青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第四光 憎しみを再起させないために

「おい被験体P43番、よかったな仕事だぞ」

 

 鉄格子の外に人影が見えた。ガチャガチャと音を立てて鍵を開けていたが正直どうでもよかった。仕事なんてものは聞いた事がないけど()の使用用途なんて分かりきっている。喋れば電気が走る首輪をつけられ手錠を付けられる。違う部屋に連れてかれると椅子に座らせられる。首輪と手錠はすぐに外されたが今度は手足を椅子に拘束される。部屋から誰もいなくなると目の前にある真っ暗だったモニターにサングラスをかけたジジイの顔が映された。

 

『牢での生活はどうだったかな?』

「最悪に決まってるでしょ」

『だろうね。それを改善するチャンスを与えよう』

「別にアンタたちにそんなことしてもらう理由なんてないわよ。殺すならさっさと殺しなさい」

『これが名護新一のためでもかい?』

 

 その名前を出されて意識が向けられる。ジジイの顔はにたついてて気持ち悪いが話だけは聞いてやろうという気になった。

 

『君の得意分野だ。コレを殺して来い。もし生かして連れてきてくれたらこちらとしては助かるがきっと難しいだろうし君はそんなことしないだろう』

「何言ってんの」

『それほど難しい相手だということだよ』

「違うそうじゃない」

『君のために道具まで用意したんだ。頑張ってくれたまえ』

「話を聞きなさいよ!」

『我々の戦力は減ってしまっている。ある程度元に戻るまでに済ませて来て欲しい。こなせなければ君に待つ未来は一つだけだ。彼のためにも頑張りたまえ《春姫(・・)》』

「待ちなさいって!」

 

 ブツっと切れた画面をぶん殴りたくなったが椅子に拘束されていて動けなかった。その代わり消えたモニターから出てきたのは一つの黒い箱だった。疑問を持つと同時に手足の拘束は解かれ箱を開ける。中から出てきたのは骨のような外装を纏ったUSBメモリ。歪なAの文字が書かれたそれのスイッチを押すと左の鎖骨あたりに違和感を覚える。挿してはいけないという理性と裏腹に挿したいという欲求を抑えることができなかった。姿が変わったのを真っ暗な鏡を通して理解した私はすぐに元の姿に戻る。自由の身に近い状態の私は扉をおそるおそる開くと部屋の前に写真が落ちていることに気づく。その写真を見ても信じることは出来なかったがそれでもと体は動き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 結局リビングで寝た僕たちは朝食を摂る時には無言に近い状況になっていた。川の字で寝ていたんだから少しは仲良く話したりしないのか君達と思ったがただならぬ雰囲気を感じたため黙っておくことにしたがお嬢様からすぐに声をかけられる。

 

「今日の予定は何かしら」

「本日は午後一時よりRoseliaの練習となっております。あこちゃんが受験を終えたので今日から全員参加になります」

「ようやくドラムの音も入るのね」

「なので今日のメニューにはリハビリを兼ねてウォーミングアップを少し長めに取りましょう」

「その後は?」

「午後六時まで練習したのち帰宅して食事、入浴、その他を済ませ、小テストへの対策をします」

「テスト対策はしなきゃいけないの?」

「普段は中々出来ませんし土日の方が総復習になりますからね」

 

 渋りながらもといった様子ではあったが納得してくれたみたいだった。普段勉強から逃げている分どこかで埋め合わせをしないと期末考査の時に大変なのだ。ああはいったがそこまで厳しくすることはないし多分すぐに終わらせることはできるだろう。

 

「希璃乃はどうするの?」

「私は………一度家に戻ります」

「そっか」

「はい、戻って様子を見てきます。もしお兄様がよろしければまたお会いしてもよろしいですか?」

「もちろんだとも」

 

 パアッと明るい笑顔を見せて朝食を再開した。僕達も同じように食事を再開した。

 食べ終わると先に出るということで希璃乃を見送り片付けに入る。

 

「名護家に連絡しなくて良かったの?」

「何故、というよりはそれが正解のようにも思えますね」

「どういうこと?」

「希璃乃は僕の妹です。妹が生きてたと知って喜ぶ人もいるかもしれませんがそれ以前に僕が関わっていることでなにかしてくる可能性も否定できません」

「でも関係ないじゃない」

「そうも言ってられないのが人間というものです」

 

 蛇口を捻り手を拭いてからエプロンを外す。お嬢様から奇異な目を向けられるが言いたいことは伝わってきた。

 

「信じてないの?」

「信じているからこそですよ」

「機械みたいな返事ね。まるでアークの時と同じよう」

「まさか、これは僕の考えですよ」

 

 ──性格の悪い答えだな

 君に言われるとは心外だな。とはいえ自覚はあるつもりだよ。

 ──黙ってたほうが帰って危険じゃないか?

 それもそうかもしれない。話す人には話すけどその人も厳選しないとな。

 

「その様子だと深次にも言われてるのかしら」

「わかりますか?」

「なんとなくよ」

「流石ですね」

 

 表情に出てしまっていただろうか。でもお嬢様のことだから察してくれたのだろう。

 

「でも良かったわね」

「……そうですね。あの子が生きていたなんて今でも夢みたいです」

「少しでも一緒にいられるように、ね」

「よ、よろしいのですか!?」

「いいも何も家族が一緒にいるのは当たり前でしょう」

 

 お嬢様からそんな言葉が聞けて嬉しくなった。より一層執事としての仕事に念をいれるようにして頭を下げる。分かったなら早く行くわよと言って家を出た。バイクに乗ってサークルに向かった。スタジオに入ればこの間まで欠席してたあこちゃんも揃って皆が待っていた。

 

「友希那さん新兄お久しぶりです!あこ、完全復活です!」

「無事に終わったのね」

「お疲れ様、今日からまたドラムも頑張ろうね」

 

 久しぶりにRoseliaの練習風景を見る。ここしばらくは忙しさのあまり練習を見ている暇すらなかった。ましてあの事件の期間といえばそれはもう時間が経つのが本当にあっという間だった。音を合わせては改善点を探し更に上を目指す姿を見れるのに喜びを感じる。一度休憩に入るがそれすらも勿体無いという雰囲気が流れていた。

 

「はい水」

「ありがとう新一。そういえば妹さんは?」

「一度自分の家に戻ったよ。保護者の様子を見に行くって」

「引き取ってくれた人ってなんか言いづらいけど保護者って」

「実際そうじゃない?親としてちゃんと呼ばれるのってその人が役目を終える時だろうし」

「難しい話をしてますね……というより妹さんというのは?」

「前に話した家族のことです」

「生きていたのですか!?」

 

 昨日あったことと事情を説明すると半信半疑といった様子だった。無理もないだろう。僕も死んだと思って皆に話したわけだからそれが生きているとなると見もせずに信じるのは難しいことだ。いずれ紹介させてもらうと話すとスマホから着信音が流れてくる。かけてきたのはたった今話題に上がっていた希璃乃だった。

 

「もしもしどうしたの?」

『お兄様、母が……母が……!』

 

 啜り泣くような声が混じっているのを聞いて最悪の状況が頭の中をよぎる。状況を聞き出そうにも冷静になる事が優先されると考え無理に聞き出そうとはせずに場所だけ聞くと澄んでいるであろう場所の住所を知らされる。そこで待つように指示をして電話を切り自分の荷物をすぐに用意してスタジオを出る。

 

「何があったの?」

「申し訳ございません、妹が泣いておりましたので」

「わかったわ気をつけて行きなさい。それと落ち着いたらすぐに連絡を入れなさい」

 

 会釈をしてすぐにバイクの場所に向かう。住所に案内できるようにマップを起動してバイクを起動する。一体何が起きたのだろうか。しかし希璃乃が泣いている以上はいかなければならないと理性より先に感情が動いてしまった。この際そんなことは置いておこう。とりあえずは安全の確保に向かうことと妹の安全を願いながら街中を走る。到着するとすぐに希璃乃が地面に座っているのを目撃して近づく。

 

「何があったの?」

「母が、ガラスのように、砕けてしまって……」

 

 視線を逸らすと女性用の服が上下を並べるようして綺麗に落ちていた。首や素肌が出る部分は少しくたびれておりまるで先ほどまで誰かが来ていたようだった。この光景は何度も見た事がある。

 

「いつ亡くなられた」

「先ほどです……もう退院できるからって病院から一緒に帰ってきたら目の前で……」

 

 こんな絶望あってはならない。握り拳が強くなると重い足音が聞こえてくる。ワニの顔をしたような奇妙な人型、ファンガイアだ。犯人は想像出来ていたがまさか戻ってくるとは思いもしていなかった。

 

「な、なんですかこれ!?」

「希璃乃、下がっていて。仇は取ってみせるから」

 

 ベルトを装着してイクサナックルを掌に当てる。許すつもりは毛頭なかった。今はただ目の前の敵を葬ることしか考えていない。雄叫びを上げるヤツに向かって言い放つ言葉は一つ。

 

「その命、神に返しなさい」

 

 突進する様子を見て隙だらけなことに気づくとすぐに斬り荒んだ。木っ端微塵にする勢いで斬り裂いていく。反撃の隙を与えることなどせずにファンガイアはステンドガラスになって砕け散った。妹を泣かせた罪は重い、そして何より相手が悪かったとしかかける言葉もないだろう。

 

「お兄様、その姿は……」

「これが今の僕の仕事だよ」

「ありがとうございます。助けていただいて」

「礼をされるほどのことではないよ。それよりもこれからどうする?」

 

 保護者がいなくなった現状希璃乃は一人になってしまう。本人の意思にもよるがこれから先はこの子に選ばせなければいけない。

 

「もし、願えるのなら、お兄様と共にいたいです」

「本気かい?今みたいに危険に晒されることもあるかもしれない」

「私は本気です。それに、もう離れたくありません」

 

 泣き目になりながら袖を掴んでくる。きっとこの子の中で葛藤しているんだと思う。それでも僕はこの子の願いを叶えてあげたいと考えている。普段から自分勝手なのは重々理解しているつもりだがそれ以上の行いをしていると気づきながらも手を止めることはなかった。

 すぐに行動に移そうと考えた僕はスマホを取り出してお嬢様に連絡をする。きっと練習中だろうからすぐには気づかないだろうと思ったがいらぬ心配だったらしくすぐにコールに気づいてくれる。

 

『落ち着いたのかしら』

「はい、ですが少々状況が変わりました」

『どういうこと?』

 

 今の間に起きていたことを全て説明するとすぐに受け入れてくれた。だが問題はここからだ。

 

「お嬢様、折り入ってお願いがあります」

『何かしら』

「希璃乃をうちで保護出来ないでしょうか」

『……あなたは戸惑っていたけれどやはり名護家に預けるべきではないのかしら』

「おっしゃる気持ちはわかります。されど説明した通りよく思わない人といるように考えられます。それに」

『それに?』

「出来ることなら、僕が守りたいのです。もう二度と失わないためにも僕が近くで守っていたい所存です」

 

 少しの間が空くとお嬢様はわかったと言い旦那様には自分で許可を取るように言って電話を切った。すぐに感謝を伝えようとしたが切られてしまったためメッセージを飛ばしてすぐに旦那様に電話を繋ぐ。

 

「もしもし、旦那様にございますか?」

『そうだが、どうしたんだい新一君』

「お願いがあります。どうか妹を希璃乃を湊家で保護させていただきたいです」

『待ちたまえ、君の妹は亡くなったはずだろう』

「はい、ですがそれが生きていました。僕とて未だ夢かもしれないと思うところがあります。ですが今が紛れもない現実だと信じたいのです」

『とりあえず落ち着きたまえ。友希那はなんて言ったんだい?』

「わかったと仰っていました。そして旦那様には自分で連絡するようにと」

『なるほどね』

 

 旦那様も突然の事で理解するのに時間がかかるようだ。死人が生きていることや突然保護することを願い立てられても困るというのが普通だろう。だからといって理由もなく払い除けたりするはずはないだろうと期待している自分がいるのも事実だが。

 

『いいだろう。その分負担が増えることは当然だが君は更に責任を負うことになる』

「構いません。それが私が望んだ道です」

『なら許可をする。元の仕事も忘れないように』

「はっ」

 

 無事許可をいただいたことから希璃乃を湊家で保護することに成功した。お嬢様と旦那様には迷惑をかけるだろうがそれでも守りたいものがある。もう二度と失わないためにも僕が守るしかないと希璃乃を抱き締める。

 

「お兄様?」

「もう大丈夫だよ。お嬢様も旦那様も許可をくれた。勝手に決めて申し訳ないけどこれからは湊家で共に暮らそう」

「よ、よろしいのですか!?」

「ああ、希璃乃さえよければ行こう」

「はい!」

 

 救われたような笑顔をする希璃乃乃手を引いて立ち上がる。本当はこうしてはいけないと思っている。でもこの方法が今は最善だと考えた。この選択が間違いだとも気づかずに。

 

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