私はあの後、名護さんのバイクに乗せてもらい、家まで送って貰っていた。名護さんから話があるとは言っていたものの、全然話そうとしない。あの場所から離れて数分が経過した。そもそも何故名護さんがバイクを持っているのかが分からない。ふとした疑問をぶつけてみることにする。
「…あの、名護さん」
「はい、なんですか?」
「何故…バイクを持っているんですか?」
「ああ、バイクの免許って16歳から取れるんですよ」
「いえ、それは知っていますが……」
「ん、じゃあ何故所持しているかですね」
私は小さく頷いた。
「それはですね、知り合いから贈られたんですよ。入学祝いだって」
「入学祝い……」
「と言っても、贈られたの最近なんですよね。一年くらい前に免許取らせておきながら」
凄いでしょ?という口調で名護さんは苦笑いしながら説明してくれた。それをしてくる知り合いの人も凄いとは思いますが、それを乗りこなしてる名護さんも十分凄いと思うのは私だけでしょうか……。疑問を抱いていると名護さんが話しかけてくる。
「それだけですか?あ、あと次の信号は?」
「あ、いえ……あと信号は右に曲がってまっすぐで」
「了解です」
「それで…あの、話って」
「やっと触れてくれたんですね」
「!まさか触れるまで、わざと話さなかったんですか?」
分かっていたかのように話す名護さんに対して疑問を投げると、彼はからかってくる様に答えを出してきました。
「はい、申し訳ございません。てっきり、聞いてくるものかと思ってたので」
「………」
「はは、すみません、本題に入りますね。単刀直入に聞きますけど、今日、紗夜さん集中出来てなかったですよね?」
「……はい」
「それって例の妹さんのことですよね」
「………」
触れられたくない事実を突き出された私は目を逸らしました。それを察したのか、名護さんは謝るように言葉を続けました。
「触れられたくないんですよね、ですがあえて触れさせて貰います」
「……分かってるのにですか?」
「鬼とでも言いますか?」
「……いいえ、出来れば触れられたくないですが」
「本題に戻りますね。悪魔で直感ですが、それってまわりからのプレッシャーですよね?」
「……はい」
「あまり言いたくはありませんが……話の通りだとあれですよね。妹さんと比べられてそれでプレッシャーを感じてる、的な……」
「…その通りです。あの子は…私のやることを全て真似して、私を軽々と越えていくんです」
「……やっぱり」
「え?何故止めるんですか?」
考えていた通り、の様な言葉を残して名護さんはバイクを止めました。何故このタイミングで止めたのか、意味がわからなかったため質問すると意外な答えが帰ってきました。
「いえ、少し喉が渇きまして。紗夜さん、何がいいですか?」
「そ、そんな、自分で出します!」
「良いんです、奢りますから。何がいいですか?」
「えっと……じゃあ、お茶で」
「分かりました」
「あ、ありがとう…ございます……」
「気にしなくて良いですよ。さて、お話の続きですが」
「………」
私が沈黙すると、そこには意外な答えが返ってきました。
「僕にも、そういう経験はあります」
「…えっ?」
「といっても、ホントに何でも出来る癖に何もかも押し付けてくる奴なんですけどね」
「そう…ですか。名護さんも………」
「僕は、そいつのことが好きでした。何でも出来ることを尊敬してました。ですが、ある時を境に嫌いになりました」
「それって……」
「あ、それについては今は話せないんですが……いずれは話す………かもしれません」
名護さんは隠し事が多い気がする。この前助けに来てくれたときや今回のこの話。今まで疑問になっていなかったが、何故名護さんは湊さんのところにいるのでしょうか。執事などとは言っていたものの家族とかはどうなってるのでしょうか。
「そういえば、名護さん……ご家族は………?」
「それも、いずれ………」
お互いが沈黙になったあと、しばらくしてから、彼の口から衝撃の言葉が出てきました。
「紗夜さんは、妹さんを、憎んでますか?」
「!?」
「恨んでますか?」
「……」
「妬んでますか?」
「……」
どんどん言葉を出してくる。名護さんの出すその言葉が私に、私の心にナイフの様に突き刺さる。彼はどのような心情でこの
「それとも…」
「そうですよ……私がどれだけあの子と比べられたか!どれだけあの子だったらと考えたか!なんでこんな目に遭わなくちゃいけないんですか!?しかもあの子は何でも真似ばかりしてくる!私は、その度その度に………!」
「紗夜さん、その気持ちは大いに分かります」
「だったら何故!?」
「だけど!その気持ちは、自分をどんどん……黒くさせます……」
「そんなこと……」
「黒くなればなるほど、堕ちていくんです………ですから一つだけ言わせて下さい。視野を広げてください、と」
「…え?」
「それだけです。すみません、こんなに時間をかけて。しかも余計なお節介まで」
「…そうですね、無駄な時間でした。送っていただきありがとうございます」
「え、まだ家まで…」
「すぐそこのマンションですので」
「あ、はい……」
名護さんに対してお礼を申し付けた後に私はその場から早く去るように歩いて帰りました。何故こんなことを赤の他人に言われなければならないのか。その怒りを覚えながら帰ることになってしまいした。
「あーあ、なんで僕ってこうなんだろう」
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「は一、また100点かー。つまんないの一」
「……もう、日菜ってば。みんな100点の方が楽しいんだからね?」
(ヒナ……。特に仲がいいって程じゃないけど紗夜と何かあったのかな……)
今日の授業は小テストの返しから始まった。日菜からいつも通りの言葉が出て来るとアタシは考え始めた。紗夜はなんであんなことを言っていたのか。日菜とは正反対の様な性格だからこそなのか。疑問に包まれているとクラスの友達から話しかけられた。
「リサーっ、これ見たよ一っ!『一一新星バンド、Roselia』!!」
「えっ、何この記事……『孤高の歌姫《ディーヴァ》友希那がついにバンドを結成』……?」
渡された雑誌には先日行ったライブの写真と記事が載っていた。全くもって知らなかったアタシはびっくりした。
「もー、本人が知らないってどーゆーことー?他のクラスでも超騒がれてるよ!湊さんって、こんな有名人だったんだね」
「ま一友希那はね……。ってゆかアタシも載ってるの!?うわー、この写真全然盛れてないし~……下がるなぁ」
「いやいや、写り以前にリサさー、もっと気にした方がいいことあると思うんだけど…」
「──ん?」
気が付くにはそんなに時間はいらなかった。この写真は他の人も絶対感じているはずなので聞いてみたいと思った。この記事を知ったアタシはあこ達に知らせ、放課後にお茶会を開いた。
「友希那さんも紗夜さんも、連絡したのに来ないなあ…祝! Roselia、雑誌掲載記念お茶会!」
「ふ……ふたりとも……『そんな暇ない』って………」
「新一さんは?」
「ぼ……『僕は何もしてないから』って………」
「そんなこと無いと思うけどねー」
「そういえばさ、二人とも雑誌見てー……ど一思った……?」
来てない三人のことを話している二人に、さりげなく雑誌のことを聞いてみることにする。
「あ、えっと、えーっと……あ! 友希那さんの『孤高の歌姫』って超カッコイイって思った!」
「あ、あれは……確かに……カッコよかったよね、あこちゃん……」
何故か二人からは誤魔化そうみたいなオーラが漏れているのが見えた。正直わかっているなら言って貰わないと傷付いてしまう。
「ちよっ……ねえもう、なんかそうやって誤魔化されると余計凹むからさぁ~。はっきり言っていいよっ、二人とも!」
「じゃあ……言うけど………リサ姉だけ、ギャルっぽくて浮いてる……」
「ううっ!やっぱり……友達が言ってた通りか~」
「……で、でもでもっほらっ!紗夜さんも演奏はあんななのにちょっと地味だしっ、なっ、なんていうかさ!リサ姉だけじゃなくて!」
「……統一、感……?」
必死にフォローしようとしているあこに燐子がフォローに入った。けれどもその言葉がある考えに繋がった。
「なるほど……さっすか燐子!それだよっ、Roseliaに足りないのは!……でも考えてみると、燐子と友希那って、結構服の趣味似てない?二人ともモノトーンコーデだし」
「あっ、それならあこも一緒だよ!」
「ええ?あこはちょっと、ほら……」
「だって、あこのこの服、りんりんに作って貰ったんだもんっ!りんりん、結構自分の服も作れるんだよ?」
「えっ! それって結構すごくない!?これ全然、手作りってわかんないじゃん」
「わたし……いつも……家にいて……時間が……あったから」
「あっ、ひらめいちゃったかも!……Roseliaで、バンド衣装作るってどうかな?」
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今日はcircleにてお嬢様と二人で来ていた。今日は個人練習の日ではないのだが、紗夜さんは個人練習するので欠席、他の三人は雑誌に載ったことの記念お茶会らしい。お嬢様以外に演奏出来る人がいないので僕が代わりに演奏している。ガッツリやっていないため、完全に出来るわけではないが「軽くで良いからやりなさい」というお嬢様からの命令を受けて演奏している。因みに今日はベースである。譜面を見ながらやらせてもらっているが、時々お嬢様の顔を見るとうかない顔をしていた。
「──♪」
(だめ……こんなんじゃ全然、お父さんのバンドにはかなわない……!)
「ーーつ。……こうやって……私は…音楽と……真剣に向き合えないから……っ!」
「お嬢様…?」
「なんでもないわ、あとどれくらい?」
「あ、はい、あと五分くらいです」
「分かったわ」
そう言ってお嬢様の片付けの指示を受け入れて片付けをし、カウンターまで鍵と借りたものを返却しに行く。
「Cスタジオ、空きました。いつもありがとうございます」
「お疲れ友希那ちゃん、新一君。今日は個人練かな?最近特にかんばってるね。Roselia、どう?」
「まだまだ理想のレベルにはほど遠いです」
「友希那ちゃんは理想高いからなー。ずっとやりたかった、バンドだったら余計……?」
話しているスタッフさんは僕たちより後ろの方を見ていた。その視線の先にはスーツを着た男性の姿が映っていた。その人の方向に体を向けると、その人は話しかけてきた。
「すみません。ちょっとよろしいでしようか。友希那さん、少しお時間いただきたいんですが」
「失礼ですが、どなたでしょうか?まずはお名前をお聞かせ頂けますか?」
「私、こういう者です。率直に伝えますが、友希那さん、うちの事務所に所属しませんか?」
渡された名刺には某事務所の名前とその人物の名前と思われる文字が写されていた。渡された直後にスカウトを受けたが、お嬢様は興味の無い目をしていた。
「事務所には興味ありません。私は自分の音楽で認められたいから」
「と、言うことですのでお引き取り願えますか?」
「待ってください! あなたは本物だ!!私……いえ、私達なら、あなたの夢を叶えられる!一緒に、FUTURE WORLD FES.に出ましよう!」
「「……!?」」
突然の言葉にその場にいた誰もが硬直した。スカウトを断られるなり出て来た言葉は、お嬢様の夢の舞台へのチケットのようなものだった。
「覚えてないかもしれませんが、あなたの2回目のライブの時に断られてるんです。でも諦められなくて……色々調べて……バンドにこだわっていることも知っています。だからあなたの為のメンバーも用意しました」
「あ…貴方、あの時の……」
「友希那ちゃん、これってつまり、メジャーデビューじゃ……」
「コンテストなんて出る必要ない本番のフェスに出場できるんです!ステージだって、メインステージです!お願いします! 友希那さん……!」
「……私……は……」
(お父さんの夢だったフェスに、バンドで出られる……!なのに……なんで……?わたし……)
事務所の人の言ってることはまるでF.W.Fへのシード枠のチケットを手に入れられると言っているのと同じだった。こんなことがあり得るのだろうか。いや、普通のレベルではあり得ない。お嬢様のレベルだからこそこれは起きたのだと感じた。こんなことを言われたら誰だって着いていくだろう。だが、お嬢様の方を見るとそれとはまた別の表情をしていた。
「確かに……Roseliaでは、次のFUTURE WORLDFES.でメインステージに立つことは難しい。(なぜ言い訳をしているの、私。この事務所に入れは確実にフェスに出られるのよ……!)」
「…お嬢様?」
「……友希那さん?すみません、何か気に障るようなことを言いましたか?」
「少し……待って欲しい。……!?(私、何を言ってるの?フェスに出られる、これ以上ないチャンスを……!)」
「わかりました。友希那さんの中で答えが出る時まで、いくらでも待ちましょう。じゃあまた、ここに来ますから」
「……わかったわ」
事務所の人との会話が終わり、その場を離れて真っ直ぐ家に向かって歩いていると、お嬢様はずっと下の方を向いていた。僕の中では疑問が生まれていた。何故お嬢様は目標地点であるフェスに、しかもすぐにメインで出られるのに引き受けなかったのか。それだけがずっと引っかかっていた。なので疑問を投げようとしたが。
(私……なぜ……引き受けなかったの?待たせて、どうするの……?)
「…お嬢様」
「………何?」
「…いえ、なんでもないです」
「そう……」
ずっと下を見てるお嬢様を見て、質問するのを辞めた。おそらく、お嬢様自身も考えているのだろう。だとしたら聞くべきではないのではないかという結論に至った。特にすることもないので道中にファンガイアが出てくることに警戒しながら進んで行くと、無事に家の近くまで着くことが出来た。家の方を見ると少し手前の方に女の子の姿が見えた。よく見るとその姿はリサだった。
「あれ?友希那と新一じゃん。おかえり~!今日のお茶会、楽しかったよ☆」
「あこも燐子も行ったそうね。あなたたち、今日の練習、しないつもりなの?」
「みんな家でやってるってさ!アタシもこれから!それより友希那、アタシ達から一個提案があるの!」
「──?」
「Roseliaの衣装、作ってもいい?」
唐突なリサの提案、友希那は受け入れるのか。
紗夜は新一の言葉を受けてどうなったのか。
次回
「私にとっての音楽」
次回もお楽しみに。もしよろしければお気に入り登録だけでもよろしくお願いします!
壁の色を変えるとしたら?
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色分け
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上塗り