青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第二十一鏡 決戦・要塞攻略戦 完

「……と…ん‥…!……快……く……!」

 

 ふと名前を呼ばれた気がして閉じていた瞼を持ち上げた。寝ていたというよりは気を失っている状態に近かったらしい。

 

「快斗君!」

「新一、さん……」

「良かった、無事だね」

 

 目の前にはいつもの執事服とは違う変なスーツを着た新一さんの姿があった。ヘッドセットに手を当てて何か連絡をしているらしい。顔を軽く叩いて意識を覚醒させ周りを再確認する。

 破壊したコントロールパネル、ワイヤーで拘束された女と周りでまだ意識を失っている兵隊ども。そして新しく追加された変な格好の新一さんと穴が空いた壁とでっかいブースター……いやいやいやいやいや、何このブースター!?

 

「体は動かせる?もし行けるならすぐに脱出の準備をしよう」

「何平然としてるんですかっ、てか何スカこれ!?どうやってきたんですか!?」

「見ればわかると思うけどこれで」

「これでぇ!?」

 

 どっからどう見てもミー○ィアのブースターにしか見えなかった。よく見ると先端に人型の枠が取り付けられている。相当なGがかかるだろうけどこの人なら耐えかねないという考えが過ったため黙っておくことにした。

 

「メモリの負担もあるだろうから乗せていくけど」

「この辺の捕獲した人はどうします?」

「後ろにバリアフィールドを張るから快斗君と一緒に乗せてもらえる?ワイヤー拘束は忘れないようにね」

「うっす」

 

 連れて行ける限りで拘束してブースターの上に乗せる。運んでいる最中に女が目を覚ましたが変に抵抗されずそのままブースターの上に乗せた。多分これだけいれば情報収集も問題ないだろう。それに今回は犠牲が出ることは避けられない戦いだというのは重々承知している。だからこそ救える限界は救おう、たとえ利用することを前提にしても。

 

「準備OK?」

「オーケーですけどどうして少し焦っているんすか?」

「実はさっき軌道計算が出たんだけど、どうやらこの要塞は現在太平洋に向かって進行しているらしい」

「本来予想される方向ではないと?」

「うん。そして何より軌道が下に向かっていっていることから多分落ちてる」

「えっ、マジっすか?」

「マジだと思う。向かってくる最中何度か角度を下にずらしたからほぼ確実だし、それにこの警告音が本物ならどっちが先になるかわからないけど脱出しないとまずいことになるのは確かだね」

 

 となると早めに脱出しないと危険かもしれない。てか俺が寝てる間に自爆スイッチ入ってるってどういう事だよ。それに新一さんが持ってきたブースターもどこまで飛べるか俺が知っているわけではないけど人を乗せるんだ倍くらいの燃料を使うはず。でもその前に。

 

「京はどうしてるんですか?」

「まだ連絡していないんだけど錠前の位置情報だとここの最上階にいるみたい」

 

 錠前をとって連絡を取ると京の声が聞こえてくる。

 

『どうした?』

「要塞が軌道を変えた。このままじゃ太平洋に落ちるか自爆が先か分からない。脱出しよう」

『あー、だとしたら先にいっててくれ』

「どうして」

『やることが残ってる。何、心配すんな生きて帰るさ』

「京……」

「分かった、悔いのないように」

『あいよ』

 

 錠前越しでもわかるようなニカっとしたような声を最後に連絡は取れなくなった。俺たちは京の無事を祈りながらも新一さんが操縦するブースターに乗って要塞から脱出した。バリアフィールドのおかげか気圧やGをあまり感じられずにいたがそれでも強く速いため少しずつ気持ち悪くなってくる。

 

「大丈夫そう?」

「いやもう全然、キツいっす」

「そっか、なるべく楽にできるようにはするから」

「そういやどうやって壁破壊したんすか?このブースターどう見ても武装なんて」

「来る最中に照準合わせて撃ったバズーカなら捨ててきたよ」

「環境に優しくないっすね」

「それはごめんなさいだけど急を用してたから。あ、ごめん迎撃部隊が来た」

 

 前の方を見ると小型の戦闘機が二機迫ってきていた。人が乗っている様子が見られないことから要塞から脱出するものがいた際に情報を漏らさないようにする為自動で出るようになっていたのだろう。

 

「僕の方から迎撃することは出来ないや」

「じゃあどうするんすか?言っちゃアレっすけど新一さん丸裸もう同然っすよ?」

「だとしても、壊す方法はあるよ」

「へ?」

 

 ギュインとスピードを上げると気持ち悪さが増してくる。飛んでくるミサイルを避けながら戦闘機に近づいた時にこのまま素通りするかと思いきや俺たちがいるバリアフィールドをぶつけるようにして下に避けた。目の前で戦闘機が爆発し次がやってくると今度は機体の腹部にナイフのような近接専用の武器が取り付けられていた。流石に逃げるしかないだろと思うと同じように突っ込んでいく。何をしているんだと言いたかったがそれよりもGのせいで吐き気が止まらなかった。戦闘機との距離が詰められると真っ逆さまになる感じがした。なんだこれと思うとそのまま一回転して戦闘機の頭にぶつけて迎撃した。

 

「ヨシ!」

「よしじゃねぇぇぇぇアンタ何バレルロールしてんだぁぁぁぁぁあぁぁぁぁああああ」

 

 その勢いで地上へと向かう新一さんは風邪のせいで音が聞こえていないのか返事をしてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな水を差して」

 

 獅郎との決着を受けている最中、新一達から連絡を受けて取るかどうか悩んだ際に出てもいいと獅郎が言ったため時間をもらった。その間は獅郎も攻撃をしてくることはなかった。

 

「こんな状況だからな。ただ、もう邪魔が入ることは許さねぇ」

「だな、だからこうしてやるよ」

 

 錠前を獅郎に向かって投げつけると叩き斬られるがそれが狙いだった。以前新一がやった戦法、錠前は外部から破壊されることで煙幕の代わりになる。煙の中奴がいる場所に向かって銃を撃つとそれを叩き落とすように煙が裂かれる。見えないところからの銃撃を捌ききったキモさはさておきそこに向かって正拳突きをすると回避される。

 

「あっぶねぇな!」

「なんで避けられんだよ」

「生憎俺はいつでも始められるようにしてたからな」

「そんなに俺と戦いたかったか」

「そりゃもちろん!」

 

 振りかざされるブレードを盾骸骨で防ぎ押し返すと距離をとりながらエネルギー弾を放ってくるがそれを撃ち落とす。互いに何をやってくるかは想定済みというわけか。

 

「お前が本気で向き合ってくれるんだ。やっと出来るんだぜ、この戦いを!」

「そうだな、俺たちが始めてしまった事件だ。だからこそもう終わりにしなきゃいけない。お互いのために」

「俺もこの決着は死ぬ前につけたったからなぁ、嬉しいぜ」

「千尋のために、何より俺自身のケジメだ」

「そうこなくっちゃなぁ!」

 

 正面に超スピードでやってくる獅郎に対して鉄砕拳を打つが舞い上がって回避するため銃を撃って迎撃する。放たれる光弾を避けながら壁を蹴って奴を叩き落としにいく。近くに行くとブレードを振り落とされそうになるがその瞬間に手にグローブサイズの骸骨を作り顎骨で受け止める。

 

「なっ!?」

「そこっ!」

 

 残った片方の手で腹を狙おうとすると羽がある獅郎は身を浮かべて避けるがブレードを掴んでいる腕で引き摺り込んで拳をそのまま振り上げ顔面をぶん殴る。

 互いに地面に落ちて立ち上がるのに時間がかかった。俺は背中から落ちてアイツは運悪く顎にあたったのか立ちがるのに時間がかかった。

 

「悪運だけは強いよなぁ」

「お互い様だろ」

「そろそろ終わりかぁ?」

「だな、割と体力もギリギリだ」

「そうかい、俺はまだいけるけどなぁ」

 

 多分ハッタリだ。アレだけ動いたんだ俺と一緒でアイツの体ももうボロボロに違いない。おまけにアイツには猛毒が回っている。

 

「これで終わりだ」

「終わりにしてやんよ!」

 

 羽を広げ光弾をいくつも放ちブレードを構えて真正面から突っ込んでくる。それに対して盾骸骨を展開して銃で狙いを定め撃ち出す。盾骸骨と獅郎がぶつかった瞬間競り合いが始まるが圧倒的に盾骸骨が負けこっちにやってくる。それに対しエネルギーを右手に集中させて骸骨の後ろから拳を打ちにいく。右手に集中していたエネルギーは骨手の形になり手を開く。骸骨の後ろに来た途端骨の指は骸骨と獅郎を包み込む。今獅郎は俺のエネルギーに包まれている状態になりほぼ全方向に抗わなければならない状態になる。

 

「石破天驚…」

「ウオォォォォ!!」

「死爆」

「オォォォォォォォ!!」

「スカル・フィンガー・零!」

 

 完全に包み込まれ爆発すると俺の変身が解除される。流石にパワーを使いすぎたらしい。爆発の中からは同じように変身が解除された獅郎が出てくる。メモリがピキパキと音を上げながらヒビが入っている。

 

「負けちまったか……」

「ああ、俺の勝ちだ」

 

 笑いながらも後ろの方へと下がっていく獅郎は壁に寄りかかってそのままずり落ちる。一息つくかのようにため息をつくが後悔している様子はなかった。

 

「言いたいこと、あんだろ?」

「…ああ」

 

 正直言うかどうか躊躇った。きっとこいつ自身それは把握しているだろうと思っているからだ。だがそれは自身への戒めになるため改めて口にすることにした。

 

「俺の罪は数え終わった。さぁ、お前の罪を数えろ」

「今更、数え切れるかよ」

 

 こいつがどんな罪を犯して来たのかは知らない。それでも俺のせいで作り出してしまった罪もあるはずだ。

 

「因みに俺は今から二つ、罪を犯す」

「ああ?」

「今からお前を討つ、そしてこの身を自らの手で滅ぼす」

「お前、まさか俺を殺した後に心中するってのか?」

「そうとも言えるな」

「バカか?んなことやってもお前は」

「俺は、俺のせいでこうなってしまったと思っている。だからこれで罪滅ぼしをするんだ」

 

 獅郎は呆気に取られた顔をすると顔を押さえて笑い出す。

 

「何がおかしい」

「お前って、本当にバカだよな。誰が頼むんだよ、そんなこと」

「誰に頼まれたとかではない。これは俺自身のケジメだ」

「全く、これだけは死ぬまで誰にも言うまいと思っていたのにな」

「?」

「少し、昔話をさせろ」

 

 銃口を向けられてもなお笑っているこいつが少しおかしくも感じたが黙って話を聞くことにした。

 

「あの日、京にコイツの使い道を考えろと言われた次の日、俺は千尋に相談したくてお前より先にアイツの家に行った。表面化することは違えど根本的なところは多分一緒なんじゃないかと思ったからな。でも家に着いた時、玄関の鍵が開いていたんだ。おかしいと思って入って行ったらな、千尋が何者かによって誰かに殺されてたんだ。窓をぶち破った跡があったからきっと犯人は逃走しようとしたんだなと思った。そうしたら後ろから襲撃を受けた。奇跡的に回避できた俺はそいつが付けていたコイツを奪い取って変身した。流石に力の差があることを理解したのかすぐにやつは撤退したがな」

「待て、じゃあお前は」

「話は最後まで聞けよ。散らかった部屋、親友の遺体、これらから俺が疑われることは間違いなかった。もしそれで捕まるくらいならせめて千尋を殺したやつくらいは道連れにしてやりたいと考えた俺は殺人者のツラをすることにした。まぁ事実その後にちゃんとそいつを殺したかられっきとした犯罪者なわけだが。そして俺は今日までいろんな人間を殺しては実験台にして遊んできた。きっともう悪いことをしても誰にも止められないと思っていたからだろうな。そしてそこに骸の探偵が現れ、一人の犯罪者はそこで終わりを迎えたってわけだ」

 

 向けていた銃を持つ力がなくなりガシャンと音を立てて落とすと頭を抱える。俺がやってきたとことはコイツをただ責めてきただけってことだ。親友を殺してもいないのに殺したと濡れ衣を着せた上にずっと追い詰めてきたのは俺だった。

 

「嘘だ、俺は、俺は」

「京落ち着け。お前は何も悪くねぇよ」

「そんなわけ」

「結果的には俺は犯罪に手を染めたんだ。むしろ止めてくれたのがお前でよかったよ」

 

 無実の親友を追い詰めた俺は大馬鹿者だ。なのに恨んでもいいはずのアイツは俺を慰めてきやがる。なぜコイツは今になってそんなことを。

 

「泣くなよ、男だろ?」

「俺は、取り返しのつかないことを」

「バカだな。結果的には俺が悪いんだ。あの時俺弱かった。ちゃんとお前のことを信じていればこうはならなかったさ」

「だが、だが」

「うるせぇな。もう終わったことだ」

「じゃあ、なんで今そんなことを」

「そうだな。俺からお前への最後の挑戦状、かな?」

 

 そう言った獅郎は指で鉄砲の形を作って俺に一言「バン」というと力が抜けたように手を下ろして動かなくなってしまった。帽子で顔を抑えながら獅郎に近づいて帽子をかぶせる。こうすればまだ生きていたとしても顔を見られることはない。

 帽子を被せた獅郎の隣に座り辺りを見回す。男の遺体とでっかいコントロールパネル、朽ちかけたメモリ、そして親友の遺体。せめて、俺にできる償いはこうすることだと親友の隣で最後に時間を過ごすことにした。例え千尋が天国にいたとしても会うことはないだろう。俺はコイツと一緒に地獄に落ちるだろうから。

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