青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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今回は短めです


第十光 届かぬ光の中で

今日の件について不甲斐ない気持ちでいっぱいだった私は妻を連れて名護家に来ていた。せめてあのドーパントの情報を一つでも多く伝えられなければとデータベースに入る。ここならピックアップすれば町中の映像を調べられると踏みいるもののすでに先客がいた。

 

「今は一応休暇中だろう」

「ですが失態をおかしてしまいました。このままでは面子がありません」

「そうか」

 

 橋本は襟元のボタンをむしり取り機械の上に乗せる。目の前のモニターにはNow Loadingの文字が表示される。

 

「本当に便利ですよねそれ」

「小型カメラを極限にまで縮小しYシャツの襟ボタンにしたことで疑われないからな」

「潜入や証言にはピッタリです」

「情報収集にはうってつけだ」

「もしかして今日の戦闘データですか?」

「ああ、あのドーパントが気になってな」

「気になった?」

「見たことのある動きでな」

 

 元々名護家の人間だったわけだから基礎的な部分は似ていて当然ではないだろうか。しかし暗殺者ともなれば近接の動きは変わってくるのかもしれない。何より橋本が気になるというくらいだからそれなりの実力者の可能性もある。

 モニターに映った動きはかなり洗練された戦い方をしていたがやる気がないようにも見えた。

 

「動き一つ一つは強さを感じますが……まるで極力避けたいって気持ちがある感じがしますね」

「やはりそう思うか。似たような戦い方をしてるやつを知っていてな」

「そうなのですか?」

「だが奇妙なことにそいつは園崎のところに行かなかったやつだ」

 

 町中の防犯カメラの映像と登録情報や模擬戦の記録映像を照合させると一人の人物が当てはまった。しかしこの人物は半年前の作戦でMIA認定されたはずだった。もし生きていたとして何故姿を隠す必要があったのか、それとも捕虜の扱いになっていたが状況が変わったのか。

 

「この状況になれば捕まえるしかないな」

「出来るのですか?」

「戦いながら発信機をつけておいた」

 

 変身を解除して撮れたとしてもそこを拠点としていたら探すことができるかもしれないもしくはそれなりの成果が得られることを想定してたのだろう。無口な部分が多いが有益なことばかりしてくるこの男は本当に器用だ。

 

「誰かに連絡するのですか?」

「切姫だ。あいつがずっと探しているからな」

「万が一の時に備えて私も行きます」

「お前は別の仕事があるだろ。勝手に投げ出せばそれこそ主に迷惑ではないのか?」

 

 それはそうだ。そもそも今日私は任務を果たせなかった。なのにその上迷惑をかけるなど許されないことだ。

 

「しかしこの件について報告しなければならないが次の任務の時間か」

「!でしたら私が報告に行って参ります」

「いいのか?任務もそうだが嫁が待っているだろ」

「報告くらいの時間は待ってくれると思います」

「なら任せたい。未確定の情報もあるがそちらは対応中と伝えておいてくれ」

「畏まりました。ありがとうございます」

「なんのことだ?早く行ってこい」

 

 部屋を出る前にもう一度頭を下げて当主のいる執務室へと向かう。情報が確定したら新一様にも伝えるべきだろう。だがそれはそれで新一様に負担をかけてしまいそうになるが仕方ない。それにドーパントなら救う手段があるはずだ。

 

(仕事があるのは本当の事なんだがな。それと気になったのはこの映像だ。妹君が生きていると聞いた時は混乱したがこういうことなら納得がいく。しかしこれはきっと信じてもらえないだろう。そうなれば今回主は苦渋を迫られるかもしれないがな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 橋本隊長からの指示で送られてきた位置情報の場所に侵入した。見た感じ廃屋を拠点としているのか表示されているのはこの家だった。割れている窓から侵入すると発信機を見つける。ドーパントになった状態でここまで来るのかはさておきある意味ではラッキーかもしれない。拾い上げようとすると足音が聞こえてくるので近くの扉の裏に隠れる。

 

「ったく、いつもいつもタイミングが悪いんだから」

 

 独り言の様に呟く声は聞いたことのある声だった。ずっと探していた人の声にそっくりだ。だけどそれだけで出れば敵の罠にかかるかもしれないと思った私はその場で様子を伺う。

 

「隠れてないで出て来なさいよ。さっき隠れるの見たし」

「バレてましたの?」

「気配はしたし音もしてたから」

「あらあら、極力音は消してたのですけど」

「あんたってそういうとこあるわよね。これ使い始めてから敏感になったのよ」

 

 魔姫ちゃんはポケットからメモリを取り出して私に見せてくる。黒くて骨に包まれた様なデザインだ。真ん中には歪なAの文字が刻まれている・

 

「魔姫ちゃんはそういうのは見せないと思うのだけど」

「隠し事してもどうせバレると思う。それにここに来た理由も発信機かなんかでしょう?ならどうせバレてるし」

「わかってて持って来たんですの?」

「だって隠す気ないし」

 

 メモリを太腿に差し込んでその姿をドーパントへと変貌させる。すぐに変身を解除したがいつか見たことのあるドーパントとそっくりな姿に対して本当に戦わなければいけないのかと考えざるを得なかった。

 

「お願いだから邪魔だけはしないで欲しい」

「いくら魔姫ちゃんの願いでも新様に手を出したのなら話は変わって来ますわね」

「そうよね、あんたはあいつのこと大好きだものね」

「魔姫ちゃんもそうでしょう?」

「私はそんなことないわ。でもそうね。戦う前に少し話しておこうかしら」

「何をですか?」

 

 魔姫ちゃんはポケットから写真を2枚取り出して投げ渡してきた。目を逸らすように首を横に向けたのを見てなんの写真だろうかと見ると衝撃的なものが目に映る。こんなのはありえないと言うとそこにあるの事実だと言うふうに目を伏せる。

 

「だとしてもこれを信じることなんて」

「全て園崎が調べたことよ。状況証拠も確認した」

「でも」

「そんなこと言ってられないの!」

 

 怒声にも似たその声に驚きを隠せなかった。そんな声を出す様な子じゃないからこそ真剣さが伝わってくる。

 

「今は喜びに浸っていられるかもしれない。でも時間が過ぎれば苦しむことになるのはアイツなの!だったら今のうちに奪ってしまった方がいい」

「そんなことありませんわ。それに魔姫ちゃんがそんなことしたら新様は」

「それでもいい!……もう話を終わらせましょう」

「そうですわね、全力で止めて差し上げますわ」

「何闘おうとしてるの?」

「油断させようとしても無駄ですわ。この刃を抜けばいつでも斬りかかれ」

 

 言葉の最中で私の手は刀を持つことを拒否する。随意的に力を入れようとしても麻痺しているように身体が抵抗する。それよりも経っている尾がやっとのように体力も奪われていく。

 

「な、何を」

「既に毒ガスを撒いていたのよ。ドーパントの力があってか私にはあまり効かないけど」

「こんな、手を、使うなんて」

「今更でしょう。だって私たちアサシンよ。手段なんて選んでられない。敵を葬るためなら」

 

 再びメモリを身体に挿して変身した魔姫ちゃんは私に襲いかかる。ギリギリのところで回避するも持っているナイフで切り付けられる。

 

「あんたそんなものじゃないでしょ。せめて抵抗くらいしなさいよ!」

「くっ…!」

 

 メモリを使っている人間は人格が変わっていくと聞いていたけどここまで進んでいるとは。取り合えう逃げ道を作るために煙幕を投げて目眩しにする。さらに爆弾を使って壁を破壊し力を振り絞って逃げる。その中でも逃すまいと攻撃を仕掛けてきた。

 

「私も殺す気なの?」

「当たり前でしょ。今は敵なんだから」

 

 言葉の重みを知ると同時にナイフで数カ所刺される。引き抜かれた時の痛みもあるがそれ以上に広がってくる痛みの方が強い。

 

「毒を入れたわ。絶対に助かることはない。通信機とかも全て壊しておくから助けも呼べないわ」

 

 痛みで身動きが取れない私の体から通信機になるものを全て奪って壊した魔姫ちゃんは変身を解除してどこかへ行ってしまった。

 残りの動ける体力でせめて誰かに伝えないとと立ち上がり最後まで自分にまかされた任務を果たそうと動いた。

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