青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第十五光 強欲で傲慢な愛

『橋本、今君がくれた情報に確信を持てたよ』

 

 俺が渡した情報、となるとその時ってのが来てしまったのだと考える。望ましい結果ではないし俺が見間違えた事で別の人間かもしれないとそう思いたかった。

 

『それに同じ特徴を持ったファンガイアを見つける事はできなかったが蠍のファンガイアが他多数の街で人間を誘拐しているデータも入ってきた。当然その人間達は帰ってきてない』

「それは奴が食ったということではないのか?」

『なら良いんだがな、ソイツが食うならそこで食っていれば良い話だ。だがわざわざ持ち帰っていることを考えるとな』

「連れ去られた人間の遺体は?」

『残念ながらない。残虐に殺しても最後にライフエナジーを取って仕舞えば全てガラス片だ。それに調査隊の結果によると血の跡もないらしい』

 

 つまりそのままライフエナジーを食っているということか。我々の中でライフエナジーを吸うことを食事と同様に扱っているという意味を込めて「食う」という表現をしているが中々に当てはまるな。しかしそれだけでは根拠が足りない。

 

「奴が変な趣向を持っているとは思えないしな」

『だとしてもあれだけの力を持っているのには変わりない。それに仮に死んだ後にあの方がファンガイアになった場合、ライフエナジーを取り込むことが必要になったら?』

「何故取り込む必要がある」

『ライフエナジーってそのまま生命力だからさ。この前捕まえた奴が言っていたけど自然進化した個体は急激に欲しくなる場合もあるらしいって話を聞いたらしい』

「ではあの方は死ぬ直前で覚醒したと?」

『だとしたらいいんだけど……いやよくはないな。しかしだとしてもこの量は異常すぎる。ニュースには報道されていないが合計すれば一月ほどで五十近くは食っていることになる』

 

 それほどの数を食っていれば急激な力を手に入れることができるのだろうか。もしくはそこでベースを作り上げて発展していくため?どちらにしろ可能性はありそうだ。

 

『そういえばだけど君少し疲れてない?』

「ああ、少しな」

『通信越しに伝わってくるなんて珍しいね。何したの?』

「少々一条と話していたんだがな。そういえば気付かないうちに二人揃って寝てしまっていたようだな」

『寝ても疲れが取れないかぁそれは大変だ。まるで体力は回復しても生命力が回復してないみたい……』

 

 まさかと言いかけた時だった。あの状況ならそれが可能にできる人物が近くにいた。だとしたら俺たちは食われたのか?なのに生きているとはどういうことだ?首を触って確認するがしっかりと脈は取れる。

 

『少々手荒な真似になってしまうが仕方ないな』

「主は許してくれるのか?」

『正直許してくれないだろうけどそれが私たちの仕事だからね』

「分かった、ポイントを教えてくれ。合流する」

『了解。四谷がいるから合流してくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「分かっているよ。でも、例えファンガイアになったとしても希璃乃は僕の妹だ!」

 

 剣を構え攻撃の意思を見せる。例えどんな姿になっても大切な家族を守る意思を変える事はない。例えそれが周りに理解されなかったとしても、あの人が言ってくれたように僕は僕の心に従う。

 

「新一さんお待たせしました、ってこれどういう状況っすか?」

「このファンガイアを保護対象としてあのドーパントを討つ」

「え、この前は逆だったのに……まぁ新一さんがそういうなら従うっす!

 

 快斗君も戦闘体勢を整えて二対一を作ると分が悪いと判断したのかドーパントは煙幕を作ってその場からいなくなってしまった。僕達は変身を解いて帰ろうとするがファンガイアは元の姿に戻ろうとはしなかった。

 

「どうしたの?」

「その……」

「てかコイツを守るってのは一体どういう事っすか?」

「大丈夫、正体を見せてあげて」

 

 ファンガイアの姿から人間の姿へと変えた希璃乃を見て快斗君は驚きを隠せなかった。希璃乃は母奥の後ろへとすぐに隠れるが快斗君はじっくり見るように考えながら唸っている。

 

「すぐに受け入れるのは難しいかもしれないけどこれからもよろしく頼めるかな?」

「いや、それは構いやしないっすけどそもそも何で妹さんがファンガイアに?」

「説明すると長くなるけど……」

 

 それから希璃乃に所々サポートしてもらいながら事情を説明すると何となくだけど分かったと受け入れてくれていた。お嬢様にももう一度確認を取ると快く許可をくれたので二人でお礼を言った。

 

「なんか一週間ちょいの筈なのに情報量がすごいっすね」

「正直僕もビックリだよ」

「申し訳ありません……」

「謝ることはないよ。それに深次も言ってたけど元はと言えば僕のせいだし」

「復讐で周りが見えなくなるというのは本当のようね」

 

 冷静に判断しているようだが一時期のお嬢様も似たような感じだったじゃないかとツッコミそうになる。振り返ってみれば確かに周りが見えていなかったように思う。そしてきっとこれからも同じことを起こすかもしれないと自分に言い聞かす。

 

「んじゃ今日は解散っすかね」

「そうだね。快斗君これからもよろしくね」

「ハハッ、よろこんで!」

 

 湊家にまっすぐ帰っていると希璃乃との物理的距離感が出来たことに気付く。いくら助かったとはいえファンガイアであることがバレたことを気にしているのだろうか。気にしないなんてことのない方がないだろうな。

 

「そういえば希璃乃、母…って呼んでいた保護者の人とあれからずっといたの?」

「約三年、あの人と一緒にいました。楽しかったです。全国各地を移動したりして」

「それはその人の趣味?」

「はい、名無しになってしまった私を連れ出してくれたのもそのおかげかと。日本一周旅行みたいでとても」

「じゃあその話、もっと詳しく聞かせてもらおうか」

 

 三人しかいないはずなのに生真面目そうな男の声が入ってくる。道の先を見ればスーツを着た四谷さんの姿があった。しかし彼は一人ではなく武装した集団を後ろに引き連れている。彼が右手を上げると各自配置に着くように散開する。彼の表情は変わらずポケットに手を入れると再び話し始めた。

 

「久しぶりだな、名護希璃乃」

「四谷さん……」

「そこの二人には悪いがお前は民間人じゃなくなった。一緒に来てもらうぞ」

「どういうことですか!」

「騒ぐな。民間人は黙っていろ、これは俺たちの仕事だ」

 

 希璃乃は隠れるように僕の背後に回る。それを見たお嬢様は希璃乃の前に出て庇うように手を伸ばしている。仕事を邪魔されて気に食わないのか四谷さんは睨みを効かせるがお嬢様は退く事はなかった。

 

「そこを退かなければ怪我をするのはお前たちだ」

「何故このようなことをしているんですか。名護家は希璃乃に対して脅威を感じたとでも」

「あぁそうだ。元当主の貴様ならわかるだろ。ソイツにはファンガイアとして人を襲ったことが確認されている。お前たちだって襲われただろ」

 

 確かに襲われはした。しかしそれだってそれなりの理由があったはず、心の余裕ができた時に聞こうと考えていた。脅してでも聞くのは違うと時を待とうと考えていたのだ。

 

「それにそいつはファンガイアのクイーンだろ」

「どうしてそれを」

「全て防犯カメラ監視カメラの映像にあった。そして報告を受けている」

 

 橋本さんが四谷さんの後ろから現れるのを見てそこから情報が漏れたかと考えたがこの人がわざとそういうふうに情報を漏らすとも考えられない。では何故その情報を伝えたのか。その理由を考えても答えはまだ浮かばない。

 

「希璃乃、正直に答えて欲しい。本当に君はクイーンなの?」

「それは……」

「僕達を襲った理由なんて後でいくらでも聞く。それに応えてくれれば彼らから守ることを約束する。だから本当のことを教えてほしい」

 

 何も応えず沈黙の時間が過ぎていく中橋本さんが近づいてくる。先ほど見た時と様子は変わっておらずいまだに体調が悪そうに見える。しかし今はこの人が裏切り者のようにしか思えなかった。

 

「主、本当に申し訳ないと思っている。しかし今答えが出れば全て辻褄が合うのだ」

「辻褄?」

「我々は排除に来たのではない。話を聞かせてもらい経過を見て主の元へと返す予定だ」

「おい、そんな話は聞いてないぞ」

「俺が当主に掛け合う。どんな手を使ってでも必ずだ」

 

 橋本さんの本気が伝わったのか希璃乃は左手の甲を彼らに見せる。そこには薔薇のような模様とチェスのクイーンのコマの絵がが浮かび上がり英語でクイーンにと書かれている。そして顔にステンドグラス模様が入り自身が人間でないことを示している。

 

「私が、ファンガイアのクイーンです」

「そうか、では確定したな。名護希璃乃、貴様を無差別誘拐及び殺人、遺体偽装の容疑で連行させてもらう」

「誘拐と殺人ってどういうことですか?!」

「聞いての通りだ。その女はこの数年で大量の人間を誘拐し殺した、いやファンガイア風に言うなら喰ったが正解か?その容疑がかかっている。先ほど話そうとしていた話がきっとその道中だと思うがな」

 

 さっき話そうとした話、旅行の話だろうか。しかしそれは保護者になってくれた人が連れて行ってくれた話であってそれとこれとは関係ないはずだ。

 ──否定するのは構わないがここまで来たらそれすら疑うべきだろ。

 じゃあその保護者っていうのはまさか。

 ──その可能性は大いにある。俺たちはその保護者を実際に確認していない。だからいたのかすら怪しいが何よりアイツの正体にもう一つ気づく必要がある。

 クイーンということを知ったのは何も今ではない。希璃乃のファンガイアの姿を見たときにスコーピオンが迎えに来たと言っていた。その時にもクイーンという言葉を使っていた。おそらくではあるが希璃乃は僕と再会した時には既にクイーンであったと考えられる。じゃあどうしてそんなことになってしまったんだ?少なくともあの時までは人間だったはずだ。死んだことによる覚醒?そもそもファンガイアってどうやってなるんだ?

 

「貴方方はファンガイアへの変貌条件を知っているんですか?」

「ああ、この間捕虜にしたファンガイアが全て吐き出したからな。一つは自然覚醒だ。最初は人間でも成人の身体になる際に覚醒するらしい。だが反動でライフエナジーを強く欲するパターンもある。そしてもう一つ、これはたまたまそいつがその実験に関わっていたから知れたことだが、ファンガイアと人間を融合させたパターンだ」

「そんな非人道的な」

「勘違いするなよ?相手は化け物だ。人間のことなんか大半は餌としてしか考えてない。人間とファンガイアが融合したとしてその際に必要なのはなんだ、命だ。生命力がなくては死に急ぐ身体を治すことは出来ないからな」

「待ちなさい。じゃあこの子は一度死にかけたんでしょう?その合わさったファンガイアがライフエナジーっていうのを持っていたらどうなの」

「湊友希那、存外頭が回るな。これはあくまで憶測だが、わざわざ普通に生きているファンガイアを実験に使うか?」

「?」

「答えはNOだ。俺なら同じように死にかけているか使えなくなりそうな個体を選ぶ。その方が実験として都合がいいだろう」

 

 四谷さんの言いたいことは分かった。けれど僕が意識を失った後ということは希璃乃は既に死んでいたはず。その中でどうやって生き返ることができたのだろうか。記憶は引き継いでいても人格までは引き継げないはずだ。死にかけ同士ならライフエナジーを補給する手段として誰かがライフエナジーを分ければいい。それでも遺体と組み合わせては意味がないのではないか?

 

「貴様ならもう答えは出ただろう。日本旅行の旅の正体はコイツにライフエナジーを与えさせるためだ。そうだよな?」

 

 希璃乃を見ると顔を両手で押さえてしゃがんでいた。嫌なことを思い出させてしまったのだとしたらきっとそれは本人の意思ではないはずだと声をかけようとすると妹は立ち上がって笑い始めた。気味の悪い笑い声を出す希璃乃を見て警戒態勢を作り直す人たちに待つように声を出そうとすると笑い声が止まった。

 

「あー、そこまでバレてたんですね」

「希璃乃?」

「大丈夫ですお兄様、ここにいる全員殺せば問題はありません」

 

 顔を見るとステンドグラスの模様が入っており瞬く間に姿を変えて再び笑い始める。銃を構える者、剣を構える者、今にも攻撃を仕掛けてきそうな者がいる中で希璃乃は態度を変えなかった。

 

「四谷さんのいう通りです。私は合成されたファンガイア、それも死にかけのクイーンの身体を素材とされました。だからこの力が手に入りました。私の保護者をしていたのはルーク、そして一緒に全国を回って私をもっと強くするためにライフエナジーを回収する旅に出ました。しかしルークは生きています。お兄様を呼んだときにあった服の持ち主はあの時近くにいた手下が襲った知らない人のです」

「じゃあその時から既に騙していたっていうの?」

「お兄様には本当に申し訳ないと思っています。ですが再び一緒になるためには仕方なかったのです。そもそも死ぬ寸前の時にお兄様は倒れて本当に死ぬと思った時にルークからライフエナジーを与えられそのまま実験の素材になったのを聞かされた時は我を失いかけましたがこの力があればお兄様と再び会えると思えたのです。そして夢は叶いました」

「じゃ、もうファンガイアとしての活動は終わりにしてもらえるか?」

「まさか、私は欲深かったみたいでもっと欲しくなりました。お兄様との時間を作るためには邪魔な人たちを消さないといけない。名護の人間も、弊害となる掟があるファンガイアも、そしてお兄様に呪いをかけた女も」

 

 周りが恐怖を感じながらもさらに警戒していく中一人淡々と希璃乃は告げる。

 

「そのためにもここにいるお兄様以外の人間全て、私の糧になってくださいませんか?」

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