家に帰るまでにお父さんに連絡すると車で迎えに来てくれた。そのまま車に乗せて車で走っていると隣で新一が目を覚ます。まるで今までのことを覚えていないように視線を動かしていた。
「大丈夫なの?」
「あの、ファンガイアは………」
「覚えてないの?あなたが倒したのよ」
「僕、が……?」
まるで夢を見ていたのかように目を見開く。お父さんの顔をバックミラー越しに見ると運転しながら新一を気にかけているようだった。
「新一君、最後の記憶覚えているかい?」
「黒いフェッスルを差し込んだらお嬢様の方に意識を向けてしまって」
「それから?」
「そこから……ですね、記憶がないのは」
私が殺されそうになった時に新一は意識を失っていると言っている。だけどその後動いていたのは紛れもない新一だった。でも新一とは違う何かのように思えたのも事実だった。
「少し様子を見なきゃいけないかもしれないね」
「申し訳ございません、旦那様」
「いや、どうということはない。それより今日はゆっくりしたまえ」
「そういうわけには」
「明日また出掛けるのだろう?お正月くらい普通の男子高校生でもいいじゃないか」
「……畏まりました」
渋々了承したという感じの新一を見てお父さんは運転に集中し始めた。結局帰ってから新一は夜ごはんを作ってくれた。勿論その原因は私たちにあるわけで親子揃って申し訳なく思った。
しかしその後は私より新一が先に布団に入った。それを利用して私は京に連絡を取った。
『どうした?また新一失踪か?』
「違うわ、今寝てるもの」
『新年早々変な言い方だな』
「なんで今日来なかったの?」
『……悪いな、こっちも立て込んでた』
「そう」
『そんで何用だ?』
ため息混じりに聞いてくる京に今日のことを話した。新一が新しい力を使おうとしたら全く別人のようになった部分を話すと怪訝そうな声が聞こえてくる。
「何か知ってるの?」
『なんにも』
「本当かしら」
『疑ってもなにもでないぞ』
「……とりあえず新一の様子が変わったところとかあったら教えて欲しいの」
『お前の方が気付きやすいだろうが了解した』
電話を切って部屋の外に出て新一の部屋の前に立つ。何もないといいのだけど。音を立てないように入ると彼は静かに寝ていた。まるで死んでいるのではないかというくらい静かすぎたため心配になって近づいてみるとパチリと目を開けてこっちを見た。急に開くものなのでびっくりして後ろに下がった。
「このような時間にどうかしましたか?」
「起きていたの?」
「いえ、寝ていましたよ。浅い睡眠状態だったのと人の気配がしたので」
この人を倒せる人なんているのだろうかと思いながらも生きていることに安心した。
「と言ってもちゃんと寝ていたらきっと起きられなかったと思いますが」
「じゃあ疲れている時に寝ていたら?」
「その時は危険かもしれませんが」
「私がいるから大丈夫ですわ」
カーテンの方から声が聞こえ開けてみるとそこには夜架の姿があった。なぜか和服のような格好をしている。そして何故新一の部屋のベランダにいるのかしら。
「新一様に危険が生じた際には私がお守りいたしますわ」
「と、まあこんな感じの人がいるから」
「なんで慣れてるのかしら。そもそもこれって」
「不法侵入なので毎朝処罰してます」
「むしろご褒美とも言えますが」
方向性を変えるかと悩む姿を見ていつも通りの新一だと確信を持つ。とりあえず寝るように言って部屋を出る。明日以降新一の様子を見ることを決めて自室へと戻り就寝した。
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黒く真っ暗で何も見えない。ただ意識だけはそこにあるようで周りには何もないように感じる。お嬢様と話した後夜架ちゃんの処罰方法を決めて寝ていたはず。なのに何故こんなところにいるのか、その答えはすぐにわかった。
明晰夢──自分が夢の中にいるということがきちんと自覚している夢のことである。おそらく今はその状態。だとしても何もないというのはどういうことだろうか。
「よぉ」
声がした。でも暗闇の中どこにいるのかわからない。
「探さなくていい。本当はわかっているはずだからな」
わかっているはず?
「俺はお前。お前は俺だ」
君は僕?じゃあ僕は
「俺だ」
訳が分からない。でも不思議と納得出来る。だからこそよくわからないものがまとわりついている感じがある。
「ま、これから一緒に楽しもうぜ──俺」
そこで目が覚めた。辺りを見れば自分の部屋にいるというのがわかる。けれど夢を思い出すと理解出来ない部分が多かった。僕はあの人であの人は僕。名前も知らない正体も分からない人なのに妙に納得がいってしまった。
まぁ考えても仕方ないかと朝ご飯の準備をしようとベットから起きあがろうとすると何故か重みを感じる。布団を捲ると僕のお腹に抱きついている夜架ちゃんの姿があった。いつも思うけどいつもどうやって侵入してるんだろう。とりあえず縛り上げて天井から吊し上げる。一仕事終えたことだし通常業務へと僕は戻った。
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時刻はお昼の二時。Roseliaの皆でお正月のバーゲンセールに来ていた。勿論新一も連れてきているのだが。
「京ちん何買うのー?」
「俺はなんか良さそうなものあったら買う程度だ」
「ゲーム買おうよー」
「あーパソコンは買うかもな」
京も来ていた。たまたま来たと言っていたがおそらく新一のことを気遣ってきてくれたのだろう。けどどうやって今日ここに来ることをどうやって知ったのだろう。
「宇田川に聞いたらすぐ教えてくれたぞ」
「多いほうがみんなで楽しめるかなーって」
「そうだねー⭐︎」
皆が納得しているので別にいいかと流そうとするとメッセージアプリの着信がくる。いざとなったらどうにかする、それしか書いていなかったが逆に安心感があった。京なら新一を止められるかもしれないという根拠のない自信があったが今までもどうにかしてくれたのだから大丈夫だろう。デパートに入ろうとするとジリリリと重い音が聞こえてくる。
「新一、いくぞ」
「方角から見てこの先の大通りみたいだね。お嬢様、失礼します」
二人が走って行く方を見るがなんの変わりもなかった。新一の様子を見ておきたいがどうするべきだろうか。すぐに逃げて欲しいのに近くに来るのは危険だからやめてほしいと言われたばかりだ。昨日も車の中で言われた。
「湊さん、気持ちはわかります」
「紗夜……」
「ですから比較的安全なところから見ましょう」
「紗夜?どうしてその考えになるのかな」
「今井さん昨日の名護さんの様子を見て心配なのは湊さんだけではありません。ですから心配な人は名護さんの邪魔にならないかつ安全な場所にいれば危険な目に遭いませんし名護さんも安心して戦えます」
「氷川さん、すごい……です………」
「紗夜さんかっこいい〜!」
「多分新一はそういうこと言ってたんじゃないと思うんだよな〜。でもあたしも心配だから行くよ」
「じゃあ紗夜の言った通りの場所を探しましょう」
新一たちの後を追って戦っているであろう場所へと向かう。確か大通りと言っていた。大通りが見えるところで危険でない場所を見つけると既に新一たちは戦っていた。だけどかなり苦戦しているのか攻撃しても弾かれている。
「京君、こいつ」
「亀のファンガイアかもな。前に戦ったがそれよりもかなり硬い」
「白騎士と骸骨、両方潰してやる」
「おっと俺を忘れるなよ?」
空から降ってきた白い物体は亀の頭に向かって攻撃を当てる。快斗はナイフを構えると亀の怪物は怪我なんか気にしていないように立ち上がる。
「流石に頭は柔らかいと思ったんだけどな」
「硬すぎるね」
「よしお前ら時間稼げ、あれをやる」
「「OK」」
快斗と新一が散開する陽に亀の左右につく。そのまま攻撃をすると手についている甲羅で防いでいるが二人はそれでも攻撃をやめなかった。京は大きく深呼吸を吸って腕を回して体を大きく捻る。
「鉄砕拳!」
亀は二人を薙ぎ払って甲羅を組み合わせて攻撃を防ぐ。衝撃が強かったのか煙で見えなくなったがその中から出てきた怪物の腕は何も変化はなかった。その光景に見ていた全員が驚きを隠せなかった。
「嘘だろ」
「チッ」
「お前らじゃあこの甲羅は壊せない」
「もっと威力を上げれば壊せそう?」
「いやキツイな。全力の鉄砕拳でこれなら石破天驚拳でやるしかないがチャージする余裕を作れるかどうかだな」
「やるってバレてるもんな。ん、待てよ?」
「どうした?」
「もしかしてあの手の甲羅を剥がせば防御力低いところ出てきて倒せんじゃね?」
「そりゃそうだろ。でも壊せないから」
「ちげえって、剥がすんだよ」
「ああなるほどってバカか!?」
理解はしたようだが二人が喧嘩しているように言い合いをしている。私にはわからないことだけどおそらく解決方法を見つけたのだろう。けどそれが簡単にできることじゃないって言ってる…ところかしら?
いつもなら言い合いをする二人を止める新一だが何故か止めずに黒い板のようなものを持って見つめていた。何かを決めたのかそれをベルトに挿して前に出た。
「二人とも僕がどうにか剥がしてみせるから剥がせたらすぐに攻撃して」
「えっ、どうするんすか」
「新一、それ本当に扱えるのか?」
「どうにかしてみせる」
「勝算は?」
「思いつきは数字で語れないよ」
新一はベルトに入っているナックルを押すとベルトから目の前に黒い十字架を出した。
『オ・ル・タ・ナ・ティ・ブ』
「なんすかその姿………」
「これが湊が言ってた」
「イクサオルタナティブ、
一瞬にして姿を消した新一の口調は変わっていて、次に姿を見せた時は怪物の悲鳴が聞こえた時だった。地面を踏みつけるようにファンガイアに足を乗せて左手についている甲羅に手をかけている。ファンガイアの痛々しい悲鳴が聞こえる中ファンガイアを思い切り踏みつけて抵抗する力を奪い二の腕を掴んで思い切り甲羅の部分を剥がした。断末魔のような叫びが耳に届く。
「アアアアァァァアァァァァァァ!!!!!」
「まずは一個か。もう一個もすぐ剥がしてやるからな」
淡々とした様子で持っていた甲羅を眺めて後ろに捨てる。そしてすぐにもう片方の腕からも甲羅を剥ぎ取りその辺に捨てるようにポイ捨てした。その様子に全員が絶句した。あれだけ優しかった新一がこんな残虐なことをしているとは誰も思えなかったのだ。
「おい、もう終わったぞ。攻撃の準備は出来たか……って何してんだよしゃーねーなー」
地面に踏みつけている怪物の首を持って空中に投げそのまま剣を持って叩き切るように剣を振るとファンガイアはステンドガラスになって消えた。いつも丁寧なあの新一がこんな獣みたいな戦い方をしている。それだけで信じられなかった。
「全く作戦通りに動いてくれよ」
「す、すみません」
「まぁこんな戦い方普段しないから驚いてても仕方ねぇな」
「お前、新一なんだよな?」
「当たり前だろ。
アークの時とはまた違う恐ろしさが感じられた。あの時は機械のように冷たかったが今はまるで獣がいるような不気味さだった。それだけで新一ではない感じがする。
「と、とりあえず変身を解きましょうよ」
「そうだな、終わったわけだしな」
「まだ終わってねぇぜ?」
「「え?」」
「せっかくだ、このまま模擬戦といこうぜ。そのままこれがどこまでやれるのかも見ておきたい」
「だとしたらウチの練習場使いましょうよ」
「いいや街に人がいないなんて状況はそうそうない。だとしたら使わなきゃ勿体無いだろ」
「お前本当に新一なんだよな?」
「俺、同じ質問されるの嫌いなんだよな。それじゃあよーい、どん」
新一は突如裏拳で京を殴る。そのまま快斗を攻撃し始めた。流石におかしいと思う私たちはどうして新一が攻撃し始めたのかわからないでいた。さっきまで普通に会話してたのにどうして………
確信を持った私は戦っている新一たちの元へ行く。飛ばされた京の方へとゆっくり歩いていた新一の道を遮るように立つと新一はわからないというジェスチャーをするように両手を挙げた。
「何してんのお嬢」
「あなたこそ何をしているの?」
「そりゃあ模擬戦だけど。てか戦っているところに近づくなって警告忘れた?流石にそこまでバカじゃないと思うんだけど」
「そんな警告より今はあなたのことよ。誰なのあなたは?」
「あーっと、時間かぁ今回は少し長めだったな」
「何を言ってるの?」
「いやこっちの話だ。それよりあ俺は誰かだっけか。さっきも言ったが俺は名護新一だ」
「嘘だろ」
「嘘じゃない。少し細かくいうなら俺は名護新一の一部だ」
その言葉を残すと変身を解除して中から新一が現れる。その場で両膝から崩れる姿を見てまた意識を失っていることがわかる。声をかけようとするとこちらを見てきた。
「………今、どういう状況ですか?」