「快……斗………」
爆発に巻き込まれた息子を救いたかった。こいつを危険から遠ざけてきたはずなのに気付けば俺と同じところまで連れてきてしまった。メモリの力ではどうにもならないのか。どうすればこいつを救えるんだ。
「あ、れは………?」
快斗の胸の上にあるスティック状の何かが光った。白く、淡く蒼色に輝く永遠の記憶を宿すメモリ。その記憶が確かなら賭けてみるしかない。
「なぁエターナルメモリ、お前ならコイツを、俺の息子を生き返らせられるか?」
言葉は返ってこない。それでも光が肯定するように輝く。言っていることは何となくでしか伝わらなかった。それでも十分だった。
「何でも支払ってやる。何なら………俺の命、持っていけ!」
その瞬間輝きはより強くなり俺の体から何かが抜けていく気がした。それが全部あのメモリと快斗に伝わっていくような感じがする。けどそれなら本望だと俺の意識は白く塗りつぶされていった。
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「逃さねぇつったろ」
炎の中から出てきた白いマスクの男はゾーンのメモリをスロットに挿し込む。それを見て逃げようとした怪物は動きを止められる。
「貴様っ」
無言の京君はいつの間にか奴の背中に周り手を添えて紫色の骸骨で怪物を包み込む。パチンと指を弾く音が聞こえると京君の姿はなくなり無数のナイフが骸を通して怪物に刺さる。
「今まで聞いたことないから聞くんだけどよ、四方八方からナイフで刺されるってのはどんな気分だ?」
「な、ぜ………」
「いいや、せっかくだからいいもの見せてやるよ」
黄色のメモリを挿して指を鳴らす。すると夕方だった景色が真っ暗になり真上に三日月が現れ桜が舞う。怪物に刺さっていたナイフはいつの間にか縛り付けている荊の蔦に代わっていた。
「これは…!?」
「死ぬ前に良い景色が見れてよかったな」
「何のつもりだッ」
「さぁな。でも言えるのはお前を絶対に殺せるってことだ」
「確かに殺したはず」
「死神って知ってるかぁ?」
『ユニコーン マキシマムドライブ』
「死んでも命を狩りにくるらしいぜ」
いつもと違いユニコーンメモリを体のスロットに挿し込み地を駆けていく。蒼く一直線に突撃するその姿はまさに一角獣。貫き姿が元に戻ると怪物は爆発し景色はかわり夕日が差す。
「やった、のか?」
「メモリブレイクされてるみたいだし多分終わったと思う」
「あ~疲れた~」
快斗君は変身を解除して寝ころんだ。仰向けになって伸びているのを見て生きてることを確認した。しかしそれと同時にワイシャツが赤く染まっているのも同時に確認した。
「快斗君それ」
「え?あー!やっべ汚しちまった、ワイシャツだけならいいけど……うーわ学ランまで汚れてるし穴だらけかよ。先輩に怒られんだよなぁ」
「いや、痛かったでしょ」
「そこじゃねぇだろ新一」
「まじで痛かったっす。死ぬかと思いました、あ、一回死んだんだった」
「お前もそうじゃねぇだろ」
笑って流しているのを見て問題はなさそうだと感じたが起きたことはそれではすまされない。
「お前あれ死んでもおかしくねぇだろ!?」
「いや死んだじゃん」
「そうじゃなくて、なんであれだけやられて傷一つねぇんだよ!」
今の快斗君の姿は死んだときと同じはずなのだが服に穴が空いたり血で汚れてるだけだ。傷は全て塞がっている。
「そりゃあほら、一回死んだし」
「あーなるほど、ってなる案件でもないだろ!」
「傷がそのままで生き返ったらただのゾンビじゃね?」
「意識もはっきりあるしなってだから違う!」
「そうだよなぁ……俺のメモリってさ、永遠の記憶だろ?だからその恩恵っていうかなんていうか」
「でも今まで使ってたのってメモリの制御じゃなかったっけ?」
「俺もそれがこいつの能力だと思ってました。でも実際はあくまで一つの力でしかなかったみたいで本当の力はこれだったみたいです」
「しかし不死身ともなるとお前チートだぞ」
「持ってる限りは大丈夫ってことはふと離している瞬間が危険ってことか」
それだけでかなりズルいようにも思えるが味方になるととても頼もしい。不死身の兵、聞いただけでは想像できないが実際に見てみると恐怖しかないだろう。
「戦闘中は死ななそうだね」
「じゃあコイツでガードベントできるな」
「出来てもさせねぇよ?」
その後黒服さん達が来て現場の取り締まりと僕らを自宅まで送り届けた。不死身とはいうがきっと何か副作用のような代償があるように思える。念の為気をつけるようにと伝えたが何度も死にたくないし結構痛いから気をつけると言われた。
家に着くとお嬢様がリビングでテレビを見ていた。静かに集中するように見ているため気配を消してキッチンに向かう。冷蔵庫の中身を確認して夕飯を決めると声をかけられる。
「私に黙って帰ってくるとは偉くなったわね」
「申し訳ございません。帰宅したとは伝えたのですが返事がなかったので様子を見たら何やらテレビに夢中になっていたものですから」
「そうなの?それはごめんなさい」
「お気になさらず。何を見ていたのですか?」
「機動戦士ガンダムOOよ」
「なんと、それはそれは」
意外なところだった。ガンダムに関しては戦術モデルとして名護家の兵器にも利用されていたので多少なりとも知っている。一番詳しかったのは橋本さんだったっけ。SEEDが好きって言ってたなぁ。
「どうしてそれを?」
「CMでたまたま見て第一話から見ていたの」
「今どの辺ですか?」
「ナドレが出たところよ」
「もうそこまで……」
「その話はいいわ。あの後どうなったの?」
「そのことなのですが」
あの後にあったことを説明すると察したのか考え込む様子を見せてから聞いてくる。
「それってもしかして、紗夜の時みたいな」
「そうですね。それくらい大きな作戦になると思われます」
「また、危険なところに行くのね」
ぽつりと呟いた言葉が胸に刺さった。仕事上仕方がないとはいえこの人を不安にさせてしまう。
「申し訳ございません、ご心配おかけします」
「いいのよ、ただあなたが無事に帰ってくるのなら」
「それには心配及びません。そうでないとお嬢様の生活を誰が支えるのですか」
「失礼ね。これでも多少はできるように頑張ってるのよ」
えっ?掃除や洗濯もままならないのに?と口が滑りそうになったが慌てて唇をキュッと結ぶ。確かに最近ご飯の用意や洗濯物を畳んだりは手伝うようになってくれたのだけどそれでも様子を見なければならないところが多い。
夕食の準備を済ませて食卓に並べると座ってはいただきますと合掌をする。いつ戦になるかわからないためきちんと栄養をつけておこうと考えると必然と量が多くなってしまった。
「あなたがこの量を食べたところ見たことないのだけど」
「食べられますよ。普段は必要以上に摂ってないだけで」
「その割には私には食べさせようとするわよね」
「お嬢様は成長期ですから」
「あなただって変わらないでしょう。じじくさいこと言わないでちょうだい」
あははと笑いながら食事を続けるとスマホが鳴る。食事中に失礼しますと許可を取ってからスマホを見ると霧切さんからだった。廊下に出て電話に出ると向こうから声をかけてくる。
『繋がったね』
「お疲れ様です。ご用件は?」
『弦巻家から連絡をもらった。君たちの想定している規模で間違いないと我々も考えた』
「すでに会議も終わらせたのですね」
『ああ、だからお願いがある。我々のもとで君が指示をしてくれ』
「………」
信じ難い話だ。僕に戻って名護家の指揮を採れというのだ。誰がそんなことを許すだろうか。少なくとも大勢の人間が反対するだろう。そうでなくても許されるはずがない。
『勿論装備一式の給付と戦力の導入は問わない』
「そういう問題ではありません!僕がそちらにいくことが」
『問題だというのかね?』
「わかっているのなら」
『なぜ君はそこまでこだわる?一条や伊達がいうように悪く思わない連中だっている』
「でもそれはあくまで一部のケースで」
『まぁいい。本日00:00に弦巻家に私と名護家から数名、そして鳴海君と大道君が集まる。これが連絡事項だ。詳しいことはそこで話そう』
「待ってください!」
『では後ほど』
プツッと切れた電話には通話終了の文字が表示されている。何と勝手な押し付け、いやまだ話し合う余地はあるみたいだし本人たちの勝手な願いとでもいうべきだろうか。それでも今のはとてに力を入れるとそっと包み込んでくる小さい手があった。その手に気づいて力が弱まると拾い上げるように持ち上げる。
「急に大きい声があったからびっくりしたわ」
「申し訳ありませんお嬢様」
「いいのよ。それで何があったの?」
何も言えなかった。この状況で今の話をしたら余計不安にさせてしまうのではないかとそうなったらどうなるのかと考えてしまった。だから僕は嘘をついた。
「京君が独断専行しているらしいのですが快斗君が止めに入っているようです」
「それって危ないのではないかしら」
「はい、ですから僕も行くと言ったのですが止められてしまって」
「それは大きい声を出しても仕方ないわ」
「申し訳ありません。後ほどまた弦巻家の方に行きますのでお嬢様はゆっくりお休みください」
一応許可は出してくれたがそれでも認めたくないという様な顔をしていた。感謝の意を述べて食事に戻ると不服そうな顔をしている。ご飯を食べている時もずっとこっちを見てきていた。流石にこれはどうにかしなければならないのではないかと考え出かける前にお嬢様に相談を持ちかけた。
「次の大型作戦、帰ってきたら何をしましょうか」
「急ね、何かあるの?」
「いえ、フラグを立てるという訳ではありませんが一種契約を結んでおこうかと」
「新しい契約?」
「自分で言っておいてなんですが少し堅苦しいですね。約束とでも言い換えましょうか」
「約束……」
「僕が帰ってくるまでにどんな約束をするか考えといてください」
「わかったわ」
悩みながらもきちんと返事をしているのを聞いて家を出る。イクサリオンを起動して弦巻家へと向かう。途中後方から大型のトラックが目撃されたがそこには名護家のマークが入っており同じ道をついてくる。戦力として言っていた装備一式の配達も込みだろう。一台のトラックを引き連れて弦巻家の敷地へ入ると既に京君が待ち構えていた。
「仕事とはいえ湊を説得できたんだな」
「不服そうな顔をしていたけどね」
「仕方ねぇだろ。そんであれは?」
「うん、名護家の装備だと思う」
「やっぱ協力は要請してるよな」
「みたいだね。とりあえず会議室へ行こう」
屋敷の中で快斗君に合流しつつ会議室へ入るとプロフェッサーと一条さん、伊達さん、橋本さん、霧切さんの他六人ほどを加えた名護家の人間が既に座っていた。六人はやはりというべきか僕を見て気に食わなそうな顔をしている。
「三人とも待ってたよ。さぁ会議を始めようか」
「今日は急遽集まってもらって申し訳ない。だが君たちも知っている通り今回の作戦は園崎に大きな一手をかけることのできるまたと無い機会だ。だからこそ」
「無駄にはできないって言いたいんだろ」
「その通りだ。早速本題に入ろう、君たちが大まかに考えた作戦は聞いている。その点で我々から提案がある」
「提案?」
きっとさっきの件だろう。とりあえずは静かに聞いていようと沈黙を決める。
「名護新一君を我々名護家に貸していただきたい」
「ほぉ?」
「どういうことっすか?」
「当主!」
「待ってください、我々は聞いてませんよ!」
「いいから聞きたまえ。現状彼らについての戦力は人間なら我々が、ドーパントとしてなら貴方方の方が詳しい。それで指揮をとれる存在として名護新一をこちらに貸し出して欲しいのだ」
なるほどとプロフェッサーは納得した様子を見せるが同意を示さない人たちがいる。無理もない。そもそもその人達から不穏どころか反感を買っている。
「そもそもそいつは俺たちを捨てたんですよ!」
「それを今更戻ってきて分かりました従いますなんて」
「出来るはずがないとでも?」
「!?」
「君達もよくわかっているだろう。彼は戦場で指揮をとれば被害は最小限に抑えられると」
「だとしても」
「そうです霧切さん。僕はきっとその人達に認めてもらえない」
「それはないだろ坊ちゃん」
諦めさせようとすると伊達さんが立ち上がる。
「こいつらはこう言ってるが実際帰りを待っている連中もいる。もしかしたら照れ隠しの可能性もあるしな」
「脳筋は黙っていろ」
「現実を受け入れないお前らよりかは賢いと思うけどな」
「挑発をするな伊達」
「だいたいエリートの連中がなんで受け入れ切れてんだよ。お前らの方がよっぽど傷を負っただろ!」
「それでも私達はこの方が一時的にでも一緒に戦ってくれるのならそれでもいいと思っている」
「なっ」
「正直に申しますと傷は負いました。それでも信じていようと決めたのです」
「一条までそんなこと言うのかよ」
「だがそれでも我らの意志は変わらない。仮にこの場で主を殺すことを決定する様なことがあれば全力で我らが阻止する」
「ま、そう言うこったな」
三人は立ち上がって僕の側に庇うように姿勢をとった。京君と快斗君は黙ったまま見ているがそれでも変身する準備をしている。霧切さんは呆れたように全員に落ち着く様に促す。
「双方の言い分はわかるが現状私としては名護家に携わっていたものであり彼らの情報を多く知っているものを雇いたい。その上で彼が適任だと判断した」
「状況を見ればそうだよね」
「しかしこのように反対するものがいるというのも事実だ。故に新一君にどうするかを決めて欲しい。勿論ここで判断したことが今回の作戦に大きく関わってくることは承知だろうがね」
言逃げられない様にするためか釘を刺してくる。彼らのように僕のことで未だ対立しているのが見えた今、僕が考えるべきなのは一つしかない。
それは受け入れてもらえるかどうかじゃない、きっとやらなければいけないことなんだと思い決意を口にする。