青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

156 / 181
第十九鏡 決戦・要塞攻略作戦3

 宗方さんは刀を構えて一対一の真剣勝負をしろと申し出る。今はそんなことをしている場合じゃないことは承知しているようだがそれでも己が欲を優先するらしい。

 

「構えろ、少年。そのためにここに来たのだろう」

「本当に戦わなくちゃいけないんですか」

「私は貴様と真剣勝負をしたい。そのためにここまで来た。ならばもうわかるだろう」

「出来る事なら僕は貴方を殺したくはない」

「貴様、正気か?だから貴様は強くなれないのだ!」

「!?」

「いくら貴様が信頼を重ねた相手でも倒さねばならない敵となれば、それは敵にしなければならない!それも出来ない奴は一生強くなれんぞ!」

「………………」

 

 言っていることは百も承知だ。だからこそ斬りたくない人もいるがそれでも斬らねばならないというのは戦場の常。今までもやってきたことだ。裏切り者も手負の仲間も人でなくなる子供すらこの手で葬ってきた。ならやることは変わらない、今回はこの人がそれというだけのこと。

 

「分かっているのならば得物を抜け」

「わかりました。……手加減はしませんよ」

「フッ、それで良い。我が武士道を以って貴様を殺す!」

「では僕は、我が武士道を以って貴方を倒す!」

 

 互いに獲物を向けて殺意を向ける。静寂が訪れ次に風が吹いた時には互いに地を蹴って目の前にまで接近していた。互いの剣を弾き火花を散らす。何度も刃をぶつけ合い攻撃を与えようとするが先を読まれているのかそれとも同じことをしようとしているのかどれも防がれてしまう。上げていくスピードにも重くしていく力にもすぐに追いつかれてしまう。

 

「そうだ、コレがやりたかった!コレこそが私が求めた闘い!」

「くっ…!」

「遅い!」

「なっ!グハッ!!」

「その程度ではつまらん、本気を出せと言っているだろう!」

 

 振り下ろされる刀を避けて攻撃するも避けられ距離を取られる。このままじゃ埒が開かないとイクサナックルをベルトに装填すると身に纏ったスーツの上からイクサシステムが覆う。

 だがそれに合わせるように彼も皇が持っていたようなドライバーを持ち出した。

 

「貴様がそれを見に纏うというのなら私もそうさせてもらおうか」

『サムライ』

「貴方までそれを使うのか!」

 

 MASドライバーの主砲を斬り落とした影と同じ鎧姿のそれは宗方さんが変身した姿と一緒だった。まさかそこまでやっているとは思いもしなかったがこの戦場にいる時点でそれを察しておくべきだった。信用はあれど敵であることを忘れてはいけない。

 

「このメモリは私の身体に調整されて作られた私専用」

「そこまでして力が欲しいのか」

「私が欲しいのは勝利だ。私が私を見失わず貴様に勝つこととなればどのような力でも使いこなしてみせる」

「それが貴方の武士道ですか」

「ああ、そうだ。戦闘再開といくぞ!」

 

 モノクロの鎧は重そうな鎧を軽いと思わせるように速い動きで迫ってくる。イクサシステムでパワーやスピードを底上げしているのにそれを上回るような動きをしている。

 ──長期戦になったらこっちが不利だぞ。

 そんなことは分かっているけど、この状況一発逆転を狙うか?

 ──いや、ここは制限解除だろ。

 そんなことしたら体が保たないでしょ。しばらく使っていないんだからフィードバックが強すぎる。

 ──この間少し使っただろ。それに小出しってわけじゃないが力を込める瞬間に使えば切り替えの負担はかかるが本来かかるはずの反動を抑えることは出来る。

 そんな器用なことしたことないよ。

 ──こっちで何とかする。お前の動きに合わせてやるからお前は自由に動け。

 じゃあ任せるよ。その代わり絶対に倒すよ。

 ──合点承知。

 振り下ろされた一撃を受け止めながら息を吐き出す。

 

制限解除(リミット・ブレイク)!」

「面白い…それでこそ私が認めた男だ!制限解除(リミット・ブレイク)!」

 

 速度を上げて足にだけ制限解除を集中させ速く動くと呼応するように宗方さんも同じ動きに出る。本来持っていないはずの力をどうしてこの人が持っているのかはすぐに分かった。僕にこの力を植え付けたのは園崎さんだ、そして彼が今いるところを考えれば答えは自ずと姿を現す。

 

「それを使えば身体が壊れることくらい貴方なら分かるはずだ」

「構わん、私は今最高に燃えている。この熱は二度と味わえないだろうならばこれを逃すわけにはいかぬ!」

「本当に死ぬ気ですか!?」

「死ぬ気でなければ本気にはなれぬ!」

 

 刀の一撃を受け止めようとすると底上げされた力によって弾かれる。剣が交差し押し合いに負けると蹴り飛ばされる。元々の戦闘ポテンシャルが高いのにここまで強化されればいやでも普通の人間より強くなれる。

 

「立て。貴様はその程度ではないだろう」

「そんな風に思ってくれるのですか」

「無論。でなければ私が貴様を宿敵として見ているはずがない」

「そうですよね、貴方は昔から興味のあるものにしか関わろうとしなかった」

 

 立ち上がるとまともに立つ体力がないのかふらつき始める。きっと制限解除のせいだと結論づけるがそれは相手も同じようだった。刀を地に刺して立っていることからやせ我慢をしているらしい。

 

「そろそろ互いに決着をつけねばならないようだな」

「そのようですね」

 

 深呼吸をして身体に鞭を打って態勢を整える。きっとあと一撃が限界だろう。逆にここまでやって血を吐かなかったこと自体がレアだ。次の一手を考えた僕は深次を呼ぶ。

 ──やりたいことは分かったがいいのか?

 何が?

 ──こっちの制御あって今の状態だ。全解放すれば最悪またぶっ倒れるぞ。

 むしろそれくらいやらないと勝てないと思う。それにあの人もそれを望んでいる。

 ──分かった。もう俺は手を出さない。だから勝てよ。

 

「言われなくても!」

「どうやら決意は決まったらしいな。私も次の一手で終止符を打つ」

 

 互いに己が得物を構えて睨み合う。全力を出す姿勢を保って力を込める。呼吸を整えて相手を見据える。

 

「「いざ尋常に────勝負!」」

 

 地を蹴り剣で刀を受け止める。互いに最大限の力を出し押し合いになるがそれを利用して剣を滑らせる。距離を詰め滑らせた剣を懐から斜めに振り上げ斬り、また振り上げた剣を真っ二つに裂くように振り下ろした。振り下ろす際に刀で受け止めようとしていたがそれすら邪魔を許さなかった僕は叩き折って切り裂いた。

 

「お見事…!」

「あと少し、ズレていたら僕の負けでした」

 

 爆発寸前の宗方さんは満足気に声を出して倒れるようにして爆発した。排出されたメモリを砕き元の姿に戻ったことを確認するとすぐに回収班がくる。意識を失った宗方さんはそのまま運ばれていき僕も変身を解除すると立てなくなってその場に座り込む。

 

「よくやったと言いたいところだが死にかけ寸前じゃねえか」

「あの人はそれだけ強い人でしたから」

「そうだな…」

「それよりここにいていいんですか?」

「ここらは大体片付いたからな。お前がどうなるかわからないから見張れと言われていたしな」

「なるほど」

「とりあえずお前はもう休め」

「いえ、やるべきことがありますので」

「やりたいことはわかっている。すぐに出られるようこちらで今準備を進めているから待て」

 

 四谷さんは背を向けて前線基地の方へと戻り出した。その後ろを追いかけるようについていくと僕の期待を乗せることが出来るものが用意されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はこの女に一度勝っている、そう考えていたのが甘かった。

 

「どうしたのかしら坊や。戦う前はあんなに自信満々だったのに」

 

 空中浮遊しているだけでもかなり戦うのは難しいだからこそ俺が有利になる状況を作って倒すつもりだった。だが強化されたあいつはスピードはおろかパワーまでもが格段に違い一方的に攻撃されていた。

 移動に伴う速さや凝縮されたエネルギー弾は追尾機能まで追加されていて防戦一方となる。

 

「お前やっぱチート使ってるだろ」

「この強化アダプターはメモリの力を底上げして拡張機能まで搭載されるようになるの」

「やっぱチートかよ」

 

 あの外部パーツを取り付けている間は奴が強くなっている。取り出す方法は……まずないな。むしろこの状況だからこそ燃えてくる。でも早々に決着をつけないとやられるのはこっちだってのもわかっている。

 

「ご自慢のマントももうボロボロね」

「こんなもんはなっからねぇのと変わんねぇよ」

 

 使っていないが都合よくあってくれるだけありがたかったが流石にダメージが強すぎたのかほぼ原型を留めていない。あえて脱ぎ捨てて身を軽くする。

 ヤツの胴体を集中的に攻撃するためにはまず接近が必要だ。だがあいつが素直に地上に降りてくるとも限らない。俺の体力を考えて使うメモリの数と種類はしっかり考えなければいけない。

 

「何か難しいことを考えているみたいだけどやめておいた方がいいんじゃない?」

「はっ、言っとけ。そういやアンタら新一さんと一緒に戦ってたらしいな」

「それがどうかしたの?」

「執着心とか気になってよ」

「そうね、一定数は気にしている人もいるみたいだけど私は特に気にしてないわ」

 

 揺さぶりをかけても特に変化はなし、失敗したか。でもおかげで少しは時間が稼げた。ゾーンメモリを使っても避けられるならもう次に当たった時が最後のチャンスだと信じるしかねぇな。

 

「雑談はこの辺にしましょうか」

「そうだなっ!」

 

 ナイフを持って突撃するも空中へと逃げられエネルギー弾を放たれる。要塞の中とはいえコントロールルームは異常に高さがある。多分コイツが戦う時のことを想定されていたに違いない。ナイフを投げると簡単に避けられる。

 

「坊やのナイフ投げも中々楽しめたのだけどそろそろ終わりにしないと他のネズミも取り逃しちゃうことになるから終わらせましょう」

「へっ、それはこっちのセリフだ。見えない線で綱渡りしてるアンタの方がよっぽど面白かったぜ」

「そうかしら。今の私には坊やが滑稽でならないのだけど」

 

 両手を広げたドーパントは周りに大量のエネルギー弾を展開させる。十、二十、三十──それ以上に数えきれない数をこの部屋いっぱいに用意する。

 

「おいおいマジかよ」

「もし生きて出て来れたら褒めてあげるわ。当然無理でしょうけどね」

 

 四方八方に展開されたエネルギー弾が俺めがけてやってくる。360度全てを囲まれた俺は逃げ場なんて存在せず体を守るように防御の姿勢だけを取って攻撃を受けた。身体中のあちこちで爆発の痛みがやってくる。意識が飛ぶかと思った瞬間痛みが全てなくなった。

 だがその瞬間に体を青い炎が包み込む。エネルギー弾は当たり続けているが痛みは感じない。怪我をしている場所から燃え上がり痛みを感じなかった俺はメモリスロットに四本のメモリを挿し込む。

 

『ヒート』

『メタル』

『アイスエイジ』

『ユニコーン』

「流石に死んだかしら。あの状況で生きている方が」

 

 爆煙で前が見えないがきっと奴はそこにいると考え込んで目の前に突っ込んだ。案の定慢心に浸っていたのか地上に降り立っている女は格好の獲物と言っても過言ではなかった。

 

「なっ、何で!?」

「さぁな。でもこれで終わりにしようぜ」

 

 熱を纏った拳を一発腹に捻り込む。退こうとしているドーパントを逃すまいと冷気を纏った拳で殴り込む。ドリル状に捩じ込まれるパンチが温度を変えて交互にドーパントを狙う。底上げする闘志の記憶はパンチを何倍もの威力にする。

 

「こんなはずじゃ」

「ハァァァァ!」

 

 拳に宿る闘志、突き破るような一角獣、体を焼き尽くすような熱、体を凍らせるような冷気が一度にドーパントの身体を貫く。爆発の中から砕かれたメモリが排出される。メモリブレイクも一緒に出来たらしく強化アダプターだけがコツコツと床を跳ねる。

 

「全く、手間取らせやがって」

 

 意識を失った女を持ってきたワイヤーで拘束して主砲の操作板を改めて見ると不思議と操作方法が分かった。多分、いや絶対疲れている。疲れ切っている時程こういうのは頭が働くと相場が決まっている。普段こういうのはわからないのにこういう時にわかるってことは多分そういうことだ。メモリ四本なんて慣れないことをしたからだろうか。

 とりあえず操作して主砲の起動をキャンセルして機械をぶっ壊す。擦ればもう動くことはないだろ。京に連絡すると向こうももう少しで着くらしいのでしばらく休憩してからいくことにした。一旦座ると眠気が襲いかかってくる。こりゃあダメなパターンかもしれないと思いつつ抗いきれない眠気に負けて俺の意識はそこでブラックアウトした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。