青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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ここ最近二週間に一回のペースになってしまい申し訳ありません。もうしばらくこれが続きそうです。おそらくこれが今年最後になります。それはそうとAve Mujica楽しみです。


第二十二光 再来

 あれから一ヶ月経った。ファンガイアやドーパントは未だに出現しているらしい。らしいというのもこの一ヶ月は新一の前に現れることは無かった。情報として入ってきても快斗が対応するか紗夜がすぐに駆けつけてくれたからだ。新一が近くに来そうになったときは必ず遠ざけてくれるように戦ってくれたり連絡をくれる。そのおかげか新一は戦いの場に足を踏み入れることは無くなった。そして今日も一緒に登校している。

 

「どうかしましたかお嬢様」

「いえ、まだ朝は寒いわね」

「そうですね。今年はまだ寒さが続くようですからあたたかくしましょうか」

 

 こんな風に会話をすることは出来る。今日の朝ごはんも新一が作ってくれた。毎日執事の仕事に文句も言わずにやってくれている。それでも今の彼は本当の彼じゃない。一ヶ月前、私が戦わなくていいと言った次の日からまるで前のようにいや、それ以上に彼の顔に張り付いたピエロのような笑顔は本当の笑顔を隠すように見せている。

 

「もう少しで学校も終わりだね〜」

「そうなるとRoseliaの練習時間も増えますね」

「ねぇ新一またベース教えてよ」

「今のリサに教えられることなんてあるかな……出来るだけ頑張ってみるね」

「よろしく⭐︎」

 

 リサやRoseliaの皆、今まで関わったことのある人たちとの関係は変わっていない。ただ名護家の人や快斗との接触は避けるようにしている。本人が望んでいることじゃない。これも一ヶ月前にベルトを取り上げた後戦いに関係ある人たちにお願いしてなるべく会わないようにお願いした。きっと遠ざけたほうがいいとあの時は思っていた。だが今となっては少しだけ……。

 

「お嬢様?」

「な、なに?」

「ここ最近難しい顔をされることが多くなりましたね」

「そうかしら」

「もしかして新曲についてですか?」

「え」

「この間のカバー曲「ファティマ」も良かったと思うのですがやはりそろそろ新曲を作るのではないかと思っていたんです。でも根を詰めすぎてはいけませんよ。無理や焦りは時として自身を苦しめてしまいますから」

「肝に銘じておくわ」

 

 一見するとただの男子高校生と変わらないのかもしれない。でもこれは本当の彼じゃない。それは分かっている。だけど毎日そう感じざるを得ない上にこの原因を作ったのは私だと毎度自分を責める。

 授業を受けている様子もいつもと様子は変わらない。行動や発言は本当に何も変わらないのだ。でもやはりそこにいるのが本物の彼ではないように感じる。

 

「あの湊さん」

「何?」

「休み時間ですのでお一人の時間を過ごしても良いのですよ?」

「それがどうかしたの?」

「ずっとつけられますと僕もどうしたらいいか」

 

 前をよく見ると男子トイレだった。まだ私たちの教室の近くにトイレはないため少し離れた所まで行かなければ行けないのだが彼のことを考えているうちに無意識についてきてしまったらしい。先に一人で教室に戻るとクラスメイトの話し声が聞こえてくる。

 

「名護君少し変わったよねー」

「前より話かけやすくなったっていうか」

「少し真面目な感じが抜けた的な?」

「そうそう!え〜今がチャンスかな?」

「やめときなって、湊さんがいるじゃん」

「そうだった。でも略奪しても」

「私がどうかしたの?」

 

 クラスメイトたちは私の顔を見るなり口をパクパクさせている。良からぬことを企んでいるのは確かだったがそこまでの反応を見せられるとは意外だった。

 

「言っとくけど新一とはまだそんな関係じゃないわ」

「へ、へぇ~そんなこと言ってよかったの?」

「何かしら?」

「その気になれば私たちでも名護君を手に入れられるってことだよ」

「ちょっと何言ってんの」

「いいじゃんこれくらい言っても」

「何かあったんですか?」

 

 今度は新一が入ってくる。つくづく間が悪いと感じたクラスメイトたちは動揺を隠せていなかった。でも私からすればちょうど良いタイミングだった。

 

「あいや、別に……」

「その程度なら新一を渡すことは出来ないわね。そもそも渡すつもりもないのだけど」

 

 ポカンと口を開けた彼女たちは予鈴が鳴るまでその場から動かなくなってしまった。目の前で手を振っても反応しなかったため彼を連れて席へと戻した。元よりそのつもりで間違いはないが、今の状態の彼は尚更渡すことは出来ない。早くにもとに戻してあげたい、だがそれが本当に正しいのかと迷う。

 

「湊さん」

「何かしら」

「また何か悩んでますよね」

「…そうね……悩んでばっかりだわ」

「今晩は気分転換に好きなもの作りましょうか。好きなものを食べればきっと良いものが浮かび上がりますよ」

「じゃあハンバーグとオムライスにしようかしら」

「わかりました。練習のあとにスーパーによっても良いですか?」

「ええ、行きましょう」

 

 そんなこんなで放課後になってRoseliaが集まり練習をしていた。この時間新一は座って皆の様子を見ている。少し焦りが出ている、一度水分を摂るように、リズムのズレなどアドバイスをしてくれる。第三者としていてくれるおかげで冷静に判断することが出きるため練習の効率が上がっている。今までもこういう時間があればもっと色んな物を見れたのだろうか。

 

「では少し休憩にしましょうか」

「疲れた~でも楽しい~!」

「新曲の調子も順調ですね。Afterglowとのライブまでに完成させてさらにその上を目指したいところです」

「休憩なんだからもう少し肩の力抜きなよ」

 

 笑いあいながら話しているとふと彼の顔を見てしまう。今どんな顔をしているのか、何を考えているのか。するとコクリコクリと船を漕いでいた。皆が彼の顔を見ると起きてしまった。

 

「新兄眠たいのかな」

「最近寝れてないとか?」

「そんなことはないよ。ちょっと眠気があるだけ」

「新君来て」

 

 言われた通りに向かうと床に座るように指示されていた。言われた通りに彼が動くと燐子が膝枕をすると膝をぽんぽん叩いていた。

 

「流石に大丈夫だよ。そこまでじゃないって」

「でも疲れてるって顔にかいてあるよ」

「いやいやそんなこと」

 

 どうしたら良いのか分からないのかこちらに見て指示を貰おうとしている。そんなこと私だって分からないのに。仕方ないから言う通りにしなさいと言うと渋々彼女の膝に頭を乗せた。少しくらい抵抗するかと思いきやすぐに寝てしまった。

 

「子供みたいな早さで寝ちゃいましたね」

「五分以内の入眠は気絶とほぼ同じと聞きますが…」

「単に寝つきがいいだけかもよ」

「そうね、新一はすぐに寝る子だもの」

「お母さんですかあなたは」

 

 それからは新一が寝ているのをいいことに皆で最近の様子を話した。家ではどんな感じか、学校ではどんな感じか、他のメンバーが見ていて違和感があるか。その中で最初に合致したのはやはり本物の新一ではないということだ。笑っていてもどこか遠い目をしている。今を見ていないようなまるで夢の中にいるように。誰も彼の前では戦いの話をすることはなかった。けれど彼自身もその話をすることはなかった。無意識的に逃げているのではないかと論議になったがそこで新一が苦しそうな顔をし始めた。

 

「…どうしたの新君……?」

「い、やだ……も……う……いや……だ………」

「名護さん、しっかりしてください」

「燐子ちょっと失礼するわ」

 

 彼の頭を優しく撫でると胸を抑えて苦しんでいたのが次第に力が抜けて楽になっていく。やがて普通の寝息を立て始めると皆安心していた。

 

「ありがとうございます湊さん」

「いつもこうなるの?」

「いつもはならないわ。たまに隣の部屋から聞こえてきて行ってみるとこうなってることがあるの。ひどい時は目を覚まして幻覚のように怯えているわ」

「その時も……同じように……?」

「ええ、連日起こることはないけど早くて2日に一回ってところかしら。長い期間だと5日に一回」

「友希那さんは大丈夫なんですか?」

「私は問題ないわ。けどこの状態がいつまでもつかわからないわ。早くどうにかしてあげないと」

 

 言葉では言っても根本的なところから解決しないといけないことは分かっている。でもそれは戦いが終わったことを新一に伝える必要がある。それが嘘だとバレたとき新一がどんなことを思うか。そもそも彼の戦いとは一体どこまでのことを示しているのか。

 

「りん、りん……?」

「…おはよう新君……」

 

 彼が目を覚ましたらしく水を取ろうと燐子が前屈みになると新一の顔が燐子の胸で押し潰される。燐子は水を取るのに苦戦しているため新一が圧迫される時間が増えていく。きっといつもの彼だったらこれくらい問題ないと言うだろうが寝ぼけていたのか悪意のない攻撃には弱く早くも呼吸困難の訴えを出していた。

 

「りんりん新兄が苦しそうだよ?!」

「あっ、ごめん新君……」

「大丈夫大丈夫、なんとか酸欠にならずに済んだよ」

 

 笑って誤魔化しているがその顔もやはり作り物ではないかと疑ってしまう。最近彼の本心すらわからなくなってきてしまったような気がする。言動に疑いを持ち笑顔は常に偽物で本心はどこかにあるような感じと決めつけている。でもそう見えてしまうのも事実だ。

 そろそろ休憩を終わりにしようかとした時紗夜が持っている錠前からアラームが鳴る。新一が気づくも変わったアラームですねと受け流して準備を始めた。その隙に場所を確認するとこのcircleの中だった。さらに詳細を見るとこの部屋に近づいていた。

 

「新一ドアから離れて!」

「急に何を」

 

 轟音と共に扉が吹き飛ばされるとそこから現れたのは蠍のファンガイアだった。最悪だ。今の彼に合わせたくないものが来てしまった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「どうやら噂は本当のようだな」

「く、来るな!」

「白騎士が男から女に変わった、まさかとは思ったがお前やめたのか」

「だとしたらあなたに何の関係が」

「獲物がこうなれば面白くもなくなる。だから事実を確認しに来たんだ。それに俺は」

「それ以上は言わせません」

 

 紗夜は彼のベルトを巻いて変身する。剣を構えて威嚇するがファンガイアは退く様子はなかった。

 

「その嬢ちゃんだったのか。まぁいい。もうそいつに用はない、殺せ」

 

 指を鳴らして後ろから二体のファンガイアが現れる。サイと猪のファンガイアは二体揃って新一を狙おうとするが紗夜によって阻まれる。一度斬り崩すと空いた手で壁を破壊して外への道を作ってくれた。

 

「今のうちに彼を連れて逃げて下さい!」

「でも紗夜一人じゃ」

「どうにかして振り切ります。それにそろそろあの子が来ますので」

 

 新一を連れて出ると天井が崩れて黒マントのライダーが現れた。下敷きになった二体のファンガイアは瓦礫を退けて出てくる。

 

「大道さんちょうどいいタイミングです」

「うっわーそれ氷川先輩に言われるとかちょっと感動するっすね」

「今はそんなこと言ってる場合ではありません!」

 

 二人が戦っている間にサークルから距離を取ると新一が正気に戻ったのか紗夜の心配をし始めた。大丈夫だと言い聞かせるとそこにもう一体のファンガイアが現れる。青い鱗のサメみたいな見た目をしている。さっきまでのやつらと違う個体だと気付くと襲いかかってくる。ファンガイアの後ろの方から蠍が姿を見せ壁に寄りかかる。

 

「大将、コイツらやっていいんですか?」

「言う前に始めてんじゃねぇか。嬢ちゃん達は後回しだ、先にその惨めなガキを殺せ」

「でもこいつ大将の獲物じゃ」

「俺が殺す価値すら無くなった。それともお前を先に殺すか?」

「怖い怖い、大将の言う通りにしますよ」

 

 ブーメランのような攻撃をして私たちと彼の間に境界線を作る。彼が戦えない今守ってあげられるのは私たちだけだとその線を越えて彼の方へ行こうとすると手を向けて制止してくる。何を考えているのか平気そうな作り笑いをしているのに足は笑っている。

 

「お嬢様達は……逃げてください」

「あなたそんな状態で逃げ切れるとでも」

「僕が一人で逃げれば、皆は怪我をしなくて済みます。でも皆と一緒に逃げたら、皆が危ないんです」

「でも新一は」

「戦わない‥‥…よ。知ってるでしょ、鬼ごっこは得意なんだ」

 

 足はガクガクと震えているのに強気を見せている。それでも私たちに心配させまいと振る舞っている。この状況でどうにかする方法を一つ見つけると賭けに出るしかないが希望があるのはこれしかないと考える。

 

「分かったわ、逃げ切ることだけ考えなさい」

「!…かしこまりました」

 

 走っていく彼を追いかけるファンガイアの姿を確認するとすぐに一条さんに電話をかけた。状況を説明すると二つ返事で駆けつけてくれるとの事だった。本当はいろいろなことを思い出すから彼らとは会わないようにしていたのだがこの際仕方ないと電話を切る。

 

「次はどうするの?」

「あの蠍のファンガイアはどこ」

「あー!いなくなってます!」

「ならチャンスね。新一を探しましょう」

「えっ?!でもどうやって」

「それなら……多分…あれが………」

 

 燐子が指差す方を見ると大きな音と共に煙が上がっていっている。それを目印に追いかけるとファンガイアと新一の姿が見える。新一は転んでも這いずって進むが姿勢を直すとファンガイアに追い詰められていた。

 

「鬼ごっこは終わりだな白騎士いや、元白騎士」

「僕は、もう戦わないんだ」

「でも大将はそれを許してはくれなかったな。だからここでサヨナラだ!」

 

 ファンガイアが手を振り翳して新一を攻撃しようとする。まだ一条さんも来ていないし紗夜たちも来てくれない。どうすることも出来ない私たちは見ていることしか出来なかった。

 新一に攻撃が振り下ろされる瞬間、銃弾が彼らの間に割って入りさらに紫色の骸骨がファンガイアに攻撃する。銃撃によって出た煙の中から現れたのは白い帽子を被った髑髏(・・)だった。

 

「一ヶ月ぶりに顔を見たと思ったら何だこれは。新一、何故戦わない」

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