青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第十四鏡 鳥が運んできたもの

 昼下がり、ライダー三人は病院に呼び出される。皇獅郎の容態が回復したとのことだ。夜架ちゃんは別の案件で来ることは叶わなかったが皇のことなら三人で事足りるだろうとなった。隔離されている病室に入ると壁から鎖で繋がれた手錠をした彼がヘッドの上に座っている。病衣になっていることから最低限の装備しかしていないことがわかる。

 

「よぉ、揃い揃ってんな」

「どうやら本当だったみたいだな」

「まぁ……な」

「どういうこと?」

 

 京君は入り口近くにあった椅子を取ってきて膝を組んで座る。僕達も同じように椅子を取ってくると話し始める。

 

「今年に入ってからこいつと話すことがあってな。どうやらその時より悪化してるようだな」

「悪化?」

「もしかしてメモリの副作用か?でもコイツは」

「その通りだ」

 

 皇はナスカメモリを使用し続けレベルを上げていった結果それに伴って毒素が強くなっていき彼がつけているドライバー、ガイアドライバーの毒素の除去可能範囲を越えてしまったらしい。ガイアドライバーにもロストドライバーと同じ効果があったことから開発元は同じではないかと考えられる。

 

「待って、そしたら二人が使ってるドライバーって」

「そうだな。それは俺も思った」

「なんのことっすか?」

「話の流れでわかれよバカ」

「お前っ、人が手を出していないからってコノヤロウ……」

「捕虜ってわけじゃないけど手を出しちゃダメだからね」

「覚えとけよ…」

「話を戻すぞ。二年前に俺がライダーになったそれよりも前にコイツがベルトを持っていた。快斗、お前がライダーになったのはいつだ?」

「一年半前……まさか!」

「その通りだ。コイツのベルトの正体は俺達のロストドライバーの原型だ」

 

 やれやれとでも言いたそうな仕草をする彼は再び口を開く。

 

「そういうこと。つまり俺のドライバーはお前らのドライバーのプロトタイプだ」

「じゃあその設計図を手に入れた人が京君と快斗君のドライバーを作った人……」

「もしくは情報を流した奴がいるってことだ。その点はあいつに聞けばすぐだろ」

「そうだな」

 

 快斗君はすぐにスマホを取り出して電話をかける。スピーカーモードにして待っていると電話が繋がり目当ての人の声が聞こえた。

 

『状況はモニタリングを通してわかっているよ』

「じゃあ応えてもらおうか。ロストドライバーの設計図を手に入れたのは誰だ?」

『少なくとも私ではないね。元々アクティブなタイプではないし、私ならこういう情報はネットで拾える環境には置かない』

「園崎家の裏切り者が流してきたってことだな」

「だとしたらどうやってウチに届けたんだよ。ネット環境にはないってことはUSBってことだろ?持ってきた人が死んだ可能性だって」

『それはないな。無事に届けられたのだから』

「殺されたのならデータも一緒に処分されてるだろうよ。まぁ渡した後に死んだ可能性もあるけど」

「それもそうか………なぁ話が逸れるんだけどよ」

「関係のある話にしろよ」

「いや関係はある。俺がこの人からドライバーを貰うのは分かる。けど何故お前のところにもあったんだ?」

「そりゃあの女が俺に……いやそれもそうだ。何故あの女はこのドライバーを持ってたんだ。あぁそういうことか!」

「京、お前まさか」

「クソッ、俺としたことが見落としてた!」

 

 京君は立ち上がり行き場のない怒りを壁にぶち当てていた。

 

「落ち着けよ一体何が」

「利用されてたんだ俺は。コイツの作ったライダーシステムの実験台として!状況が状況のために使いやすかった。復讐を考えている俺に渡すのは容易く危険性を観察するのにはうってつけだったわけだ」

「………プロフェッサー、今のことについて何か言いたいことは?」

『おおむね認めよう』

「おおむね?」

『勿論鳴海君のことは当初から知っていた。しかしそれは想定外の事件から生まれた副産物としての結果だがね』

「どういうことだ」

『君の持っているドライバーは私が最初に作り出したものだ。ロストドライバープロトタイプとも言える。しかし危険性などを配慮して作りはしたが実際試さないことには変わりない。実験台は用意していたがその前にドライバーは行方不明になってしまったんだ。ちょうどその時だね、私の元に皇君の事件の話が入ってきたのは。その後北海道にてスカルメモリとドライバーの反応を検知。それからは君の動向を観察していた。危険性、動作機能共にね』

「つまりなんだ、渡したのは自分じゃないってことか?」

『その通り。勿論プロトタイプを探しはしたが私自身も秘密裏に作っていたからね。他に情報を公開はしていなかったのさ。ある人間を除いて』

「ある人間?」

『情報を受け取り私に渡した人物だ。その人物なら大いに可能性があるがデータをもらった身としては責められないからね』

「そいつの情報をオープンにしないのは何故だ?」

『個人の契約とでも言っておこうか』

「そうかよ」

 

 切れた電話の画面を確認して乱暴に椅子に座った京君は腹を立たせているのを隠せていない。僕達も一度話を戻そうと頭を切り替える。

 

「話がだいぶ逸れたな。どこまで話したっけか」

「毒素が除去し切れていないところじゃないかな」

「あーそのへんか。で、ドライバーの除去作用が効かなくなった今こうやっているわけだが」

「おかげさまで俺は今無力ですよっと」

「で、無力なら殺しちまえば?」

「うわーひっでぇこと言うなぁ。俺こんな後輩持つの嫌だわ」

「でもコイツ京の仇のやつなんだろ?」

「それはそうだがコイツにはまだ利用価値がある」

「利用価値?」

「あることとコイツの状況を聞いて条件を出したんだ。園崎の情報を持ち帰って来れば今苦しい分だけは取り除いてやるってな」

「それでここに運ばせたってことか」

「まぁそう言うこったな」

 

 ヘラヘラと笑っているがここに運ばれてきた以上彼はそれなりの成果を示さなければならない。そうでなければ治療の無駄になるわけで京君が条件を出した意味もなくなってしまう。しかしヘラヘラした顔はすぐに真剣な表情へと戻った。

 

「じゃあ話せ。持ち帰ってきた情報はなんだ?」

「園崎の次の大型作戦」

「「「!!!」」」

 

 メモリについての話を大方として想定していたがそうではなくまさかの内容だった。欲しい情報といえば大いに欲しい情報だ。すぐにでも対策を考えられる。

 

「話せ」

「園崎は現存する兵隊の半分を用いて要塞を起動する予定だ。天空要塞、大砲とか装備したおっきな気球だとでも思ってくれ。その中に兵を入れ各地にばら撒いていく。支配地域を徐々に拡大していき日本全土を乗っ取るらしい」

「俺たちを倒すのは諦めたってことか?」

「諦めてはいないだろうな。でももっと有効的な方法でお前達を始末するつもりだろう。人質とかな」

「それは………」

「でも各地って言っても要塞は一個しかないだろ」

「その要塞の射出口がいくつもあったとしたら?あと最初は地上から来る可能性もある」

「うわぁ確かに大型作戦だわ」

「兵隊の詳しいデータは残念ながら得られなかった」

「襲われたか」

「ああ。ナスカを使っても毒素のせいで逃げるので精一杯だった。外部のダメージも食らったしな」

 

 だからボロボロの状態で彼がやってきたわけだと納得がいく。

 

「要塞のデータは?」

「取ったデータを入れたUSBは破壊されちまった。けど覚えているものがある」

「?」

「太陽光エネルギーを変換して出力にするエネルギー砲、半径10キロは簡単に滅ぶ」

「嘘だろ……」

「それって新一の」

「うん、アークの改造だと思ってもいいかもしれない」

 

 殲滅天使の威力をさらに上げたものだとしたらそれなりに時間は必要だと考えられる。しかし最初からストックを作っている可能性もあるため出てきたら撃たれるまでの勝負になる可能性が高い。装填までの時間も知りたいところだたがそのデータも壊されてしまったらしい。

 

「その威力ともなれば俺も防ぐのは無理だ」

「となると砲身を壊す必要も出てきたわけだね」

「戦力分断するのキツくないっすか?言っちゃアレっすけどまともに戦えるの俺たち三人だけっすよ」

「地上を殲滅する人、砲身を壊す人、要塞の要を壊す人、確かに各所一人は心もとないね。せめて要塞の要を落とす人にもう一人つけたいところ」

「都合がいい奴が近くにいるじゃねぇか」

「京ならどうする?」

「そうだな……名護の連中はどうだ?一条と伊達なら多分大丈夫だろ」

「呼び捨て……」

「本人達がいない都合便箋状な。敬略ってことで」

「それでも兵力の差が出た時に体力的にキツイかもしれない。一応相手はドーパントだし」

「確かにそれで対応できるタイプじゃなかったらなぁ……」

「いやお前ら?」

「この間みたいに石破天驚拳で初見突破は難しいか」

「流石に二番煎じもいいところだろ。絶対策は練られてる」

「俺が見た時もありゃすごかったなーって、おーい?」

「てかそもそも数はどんくらいを想定するよ」

「新一、園崎の方に行った連中はどれくらいなんだ?元とはいえお前が指揮してた組織だろ」

「そうだなぁ……ざっと、名護家にいた戦闘部隊の数からして三万人でそのうちの三分の二だから二万人でそこから前回や個別の人数を計算して少なくともあと一万人を残しててこの作戦だと3:5:2かな」

「最後の2は何すか?」

「予備で残しておく数だろ。精鋭を必ず残すというわけでもなさそうだがある程度は手持ちに残しておきたいしな。そうだろ?」

「多分それが一番の安全策だよね。でもメンツがわからないと」

「聞けっ!そろそろこっちの話を聞け!」

 

 あえてスルーしていた皇が大きな声を出して注意を集める。流石にもう我慢出来なかったのだろう。でもそれとは対を成すかのように京君はどこからか取り出した黒ペンを取り出して真っ白な壁に絵を描き始めていた。天空要塞はまるでラ◯ュタみたいな形をしていた。床ギリギリには棒人間が大量に並んでいる。

 

「何だよ今作戦会議中だ少し静かにしてろ」

「だとしても捕虜の部屋の壁に作戦内容書いてんじゃねーよ!お前いつからそんな馬鹿になった!?」

「お前今俺が手を出さないと思ったら大間違いだからな。南極条約とかサンフランシスコ条約とか知らねぇから」

「落ち着け京殴ったら捕まるぞ!」

「知らねぇって言ってんだろ」

「探偵が捕まったなんてニュースに出てみろ恥ずかしいぞ!」

「チッ」

「世間体は気にするのか……それで何を話したいの?」

 

 皇は落ち着いた京君を見てため息をすると親指を自身に向けて自信満々な顔をした。二人を見ても「は?」という顔をして動くことなく数秒の沈黙が訪れる。やがて作業を再開しようと動き出すと再度止められる。

 

「何だよ無駄に時間取らせんな」

「いや戦力ならここにいるだろ」

「そうだな、ライダー三人皆戦力だな。皆違って皆いいって言えばそれでいいか?」

「違うそうじゃない。俺も戦えるって言ってんの」

 

 確かにと言われてみればそうかもしれないと快斗君は相槌の手を打ったが認めようともせず絵を描き続ける探偵が一人いた。

 

「それは飲めない話だ」

「何でだ?戦力が欲しいんだろ?」

「それとこれとは話が違う。第一お前を連れて行けば逃げられる可能性もある上に危険性を孕んでいる。だからそれは無しだ」

「そいつはびっくりだ。お前、他のライダーが同じ状況だったら一番安全だと思われる戦場に投げれるだろ」

「そうするだろうけどお前は話が違う。だから無理だ」

 

 皇がちぇっとベッドの上に寝っ転がると作戦会議が再開された。空への行き方、その間の地上の対処法、要を壊す役割で気をつけるべきことなどを相談して役割を決めると部屋を出ていった。戦力の確認のためにブリーフィングルームに直行し電話を取る。イヤホンを点けて無線接続すると京君が同じページをずっと見ているのに気づく。

 

「ねぇ京君」

「どうした、腹減ったか?」

「お腹は空いていないんだけどさ。皇の件、本当は戦わせたくなかったんじゃないの?」

「えっ?」

「………」

 

 快斗君はどうやら気づいていなかったようだ。京君は無言のまま次のページへ行く。

 

「ナスカの毒が回っているからこれ以上戦わせたら彼が死んでしまうと考えたんじゃない?殺す殺さないはともかくとして」

「敵が死ぬのはいいことじゃないんすか?」

「個人の恩讐は個人で片付けて初めてなされるものだから」

「あー、確かに」

「まぁ間違いではないわな」

 

 本をパタンと閉じると立ち上がって別の本を撮りに行く。

 

「アイツを殺すのは俺だ。だから今回の仕事が終わってからじゃないとな」

 

 冷たい声で言っているが本当は彼のことが心配だからやったのではないかと聞くとこれ以上は油を注いでしまう気がしてならないのであえて黙っておいた。

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