青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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今年最後の投稿です。


第十二鏡 黄昏時

「そこまでだ名護天斗!」

 

 現場に到着すると黒いスーツの男が二人血を流して倒れており片方の上に奴は座っていた。ドーパント共がいたせいか回りに一般人はいないのが幸いだった。

 

「なんだ、やっぱ新一はいねぇのか」

「新一さんは休憩中だ。だから今は俺たちの相手をしてくれよ」

「別にいいけどよ。アイツいねぇと準備運動にもならねぇぜ?」

 

 出される威圧感が違う。あの余裕そうな面を見ると身体が強張りそうになる。無理矢理にでも動かそうと気合いを入れ直す。

 十分後、俺達は満身創痍に近い状態になった。俺がなんとか立ち上がれるだけで他の二人は動けなくなっていた。

 

「ただの人間に負けるとはどういうこった」

「こんなのが人間なわけねぇだろ…」

「ハハハ、確かにな。でも俺お前には期待してたんだぜ?鳴海京」

「………」

「この中でならお前が一番やれると思ってたんだけどな」

 

 余裕を見せるアイツに苦し紛れに銃を撃つがあたりやしない。そのまま気合いで立ち上がり銃を投げつけるが軽く躱される。だがそれでよかった。一瞬でも隙を作りたかったから。

 

「鉄砕拳・骸の型!」

 

 骸骨を作り出し弾丸のように拳から撃ち出す。だがそれも虚しく刀で軽々と弾かれてしまった。

 

「この技、俺もやってみてぇな」

「なっ」

 

 そう言って奴がとった姿勢は俺が読んだ書物の構えそのままだった。かなりの圧を感じる。すぐに骸の盾を用意すると衝撃の塊がやってくる。

 

「鉄砕拳!」

「ぐっ……!」

 

 両手で防いでも押し負けそうになる。ただ耐え切ることは出来そうだったからそのまま受け流そうとすると目の前に影が現れる。もう一度同じ姿勢をとった天斗の姿が目に入る。

 

「鉄砕拳・零」

 

 今度は盾との間など無いに等しいゼロ距離で打ち込んでくる。当然そのまま防ごうとするが奴の威力は凄まじく骸の盾は砕かれたガラスのように崩壊した。反動で隙だらけになった俺はそのままエルボーを決められて二人の方へ飛んでいく。

 強すぎる。人の技を見よう見真似で使えるくせにそのまま力を上乗せしてきやがった。新一が一瞬でやられるのも納得がいく。

 

「やっぱ新一連れてくるべきだったんじゃねーの?」

 

 手を叩く名護天斗はまるで仕方なくやった仕事を終わらせたかのようにつまらなそうな顔をしていた。前々から思ってはいたが生身でライダーシステムとやりあえるってどういう神経だよこいつ。

 

「夜架ちゃんはともかく仮面ライダーのお前らには期待してたんだけどな」

「くっ……」

「じゃ、まずは一番ハズレのお前から殺すか」

 

 刀を一振るいして切姫の腹を踏みつける。グリグリと腹を抉るようにして切姫の悲痛を楽しんでいる。

 

「その声新一にも聞かせてやりたかったぜ。安心しな、新一もすぐに送ってやるから」

「私は……あなたなん……かに………」

「あの世ならお前の望みも叶えられるだろ。だからこのまま死んだ方が得だぜ?」

「それでも……私は………!」

 

 せめてもう少しだけ時間を稼ごうと動こうとするが体が言うことを聞かなかった。すまん新一、俺のせいでーーーー

 そう思った瞬間、必死の抗おうとしている切姫目がけて振り下ろされる刀が甲高い音を立てて止まる。誰かが奴の刀を受け止めている。天斗が目を見開いたがニィと口を歪ませて力で押し切ろうとするが割って入った者によって押し返される。ついでに斬ろうとしたのか横に振った剣はバック転で躱されたが余裕そうな態度ではなく戦闘態勢を構えていた。

 

「ごめん夜架ちゃん、二人とも。ーーお待たせ」

「たっく、遅えんだよ!」

「ナイスタイミングです!」

「新様!」

 

 この状況を挽回したのはさっきまで寝ていたはずの新一だった。どこかスッキリしたような爽やかな雰囲気を纏っている。俺達が知っている新一らしい姿だ。

 

「なんだ生きてたのか」

「死んだ扱いしてたのか?」

「コイツらが休憩中だのなんだの言ってるから隠してたのかと思ったぜ。それにあの時撃ち込んだ一撃は早々痛みが取れるものでもないだろ」

「新様まさか無理して」

「まさか。コイツに食らった痛みなんてすぐに治るよ」

 

 普通に動けると様々な動きをするが多分無理していると思う。ブラフになるかもわからないがそれでいいならそれを信じようと考える。

 

「てかもう一人のお前はどうした?ちゃんと殺してきたか?」

「ちゃんと殺してきたよ。だからここにいる」

「そうか、残念だ。アイツの方がお前より楽しみがいがあったんだがな」

「そっか、なら仕方ないね。だが生憎楽しんでもらうつもりはない」

『レ・デ・ィ』

「変身」

『フィ・ス・ト・オ・ン』

 

 イクサシステムを纏った新一はバーストモードへと変化して中段の構えをとる。剣の鋒で天斗を見据えていつも以上の殺気を放つ。まるで全ての憎悪を奴にぶつけるような勢いで。なのに俺達が飲み込まれそうになることはない。殺気の当て方が上手くなっている。あの後一体何があったんだ!?

 

「ここで死に晒せ」

「お〜怖いねぇ」

「さぁショウタイムだ!」

 

《ここからは『R』を聴きながら読むことをお勧めします》

 

 そのまま跳んで攻撃をしにいくのかと思いきや天斗の前で着地して剣を振り上げる。回避されたかと思えばまとわりつくように体を動かして攻撃を続ける。その戦い方はまるで獣のような戦い方いや、深次の戦い方そっくりだった。力で一度押し勝つと今度は型に嵌めた様な剣の動きになる。真っ直ぐな動き方はまさに新一の戦い方。二人分の戦い方が交差しながら天斗に襲い掛かる。

 

「やけっぱちになったわけじゃ無いよな?」

「違う。あの動きはちゃんと自分なりの戦い方を理解している」

「ではあの新様はどちらなんですの!?」

「どちらかじゃねぇ、どっちも(・・・・)だ!」

 

 新一と深次、二つの魂が合わさった一つの存在として攻撃を繰り出す。今まで分裂していたものが一つになり可能性が一つから二つへと増え続けるようにアイツの中での変化は底知れない状態になっている。

 

「なるほどなぁ文字通り受け入れた(・・・・・)ってことか!」

「それを知ったところで!」

「チッ」

「今のお前に対応出来んのか?」

「深次…!」

「僕達は貴様を超えて奴を倒しにいく。だから終わることなど許されない!」

「忘れたのか新一、深次はお前にとっての闇だということを!」

「覚えているさ。されど僕は彼であり」

「フン!」

「コイツは俺だ」

 

 剣を振るう新一は深次と交差するように言葉を連ねていく。まるで二つの意思は常の同調している様に

 

「たとえどんな奴が来ようとも 正しい道を選んでみせる」

「チッ、やりづれぇ!」

「その間に出てきたものがどんなものでも 一つずつ繋げていけば 折れない翼へと育つ!」

「本当に覚醒したってことか新一。面白くなってきたぜ!」

「貴様との因縁もここまでだ!」

 

 新一の攻撃が激化していく。新一のように隙を作らせない速さと深次のような荒れ狂う強烈さが連続して攻撃する。全て防いでいるように見えたが少しずづ押していっている。全員で声を上げるとそれに合わせて新一も攻撃を増していく。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 地を揺らすような轟音が聞こえると新一のいた場所が土煙で見えなくなる。やがて土煙が晴れると天斗の姿がなくなっていた。どこだと辺りを見回すと建物の上から俺達を見下ろす影があった。一瞬であの場所まで行ったわけじゃ無いだろうが余裕そうな顔で俺たちを見ている。

 

「ヒヤヒヤしたぜ。だがこれでやっと戦えるステージまで上がってきたな新一」

「詰めが甘かったか」

「制限解除ってのはこういうふうにも使えるんだ。後の三人はまだまだだ。だが新一覚えとけ、お前もまだ俺と同じレベルでは無いということを」

 

 そう言って姿を消した名護天斗を誰も追おうとはしなかった。残りの体力を振り絞り全員集合すると地面に座り込む。

 

「なんとかなったね」

「惜しかったっすね。見ててちょー悔しいっす」

「それは新様が一番だと思いますわ」

「まぁね。でも今は間に合ってよかったと思ってる」

「本当に吹っ切れたんだな」

「お陰様でね。皆ありがとう、こんなに危険だとわかってたのに気遣ってくれて」

 

 苦笑いするも仕事だからという理由で全員が片付けた。だが全員名護天斗から受けた傷は思ったよりも大きく安静にしていてもかなりの激痛が襲ってくる。

 

「鳴海様は大丈夫なんですの?あれだけの技を食らって」

「そうだ、骸骨砕かれたろ」

「骸の盾壊されちゃったの?」

「ああ、おかげで反動ダメージまでくるが仕方ないだろ。あとここまできたせいで動けなくなった」

「あっはっは。全く京君も人のこと言えないなぁ。無理するなとかさ」

「そういう新様はかなり無理してるんじゃないですか?」

 

 急に笑いを止めた新一は笑顔のまま口から血を流す。状況を見てわかった。コイツ無理どころか目を覚ました瞬間急いできた上にあれだけの動きをしたことで傷口が開きやがったと全員が察した。

 

「先に逝ってる。せいぜい頑張って」

 

 バタンと倒れた新一の顔色は悪くなっていく。

 

「おい、それ言えるのは戦ってる時だからな!絶対今じゃないからな!」

「先輩早くきてください!メディックメディーック!」

「新様ー!新様ー!お気をしっかりなさってくださいましー!」

 

 さっきまで気を失いそうなくらい体力がなくなっていたのが嘘のように全員が慌てふためた。すぐに黒服の人達が現れてもれなく全員弦巻家の医療施設に放り込まれる羽目になり絶対安静が解かれるのに仲良く三日間もかかった。

 絶対安静が解かれた一週間後俺らは退院した。病院食は不味いって聞いたけど俺達の場合完全に栄養管理がされていたのでそこまで不味くはなかった。好き嫌いをする奴がいたから無理やり食べさせたり暇な時間をトランプで潰したり、しばらく戦いを忘れたような生活を送っていた。そして退院した翌日の放課後サークルに集まったRoselia +退院組が集まった。

 

「姐さん久しぶりっす!」

「久しぶり〜ってそうじゃないよ大丈夫だったの!?」

「ゆーて俺らも鍛えてるしな。舐められてたのもあるのかも知れんが打撲が多かった。全員ヒビまでは行ってなかった。一人大動脈出血起こしかけてた奴いたけど」

「それ以上言うんじゃない」

「自覚があって何よりですね。大道さん、担任の先生から課題を預かっていますので後でお渡ししますね」

「げっ、なんで俺だけ」

「数学の小テストに出席していなかった分だそうです」

「ふざけるな、ふざけるな、バカヤロー!」

「誰に向かって言ってるのかはっきりお願いします」

「あっ、すみませんでした」

「あやまるのはやっ」

「新一さん助けてください」

「紗夜さんが教えてあげたらどうですか?」

「それもいいかもしれませんね」

「えっ」

「切り替えろ、一回真面目な話するぞ」

 

 雑談をしていた中、京君が指パッチンすると全員の意識が切り替わる。議題は勿論新一についてだ。

 

「結論から聴くか、どうなった?」

「えーっと、共存してます」

「共存?」

 

 聞き返すと深く頷く。言っていたことを実現させたのだと感心すると同時にリスクについて考える。

 

「深次と一緒ってこと?」

「うん」

「でもそれだと乗っ取られるリスクがあるじゃないですか」

「そういやあの戦い勝ったのは新一さんでいいんすよね?」

「そう…です……」

「なら契約かなんかあるんじゃねぇか?」

「ただで野放しにしてるわけでもないだろうしな」

 

 あははと苦笑いする新一は指を三つ立てて話を続ける。

 

「一、知識や記憶を共有すること。二、許可無しに表にでないこと。三、迷惑をかけた人に謝ること今後迷惑をかけないこと。以上三つを契約内容にした」

「なんか意外と簡単すね。そんなんでいいんすか?」

「受け入れると決めたからね」

「新様らしいですわ」

 

 全員納得すると新一は指を鳴らす。するとカクンとシャットダウンしたように首が下を向いた。すぐに面をあげるが気まずそうな表情をしていた。この感じだと変わったと思われる。

 

「深次の方の名護さんで間違いないんですよね?」

「その言い方されると面倒だがその通りだ」

「じゃあ許可が出たってことか」

「契約内容の執行だがな」

(早く謝りなさい)

「へいへいわかってますよ」

 

 まるで独り言のように喋っているが新一と会話しているということが伝わってくる。歩き始めるとまずは氷川のところに行った。

 

「……悪かったな。いくら練習のためとは言え力加減をしなくて」

「いえ、こちらも見抜けなかった落ち度がありますので」

「お嬢と燐子も悪かった。新一の体で遊びすぎた」

「別にいいわ、あなたも新一だもの」

「私は……許さない…」

 

 驚いた。てっきり白金も許すもんだと思っていたから動揺する。

 

「新君と同じでも……やっていいことと悪いことがある…………だから、それがわかるまで、私は……許さない……」

「……わかった」

 

 白金のところから離れると今度は今井のところに行く。当然今井も深次のことを睨んでいる。

 

「お前が新一に対してどんな感情を抱いているかを知った上で取った行動全てに対して謝罪する。すまなかった」

 

 深々と頭を下げているがそれでも今井の口から出たのは許しではない。

 

「絶対に許しはしない。あんたのせいで友希那と喧嘩したり皆に迷惑かけた。でもそれはちゃんと気付けなかったアタシも悪い。だからおあいこ……ってことにしよう」

「……」

「それでいいのか今井」

「ホントはもっと言いたいこともあるけど、でもこの人も新一だから」

 

 そうかよと一言小さな声を出すと目を瞑った。目を開くと新一らしい穏やかな目に戻る。

 

「ごめんリサ、気を遣わせちゃった」

「いいの。今回はアタシにも非があるから」

「ま、こんくらいにしとこうぜ。これ以上はきっと清算しきれないだろうしな」

「それが一番ですね」

「それじゃあ今日は解散にしましょうか」

「じゃあ総決算終了ってことで」

 

 一息ついて外に出ると意外な人物が目の前に現れる。そいつは息苦しそうにしながら手を伸ばした。

 

「ここにいたのか、京」




一年間ありがとうございました。来年には二年生編はきっと終わってます。これからも何卒よろしくお願いします。では良いお年を
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