

「そうだぜ嬢ちゃん、もぐもぐ」

「伊達さんといったかしら………?」

「おう、なんだ。むぐっ」

「あなたは他の人たちと同じなの?」

 

 食べながら聞いていた伊達さんが一気に食べ物を口の中に押し込んで飲み込む。咽せる様子もなく考え始めていたのでこの人の喉どうなってんだと思った。

 

「他の人っつーのは一条とかはしもっちゃんか?」

「(はしもっちゃん……?)ええ、その人たちよ」

「だとしたらこの間も言ったような気がするが俺たちは坊ちゃん派だ。当主の前で言っちゃ悪いが俺たちは霧切に出された指示よりも坊ちゃんのことを優先する。それが俺たちの使命ってくらいにはな」

「伊達さん……」

「思えばこの土地から始まったんだよな。覚えてるか坊ちゃん、俺がアンタに忠義を立てた日のことを」

「ええ、覚えてますよ。それまでは本当に手のかかる人でしたけど」

「そうなの?」

「そうだぜ〜?俺の二つ名はその時の名残だからな」

「良かったらそれも含めて聞かせてくれないかしら」

「坊ちゃん話してもいいか?」

「いいですよ。けど盛らないでくださいね」

 

 一度窓の外を見ると吹雪が酷くなっているのがわかった。確かにあの日もこんな雪の日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八歳の頃、真冬のロシアに連れて来られたことがある。当然家の仕事であり遊びにきたわけではない。乗っているヘリコプターの中には操縦士を含めて5人、その中には伊達さんがいた。

 半年前に拾われ、高校生くらいの年齢だったがかなり凶悪に見えた。何かしようとするとすぐに睨まれ誰かと会話すれば必ず衝突する。けれど任務では与えられた仕事だからかこなすことは出来ていた。しかしそのやり方はあまりにも暴力的で必要以上の被害や取り押さえようとした仲間にも怪我を負わせていた。

 そのことから彼は《狂獣人(バーサーカー)》と呼ばれていた。任務に同行することにはなったのは相手が野盗の類であるため暴れてもらっているうちに他の人が救助に入るという作戦になったからだ。攫われたのはスミルノフさんの一人娘、高いお金と迎え討てるようなところではないと言われたからだ。そういう時にも名護家は出動する。

 もちろん飛行機の中では大人しくしていたし移動中は言うことを聞いてくれるから問題ないと考えていた。しかし道中でのことだった。

 

「くっそなんだよこれ歩きづれぇな」

「雪道ですからね、足場が崩れやすいです」

「近くまでヘリコプターで行けばいいだろ」

「吹雪が強くなった今ヘリで行くのは危険です。車もこれ以上行けば気付かれる」

「けどこれじゃあ体力が奪われて終わりじゃねぇか!」

「そのための防寒スーツです。気心地が悪いのなら今は我慢してください」

 

 なんとか説き伏せてしばらく歩きもう少しで敵本陣というところで我慢の限界が来たのか伊達さんがまた騒ぎ始めた。

 

「大体よおなんで俺らがこんなところまで来て子娘一人助けなきゃいけねぇんだよ!警察に任せればいいだろ!」

「僕たちからすれば野盗のレベルでもここの警察の手の届かない組織なんです。だから僕たちが来ました」

「金持ちなんだろ?だったらその自慢の金を出せばいいだろ!俺たちがやることないだろ!」

「お前、さっきから新一様に対してなんて口を聞いてんだ!」

「うっせぇ!第一何で俺らのリーダーがこんなガキなんだよ!どいつもコイツもイラつかせやがって、ふざけるのも大概にしろよ!」

 

 もうすぐ敵本陣だから気づかれると困るというのに騒ぎ立てる伊達さんにイラついたかどうかは覚えていない。けどその時目の前の任務を成功刺せるのに邪魔だと感じたのは事実だった。

 

「貴方は何も聞いていなかったんですか?」

「はぁ?」

「今回誘拐したのは人質をお金のあるなしに関わらず殺すような集団。ロシアでも巻き込まれればどうなるかと恐れられているグループ。組織からすれば野盗と同じ程度でも危険であることに変わりはない。それと対峙するのに何も考えていないんですか」

「うるせぇなぁ俺は暴れればいいとしか聞いてねぇよ」

「だとしたら貴方の行動は改めなければいけない」

「んだと」

「救助者にまで怪我が及んではならないというのに今の貴方では怪我どころでは済まなくなります」

「ガキが説教垂れてんじゃねぇよ!ちょっと難しい言葉使えるからって偉そうにしやがってよぉ!」

 

 体格差がかなりあるというのに伊達さんは本気で拳を出してきたので避ける。だめだこれ話にならないと持っていた荷物を捨てて身構える。それに合わせたのか伊達さんも同じように手持ちの物を捨てた。

 

「新一様!」

「大丈夫です。僕も少しカチンときただけですので」

「ここで捻り潰してやるよお坊ちゃん」

「では僕が勝ったら今回の仕事、ちゃんと見ていてください」

 

 吹雪の中伊達さんとことを構えた数秒後、伊達さんの捕縛に成功した。必死に抵抗しようとしたが完全に抵抗できないように押さえつけていたので問題はなかった。力で無理やり解こうとしていたが逆効果になることを悟ったのかそれはしなかった。正直そこが一番焦ったが結果オーライだった。

 

「新一様、ご無事ですか!」

「リーダー!」

「ええ、ですがお願いがあります。ここから先は僕一人で行きます」

「「なっ!?」」

「腕試し、ではありませんが今回のことでこの方に教え込みます」

 

 そう言った僕は目的地のコテージに向かって歩き出した。あとはそのままだ。敵は5人程度、人質に向けられている凶器をその場から弾いてあとは全員殺すだけ。今回は投降など認める任務ではなかったので容易いことだった。他にも何かないかと確認するついでに完全に息の根を止めてスミルノフ嬢を救いだした。予備の防寒具を着せて外に出ると縄で縛られた伊達さんと二人が待っていた。

 

「任務完了です」

「さすがです新一様」

「その呼び方、今更ですがやめてくださいよ」

「ですがリーダーというのも今だけですし。あの人は今はそう呼んでますがいつも呼び方に戸惑ってますよ」

「おっ、こらそれは言わない約束だろ」

 

 伊達さんは何も言わずただ突っ立ってるだけだった。歩いているうちに吹雪も弱まり減りが迎えにきたところでスミルノフ邸へと向かう。スミルノフ嬢のバイタルが安定していることを確認すると伊達さんが真剣な顔つきで僕の前に立った。今更だが生意気なことばかりしていたので何されるかわからないという恐怖感が襲ってきたがそれもすぐに消え去った。

 彼が目の前で膝をついたのだ。全員が驚いている中彼は話し始める。

 

「今までの無礼、お許し願いたい」

「……」

「間違っていたのは俺だった。誰も彼もが敵だとしか思えずあたり散らかすような真似をして申し訳なかった。俺は、アンタになら忠義を尽くしたいと考えている。名護家にはまだ尽くせなくてもアンタのためなら頑張れる気がするんだ……」

「わかっていただけましたか。僕に忠誠を誓わなくてもきっと貴方なら大丈夫です。それと、敬語はやめてください。僕は年下ですし同じ部隊の人間なんですから」

「じゃあそうさせてもらうぜ、坊ちゃん(・・・・)!」

 

 そうして伊達さんは以前とは別人のようになり周りと打ち解けた。数年後には殲滅部隊の部隊長となり周りからの信頼は厚いものとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけだったんだぜ」

「そんなに凶悪な人には見えないのだけど」

「黙ってれば顔の傷とかでそう見えるけどな」

 

 それを考えるとかなり変わったように思える。まさかこんなところで昔話をする羽目になるとは思いもしなかったが。

 

「懐かしい話をしているじゃないか」

「ヨォ御当主様」

「あの頃のお前は狂犬よりも危険だったものな」

「そうか?まぁあの頃はトゲトゲしたた様な気もするけどな!」

 

 アッハッハと笑う伊達さんは怖い顔をしないようになったと思う。それでも戦場ではその名にふさわしいくらいの狂気ではあるのだが。

 やがてパーティーの主役の元へ挨拶へ伺うと昔の事件について礼を再び言われた。その後時間の都合で僕達は帰国することになったがスミルノフ家の飛行機を使うことはなく名護家のヘリで帰ることになった。どうやら彼らにも他にやることが溜まっているらしい。湊家まで送ってもらえることになったのでお嬢様の意向の下甘えることにした。




えー、次回で帰国します、ネタにぶっ込む予定ではいます。あくまで予定ですが
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