青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第十七鏡 決戦・要塞攻略作戦1

「僕は戦います。後ろにいるつもりはありません」

 

 立ち上がり反対する人達に向けて言葉を放つ。これは贖罪ではなく、自分がやるべき事なのだと示すように。

 

「勿論信用していないわけでも捨てたわけでもありません。僕自身、この戦から逃げるつもりなど毛頭ないということです」

「何を当たり前のことを」

「自身のことを高く評価などしていません。ですがそれでも名護家の一つの駒として動ける自信はあります。何なら最前線にて敵の大半を葬る事すら可能です」

「それはそうだろうが……」

「役割は全てこなして見せます。ですから共に戦うことを許してほしい」

 

 頭を深く下げてお願いする。最善の選択肢も彼らに絶対の指示をするつもりもない。それでも共に戦ってくれることを望むために頭を下げた。しばらくの静寂が訪れると乱暴に座られた椅子の音が聞こえてる。ため息をつきながら一番反対をしていた人物が座り込んでため息をついている。

 

「民間人風情がよくもまあそこまで言えたもんだな。だがそこまで言ったならやって見せろよ」

「………」

「少しでもおかしな行動をすれば俺がお前を殺しにいくいいな?」

「そんなこと俺たちが「構いません」坊ちゃん?」

「それで信用が得られるのならば結構」

「そこは自分の命を心配して欲しいところだが、それでこそ我らの主だ」

 

 騒動を終えた名護家の関係者が全員席に着くと作戦会議が行われる。要塞に侵入するグループと地上の防衛をするグループに分けて作戦を立てる。園崎の連中も全員を同じ場所に送り込むことは無いだろうと襲撃の可能性が高そうな場所を考え人数の調整を行う。今までの園崎家のデータを参照して送り込まれる兵器も考慮する。

 

「という感じで分けるがいいかね」

「武装はどうしますか?」

「このマスカレイドってのは一度なったら戻れないんだよな?」

「そうですね」

「ならなった奴らは殺すか」

「うーわ辛辣」

「でなければこちらがやられるぞ」

「おっしゃる通りで」

「機械兵は容赦なく破壊だな」

「人間はどうする?」

 

 その場に沈黙が現れる。それもそうだ、何せいつしか仲間だった人達と相対する状況にあるのだから普通は殺すと言いたいところなのに簡単に言葉が出てこない。勿論割り切っている人もいるだろうがそれをこの場で出せるほど簡単ではない。

 

「その件ですが提案があります」

「何だね」

「人の状態を保っている人は極力捕縛の方でいきませんか?」

「貴様まさか頭の中がお花畑になっているわけではないだろうな?」

「いえ、元々は仲間の人達ですから戦いたくない人達が出てくるのも当然かと思います。そうなったら隙をつかれて殺される可能性も視野に入れると捕縛が一番かと」

「簡単に捕まる連中かよ」

「そうですよ」

「だから捕縛するために無力化させることを最優先とし、出来ない場合は排除という方針を提案します」

「捕縛用の武装はありはするがそれほど上手くいくかね」

「貴様、適当に言っているわけではないよな?」

「本気です」

 

 流石にこんな作戦は思いつきや打算で出すわけにはいかない。きちんと計算した上で事細かに説明すると呆れたようにため息をつかれる。こんなにため息をつかれると申し訳なく感じるのだが。

 その反対で霧切さんはまるでこの作戦を考えること知っていたかのように笑っていた。

 

「何ですか急に」

「いや実に君らしいなと」

「新一様、きっとそうおっしゃると思っておりました」

 

 僕以外の名護家全員が立ち上がり部屋を出ていく。一条さんがついてくるようにつげると扉の向こうへと姿を消した。部屋を出て彼らの後ろをついていくとさらに地下へと続くエレベーターに乗った。

 ゴウンゴウンと重い音を響かせながら降っていくエレベーターは静かに止まり扉を開くとジェット機のようなものを僕達に見せる。

 それは以前名護家の兵器工房で見たものと類似しているものだった。

 

「これは…!」

「君が使うと思ってね。ここで最終調整させてもらっているんだ」

「Mulch Annihilation system driver通称『MASドライバー』主に殲滅を目的として兵器が搭載されているが君が捕縛を提案することを見越して威力の調整と捕縛ユニットを取り付けている」

「これを、僕が使うのですか」

「彼の案ですよ」

「馬鹿者余計なことを言うな一条!」

 

 先ほどまで僕のことを一番否定してきた人、四谷玲(ヨツヤ レイ)さんによる指示のものだった。あんなふうに言っていたが一番帰ってきて欲しそうにしてたのはあの人だと耳打ちされる。彼はそっぽを向くように明後日の方向を見る。あれだけ非難を浴びせてきたのにこれを用意していたということはそれだけの覚悟をしろと言う暗示なのだろうと自己解釈をして礼をする。一条さんがタブレットを差し出してきたため中身を確認すると稼働時間やレンジについて記載されている。

 

「確かにこれがあれば戦力としては問題ないですね」

「たかだか民間人が使える代物じゃないんだ。きっちり仕事してもらうからな」

「無論そのつもりです。他には何かあるのですか?」

「そうだな、これから持ってくるつもりではあるが兵士の装備一式と応急処置用の道具は持ってくるつもりだ」

「なら安心ですね。先ほどのメンバーわけで更に作戦の強度も上がりましたし」

 

 言葉の途中で霧切さんがスマホを手に取る。誰かと連絡をとっている様だが話を続けようとするとこちらを見ては表情を曇らせる。苦虫をすりつぶしている様な表情をしながらスマホをしまうと背中の方から風が流れ込んでくる。そちらを見ると四角い銀色の箱が現れた。

 

「君の私物も入っているらしいがもう一つ忌むべきものが入っている。彼曰く戦力増強のためみたいだがね」

 

 箱を開くと現役の時に使っていた槍が入っていた。中身を確認しても刃こぼれもない綺麗な状態だ。だがその先に忌むべきものが本当にあった。かつて僕が操られ二度にわたって多くの人を危険に晒した救済のための兵器、ARCユニットが整備された状態であった。

 

「曰く、今の君の脳波で操作できるらしい。しかしそれも併用して使うことで三十分使えるはずのMASドライバーが十分しか使えなくなる、その分威力もレンジも広く大きくなるわけだがどうする?」

「新一様、これに関しては私は推奨しません。いくら乗っ取られる危険性を排除してもまた御身に何かあったら」

「いえ、使います」

「新一様!」

 

 これで早く戦いを終わらせられるのであればそれでいいとも思える。勿論今回は自分の制御の範囲でやるから前回みたいに乗っ取られることはないらしいがそれでももう道は誤らない。そう思い作戦準備に向けて動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、早朝六時、東京港区上空に空中幼彩が現れた。即時全員が配置へ着き先頭準備が行われる。その場の空気は張り詰めており今にも戦争が始まる寸前という様子だった。その中でライダー組は独自の回線を繋ぐ。

 

『お前ら準備は出来ているか?』

「勿論」

『当然』

『悪いがここで作戦に一つ付け足させてもらう』

 

 京君がらしくもなく作戦変更を伝えてくる。その内容は認めたくないものだったが彼なりに刑事目をつけたいとのことで致し方なく了承した。そして彼らに健闘を祈ることを伝えると通信が切れる。僕のところにいるのは橋本さんと四谷さんが率いる暗殺犯と殲滅部隊第二班。そのほかの場所に一条さんと伊達さんがそれぞれを率いて配置されている。通信が入るとやはり予測地点に園崎の軍勢が現れたらしい。

 

「おい」

「何でしょうか」

「士気を上げろ、お前の役割だろ」

「僕の、ですか?」

「民間人でもそれくらいはできるだろ」

「今更ですが民間人ですよね僕」

「そんなこと突っ込まなくていい!そこに立つなら責任を果たせ!」

 

 全員の前で戦闘準備をしている僕はMASドライバーから身を剥がして後ろを向きユニットの中に隠していた槍を取り出し上に掲げる。

 

「これより、我々が向かう戦場はそこらのテロリストよりも強く、各国の軍人よりも猛き者のいる地獄である。戦場において生を望むものは死に、死を望むものは生へ。つまり戦いにおいて生死とは考えても仕方ないこと。ならば我々は己が忠義を、欲を、願いを賭けて戦おうぞ!さぁさぁとくとご覧あれ!勝つのは誰が願いか!消え去るは誰が願いか!ここに正義はない!勝利を納めた者のみが正義なり!」

『しかと、胸に』

「皆の者、ゆめゆめ忘れるな」

 

 何度やっても慣れやしないこの光景に背中を向けながら再びMASドライバーに身を委ねる。ARCユニットを展開させ砲撃の姿勢をとって待機する。

 

「取りこぼした分は俺らでサポートする。貴様は貴様らしく戦場を駆けろ」

「ありがとうございます。必ず期待に応えます」

 

『新一、こっちの準備はできた。3カウントで行くぞ』

「了解」

『スリー、Go!!』

「3カウントって言ったよね!?」

『男は3だけ覚えとけばどうにかなるだろ!』

 

 快斗君と京君が上空に上がっていく姿を見て僕達も戦場へ出る。朝日が差す大通りの道には大量の兵隊達がいる。それに対してまず拡声器を使って声をかけた。

 

「園崎の兵に告ぐ。我々は無益な戦闘をする気はない。抵抗しないものは危害を加えないこと命の補償を約束する」

『………』

「抵抗するものは容赦なく殲滅する。この兵器の威力は設計段階でのデータでも知っているはずだ。できることなら死者を最小限に抑えたい」

 

 抵抗するつもりなどないのか一斉に軍勢が押しかけてくる。こうなれば仕方ないと全ての砲門を解放し一斉に放射する。人間を除き半分ほどが爆発し戦闘不能になるがそれすら踏み台として襲い掛かってくる。戦場としてはごく当たり前の事。手はず通りのプランでMASドライバーで最前線に出る。

 

「そんなもの脅しにもならない!」

「今日こそ消えろ名護新一!」

「それごと鉄屑にしてやる!」

 

極力人間を避けながらマスカレイドと機械兵を破壊する。

兵士は名護家の人に任せて一通り破壊すると敵軍後方から沸いて出てくる。

 

「キリがないな」

『主、タイムリミットが』

「分かっています。これだけでも」

 

これ以上使い続ければ廃人になる可能性が高いため最後にマルチロックオンしてまた破壊するが他よりも何倍も速い影が迫ってくる。甲冑を模した鎧の姿、一振の刀を持った黒と白の人型。それに反応して内蔵されているビームソードを横薙ぎにすると跳び跳ねMASドライバーの主砲が斬り落とされる。すぐに全てのパーツから身を剥がして距離をとる。

尋常ではない速さに警戒心を高めると爆煙の中から刀を持つ人影が見えた。

 

「貴方は……」

「舞台は整った。さぁ、存分に死合おう!」

「この状況分かってるんですか!」

「分かっているとも。世界は変わろうとしている。だからこそ、今貴様との勝負に決着をつけどちらが上かを示す必要がある!私たちのこの戦、元より願いが強い方が勝つ!私は私の欲を示すのみ!」

「宗方さん……貴方って人は!」

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