それでは(現実の)季節は冬に向かってますが、夏合宿編二日目(昼)どうぞ!
二日目となり、タイムスケジュール通りにことは進んでいった。皆が練習している最中は僕は基本的に家事を行っていた。個人の部屋以外の掃除をし、余った時間で今日のお昼飯の下拵えやデザートを作るなどしていた。お昼ご飯も時間通りに取り、午後の練習が始まった。洗い物を済ませて冷たい飲み物を届けにいくとお嬢様はソファに寝転がり、他の皆は練習していた。
「失礼します、飲み物を届けにきました」
「ありがとうございます」
「えーっと、これは一体どういう状況ですか?」
「実は午前中から湊さんが新曲を作ろうとしているのですが、進展がないと言ったところでしょうか」
なるほど………だからいつもの姿勢になっているのか。でも周りにお菓子がたくさん散りばめられれいる様な気がするんだけど……。
「考え事する時は甘いんものが一番だっていうじゃないですかー」
「確かに糖分はあるといいよね」
しかしまぁ一見するとお菓子に包まれた眠り姫みたいだよね。目開いてるけど。この状態が続いているということはインスピレーションが湧いて来てないということだろう。どうにかする方法はないだろうか。そう思い悩んでいるとリサから提案が出される。
「じゃあ海行こうよ!」
「海?」
「やったー!海行くー!」
「ちょと今井さん、宇多川さん、遊びに来たわけじゃないんですよ!」
「え〜でも紗夜、フライドポテトも食べられるんだよ?」
「フライドポテト!?………っん、別にフライドポテトなどという添加物に興味はありませんが気分転換というのならいいでしょう」
「りんりん、海行こう海!」
「えっ……海、人……多い………」
皆ほとんど海に行くモードだこれ。まぁ、せっかく海の近くに来たのに行かないのはもったいないよね。かと言って僕も近くに来た事があるだけで海自体に行ったことはないから少し期待したりもしていた。結局その後の話し合いで海に行くことになった。だけど泳ぐわけじゃないのでそのままの服で移動とのこと。全員楽器を置いて各自準備のため自室へ向かう。僕もある程度の準備をするため自室へ戻る。財布を持ち、水を袋に入れて持ち、腕時計をつけて部屋を出る。玄関で待っていると皆が揃ってやってくる。合宿所を出ると各自、緊急時に連絡する様にと告げられて解散する。あこちゃんとりんりん、紗夜さんとリサ、お嬢様と僕に別れる。
「お嬢様、どこに向かわれますか?」
「海が見えるところまで行きましょう」
「畏まりました」
日傘をさしてお嬢様に陽を当てない様にする。念のため日焼け止めは塗らせてはいるが万が一のこともある。それに直射日光にやられるなんて事もあり得るからね。しばらく歩き、ブロックがたくさん積まれている所まで来た。お嬢様は僕から傘を取り上げて足を放り出す様に座り込んだ。じっと海を見つめるお嬢様、その海を見続ける僕。そんな沈黙状態が続いた。その静寂を打ち破ったのはお嬢様だった。
「新一、聞きたい事があるのだけれど」
「なんでしょうか」
「暑くないの?」
「……お嬢様、お水をどうぞ」
「別に水分は大丈夫よ」
「いえ、夏はこまめな水分補給は必須ですので」
そう、と答えながらお嬢様は差し出した水を口に含む。飲み終えるとまた質問を投げかけてくる。
「新一、あなたは暑くないの?」
「これくらいどうということはありません」
「そう。新一、ずっと前から聞きたい事があったの」
「聞きたいこと、ですか?」
「ええ、あなたはいつから音楽をやっていたの?」
「………そうですね、幼少期の頃には初めていました」
「じゃあ、なぜ実力を隠す様な真似をするの?」
「隠しているつもりはございません。現にお嬢様の周りには僕よりも上手い人がいるじゃないですか」
「そうね、でも私が聞いた限りだとベースの腕はあなたはリサよりも上よ」
真剣な表情で言っている。けれどその目はこっちを見ていない。
「お戯れを」
「真剣よ。もしあの時、もっと本気でやっていたらリサよりもはるか上にいってたんじゃないかしら」
「それはないですね」
「なぜ言い切れるの?」
「……僕には、あの程度しかできないからですよ」
「…どういう意味?」
「そのままの意味です。あの程度でお嬢様の隣に立つわけにはいかない。それにリサの音の方が綺麗だからこそ、今のRoseliaがあるんじゃないですか?」
「………そうね、今のは忘れてちょうだい」
「承知いたしました」
「お待たせ〜⭐︎」
話が終わると同時に遠くからリサの声が聞こえてきた。手には三つのかき氷を頑張って持っている差し出されたかき氷を受け取るとお嬢様にも渡していた。お金を出すというと奢りだから気にしなくていいとのこと。ありがたく受け取ると嬉しそうな顔をした。リサはお嬢様の隣に座ると浜辺の話を始めた。どうやらポピパにあったらしい。なんでも向こうは旅行に来たのだとか。あと京君にもあったらしい。海の家で働いているとのこと。そして今からりんりんたちがポピパと遊ぶらしい。その話をするとお嬢様を連れて浜辺へ歩き出した。僕もその後ろをついていく。道中あこちゃんから連絡が入り一度宿舎へ戻ってくるらしい。そこで水着に着替えるのだとか。ていうか皆持ってきてたんだ。僕は期待してたけど持ってこなかった………いや、そもそも水着が無いから着る以前の話なんだけどさ。宿舎に戻ってきてから十分後、皆パーカーひとつになって出てくる。おそらく中は水着になっているだろう。連れていくものとしては安心する。少しでも悪い人に絡まれない様にするためには一番の方法だからだ。ただし一人を除いて。
「紗夜さんは着替えないのですか?」
「期待していたのなら申し訳ございませんが、生憎私は水着を持ってきていませんので。そもそも遊ぶ予定はありませんでしたし」
「いえ、期待はしていませんが紗夜さんがいいのならいいと思います」
「ちょっと、どういう意味ですか!」
「では皆さんいきましょうか」
後ろを振り向いて行こうとすると後ろから何か怒りのオーラを感じる。なんだろう、まずいこと言ったかな?実際水着に関しては特に何も抱かないしな………。
「ねぇ、新一」
「どうしたのリサ?」
「アタシたちの水着見てみたいと思わないの?」
「え、うん、別に大丈夫かな」
言葉を終えた瞬間、目の前のリサが凄い笑顔になる。笑っているのに笑っていない。どうしてだろう、矛盾しているのにそれが一番正しい表現だと思う。こうなってるということはおそらく言葉を間違えたなきっと。
「いや、ちょっとだけ見て見てみたいなー」
「ふふん、では見せてあげよう……それっ!」
閉じていたパーカーのチャックを開けるとそこには肌をあらわにしたリサの水着姿があった。それはリサらしく派手というかなんていうか、でも少し控え目のような綺麗な柄がプリントされていた。
「どう………かな?」
「うん、似合っていると思う」
「………終わり?」
「うん」
「マジか………」
「じゃあ次はあこの番だね!見るがいい!」
あこちゃんの水着は紫を基調とした水着だった。所々に蝙蝠の絵がプリントされている。似合っていると伝えると嬉しそうに跳ねる。その後、横でりんりんの水着姿が晒されようとしていたがりんりんが必死に抵抗したので見せられることはなかった。
その騒動から数十分後、僕たちは海岸に来ていた。そして何故か隣に京君がいる。
「何故かとは失礼だな」
「実際そうだと思うけど?なんでここに居るの」
「仕事だ仕事、海の家の手伝い頼まれてたんだよ」
「それは知ってるよ」
「今休憩時間なんだよ」
「なるほどね」
休憩時間なら納得いく。目の前では女子たちがビーチバレーをやっている。ポピパvsRoselia、勝つのは一体どっちなのか。その様子を少し離れたところから二人で見ている。試合の状況はRoseliaの方が劣勢だった。何故ならRoseliaにビーチバレー経験者及び運動が得意な人が少ないからだ。体力はあるものの連携もうまく取れていない。何より他の人よりも格段に体力を奪われている人がいる。そう紗夜さんだ。他の人とは違い水着ではない為動きづらく、暑さもプラスされて体力は二倍以上取られる。圧倒的に点差をつけられていく中またシュートが決まる。喜ぶポピパ、真剣な表情をしているRoselia。選手交代をしながらやっているが正直きついだろう。その様子を見ていると紗夜さんが手を上げた。一時休憩にするようだ。紗夜さんは一度海の家に行くと言っていた。状況が状況だったのでついて行こうとすると一人で行くから来なくていいと言われた。大体察した僕は皆のいるところに戻る。すると信じられない光景が広がっていた。
「ねぇお姉さんたち俺らと遊ばない?」
「あの、私たち友達と来てるので…」
ナンパだ。橋下さんが海ではよく出現するとは言っていたけど本当だったんだ。被害者はリサとりんりん、市ヶ谷さんと山吹さんだ。珍しいメンツで集まってたのかな。しかしまぁ、なんて程度の低いナンパだ。誰でも言えそうな言葉の使い方、多勢に無勢、正直言って評価は低めだね。それより京君は今何してるんだ?
「ふー、やっぱ体動かすのも悪くないな」
「何してたの?」
「ちょっと泳いでた……けど、あんまり面白くはねぇなあれ」
京くんの視線があちらを向いた瞬間、男のうち一人がりんりんの腕を掴もうとしていた。距離は数メートル、すぐに掴めると判断して男の腕を掴みにいく。あと少しでりんりんの腕に指がつくところで腕を上にあげた。
「すみません、この娘達に何か御用でしょうか」
「あー?なんだお前」
「この娘たちのお友達ですよ」
「そりゃ悪かったな、今からこの子達、俺らと遊ぶからガキは家に帰んな」
「そうなんですか?私には嫌がっている様にしか見えませんでしたけど」
「新一、助けて……」
後ろからリサの声が聞こえてくる。言われなくてもやる予定だったから問題はない。見てて同じ男の人として呆れたしね。
「新一お前、足早すぎだろ」
「なんだガキの友達か?」
「そうだけどあんたらはあれか?鶏軍団か?」
「あぁ!?」
「知らねぇの?鶏ってチキンって言うんだぜ。数がいなきゃ女の子にナンパもできないお前らにはピッタリじゃねぇかw」
「京君、煽りすぎ。正直言って同感だけどね」
「このガキどもが………!!!」
男たちが怒りを顕にしている。沸点まで低かったのか。指を鳴らすと近くにいた男の人たちが集まってくる。ざっと見て十五、予想はしていたけどやっぱりこうなるよね。呆れる僕の隣には笑っている人もいるけど。
「お前ら、覚悟はできてんだよなぁ?」
「ええ、勿論。皆、離れてて」
「なぁ、新一。相手がこれだけいるけど大丈夫か?お前水着じゃねぇし」
「そうだね、足元は大丈夫だけど相手よりかは機動力が劣るね。けどまぁハンデにはなるでしょ」
「面白そうだな、じゃあ問題ねぇ。多く倒した方が勝ちな」
「遊びじゃないんだよ。けど参加しとくよ」
「やっちまえお前ら!」
残念なナンパ軍団が僕らを囲んで殴りかかってくる。結局暴力で解決しようとする人ってのは程度がしれるな。まずはやってきた三人を回し蹴りで一度に潰す。どうやら京君も同じことを考えていたらしく、向かい合う形になる。砂浜に足をつけた瞬間お互いの方向に駆け出して蹂躙を開始する。進んだ先にいた一人に鳩尾一発。倒れる姿を見た男がストレートを放ってくる。その手を掴んで背負い投げをする。さらけ出したお腹を一度踏んでおく。別にいじめているわけではない。すぐに起き上がってきては元も子もないからやれるときに無力化しとかないとね。少なくとも、お嬢様の友達であり僕の友達に手を出そうとしたんだ。報いは受けてもらう。足を腹の上に乗せていると男の人がタックルをしてくる。が、それを馬跳びするように避ける。その瞬間だった。空から人が飛んでくる。それを躱すと地に落ちた人は伸びていた。どうやら京君の方から投げ飛ばされたらしい。ダメだこれ、完全に伸びている。安否確認を終えると次が来る。どうやらさっき蹴り飛ばした他人達のようだ。復帰できたことは褒めるけどそろそろ無謀だってことに気づいて欲しいかな。僕は三人の上の方を指さして一言言う。
「あっ、UFO!」
「「「えっ、まじ!?」」」
馬鹿なのかな?そんなことに油断するから鶏って言われるんだよ。止まった三人の肩を拳で叩いて地面に伏せさせる。後ろを振り返ると一人座り込んでいる人いたがすでに気を失っていた。京君の方を見ると人が山の様に積み重なっていた。相手にならなかったんだろうなきっと。段数を数えてみると全部で七段しかない。となると一人余ってるはず、そうやって見てみると確かに一人突っ立ってる人がいた。誰かと見てみれば最初にナンパしてた男だった。
「さて、お前はどうされたい?」
「えっ、あっ、その………」
「まさか許して欲しいなんて言いませんよね?女の子を怖がらせといて」
「あーあ、つまんねぇの。せめて殴りかかるくらいして欲しいもんだぜ」
「そういうこと言わないの」
その後二人で協議しあった結果京君に任せることになった。全員を起こして一列に並ばせて連れて行った。その集団はまるで処刑台へ向かう死刑囚の様な表情をしていた。
その軍団を見送った後皆の元へ戻るとポピパの皆がやってくる。
「名護先輩ってすごいんですね!見ててなんかキラキラドキドキしてました!」
「そんなことないよ。あとこんなことでキラキラドキドキしないでね、危険なことだから」
「オッちゃんの何倍強いんだろう?」
「いや、ウサギと比べんなよ!」
「(オッちゃん………?)市ヶ谷さん、山吹さん、二人とも怪我ない?」
「はい、大丈夫です」
「私も大丈夫です、ありがとうございます名護先輩」
「ううん、これくらいお安い御用だよ。でも二人とも可愛いんだから気をつけてね」
「かっ、かわっ………!///」
「あ、有彩照れてる〜」
「て、照れてねー!」
身内内でわいわいし始めたので気付かれないようにRoseliaの元へ向かう。
「りんりん、リサ、大丈夫?」
「アタシは平気だよー♪」
「私も………もう、大丈夫………」
「ならよかった。二人とも魅力あるんだから気をつけてね」
「そ、そんなこと………///」
「あはは〜流石にそれは照れるなー///さっきはそう言ってなかったのに…」
「え?」
「一体何があったんですか?」
後ろから声が聞こえたので振り返ってみると水着姿の紗夜さんの姿があった。所々カットして説明すると渋い顔をした紗夜さんだったが納得してくれたようだ。ついでに水着は持ってきてはいなかったのでは?と聞いたらたまたま入っていたと言われてしまった。本当は持ってきたんだなと思いつつも言葉にはしないでおいた。全員を集めてビーチバレーの続きが始まった。そしてある程度時間が経った後、京君からメッセージが届いたので見てみると鶏軍団が砂浜に顔だけ出した状態で埋められている写真が送られてきた。すぐに追加メッセージが来たので確認すると『モアイ、見たことないだろ?』と送られてきた。
あれからしばらくしてビーチバレーは終わりを告げた。途中からどう判断するべきか分からなくなってしまったので点数は数えておらず、引き分けにすることになった。
ポピパは私服に着替え、Roseliaはパーカーを羽織って移動していた。京君が働いている海の家によると京君本人は注文の品を運んでいた。反対側の方からガチャガチャと音が聞こえ、振り返ってみるといつの間にかにポピパがライブの準備を始めていた。ドラムが無いせいか山吹さんはマイクを持って戸山さんの横に立っていた。伴奏が始まると同時に二人は歌い始めた。普段のポピパとは違った雰囲気の曲調、八月になって今までの夏を思い出させる様な曲だった。その曲を聞いたお嬢様はインスピレーションが沸いたと言い、他の皆は今すぐにでも演奏したいと言っている。お嬢様は皆を引き連れて宿舎に戻っていく。宿舎に戻れば皆すぐにシャワーを浴びて練習着に着替えて練習部屋に入っていった。この様子を見るに今日はゆっくり食事とかではなく手軽に食べれる感じのものがいいだろうと考え、料理を始めた。作り終えた料理を運ぶと皆急いで食べ始める。それからはずっと皆の様子を見守っていた。時間はいつの間にか十二時を超え、全員一度寝ることにした。皆が部屋に戻っていくのを確認すると僕は宿舎を出る。宿舎を出ると言ってもコンビニへ買い物に行くだけだ。明日の朝食のパンなどを買いに行く。だけど通りが買った海の前で止まる。夜の海に見惚れ、僕は少しだけ寄り道することにした。
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あれだけ練習していたのにアタシは眠る事ができなかった。もう夜も遅いというのに不思議と外に出たくなった。皆を起こさない様に静かに歩いて外に出る。外に出るなり飲み物を買おうとコンビニに向かって歩いて行く。
そしてこの夜、アタシは初めて知ることになった。アタシが初めて恋した、彼の本当の姿を。
目にしてしまった現実、抗えない現実、運命の上に存在する現実
一体どれが真実なのか
次回「合宿二日目(夜) 夜海に映された姿」
壁の色を変えるとしたら?
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色分け
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上塗り