青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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第七夏 合宿三日目(昼) 熱色を得るために

 朝になって目が覚める。考えながらそのまま寝てしまったのか。これが俗にいう寝落ち………中々興味深い。さて、皆が起きる前に朝食の支度を済ませておこう。僕はベッドから降りて着替え始める。今日で合宿も三日目。お嬢様は新曲が出来上がってきてる様子なのでもしかしたら今日の夜には譜面が配られるだろう。ならば、考えるための力として朝ご飯は栄養重視でいこう。着替え終わってキッチンに向かうとガサゴソと音が聞こえてくる。冷蔵庫の音だ。どうやら先客がいるらしい。念のため警戒しながら中を覗くとそこにはリサの姿があった。

 

「あ、新一おはよー!」

「おはよう………何してるの?」

「朝ご飯作ってるんだよ♪いつも新一に任せてられないしね」

 

 正直驚いた。昨日までこんなことは起きてなかったのに今日になってこうなっている。やはり昨日のことが大きく関係しているのだろうか。

 

「リサ、あとは僕がやるから休んでていいよ」

「ううん、アタシもやるよ」

「いやいや、休んでて大丈夫だよ」

 

 休む様に促すとリサの顔が少しだけ膨らんだ。ムスーっとした表情を見る限りどうやらかける言葉を間違えたらしい。

 

「えーっと………じゃあ、手伝って貰えるかな?」

「うん♪」 

 

 笑みを浮かべるリサを横に調理を始める。栄養重視のためにも朝ごはんはシンプルにする。リサには目玉焼きを作ってもらい、僕はサラダを用意する。お米は炊くだけなので味噌汁を作る工程に移行する。しかしリサがそれもやってくれるそうなので好意に甘えることにした。予定の変更をして僕は洗面所に向かう。洗濯カゴに入っているものを全て色物などに分けて三台ある洗濯機を同時に稼働させる。もともと大人数で使う拠点だった故に洗濯機も三台ある。逆にそれが今となっては便利な部分にもなっている。

 洗面所を後にして台所に戻る。任せていたおかげか朝食の準備はあと味噌汁を煮込むこと、米を炊くこととなっていた。コンロに火をかけて米を炊き始める。余った時間で冷蔵庫の中身を確認する。今日の昼食、夕食を今のうちに考えておく。すると、リサが声をかけてきた。

 

「こっち終わったよー」

「ありがとう、お疲れ様」

「どういたしまして♪」

 

 それぞれが火にかける作業が終わるまで雑談をしていると紗夜さんが姿を見せる。そして次々と姿が見えてくるので朝食を並べていく。ちょうどのタイミングで米と味噌汁が出来上がったのでそれぞれ注いでいく。全員が食卓に着き食事を始める。そして今日の打ち合わせが始まる。

 

「お嬢様、本日の予定はいかがなされますか?」

「今日は全員練習よ。午前は全体で練習、午後は私は作曲するから個人練習。おそらく夜には出来上がると思うから皆そのつもりでいて」

 

 全員から返事が聞こえると雑談を交えた食事になる。

 

「今日は味が昨日と違いますね」

「気づいた?今日はアタシと新一で作ったの」

「えー、二人で作ったの⁉︎」

「と言っても手伝っただけなんだけどね」

「そんなことないよ。実際、今洗濯機も回せてるしね。今日は早く干せそうだよ」

 

 そんな雑談をしている中、紗夜さんが唖然としていた。何か嫌いなものでもあったのだろうか。でも以前聴いてた食べれないものリストのものは入ってないはずなんだけど。

 

「名護さん、もしかしてここに来てからの洗濯物って………」

「あ、はい、僕がやってましたが………何か問題がありましたか?」

「問題ありですよ!何で平然としてるんですか⁉︎」

 

 役割的に普通のことではないのかと思っていたのだが紗夜さんの中では違っていたらしい。食事中に大声を出すということはそれだけ大事なことなのだろう。

 

「紗夜どうしたの一体」

「湊さん、彼は男ですよ。その男の人が私たち女子の下着を洗ってるんです」

「それがどうかしたの?」

「どうかしたって…普通下着くらいは同性の人がやるものではないんですか!?」

「けどいつも私の洗濯物は新一がやってるわよ。そうよね新一?」

「その通りですが………もしかしてまずかったのでしょうか。皆さんきちんと洗濯ネットに入れてあったので任せてもらっているものかと………」

 

 そう言うと紗夜さんは頭を抱え込んでしまった。やはり気に障ってしまったのだろう。やはり謝罪するべきだろうか。

 

「紗夜さん、申し訳ございません」

「いえ、私も少し取り乱しすぎました。よく考えれば家事は基本名護さんが行っていますもんね。ですが流石に下着はやりすぎなのではないかと思います」

「はぁ………」

「私たちの下着を干してて何か思うことはありませんでしたか?」

「いいえ、特には………あ、でも」

「なんですか?」

「今日もいい天気だなとは思っていました」

「そこじゃありません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから午前の練習は順調に終わり、午後の練習になっていた。私は今井さんと共に自習練習を行っている。リズム感を整えるため、またお互いの苦手なところを見つける事にも繋がるので良い機会である。今井さんは全体的に見ていて安定感はある。練習は真面目に行い、休憩の時はしっかり休憩を取る。それができる人は滅多にいない。さらにはRoseliaの精神的支柱にもなり得る彼女はとても素晴らしいとも言える。

 

「はい、紗夜」

「ありがとうございます」

 

 彼女から水を受け取り口に含む。こう言った気配りができるのも彼女の特徴の一つだ。

 

「ねぇ紗夜」

「なんでしょうか」

「朝のことなんだけどさ、なんで新一にあんなに突っ掛かってたの?」

「逆に聞きますが今井さんは男の人に自分の下着を触られてもいいのですか?」

 

 質問で返すと彼女は難しそうな顔をする。けれどその答えはすぐに帰ってきた。

 

「確かに他の男の人ならイヤだけど新一ならいいかな」

「なぜですか!?」

「だって新一、変なことしなさそうだし」

「それは…そうですけど………」

「それに変な気を起こすような人じゃないしね〜」

 

 伸びをしながら呑気に答える。ふと思ったことを聞いてみる。

 

「今井さんは、名護さんがどういう人か知ってるんですよね?」

「まー一年ちょっとの付き合いだからね。紗夜よりかは知ってると思うよ?」

「では聞きますが、名護さんはどこかおかしいんですか?」

「………え、どゆこと?」

「朝もそうでしたが名護さんは女性に対してそう言った目で見るとこを見た事がありません。むしろ慣れているような、それともそもそも興味がない様な…そんな感じがするんです」

「確かにそこらへんは不思議だよね。アタシ達にすっごく優しかったりするし、むしろ清廉潔白というか純粋の塊というか………」

「………」

「え、どうしたの?」

「まさか今井さんの口から清廉潔白などという言葉が出てくるとは………」

「ちょ、ちょっと失礼じゃない!?」

 

 しかし今の話を聞いてる限り名護さんは普通の男子高校生とは違うようだ。『湊さんと一緒にくらしているから慣れた』なんてものじゃないだろう。それに私は今でもあの時の顔が気になっている。混乱を楽しむ様なあの時の顔。彼はやっぱり普通の人ではないのだろうか。

 そう思った瞬間だった。ドアからノックの音が聞こえてくる。どうぞと伝えるとおぼんにかき氷を二つ乗せた名護さんが部屋に入ってくる。

 

「二人とも今休憩ですか?」

「ええ、まぁ」

「かき氷を持ってきました。遠慮せずにどうぞ」

「ありがとう新一。って、完成度高くない?」

 

 彼の作ったかき氷はただのかき氷ではなかった。フルーツやバニラアイスを盛り込み丁寧に飾りづけられている。そこら辺の店ではなかなか見られないようなかき氷の形をしていた。

 

「本当は普通のを持ってくる予定だったんだけど時間ができたからね。少しだけ盛り付けようと思ったらこんなのになっちゃった」

「それでもすごいよ。お店じゃ全然見ないもん」

「そう?あ、でも味も確認してみて」

「「いただきます」」

 

 シロップのかかった氷を掬い、口の中に入れると見た目以上に美味しい事がわかった。

 

「どうですか?」

「美味しいです」

「すっごく美味しいよ!」

「それはよかった。水分を取ると同時に小腹も満たせるように水分を含んでる果物を盛り付けてあるから果汁にだけ気をつけてね」

「名護さん、貴方本当に何者ですか?」

「えっと…ただの執事ですが」

「そういうことではありません」

「あ、Roseliaのサポートもやらせて頂いてます」

「そっちでもありません!」

 

 自棄になってかき氷を口の中に放り込んでいくと頭が痛くなる。冷静さを失ってかき氷を一気に食べすぎてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 今日の晩御飯は先日までと違うものにする。料理を、ではなくグレードの話だ。今日が合宿で食べる晩御飯が最後の日だ。明日は午前中練習してからお昼に撤退するので体力を少しでも多くできる様にしといたほうがいいだろう。先程かき氷を運んだ時に食べたいものを聞いていたので各個人に配れるように作っていく。ただし全員が違うものを食べるとそれは個食になってしまうので人数分作っていく。そうすれば皆同じものが食べられるのだから問題はないだろう。材料を用意して調理を始めていった。

 料理ができてくる頃には六時を回っていた。晩御飯の時間は七時にしているので間に合ったようだ。盛り付けもすでに終わっているのであとは並べていくだけだ。六時半をすぎた頃に食卓の机を軽く拭き、食事を並べていくと皆がやってくる。うなだれている様子を見る限りどうやらよっぽど疲れたらしい。だが料理の匂いを嗅いだのか元気を取り戻したかのように食卓にやってくる。

 

「いい匂いがする!」

「見て見てりんりん、凄いよこれ!」

「いつもより……すごい………」

「これも名護さんが作ったんですか?」

「はい、合宿最後の晩餐ですので少しだけ張り切らせていただきました」

「張り切りすぎじゃないかしら」

 

 それから少しばかり話したが全員が落ち着いて食卓に着き、「いただきます」というと皆が目を煌びやかせながら食べ始める。どうやらきちんと作る事ができたらしい。中にはあまり作らないようなものもあったので少し心配だったが心配する必要はなかったらしい。食事が終わる頃、新曲の譜面と思われるものが全員に配られた。なぜか僕の分まである。今日の夜には目を通しておく様にと全員に伝えられた。

 食事が終わり、皆が浴場へ向かった後、僕は食器を洗っていた。今日は普段よりも洗い物の量が多いので苦戦することとなった。けどたまにはこういうのも悪くない。デザートも作ろうかと悩んだが、あれだけ食べればさすがにお腹に入らないだろうからやめておこう。食器を洗い終えて部屋に戻る。お風呂に入る準備を終えると同時に翌序が空いたと伝えられる。その後は昨日までとなんら変わりもない。譜面に軽く目を通し練ることにする。今日は早く寝れるのだと思い、布団に入ろうとするとノックの音が聞こえる。ドアを開けるとそこにはお嬢様の姿があった。




後2回ぐらいで合宿編終わります。

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