青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第十四光 信疑という表裏一体

 朝になり業務の一環として朝食を作る。それも慣れたことだが一つだけ気にかかることがあった。昨晩希璃乃が僕の部屋に来たことだ。あんなことまでしたのに追い出すような真似をして関係を拗らせてしまったかもしれない。だがいくら何でも実の妹とそのようなことをしてはならないとも考える。勿論僕はこれまで通り接するつもりだけど向こうはそれが気に食わないかもしれない。そう考えながら朝食の準備を進めるとリビングの扉が開かれた。

 

「おはようございますお兄様」

「おはよう希璃乃」

「今日の朝食は何ですか?」

「スクランブルエッグとウインナー、食パンとコーンスープだよ」

「美味しそうですね、私も手伝います」

「じゃあ後に煮立ってきたらスープを混ぜてくれる?」

 

 分かったと言って髪をまとめると鍋の前でスープの様子をじっくり見ている。どうやら杞憂だったようだ。きっと一時の気の迷いもあったのだろう。もう問題もないだろうと料理を盛り付けて運びお嬢様を起こしに行く。部屋をノックしても返事がない。時間も押してきているためごめんなさいと一言謝って部屋に入ると着替えている最中のお嬢様の姿があった。

 

「あら、おはよう」

 

 すぐに扉を閉めて部屋を出て下へ避難しようとすると手首を掴まれる。扉でお嬢様自身は見えていないので朝からホラーな展開を味わっているが力が弱いためすぐに振り払うことができそうだ。

 

「ノックに返事くらいしてください」

「聞こえなかったわよ。それに着替えているのを見たらすぐに出て行こうとするのはどうしてなの?」

「どうしても何もないでしょう」

「普段から私の服や下着は洗濯しているじゃない」

「そこじゃありません」

「隠しているから大丈夫よ」

「言いたいことを察してくれるのは助かりますが隠しているから良いという問題ではありません」

「私は別に見られても」

「今更ですが計画的犯行ですよねこれ。朝食が冷めてしまいますよ」

 

 腕を振り解いてリビングへと逃げる。一緒に住んでいるとはいえあのようなことをしてしまったら危うく犯罪者にされるところだ。いや、本人の許可が出ているから問題はないのか?だとしてもどんな状況で証拠が存在してしまうかわからない。やはり気をつけるべきか。

 

「大丈夫ですかお兄様?」

「う、うん。何とか」

「あの人に何かされたんですか?」

「いや、大丈夫。何もされてないよ。まだ寝ぼけているから起こしただけ」

「そうですか」

 

 お嬢様の話題を出すことはないかもしれないとも思っていたが案外自分から聞いたりしていることからもう大丈夫なのではないかと考える。しかし対面した時どうなるかがわからないのでまだ様子見だろう。お嬢様が降りてきても表情を変えず会話をしている。相変わらず少し攻撃的にも捉えられるがそれでも様子が変わっていないことに安心した。

 

「お兄様方は今日も学校ですよね」

「うん、だから一条さんのところに行ってもらうことになるけどいい?」

「大丈夫です」

「それと今日から練習がないから早めに家に帰って来れるけどテスト勉強をしなければいけないから協力してもらうことが増えるけど」

「わかりました。手伝えることがあったら何でも言ってください」

「そう言ってくれると助かるよ。お嬢様も勉学の方に力を入れて頂きます」

「分かったわ……」

「もしかして湊さんは勉強が苦手なんですか?」

「そんなことはないわ」

「そんな方がお兄様の主人なんて……」

「新一やるわよ」

 

 何がとは言わなかったがそれでもやることはわかっていた為頷いて返すとお嬢様は勢いよく食べ始める。すぐにむせてしまったため飲み物を渡すことになったが。その後朝食を片づけているとインターホンが鳴る。ここ最近やってくるお迎えが来たようだとドアを開けると一条さんが立っていたが表情は暗く前向きというふうには見えなかった。

 

「おはようございます一条さん、今日もよろしくお願いします」

「おはようございまず……」

「何かあったのですか?」

 

 一条さんは目を逸らしながらも申し訳なさそうに声を出した。

 

「私はあの日、新一様の任務を遂行することが出来ませんでした。そして希璃乃様を危険に晒してしまいました。そんな私がこの任務を引き続き行う権利はあるのでしょうか」

「一条さん……」

「状況が状況だからと、私は逸れてしまった希璃乃様ではなく妻の安全を優先してしまいました。名護の人間としても失格です」

「そんなことはありません。それにソニア様の方を優先するように指示を出したのは僕です。それに最終的に希璃乃も無事でした。お嬢様も守っていただけたのですから僕からは感謝しかありません」

「ですが」

「一条さん?」

 

 いつもより少し時間がかかっていることから見兼ねて来たのか希璃乃が既に準備を済ませて出てきていた。一条さんは希璃乃を見るとまた目を逸らした。依頼した任務を達成出来なかったことに深く落ち込んでいるようだった。ここにいる全員無事なのだから問題ないと言いたいがそういうわけにもいかないらしい。

 

「私のことならお気になさらないでください。それに一条さんがよろしければ私はまたあなたにお願いしたいです」

「希璃乃もこう言ってますしお願いできませんか?」

「……畏まりました。この一条始、次こそは命に変えてでも必ずやお守りしてみせます」

 

 一条さんは玄関前で跪くと改めて忠誠の意を示した。念のため今日は外出を控えるようにお願いすると了承してくれたので僕達は希璃乃を一条さんに預けて学校へと向かった。家の前でリサ似合うとその姿を見られていたらしく何があったのかと問い詰められたが事情を説明すると納得してくれた。

 学校での時間は特に問題なくドーパントの反応も無かったため放課後っまで気兼ねなく過ごすことができた。お嬢様と共に迎えに行くと一条さんの家なのに橋下さんが出て来た。ただ少しだけ疲労が溜まっているのかダルそうにして対応される。家の中に入ると一条さんと希璃乃が迎えてくれたのだが少し様子がおかしかった。希璃乃は特に問題は無かったのだが一条さんの方は橋本さん同様ダルそうに思える。

 

「何かあったんですか?」

「いえ、失態を取り返そうと張り切っていたら想像以上に入りきってしまっていたみたいです」

「一条さんとチェスやテーブルゲームで遊ばせて頂いたのですが少し疲れさせてしまったみたいで、申し訳ありません」

「いえいえそのようなことはありません。是非またお手合わせ願います」

「ええ、是非」

 

 そんなに激しい新入り戦でも行っていたのだろうか。希璃乃は楽しかったという顔をしているが男二人は普段見せないような疲れた顔をしている。二人ということは橋本さんも呼び出されたということなのだろうか。

 二人にお礼を言って帰路に着く。特に話すことはなくそのまま歩いていると赤いセーラー服の女の子に出会う。殺意を隠せていないのかそれとも隠す気がないのか表してくる敵意は真っ直ぐこちらに向いていた。

 

「あれは……もしかして春川さんですか?」

「久しぶりね、希璃乃」

「お久しぶりです」

 

 希璃乃が近づこうとしたため手で制止して進行を阻む。魔姫ちゃんは舌打ちをしたがその様子に二人は気づいていないようだった。

 

「どうしたんですかお兄様」

「というよりあなた今までどうしていたの。新一たちはずっとあなたのことを」

「探していたんでしょう。でも私はここにいるわ」

「何でいなくなっていたの」

「捕まってたのよ。でもあることを条件に解放されたわ」

「あること?」

「名護希璃乃の暗殺、それが私を一時的に解放する条件」

「え?」

「だからアンタたち、そこを退きなさい。そうすれば痛い目を見なくて済むから」

 

 メモリを挿し込んで姿をドーパントへと変えると影から刃を取り出し希璃乃に向ける。すぐに快斗君を呼んで二人を保護してもらうようにお願いして僕も変身する。彼が来るまでの間僕が二人を守る必要がある。けれどこの距離で守りながら戦うのは難しいと考えた結果二人から距離を作ればいいという考えにいたり黒いフェッスルを用意する。

 

「何をしても無駄よ」

「それはどうかな、今日の僕は少しばかり手加減できないかもしれない」

 

 オルタナティブフェッスルを装填してイクサオルタナティブへと姿を変える。意識をもう一人の僕と入れ替えて主導権を渡す。

 

 ──良いのか。

 構わないよ。魔姫ちゃんを止められるならきっと君の方が適任だ。スピードは少し下がるかもしれないけど確実に一撃を入れていって二人と距離を離そう。

 ──その意見には賛成だ。だがその前に一つやるべきことがある。

 何をするの?

 ──お前は怒るかもしれないが今回は見逃せ。

 

 どういうことだと考える前に身体は動き出して希璃乃へと歩を進めた。そして首を掴み持ち上げる。契約違反だから身体の主導権を返して貰おうとすると断られる。

 

「悪いが少し話をさせてくれ」

「お兄、様、これは」

「辞めなさい深次!」

「お嬢悪いが止めないでくれ。希璃乃、お前は人間か?」

「な、にを」

「悪いが俺はお前の知っている新一じゃない。偽物、と言っても過言じゃないな」

 

 深次の言ってることとやっていることの意味が分からなかった。引き続き主導権を取り返そうとするがかなり強く抵抗されている。契約したからと油断していた。

 

「お前が正直に言えば解放してやる。けどな、正直に言わなければ俺はお前を殺す」

「そんな、こと」

「しないし冗談だって言いたいのか?悪いが俺はお前を殺しても何も感じない。俺は偽物だからな。安心しろ、お前のお兄様もすぐにあの世に送ってやるよ」

 

 あの世に送るという言葉を聞いた瞬間希璃乃の顔にステンドグラスの模様が入る。キッとこちらを睨むと姿を変えて爆発が襲いかかってくる。すぐにお嬢様を庇って距離を取った深次に傷はなかった。しかし希璃乃がいた場所には真珠のファンガイアの姿があった。

 

「やはりそういうことか」

「深次、これはどういうこと!?」

「まさかアンタ」

「ああ、新一はずっと信じていたみたいだが俺はずっと疑問だった。目の前で心臓を貫かれた妹が何故生きているのか、生きているのなら何故名護の人間が把握していなかったのか、そして」

 

 僕が信じている反面深次はずっと疑うことを辞めなかったらしい。だがその疑問に対して反論を用意しようとしていると考えてもいなかった言葉が浴びせられた。

 

死体も確認してないのに(・・・・・・・・・・・)何故死んだと思い込んでいたのか(・・・・・・・・・・・・・・・)

「「「!?」」」

 

 死体を、確認していない?

 

「俺はコイツの中にずっといたんだ。だから今までの記憶も全てある。新一が執行者と呼ばれていた時の記憶も、ソイツが殺された時の記憶も。だがな、どこを探しても新一がお前の遺体を見た記憶はないんだよ」

「アンタ、新一じゃないの?」

「そういや初めましてだったな魔姫。俺は名護深次、新一のもう一つの人格だ」

「何それ意味わかんない」

「今はそれでいい。けど確かなことはお前の言っていたことは本当でこれで新一は納得するだろう」

 

 深次はその言葉を最後に僕に主導権を返してきた。ただ入れ替わる際に深次から「すまん」という声が聞こえた気がした。だが今はそんなことより目の前の光景に気を取られている。どうしても信じられなかったのだ。あの日から今日まで一緒に暮らしていた妹がファンガイアだったなんて信じたくなかった。だが深次が言っていた事は本当だ。僕は復讐心に囚われていて希璃乃や父さんと母さんの遺体を自分の目で確認していない。

 

「希璃乃、その姿……」

「申し訳ありませんお兄様……私は」

「言った通りだったでしょう。あの子はもう人間じゃないの」

「でも、だからって殺すなんて」

「そうでもしないと!アンタは……」

 

 激情に走った魔姫ちゃんは何かを言いかけていたけどその言葉を飲み込んで武器を構えた。刃を向ける相手は僕に妹だ。本当なら守らなきゃいけないのに実の妹が化け物になっていた。それも僕が倒すべき相手と同じ化け物だ。守るべきなのか、魔姫ちゃんに加勢するべきなのかどうするべきかわからなくなっているとお嬢様が呼びかけてくる。

 

「新一、命令を下すわ」

「お嬢様、僕は」

「立場なんて気にせず心に従いなさい」

 

 その言葉を聞いて頭の中がスッキリした気がした。でもお陰で何をするべきなのかはっきり分かった気がする。魔姫ちゃんが武器を持って攻撃を仕掛けると僕は二人の間に割り入ってドーパントに攻撃する。

 

「アンタ何をしているのか」

「分かっているよ。でも、例えファンガイアになったとしても希璃乃は僕の妹だ!」

 

 

 

 

 

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