青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第六光 気づかぬ闇の中で

 あれから数日経ったが敵から希璃乃が襲われるようなことはなかった。昼間に一条夫婦と出かけることもあったようだが特に問題はなかったらしい。奇妙なドーパントも発生していないことからあれは僕を標的としていたのではと考えたがそれでも気を緩めることは無かった。学校を終えるとまずお嬢様達をサークルに届けてから希璃乃を迎えに一条さんの家へ向かう。一条さんが朝から迎えには来てくれるが流石に送られるのは申し訳なさがあったので迎えに行っている。

 

「ごめんください名護です」

「お疲れ様です新一様」

 

 玄関のチャイムを鳴らせば一条さんが出迎えてくれる。一見託児所の光景のようにも思えるが決してそういうわけではない。玄関の奥には既に準備を済ませてた希璃乃が待っていた。

 

「おかえりなさいませお兄様」

「良い子にしてたかい?」

「私をいくつだと思っているんですか?もう十六ですよ」

「そっかそっか、希璃乃も随分大きくなったなぁ」

「新一様、仰っていることが大分老けてしまっています」

「ははは、ご冗談を」

 

 一条さん達に明日もよろしくお願いしますと挨拶をしてその場を去る。今日も特に問題はなかったらしい。しかし意外だった一面も見れたと希璃乃は満足そうにしていた。

 

「一条さんは旦那だからみたいなことは言わず家事を分担してやってくれるのです」

「あの人らしいといえばあの人らしいね」

「昨今はそういうふうに男女の認識が変わり始めているみたいですね」

「そういう時代も近いんじゃない?」

「お兄様は一体いつの時代の人なんですか?」

「一応現代人のつもりだけど……っと、待って希璃乃」

「どうかしましたか?」

「この辺ってこんな暗かったっけ」

 

 普通に街中を歩いていたはずだが路地裏に入ったわけでもないのに辺りは真っ暗になっていた。季節柄早めに暗くなるのは百も承知だが辺りの景色は夜みたいに暗くなっていた。空気を吸っても問題なかったということは毒ガスの類ではないことが判明する。だが危険を考慮して希璃乃を後ろに下がらせる。辺りを見回すと一本のナイフが飛んできた。それをすかさず避けると背中のほうに別の気配を感じた。

 

「っ!」

 

 飛んできたナイフは軌道を変えて刺し迫る。ナイフを掴んでいなければできない動きだと判断して手があるだろう部分に平手を突き出すとナイフの動きは止まる。無理に力を入れずに引き戻す姿を見て相手の特性がわかる。

 

「お兄様」

「離れちゃダメだ。相手はおそらくアサシン、この状況でバラバラになれば思う壺だ」

「でもどうすれば」

「きっとそろそろ彼がくるはず」

「彼?」

「それまでなんとか持ち堪えられるよう頑張ろう」

 

 イクサに変身して防御姿勢をとる。この暗闇の中では流石の戦でも見えづらい。まだ夜の闇の方が見えやすいというもの。そんな中攻撃が来るものだから当たる前に気配で追わなければいけない。

 

 カチャン

 

 甲高い音が鳴り響く。何故この状況で缶を捨てたような音が聞こえてくるんだ?暗闇の中自分の音を出せば居場所を教えているようなもの。もし相手が暗闇の中でのみ行動したいのであればその必要はないはず。防がれるとわかったからこそのフェイクなのか?さまざまな思考を巡らせていると目の前が急に真っ白い光に染まる。

 ──閃光弾だ。暗い中で急激に光を当てられたら眩しくて何も見えなくなる。その中でまた暗闇に戻ればそれこそ本当に何も見えなくなってしまう。

 こんな絶好の好機、普通なら逃さない。なのに攻撃が来ることは一向に無かった。

 

「お前、アサシンだろ?」

「……」

「こんな時間だからこそ暗闇に入っても人は気づきにくい。そして暗闇の中で確実に相手の目を潰す」

「お前、何?」

「仮面ライダーエターナル、弦巻家の暗殺者もやってる」

 

 攻撃が来なかったのは快斗君が寸前で止めていてくれたからだ。

 

「何やってんすか新一さん、つってもしゃーないっすけど」

「ごめん、不意を突かれた」

「とりあえず闇を払いますか」

『サイクロン』

 

 風を示す機械音はその場に突風を巻き起こす。それと同時に視力が戻ってくると街灯の灯りに照らされた二人の姿が見える。まだぼやけてはいるが片方はこの間見たドーパント、もう片方は快斗君だった。希璃乃はまだ見えていないのか辺りを手探りしているようだった。

 

「見えます?」

「まだ霞んでる」

「ならまだ休んでてください」

「邪魔……どけ」

「悪いがそれは出来ねぇ相談ってやつだ。それにアサシンなんだろ、少し遊ぼうぜ!」

 

 快斗君はドーパントに対して攻撃を仕掛けるが避けられてしまう。続けて攻撃しても綺麗に避けてダメージは入らなかった。

 

「やり方といいその身のこなし、アンタプロだろ」

「だとしたら?」

「めんどくせぇな!」

 

 投げナイフも弾き体術では互角を見せる。ただ者ではない動きを見てある人のことを思い出し確信した。これは園崎からの刺客だ。しかも専用にメモリを調整されている。

 

「快斗君、相手は個人用のメモリを使ってる!」

「だと思ったっす!」

 

 殴りかかった快斗君の頭を飛び越え僕の目の前に来ると首を刈り取る様な構えをして動きが止まった。防御の姿勢も間に合わなかったはずなのに何故そんな好機を逃したのか。パンッと乾いた音が鳴ると快斗君とドーパントの位置が入れ替わっていた。

 

「大丈夫っすか!?」

「う、うん、大丈夫だけど」

「ならオッケー、っていない!?」

 

 入れ替わっていたはずの位置にドーパントはおらず辺りを見回しても元の風景があるだけだった。視界が完全に戻った僕と希璃乃は互いの無事を確認した。

 

「お兄様、この人は」

「そういやアンタ誰だ?新一さんの連れっすか?」

「連れっていうか……妹」

「あー、そういえばいましたね妹さん。道理で目元とか新一さんに似てるわけ……妹!?」

「ずいぶん貯めましたね」

「いやいやいやいやいや!?え、だって新一さん言いましたよね!?」

「それがね……」

 

 かくかく然々と数分間説明すると状況を整理できたのか落ち着いてくれた。途中で口を開けたまま返事をしなくなった時は壊れてしまったかと疑ったがそれも仕方ないだろうと叩き直して理解させた。

 

「事情はわかりました。でもアイツはお二人のどっちを狙ってんすか?」

「発生時期と対面する状況が僕達二人がいる時だからなんとも言えない。でもさっきは」

「新一さんを狙ってた」

「お兄様」

「まだわからない。勿論狙うのが僕ならいいけど、僕を殺さないと希璃乃を殺すことが出来ないと判断されたから僕を狙った可能性がある」

 

 だとしたら何故あの好機を逃した?やはりそこが気になる。表情が見えないし寡黙だから意図してる事は分からないけどどちらかを殺そうとしてるのは確実だ。

 

「とりあえず今回は二人とも護衛対象ってことっすね」

「そうなるね。念のため予防策は取ってあるけど快斗君がいてくれると心強い」

「任せてくださいよ。少なくともさっきの感じならメモリを剥がすくらい出来るっす」

 

 そう上手くといいが専用に調整されている様子から簡単には攻略できないだろう。しかしアサシン同士なら可能かもしれないと彼に期待している自分がいる。しかしどうせならあの人に話を聞いておきたいと快斗君に話すと上司に伝えておくと言ってこの場から姿を消してしまった。

 とりあえずここはすぐに帰るべきと判断して湊家まで警戒しながら帰った。家に帰ると既にお嬢様が帰宅していた。練習の時間もとっくに終わっており僕と連絡が取れなかったのでお嬢様も一度帰ってきたとのことだった。

 

「何があったの?」

「道中でドーパントに遭遇しまして」

「だから希璃乃はべったりくっついているのね」

 

 そういえば帰ってくる道中ずっと腕に引っ付いたままだった。怖いものをみればずっと誰かにくっついている、昔から変わらない光景だ。

 

「逆にあんなものを見て怖いと思わないんですか!」

「まぁ慣れってのもあると思うよ」

「お兄様はともかく湊さんは怖くないのですか!?」

「ええ、怖くないわ」

「何故ですか?」

「それは勿論、私に何かあれば新一が守ってくれるもの」

 

 何故か不敵な笑みを浮かべ勝ち誇ったような顔をしながら希璃乃を見ている。確かに言っていることに間違いはないがそんな顔をするほどだろうか?その上でなんで希璃乃は悔しい顔をしているんだ?

 

「希璃乃、君のこともちゃんと守るから」

「お兄様……!」

「そろそろ離れなさい。うちの中は安全よ」

「でも私はもう少しこうしていたいです」

「馬鹿なこと言っていないで離れなさい。夜ご飯を作れないでしょう」

「なんで湊さんがそんなこと言うんですか?作るのはお兄様ですよね?」

 

 何故二人は睨み合っているのか。そんなことは知らないがとりあえず希璃乃から腕を引き離し執事の業務に戻る。この前見た時は確か紗夜さんと仲が良かっただろうか。妹と触れ合うのも実に数年ぶりだしなんならあの頃も普通の家族として触れ合えていなかったのも事実だ。もしかしたら姉のような意識を持っているのかもしれない。後で聞いてみるか。

 

「お兄様今日の夜ご飯はなんですか?」

「ハンバーグかなぁ、こないだできなかったし」

「なら私が作ります!」

「いや、休んでていいよ。さっきのこともあって疲れているでしょ」

「ですがそれでは」

「良いんだよ。それとも希璃乃は自分の管理もできない悪い子なのかな?」

「そ、そんなことは」

「お嬢様は最近ちゃんと管理できるようになったんだけどなぁ」

「では休ませてもらいます!」

 

 出汁に使ってしまって申し訳ないという気持ちを抱きながらも希璃乃をコントロールするのに助かっている。

 肉種を捏ねて冷蔵庫に入れると電話がかかってくる。掛けてきたのは快斗君だった。

 

「もしもし?」

『あ、おつかれさまっす新一さん。例の件っすけど許可が取れました』

「本当?そしたら後日伺わせてもらうね」

『うっす。あと新一さんからすれば複雑な話かもしれませんけど』

「いいよ、話して?」

『猪宮ってやつと逢坂って人が釈放されるみたいっす』

 

 あの二人が弦巻の施設から出ることになった。それはメモリの毒素から解放されたことを意味する。真の意味で解放されたかどうかはわからないが二人が社会復帰できると判断されたのは良いことだと考える。だがやはり復帰先は名護家になるらしい。

 

「いつ外に出るの?」

『明後日っすね』

「ならその日に伺うよ。約束も果たさなきゃいけないし」

『了解っす。あと……』

「どうしたの?」

『いや、なんでもないっす』

「いいの?」

『うっす、気のせいだったみたいっす』

「そっか、もしなんかあったらまた連絡よろしくね」

『了解っす!お疲れ様です』

 

 何かを言いかけていたようだが本人が気にしないで欲しいというので気にしないことにして電話は終わった。そうなると数日以内に彼らとの面会も考えなければいけないとやることが増えてスケジュール調整を頭の中でしながら夜ご飯を作るのを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「博士ー電話終わったー」

「いつから私をそんな呼び方に変わったんだい」

「最近コ○ン見ててやっと納得する呼び方見つけたわ」

「まぁ悪い気はしないのだけどね」

「それでこれに関しては報告しなかったけど本当にいいんすか?」

 

 快斗はモニターに映る黒髪の少女を指差す。それは今日起きた戦闘の現場付近で取られた防犯カメラの映像であり新一が暗闇に引き摺り込まれる前の数分間の映像だった。街の防犯カメラの映像は勿論だがそれ以外にも外部から見えないように迷彩をかけた防犯カメラがいくつかある。そこに映っている黒髪の少女。それはしばらく見かけることのできなかった人物の容姿と似ておりそれを仮定として快斗は報告しようとした。

 

「確定的な情報じゃないし今彼に伝えてもさらに混乱する可能性がある。せめてもう少し可能性が上がってから報告する必要があるだろう」

「それもそうか、ってあれ?もう一人映ってる?」

「何?」

「確かこの人も新一さんの知り合いっすよね?」

「……以前見たことがあるな。データはっと、あったあった。これも報告はなしだ。いや、こちらで捕まえよう」

「捕まえる?」

「もしかしたら有力な情報を持っている可能性がある。そうじゃなくても子情報を提供すれば仲間になってくれる可能性がある」

「うわぁ、怒られないようにしてくださいよ?」

「勿論君も巻き込むけどね」

「やだなぁそれ」

 

 モニターに映る二人とパソコンに映る写真を見比べて二人は仮定的に、されど限定してアプローチする方法を誰にもバレないようにと模索していた。 

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