青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第二夏 旅の列車にはご注意を

 合宿一日目の朝、早朝から駅前に集合する事になった。自分の荷物とお嬢様のに物を持って家を出る。同じ様なタイミングで荷物とベースを持ったリサも家を出てくる。

 

「二人ともおはよー♪」

「おはよう」

「…おはようリサ」

 

 お嬢様は朝が弱いためまだ少し眠そうにしている。挨拶を済ませたところで三人で駅に向かっていく。集合する駅から電車で移動し、最寄り駅からまた少し歩くというルートになっている。

 

「いやぁ〜ついにきたね、合宿の日!」

「うん、楽しみにしてた?」

「そりゃあね?みんなで過ごせるし」

「リサ、遊びじゃないのよ」

「わかってるって〜」

 

 雑談をしながら歩く。夏だけどまだ朝早いことからそこまで暑くはない。だけどこれだけの荷物を持っていると暑くなってくるのも時間の問題だ。たびたび水分をとりながら進んでいくと駅に着く。そこにはりんりんとあこちゃん、紗夜さんが待っていた。

 

「もしかしてアタシたちが最後かな?」

「ええ、ですが時間には余裕があるので大丈夫です」

「リサ姉達おはよー!」

「おはよう……ございます………」

「おっはー⭐︎」

「おはよ」

「おはよう、揃っているなら早く行きましょう」

「そうですね…って名護さん、今日は何故眼鏡をしているんですか?」

「え、えっと…それは………」

 

 まずいな、確かに普段眼鏡をしていない僕を見ればみんな不自然がるのは当然のことだった。

 

「その……なんというか………」

「もしかしてイメチェンですか!」

「う、うん、その通りだよあこちゃん。よくわかったね」

「そういうことでしたか。納得しました」

「早く行きましょう」

 

 納得した紗夜さんを見てお嬢様は駅の方面へ向かっていく。皆それに続いて行く。皆の後ろを歩いているとリサがこっそり近づいてきてこっちを覗き込んでくる。その状態が数秒間続くと小さく笑って「ちょっと似合ってないかも」と言ってくる。その言葉に苦笑いをして誤魔化す。正直似合っていないことは僕も薄々気づいていた。その様子を見ていたのかリサが離れた後にりんりんが近づいてきて「ちゃんと似合ってるよ」と言ってきてくれたことに感謝を感じた。

 電車での時間は思ったよりも長かった。一本の電車で隣の県まで移動し、乗り換えて別の路線で目的地に進んで行ったのだが距離もあって長かった。幸いなことに人が少なかったのでみんな座っている。僕は立って荷物を持っているが苦ではない。この電車が目的地に近づいてくると窓から海が見えるという。その景色を見るためならこれくらいはどうってことはない。

 だがその楽しみにするはずの時間も無くなってしまった。止まった駅で男が一人乗ってきた。電車内は人が少なく、あまり人が乗ってこなかったのでその姿ははっきり見えた。黒いキャップ帽に長いジーンズ、そして今日は暑くなるというのに長袖の上着を着ている。顔は隠すつもりがないのかマスクとかはしていなかった。だが持っていた鞄のファスナーが少しばかり開いていた。その中から一瞬だが見えた、光を反射するレンズの姿が。男はお嬢様達の向かい側の席に座り込む。周りを確認するかのようにしている目線ははっきり言ってバレバレだった。そのカメラの視界にお嬢様達が映らないように男の目の前に立つ。カバンを動かそうとしてもそれの前に動く。勿論わざとだと分かるように。男は不機嫌な顔をこちらに向ける。けど運が悪かったのかそれに眼鏡が反応してしまった。音は出ていないがグラスに映るように示してくる。

 

『外見的特徴 網膜の色彩 共に千%一致』

『指名手配犯 遠沼寛治』

『罪状 連続強盗及び連続殺人』

 

 つまりは目の前にいるのは害悪的存在だということだ。しかしあの開発部はこの眼鏡に一体どれだけの技術を組み込んだのか…色彩データとかいれる?普通。

 

「邪魔なんだよお前、どけ」

 

 念の為、コンタクトを取ろうかと思ったが向こうから来てくれた様で助かった。

 

「すみません、列車が揺れるもので」

「嘘つくんじゃねぇよ」

「それに貴方、見えてますよ。カメラ」

 

 男は慌てるように鞄のファスナーに手をかける。少しだけ煽ってみようか。僕は笑顔のまま話しかける。

 

「あれ、もしかして本当だったんですか?ハッタリのつもりだったのに」

「………………」

「しかしまあ、女性を盗撮ですか。あまりいい趣味ではありませんね。警察呼んでおきましょうか?今までの罪(・・・・・)を償うためにも」

 

 男は激怒の顔で睨みつけてくる。携帯をチラつかせるとポケットに突っ込んでいた腕を取り出して凶器(・・)を押し付けてくる。

 

「黙れ、静かにしないとわかってるよな」

「落ち着いてくださいよ、そんなに興奮しないでくださいって」

「テメェ………ここの乗客の命がどうなってもいいのか?」

「そうなる前に終わらせましょうか」

「は?そんなもんできる「パンッ」訳ねぇ………だろ?」

 

 男が持っていた銃がカラカラと回りながら車内を転がっている。それを見た男は急に手を押さえ始める。その手を見るとさっきまでは普通の色だったのに赤くなっている。当然だ。だって手を叩いて手から銃を落としたんだから。おかげで僕の手も少しヒリヒリする。でも、銃口を向けてきたんだから仕方ないよね。男は立ち上がって胸ぐらを掴んでくる。

 

「殺されたいのか!」

「やだなぁ、そんなことあるわけないじゃないですか」

「じゃあなんだ今のは!」

「ちょ、ちょっと新一何してんの!?」

 

 トラブルに巻き込まれた(起こさせた)僕にリサが声をかけてくる。ああ、できれば見てないフリして欲しかったな。

 

「名護さん、一体何を…ってこれは!?」

「近づかないで紗夜さん。あと皆、急いで隣の車両に避難して」

「貴方、自分が何言っているかわかってるんですか!?」

「はい、ここはちょっと危ないので避難してくれと言ってます」

「そうではなく、あなたはどうするんですか!」

「見ての通りこの人抑えます」

「調子に乗るなよこのガキャア!」

 

 隠し持っていたのか、男はポケットからナイフを取り出して斬りつけにくる。だけどあまりに単調だったのでそのナイフを奪いあげて拳銃と同じ方向に転がす。すると今度は拳でやってくる。皆の方へ行かせないために挑発しながら拳銃などの方へ誘導する。それにしてもあまりに単調すぎる。本当に強盗殺人をやったことがあるのか疑いたくなるほどだ。そろそろいいだろうか。幸いここは一番後ろの車両で、人は少ないからちょっとだけ危ないことができる。男が次に出してきたパンチはストレートだった。その腕をはたきながら鳩尾に一発入れ込む。その後すぐに腕を背中に回して叩き落とす。男が床に突っ伏したところを隙を与えずに背中を踏みつける。

 

「ガ…………ッ!」

「さて、落ち着いたところで罪状の確認をしましょうか。

あなたの罪はここでは二つです。一つはお嬢様達に害を与えようとした事、二つ目は凶器を振り回したこと。

とても危険ですよね。なのでもうこんなことしない様に一つだけ教えておきましょう」

 

 その言葉と同時にしゃがみ込んで足を外し、頭を掴む。その顔を僕に向けさせ、僕は眼鏡を外す。

 

「さぁ、僕の目を見てください。ほんの少しですが、僕の逆鱗に触れさせてしまったことの意味を教えてあげます」

「あ……あ…………!」

 

 しっかり見開いた目を見せると男は震えてしまっている。逃げようとしても頭を固定させているので逃さない目を瞑ろうとしても瞑れないように圧をかける。涙目になってきた。可哀想なので少しだけ声をかけてあげよう。もちろんお嬢様達には聞こえないように、背を向けてこっそりと。

 

「凶器を向けるということはその人に対して殺しますと宣言すること。脅しなんてことに使ってはいけません。覚悟のない奴がそんなことしたって意味ないって今までたくさんの人を殺ってきた貴方なら、わかりますよね?」

 

 近くに転がっている銃を口の中に突っ込んで話していると男はいつの間にか白目を剥いて気を失ってしまっていた。仕方がないので男の着ていた長袖を脱がして腕の部分をナイフで切り裂き、縄の代わりに取手に縛りつけた。作業が終わると皆が唖然とした顔でこっちを見ていた。

 

「新一、何したの………?」

「何って言われるとあれだけど………応急処置的な感じかな?」

「なんであんなことしたんですか!?」

「それはそのですね────」

 

 皆に対して事情を説明すると不服な感じだったが納得してくれた。当然ながらメガネのことは黙っておいたけど。

 

「大体わかりました。しかし名護さん、何故あんな風に動けたのですか?普通なら怖気付くものですが……」

「自分の主人が被害に遭うかもしれないのに逃げ出す執事がありますか?」

「それは………」

「それにしても新兄カッコよかったね!悪い人をドーンバーンって!」

 

 頑張って理解しようとする紗夜さんの横で楽しそうにしているあこちゃん。それに続いてリサもキャッキャと話している。りんりんはおどおどしてお嬢様は冷静でいたけれど、みんな何もなくて良かったと安心している。だけどこれからの動きを少しでもスムーズにするために近くの人に車掌さんに終点で警察に来てもらえるように伝えることをお願いする。すると近くにいた女性が動いてくれた。これでとりあえずは大丈夫だろう。しばらくは起きそうにないし終点まで景色でも見てようと皆に声をかけると全員席について窓の景色を眺めていた。窓を見ると綺麗な海が広がっていた。夏の太陽に照らされてキラキラと輝いている。海を見るのはこれで2回目だがあの時と状況は違うため前より綺麗に見える。海を見ていると車内アナウンスが流れる。もうすぐ終点に着くようだ。手配犯の近くに行き様子を見るとまだ気絶している様だった。久しぶりにあれやったけど加減を間違えたかな?

 終点に着くとドアが開くなり武装した警察が入ってきた。ここですと合図を出して教えると警戒しながらやってくるのがわかる。だけど近づいた瞬間に一人一人驚いている。まぁ仕方ないと言えば仕方ない。なにせ今まで捕まらなかった指名手配犯が目の前で伸びていたらこうもなるだろう。やがて男は武装した警察に連れてかれる。それを見届け、荷物を持ってその場を離れようとすると半袖のワイシャツを着た男の人に声をかけられる。その姿を見ると運の悪いことに知っている顔だった。

 

「すみません、お話いいですか?」

「ええ、構いませんが。と言っても話すことはないですよ」

「事件当時の話を聞かせていただければいいんですが……っておいおい嘘だろ?」

「人の顔見ておいおいはないと思いますよ」

「新一、知り合い?」

 

 後ろからお嬢様が声をかけてくる。だが声色は早くしてくれとでも言いたい様だった。

 

「はい、知り合いです」

「本官は当……名護新一さんの知り合いであります。とはいえここでは偶然ですね」

「こんなところで何してるんですか」

「はっ、本官はただいまこの土地にて警察を務めています。お忘れではありませんよね?

勿論です。それとあまり関わりたくないのでそちらで適当に報告書にはまとめといてください

「わ、わかりました。あ、あと今回の犯人にかけられていた賞金なのですが、どこに振り込めばよろしいですか?」

「僕は結構ですので孤児の子達にでも寄付してください」

 

 そう告げると知り合いの男は畏まりましたといい、ご協力ありがとうございましたと言い残して走ってどこかへ行った。

 

「名護さん、貴方は一体何者ですか………?」

「うーん、結構怪しくなっちゃうよね〜……」

 

 竿隊の二人が怪しげな視線を向けてくる。けれど今真実を話すわけにもいかないので誤魔化すことにする。

 

「いろんな知り合いが多いだけですよ」

「それだけでは到底片付けられない気がするんですが」

「まぁまぁ、いいじゃん。新一がこう言ってるんだしさ!ほら、行こうみんな合宿所までもう少しだよ!」

「いこいこー!」

 

 リサは空気を読んでくれたのかすぐに動いてくれた。けど紗夜さんは疑いの目を離さない。その視線が痛いので荷物を持って移動しようと動くと紗夜さんは前を進んでいった。そこから移動していき駅を出ると今度はまた別のものが僕達を待っていた。




最近投稿ペースが一定になってるので極力そこに合わせていく予定です。
皆さんも電車とかでは気をつけてくださいね!

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