青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第二十鏡 決戦・要塞攻略作戦4

 快斗から連絡を受けた俺達はコントロールルームの表札を貼られた扉の前に立っていた。話が本当ならここが要塞を動かす操作室だ。スカルマグナムを構えて獅朗とタイミングを合わせて突入し制圧する……はずだった。扉を開いて目に入ったのは大きなモニターと誰一人いない空間。

 

「どういうことだよ……」

「嵌められたってことか?」

「だとしてもこれだけの機械を完全に遠隔操作はおかしい。多分、飛行機とかと同じように進路はある程度設定してオート操作にしてるとかが一番納得する」

「流石は名探偵、よく分かってるじゃないか」

「誰だ!」

 

 コントロールパネルを見ていると後ろから声をかけられ警戒する。暗い部屋の奥から現れたのは白衣の男。

 

「大方、君の考えている通りです。ここは進路だけ決めればあとは移動も防御もオートで動けるように出来ますので」

「じゃあアンタに止めさせればいいのか」

「そんな簡単に行きますかね」

 

 マグナムを向けても動じることはなくツカツカとパネル近くの椅子に座る。そしてパネルを触るとモニターが別の画面に切り替わる。そこには高そうな椅子に座る老人の姿があった。

 

『ここまでご苦労だったね。骸探偵いや、鳴海京』

「へぇ、俺の二つ名知ってんのか」

『探偵としての活躍もね。まるで掘り返したかのように事件の一端を語る姿から名付けられたんだろう?』

「んなことは知らないね。そんでアンタが園崎ってやつで間違いないな?」

『いかにも。ここまで来た君達にはそこの出来損ないを含めて尊敬の意を示すよ』

「テメェ……」

『しかし残念だが君達はここで終わりのようだ』

 

  不気味な笑みを浮かべると画面の右側から影が侵食し始める。さっきまでいたはずの白衣の男が居た場所に不気味な機械掛かった巨大な化け物の姿が見える。

 

『ありがとう、そしてさようなら実験台(仮面ライダー)諸君』

「冗談じゃねえ」

 

  銃を乱射しても何も止まらず作り出す。それを俺達の頭上に投げると囲うように展開して閉じ込める。いくら殴っても撃っても壊れはしなかった。

 

「くそっ、なんだこれ!?」

「無駄だよ。これは人一人で壊せるような檻じゃない」

 

 中心部の人型らしきところから声が聞こえる。まるで絡繰を操っている操舵手のようだ。だがそれだけでは奴が何のメモリを使っているのかは分からない。モニターに気を取られていたせいでどんなメモリかを見る事すら出来なかった。

 

「お荷物を抱えた君では余計壊せないだろうね」

「鉄砕拳!」

「体力の無駄だぜ京。落ち着け」

「お前なぁ、自分が置かれている状況がわかってんのか?」

「わかっているさ。だからもう一度手錠を外せ」

 

 その言葉を聞いて活路が開けるのではないかと考えたが今度ばかりはリスクが高過ぎるを思った。目の前の怪物を見てこっちが負ける可能性を考慮し裏切る可能性がある。確実に勝つ方に付くのは正しい判断だ。だがそれは俺にとって敵に戦力を上げるも同然だ。そんなことを許すとでも思っているのだろうか。

 

「今手錠を外せばお前は死ななくて済む!それに今の俺はお前を裏切らない!」

「そんな保証はどこにも」

「いいから信じろ!」

 

 獅郎の叫ぶ声が聞こえる。変身している状態では俺は死ぬことはない。でも生身のアイツは死ぬ可能性がある。決着は自分の手で付けたいがそれよりも自分の安全を優先するか。そのためにコイツを犠牲にするのか?

 

「早くしろ!」

「その檻からは逃げられない。そのまま一緒に殺してあげよう」

 

 檻の上に巨大な槌が現れ振り上げられる。迷っている場合じゃないと判断し俺は決断した。獅郎の手錠を解除し持っていた懐からある物をぶん投げる。そのまま降りに向かって鉄砕拳を打ち込んだ。その瞬間檻が軋む音がし囲っていたはずの鉄格子はぺしゃんこになった。

 

「流石に逃げられないだろう。この力は上級メモリに匹敵する力、ましては神の力なのだから」

「神ねぇ…そいつは面白いことを聞いた」

「何?」

 

 土煙が晴れ姿を見せると動揺しているのか持っていた槌を床に落とした。鉄格子がペシャンコになった時はもしあの中にいたらと考えヒヤヒヤしたが獅郎が咄嗟の判断をしてくれたお陰で助かった。

 

「馬鹿な、あの檻が壊れるはずがない」

「お前言ったよな?人一人が壊せるような檻じゃないって」

「なら二人でやればいい」

「君たちは敵対しているはずだ、この状況で強力など…まして君の能力なら見殺しにしても構わなかったはずだ!」

「そんな事をしたら今まで俺が暴いてきた犯人達と同じになる。それに、コイツを殺すのは俺であってお前じゃない」

 

 青いドーパントの姿になった獅郎が隣に来て剣を床に突き刺し楽な姿勢を取る。

 

「分かっているとは思うが種明かしだ。お前のハンマーが檻についた瞬間俺は変身して京と一緒に鉄格子に攻撃した。そして破壊した場所から俺の超高速を使ってコイツを連れて脱出したってわけだな」

「馬鹿な、データでは貴様の身体はナスカメモリの毒素によって弱体化しているはず!」

「最近毒抜きが出来たものでな。この通り平気へっちゃらってわけだな」

 

 それは嘘だ。ある程度は抜けても完全除去までとはいかなかった。それにさっきの動きのせいでコイツの身体にまた毒素が流れ始めているだろう。だからこそ早めに目の前の化け物を倒す必要がある。

 

「ふざけるなぁ!このメモリは私が作り上げた最高傑作!その力で作ったものをこうも簡単に壊されてたまるかぁ!」

 

 まるで歯車を繋ぎ合わせたような翼を広げ怒りを隠せないのか所々にある排気管からフシューフシューと煙を出している。

 

「お前のメモリ、今分かった」

「何ぃ?」

「神の力、巨大な槌、作り上げた檻と絡繰を操作しているような身体、そして機械掛かった翼……ここから導き出したメモリの名前は『ダイダロス』、ギリシャ神話の神だ」

「よく分かったな」

「かつてイカロスに授けるために作った翼、これが一番わかりやすかったな。あとはアンタが神の力だって自慢げに言ってたしな」

 

 神話に関しては昔読み漁ってた時代があったから知識はそれなりに入っている。それに物作りが好きなコイツらなら神話に手を出すのも時間の問題だと思っていた。

 この距離だからわかるが獅郎の呼吸が少し荒くなっている。平然を保っているようでも運動後のような少し荒い呼吸をしている。きっと毒が回り始めたんだろう。

 

「さっさとコイツ倒すぞ」

「先陣を切ってやるからついて来い」

「バーカ、ついてくるのはお前だ」

「二人揃ってここで始末してあげますよ!」

 

 ダイダロスドーパントは槌を持ち上げて振り回す。ジャンプして回避した俺たちは着地して己が刃を向ける。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ」

「風に斬られたことはあるか?」

 

 風のような速さでダイダロスの周りを駆け走る獅郎に暴れる巨体は小回りがきかないのか翻弄される。その隙を狙って羽や絡繰の接合部目掛けて銃を撃つ。よろける瞬間を狙って獅郎が辻斬りのように切り裂いていく。俺が懐に入ろうが翻弄されているため気付くのに時間がかかる。

 

「貴様らどうしてこんな連携が!」

「知らなかったのか?これでも俺達友達なんだぜ」

「その表現は間違っているけどな」

「ツレないこと言うなよ」

「うるせえ」

 

 巨体の横を飛んで来る獅郎を追いかけるように振り向いたダイダロスの人型目掛けてゼロ距離で鉄砕拳を打ち込む。ピキパキとヒビが軋むような音を上げて悲鳴を上げる。

 

「鉄砕拳・零」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「あれって結構痛そうだよな。距離離れてても痛いんだから」

「やってみるか?」

「お前俺のこと殺す気か?いずれ殺し合うのに」

「素直に死んでくれるならそれでいいかなと」

「鬼すぎるだろ」

 

 適当な茶番をやっていると二人揃ってまた檻の中に入れられる。今度は五重層くらい重ねられ簡単には破壊できそうにないことを察する。

 

「今すぐに殺してやる」

「お前さぁ、まなばねぇの?」

「学ばないのは貴様らだ!先ほどの硬さは甘く見ていたかもしれないがこれだけ重ねれば『スカルマキシマムドライブ』いくら貴様らでも壊すことなど不可能……」

「悪い、話が長い」

 

 途中から飽きた俺達は檻を一撃で破壊できるように互いにエネルギーを収束させて一点目掛けてぶつけて檻に穴を空けた。

 

「研究者ってのは自慢したがるから話がなげぇんだよ」

「探偵だって似たようなものだろう!?」

「あの時間は公式が用意しているものだから認められているわけであってお前らのは非公式だから」

「訳の分からないことを言うなぁ!」

 

 怒り狂ったドーパントは槌を振り回して攻撃してくる。計画性も知性も感じられない攻撃に俺達は簡単に隙をついて攻撃を続ける。挟み込む形になった時俺は再びメモリスロットにスカルメモリを挿し込んだ。

 

『スカルマキシマムドライブ』

「そろそろ終わりにしようぜ」

 

 巨大な紫の骸骨を作り上げドーパントの身体を包み込ませる。身動きの取れなくなった巨体は格好のいい大きな的に過ぎない。俺と獅郎は足に集中的に力を溜めて跳び上がりそのままライダーキックを決める。

 

「馬鹿な、今の私は神も同然だというのに!」

「お前の敗因ってわかるか?」

「もとより、ダイダロスは神話に出てくる人物であって、神ではない」

「実験台風情がぁ!」

「good bye!」

 

 獅郎が親指を下に向けると骸に包まれた巨体は爆散した。中からは白衣を着た男が現れるが気を失っている状態だった。近くに砕け散った金色のメモリがあるのを見て幹部クラスだったことを確認すると同時に完全破壊に成功したと捉えた。

 そのまま俺は操作盤をいじって進路や計画の資料を見つける。ここで止めることが出来なかった場合、三日で制圧できる算段になっていたらしい。そして主砲の操作はこちらでも可能だったため快斗がいるところのみでは不十分だった。武装に関する電源を落とし進路も変更しようとすると警報音が鳴り響く。

 

『緊急事態 緊急事態 アト三十分デ自爆シマス 総員避難シテクダサイ クリカエシマス 緊急事態 緊急事態』

「どういうことだ」

「おそらく電源を落としたことによって暴走したか、もしくは園崎本人がここの映像をどっかで見ていて負けたことがわかったから自爆装置を作動させたんだろう」

「なるほどな」

 

 自爆と聞いて正直焦るかと思ったが意外にも冷静に返事を返してきた。想定していたのだろうか。

 

「とりあえず俺達も脱出するぞ」

「どうやって」

「避難しろって言うんだからどっかに逃げ口くらいあるだろ。その辺のやつとっ捕まえて聞き出す」

「そうかそうか。でもその必要もないだろ」

「何言ってんだ。このままここにいればお互い自爆に巻き込まれて死ぬ……」

 

 振り返って見てみると首元にブレードが添えられていた。大体わかった。念のため白衣の男を確認すると血溜まりができている。

 

「この状況でも人殺しか?」

「アイツはもう必要ねぇだろ。生きている価値もない」

「生死を決めるのはお前じゃない」

「でもお前でもないだろ?」

「それがどうした」

「ここにおいてけば死ぬんだぜ?お前も人殺しと同じだろ」

「そうだな、元々そういう覚悟で俺は来ているのからな」

「じゃあなんであの時俺にメモリを渡した」

「それは私情だ」

「…フフ、フハハ、ハーハッハッハ!なんだよ、メチャクチャじゃねぇか!」

 

 そうだ、今日の俺は根拠も何もかもがめちゃくちゃだ。だから何を言われてもどんな罪を被っても全てを受け入れるつもりでいる。

 

「じゃあ、こうなる(・・・・)ってことも頭に入れていたのか?」

「勿論だ。これは俺達が初めてしまった物語。だからこそ俺が終わらせなきゃいけないんだ」

 

 剣を引いて落とした獅郎は青い仮面を付けた顔を抑えて笑っている。

 

「いいねぇ!ここまで面白いことになるとは思いもしなかった!やろうぜ京!」

「ああ、今日で俺達の因縁に決着をつけよう。獅郎!」

 

 スカルマグナムを構えてかつての友を狙い定める。楽しかったはずの思い出も苦しい思い出も悲しい思い出も全てをここで終わらせる。罪を数えるのはアイツだけじゃない、俺も一緒に数えるんだ。

 

「どっちが生き残っても、どっちも死んだとしても恨みっこなしだぜ?」

「当然だろう。そんなことより始ようぜ、最後の戦いだ」

「手加減も遠慮もいらねぇ、全力で行くぞ」

 

 互いに得物を構えて見据える。生きることに執着はしない。今はただ──目の前の敵を殺すことだけを考える。地を駆け出すと互いの声が響き合っていた。

 

「京ー!」

「獅郎ー!」

「「俺がお前を殺す!」」

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