青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第十一鏡 Black or White

 新一と深次が戦い始めた。いつもの戦いでは見られない立ち回りをしている。互いが互いなためか全ての攻撃が防がれいなされまるで次の攻撃が何かを予測できているように動いている。

そうだ、そもそもアイツは世界最強の執行者と呼ばれる存在。俺達とはかけ離れた存在だった。今さら隠すことのないスペックを何故アイツは隠そうとする?いやそんなことは今はどうでもいい。今はどちらが勝つかそれだけだ。

 

「鳴海君、快斗、悪いが君達にお願いしたいことがある」

「なんだ」

「ファンガイアが現れた。ドーパントもだ」

「こんな時に」

 

 快斗が言いかけた時高城の表情が変わる。持っていた端末を少しいじると真剣な表情に戻る。

 

「お願いの変更だ。たった今先程現れたファンガイアとドーパントの反応が消失した。しかし防犯カメラの映像に名護天斗の姿が確認された」

「今度はアイツかよ!」

「現在彼に関する情報は少ないが街に被害が出たら危険だ。迎撃してくれ」

「分かった」

「勿論絶対ではない、危険だと思ったらすぐ撤退してくれ」

「うっす!」

 

 モニターに背を向けて扉の前まで行くと扉が開く。そこには切姫が立っている。いつもの制服姿じゃない、和服のような着物を着ている。まるでけじめをつけに行くかのように。

 

「一応聞くがなんのつもりだ?」

「私も名護天斗の討伐に」

「今回の任務は迎撃だ」

「私は名護家からその命も受けてますわ」

「そうか」

「止めたりしねぇのかよ」

「言ったところで命令があるんだ仕方ないだろ。それに」

「それに?」

「こいつが今それをやるべきって判断したんだ」

 

 俺が部屋を一歩出ると切姫が礼をするように少し頷いて振り返る。

 

「切姫さん、あなたもいないときっと新一は寂しがるわ」

「安心してくださいませ。私、あんな人に殺されるつもりなどこれっぽっちもありませんわ」

 

 扉が閉まると俺達は走ってバイクのあるところに向かった。どれだけのことができるかわからない。それでも新一が来るまで持たせてみせると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「どうしたどうした、そんなんじゃ俺には勝てねぇぞ!」

 

 嵐のような剣撃を仕掛けてくる深次に対して僕は防戦一方になっていた。剣技が速いわけではない。一撃一撃が重いのだ。気を抜いて防げば持っていかれそうになる。

 

「勝つ気あんのか?」

「当たり前だ!」

「だったらもっと本気だせ!」

 

 振りかざす一撃を回避して距離を取る。そのまま走り出してタイミングを伺う。少なくとも速さではこちらが上回っている。僕と深次が別れることで力とスピードそれぞれ分けられる。今までは二人が一緒だったから同時に出せたのだと気付く。斬り込みに行こうとすると肩に刀を構えた深次が下から振り上げ灰を舞い上げる。視界が灰で覆われる。目に入ることはなかったが姿勢を崩されたことで攻撃を出せなくなった。

 

「おらっ!」

「くっ!」

 

 ギリギリのところで回避した僕は刀を鞘に収めて居合の構えを取る。同じように構えた深次はニヒルな笑みを浮かべる。それでも知るもんかと突っ込むと深次は刀から手を離して服の内側へと手を入れる。取り出す前に斬ればいいと迷わず進むとあるものを目にしてすぐに刀を抜く。飛び出してきたそれは弾かれたが当たれば即死だった。

 

「なんだ対応するか」

「それはそうだろう。何故そんなものが君の服にあるんだ」

「そりゃあここは夢の中も同然なんだろ?だったらイメージすればいいじゃねぇか」

 

 拳銃をくるくると回して僕に見せつける。環境を先に理解していたのは彼のようだ。

 

「っ……」

「まぁ面白くないようなことは考えようとも思わないけどな。つかお前もさっきやってたろ」

「何を言って」

「普通あの距離で灰をかけられれば失明するかも知れねぇのに今見えてるじゃねぇか」

 

 そう言われれば確かにと納得する。無意識とはいえただの目眩ましとしか考えなかったことが影響してるのだろうか。理解したところで切り替えていこうと中段の構えを取る。

 

「それじゃあ再開と行きますか」

「今度こそ斬り伏せる」

 

 再び殺し合いが再開する。今度は僕が深次を追い込んでいく。僕の速さに対応していく深次はきっと慣れた頃に銃を出してくるはずだ。だからそれまでに彼を怯ませる。

 

「速さで追い込もうってのはいい判断だ。だけどそれだけじゃ足りない」

「そうかな?」

「俺はもう十分だ」

 

 想定より早い段階で反撃できたと考えたのだろう。僕の刀を防いだまま片方の腕で銃を構えたがそんなことは想定の範囲内だった。

 

「なっ」

 

 僕は左手で刀を持ったまま右手で鞘を握り深次の左手にぶつける。銃がこぼれ落ちた音がすると同時に左手の刀で押しきると距離を取られた。

 

「やってくれるじゃねぇか」

「戦場の経験は負けないよ」

「それなら俺も同じなんだよな!」

 

 再び刃が混じり合う。獣のような刃を弾いては振り下ろす刃を受け流される。変わらず降り注がれる灰の中で僕達のボルテージは上がっていく。

 

「お前が強くなれない理由は何だと思う。それは感情だ。楽しむという感情を押し殺し自分の使命を優先するお前は遊び心がないんだ」

「それは」

「そうだ俺が持っている。だからこそ俺の方が強い!技術だけじゃない人の本当の強さを持っている」

「僕にもあるはずの力だ。なら僕にだって」

「そんなこと言ってお前は何も感じていないだろ。それじゃあ一生俺には追いつけない」

 

 遊び心、確かに遠い昔誰かに言われた気がする。それは仕事ではいらないものとして捨ててきていた。けどそれを必要だと彼は言う。そんなこと知ったものかとも思ったが一理あると納得する。だからこそ出せる上乗せの力がある。それを僕は体験したことがあるはずだ。その時の頃を思い出すと体が少し熱くなるのを感じる。ならばならばと答えが出てくる。

 

「僕が勝って君を受け入れる。そして遊び心を手に入れる」

「俺のをそのままにしても意味はないだろ」

「勿論僕のものにしてみせるさ。あの時体験した感情による上乗せの力、遊び心を手に入れればきっとそれと一緒に他の感情も理解できるようになる」

「好奇心か?お子様だな」

「今はそれでもいい。僕は君を手に入れてあの方の元へと戻る。あの人の思いに応えられるように。だから君を倒す」

 

 ベルトを巻いてイクサナックルを掌にぶつける。すると深次も同じようにベルトを巻きつけイクサナックルを取り出す。

 

「いいねぇ、お前もわかってきたんじゃねぇの」

「そうかもしれないね。ついでにもう一つ言っておくと、不謹慎かもしれないけど、今この状況が僕は楽しくて仕方ない!」

「それが遊び心ってやつだ!」

「「変身!!」」

 

 同時にベルトにナックルを装填する。金色の粒子が形を取り僕達を包んでいく。その光が消えると僕の目の前には黒い戦の姿があった。こうして見てみると初めて見たかもしれない。まるで禍々しさを表したようなイクサの鎧。それでも勝つとイクサカリバーを構えると深次は自分のイクサカリバーを投げ捨ててフェッスルを装填する。天に掲げた手には剣の柄が現れ体験を振るい肩に乗せる。

 

「俺にはコイツが性に合ってる」

「《偽・星閃天装》か………いいよかかってきな」

「いくぜいくぜいくぜ!!」

 

 横に振り薙ぐ大剣を避けて攻撃しにいく。その大剣すら体の一部のように自由に動かし攻撃をいなしていく。普通に攻撃してもダメージは入らない。システムの設計上オルタナティブは防御力が低くされている代わりに攻撃力が上がっている。逆にいうと確実に攻撃を与えられれば大きなダメージを与えられる。だとしてもあの大剣をどうにかしなければ話は始まらない。そう思った時ある物が目に入る。

 

「まさか攻撃できないとか言わないよな!」

 

 振り下ろされた大剣は積もった灰をっかき分けて地面を砕く。それを避けて転がりながらもう一本のイクサカリバーを回収して左手で構える。

 

「人の落とし物使うたぁいい度胸してんな」

「落とし物なんでしょ?じゃあ所有者に返してあげないと!」

 

 即効で懐まで近づき腹を狙いにいく。それも大剣で防がれるも今までなら防がれると同時に飛ばされていたが日本あることで止まるくらいの力を出せる。そこから顔面狙って蹴り上げると深次の体が宙に上がる。すぐにフェッスルを装填して僕は弓を取り出す。地面につけて位置の固定をして狙いを定める。

 

「《偽・殲滅天使》標準固定(セット)

「終わらせねぇぞ…出力最大、エネルギー収束!」

発射(ファイア)!」

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 白い光の柱が伸びていく。深次を包み込もうとしたその光は拡散するように光の束をいくつも作る。やがて消えると深次は地面に叩きつけられる。それでもすぐに立ち上がり剣を構えた。

 

「馬鹿な」

「甘いんだよ。ベースの武器は一緒なんだやり方くらい知ってるだろ」

「だとしてもあれで防げるなんて」

「お前は《偽・星閃天装》の真価を理解しきれていない。ほうら続けるぞ!」

 

 既にボロボロのはずの体でさも無傷だったかのようにあの大剣を振るう。改めて理解する。目の前にいるのは只人ではない自分の理想だけを追い求めている一匹の戦人だと。それなら僕も同じだ。だからこそ勝たねばならないと力を込め直す。

 

「もうあの弓は使わせない。標準を定める前にお前を砕いてやる」

「ならその前に君を倒す」

「そんなことできると思うのか?」

「やらなきゃ君は倒せない」

 

 再び剣を振り斬りかかる。大剣で両手が塞がっている分動きに支障が出るだろうと考えもしたがそれ以上に体の動きでカバーしてくる。隙をついたと思えばあろうことか片手で大剣を振り回す。人間であることすら忘れているのではないかというくらいの力の使い方だ。そんな化け物に勝つことが出来るのか怪しくなってくる。それでも勝つのだと気を引き締め治すと賭けを思いつく。かなりのリスクを用いることになるがそれでもやってみようと二つの剣をガンモードに変えて構える。

 

「そろそろ終わらせようか深次」

「勝った方の人格が本物になる、俺らの感情をぶつける時だ!」

 

 銃を乱射して距離を詰めていく。そんな中来るのが分かっているだろうに技がバレやすいであろうカウンターの姿勢を取っている。銃弾はあくまでフェイクだとバレたかそれでも倒してみせると自分に言い聞かせスピードを上げていく。二天一流というほどの実力は持っていない。それでも剣なら上手く使いこなしてみせると二本とも横に薙ぐとカウンターと思っていたはずの攻撃の構えが解かれる。大剣を手放し手に構えていたのはイクサナックル。

 

『イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

 

 防御の姿勢もできないまま体に撃たれるそれは体に重く響いてくる。気合いでイクサカリバー二つを胸の前でクロスするように持つと溶けていくのが分かる。きっとイクサシステムも同じようになっているだろう。装甲がひび割れていく音が聞こえ砕ける寸前の音が聞こえると攻撃が止む。

 

「今のを耐えんのかよ!それでも次で終わりだあああああ!!!」

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。身体中が攻撃の影響で痛い。剣は溶けてしまった。鎧はひび割れていく。自分の武器などもうないと思った瞬間二つも視界にあることに気づく。迫ってくる大剣、これをそのまま受ければ絶対に負けるだろう。正直現状負ける確率の方が高いだろう。

 

「だとしてもっ!!」

『《偽・星閃天装》』

「なっ!?」

「フェッスルってのはこういう使い方もあるんだよ!」

 

 フェッスルで呼び出した深次の大剣を手にしてぶん投げる。深次は即座に回避して体制を立て直すがすぐに蹴り飛ばしたため位置がずれる。

 

「そんなんで勝てると思ったのかよ!」

「いいや勝つさ。既に勝利は決まっている」

「そんなことが」

 

 嘲笑うかのような顔をした深次を光の柱が包み込んだ。この光ならきっとあの装甲は耐えられないだろう。十秒経った頃に光は消えていきボロボロになった鎧を着ている深次の姿が現れた。そこに座り込み無気力のように寝っ転がる姿は状況を理解できていないようだった。

 

「なん、で………」

「最初に奪った剣で弓の方まで投げた。当たるかどうかは一か八かだったけどその後に蹴り飛ばして射線上で立ち上がった時に見たら射出口に光が収束していた。君の鎧じゃあの弓の威力には耐えられないだろう」

「くそ、最初の二刀流はブラフか」

「いや本気だったよ。それでも剣に固執せず必ず倒すことしか考えてなかった。そしてなにより、意地でも勝ってやるって気持ちが勝ったと思う」

「ああそうかよ。ならお前の勝ちだ」

「ありがとう。そしてさよなら」

 

 もう一度大剣を呼び出しすぐに剥き出しの肉体に大剣を振るう。戦場と同じように、躊躇いを消してすぐに命を取る。灰が降り止むと徐々に意識が消えていく感覚がした。

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