青薔薇の歌姫と白き聖騎士   作:OSTO文明

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今回から第三章の後半戦に入ります!


第十二夏 思い上がり

 俺は強いんだ。

 強いはずなんだ。

 あの苦しかった訓練を終えて、メモリの実験も耐え続けて、仲間の死を超えてここまでやってきた。

 だから俺は強いんだ。

 強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い強い。

 そう思っていたんだ。本当に俺は強いって、そう思っていたんだ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 夏休みもお盆を終え、後半も中盤に差し掛かっていた。まだ炎天下が続く中、お嬢様たちは今日も練習を続けていた。

 

「あこ、もうちょっと早く」

「はい!」

「今井さん、もう少し音を強めに出してください」

「オッケー、紗夜♪」

「燐子、貴女はもう少しゆっくりでもいいわ」

「はい…!」

 

 その景色を見ていると携帯で快斗君から呼び出しがかかる。少しだけ抜けると報告して部屋を出る。すると部屋の前に黒服の人がいるのを確認する。警戒すると弦巻家の者だと言うので少しだけ警戒を解く。話を聞くと弦巻家に連れて来る様に言われているので迎えに来たとの事だ。ライブハウスを出て目の前にある黒いリムジンに乗り込む。中には既に京君の姿があり今日は誘拐じゃないんだなと言ってくる。僕がシートベルトをすると車は進んでいく。

 

「しかしまぁ、あいつから呼び出しって一体どういうことなんだろうな」

「さぁね。ただ、考えられることは絞られてくるはずだよ」

「そうだな」

 

 考えられること、それは二つに分けられる。一つはガイアメモリの出口が見つかったのかということ。もう一つは敵の所在が判明したかということ。大きく見ると一つだがどちらも探すのには時間がかかるため難易度は高めであるとみられる。そんな考え事をしていると車は完全に止まった。どうやら目的地に着いたみたいだ。僕たちは車を降りると目に写ってくる大きな建物に意識を奪われる。

 

「なんだこれ…!?」

「多分屋敷だね、流石は日本を統べる弦巻家と言ったところだね」

「その通りっす」

 

 声のする方を見るとそこには快斗君の姿があった。いつもの制服、私服姿とは違い先程まで見てた黒服の姿をしている。こっちにくる様にと指示を受けると僕たちは海斗君の後ろ姿を追いかける。屋敷の中へ入っていき、しばらくしたところで地下へと潜っていく階段を降りていく。やがてついた部屋は暗く、真ん中に白い光を放っている机があった。

 

「ようこそ、ブリーフィングルームへ」

「なるほどな。お前が静かでここに連れてきたのはそれほど真剣な話があるということだな」

「まぁな…って人がいつもうるさいみたいに言うなよ!」

「事実だろ」

「喧嘩はやめて、時間が勿体無いから。快斗君、本題に入ってもらえる?」

「了解です。じゃあ座ってください」

 

 僕らが椅子に座るとテーブルの上に資料と思われるものがそれぞれ配られる。その資料を手に取って確認するとメモリに関する情報だった。

 

「ご覧の通り、ここ最近メモリの使用者が増えています。年齢は様々ですが厄介なのは使用者全員が弱みを握られていることです」

「弱み?」

「資料の六ページに捕まえた使用者が載っているんですが全員犯罪者ではありません。その代わり『何かに劣等感を抱いている』というものが多いみたいです。同僚、家族、ライバル等々対象は様々みたいです」

「なるほどな、人の負の感情を暴力に変えさせてるっていうわけか。最近強さが増してた理由もそこにあると」

「だけど不思議だね、どうやって人の弱みを握っているのか」

「それが不明なんです」

「あ?どういうことだよ」

「使用者はメモリを受け取ったことは覚えてんだけど誰からもらったかは覚えていねぇんだとさ」

 

 その言葉を聞いた瞬間かなり由々しき自体だということに気づく。メモリを使うものは心を見透かされて悪に利用される。さらには正体は隠しているとの事だ。もしこれが拡大していったら今だから抑えられているものも抑えきれなくなってしまう。しかも日に日に力は強くなっていっている。人の悪意は時として多大な力を発揮する。それが束になったらとんでもないこと起きると思われる。

 

「とりあえず今日の情報はこんなところっす。また何かあったら報告します。また、新一さん達も気をつけてください」

「わかった、ありがとう」

「あいよ、そういうお前も呑まれんなよ」

「わかってるっての、俺はすでに強いから問題ないんだけどな」

 

 帰ろうとする僕たちを快斗君はその場で見送ってくれる。来た道を戻って行くと黒服の人たちに出会う。車まで案内するということだ。正直助かった、まだこの屋敷に慣れていない(もとい初めてだ)から案内人がいると安心する。屋敷の外に出るとさっきのリムジンが止まっていた。僕たちが乗り込もうとすると錠前から音が聞こえる。場所はすぐ近くということなのでこのまま車で送ってもらうことにした。すぐに錠前を使って快斗君に連絡するとすでに向かっているとのこと。車を猛スピードで出してもらい、車内で僕らは変身した。現場に着くと僕らはすぐに車を降りて状況確認をした。

 ──悲惨だった。ビルは火事に見舞われ、そこらには瓦礫、ひび割れた地面など破壊され尽くした姿があった。勿論──死人や怪我人もいた。事故に巻き込まれた人が大半だろう。

 避難誘導を黒服の人たちに任せて僕らはすぐに元凶の元へと向かう。すると既に快斗君が戦っていた。敵はマゼンタでトリケラトップスが二足歩行している様だった。

 

『アアアアアアアアアア』

「二人とも遅いっす!早くコイツをどうにかしないと!」

「わかってるってのっ!」

 

 僕がイクサカリバーを銃モードに変形させて、京君はマグナムで銃撃を以って援護射撃をしつつ戦闘に入った。快斗君はナイフで応戦しているが相手の持っている棍棒と相性が悪い。一撃でも当たれば軽症では済まなさそうだ。京君に後方支援をお願いして僕も近距離戦に参加する。イクサカリバーを剣モードに変形させて斬りつける。三人で連携をとりながら交戦しているものの相手の力が上なのかなかなか攻撃が通らない。僕と快斗君の攻撃を棍棒で受け止めるとゼロ距離でエネルギー弾を放ってきた。当然避けることなど出来ず直撃する。爆発で吹き飛ばされた僕たちは受け身を取ることに失敗して地を転がっていく。今までの奴とは段違いで威力が違う。

 

『ジャマダ、アンナヤツキエチマエバオレガ』

 

 突然何を言い出したかと思うと敵は近くのビルをまた壊し始めた。挙げ句の果てにはまだ避難している最中のところまで攻撃を始める。その場を庇いに行くように京君が走って行き、左手を構える。

 

盾骸骨(スカル・フェイス)!」

 

 紫色の骸骨を出して攻撃がビルに当たらないように盾のように構えている。だがその攻撃も向きを変える。敵の目標がいたのか攻撃する先は京君のいる方向の180度反対側に向けられる。当然圭君が間に合うはずもないので僕が走っていく。防ぐ盾はないので斬ってどうにかしようかと考えたが斬ることは出来ずにそのままダメージを受けた。先ほどよりも威力は強く、立っているのが辛いくらいだ。しかし、間に合ったのかその場にいた人々にダメージはなかったみたいだ。

 

「京、新一さん!」

「バカ!気にすんな!」

「こっちは心配しないで、早く討伐を!」

「わかりました!」

 

 ナイフを逆手に持って快斗君は向かっていく。エネルギー弾が連続で放出されていたがそれを避けて走っていく。が、それは間違いだったのかもしれない。敵に後一歩のところで出された弾を避けた瞬間だった。後ろから悲鳴が聞こえてきたのだ。その方向を僕たちは全員見てしまった。少なくとも快斗君は見ない方が良かったのかもしれない。そうすれば敵はすぐに倒せたのかもしれない。悲鳴の方向にいたのは松原花音さんだった。

 

「花音さん!」

「駄目だ快斗君、今背を向けたら!」

「え?」

 

 もしかしたら敵の狙いはこれだったのかもしれない。理性を失っている様に見せかけての攻撃だったのか。それとも偶然だったのか。避けた先には快斗君の大切にしている人がいて、それに気を取られた快斗君は棍棒の一撃を喰らって松原さんの方へと吹き飛ばされる。松原さんの方へと飛んでいったエネルギー弾に当たり、さらにダメージを負っていく。土煙で何も見えなかったが、次第に晴れていくとそこには座っている松原さんと倒れ、変身が解除されている快斗君の姿があった。僕は悲鳴をあげている体に無理を効かせて走って快斗君の元へと向かった。

 

「快斗君、大丈夫!?」

「しっかりして、快斗君!」

「うぅ………っ、花音さん無事ですか!?」

 

 起きて何を言うかと思えば他人の無事の心配だった。当の本人は身体中ボロボロになっているのに自身のことは気にしていない様だった。松原さんの方を見ると土汚れが服についており、腕から少量の血が出ていた。

 

「私は全然大丈夫だよ………っ」

「花音さん……怪我………」

「これくらい大丈夫だよ、気にしないで」

「俺のせいで……怪我して………」

 

 他人が怪我をした姿を見るのは初めてなのか、快斗君はショックを受けている様だった。すぐには戻れそうにはないのでもう少し無理を効かせて戦場に戻る。

 

「アイツ大丈夫か?」

「少しショックが大きいんだと思う。僕達でやろう」

「お前、無理してんだろ。湊達にバレるわけにもいかねぇんだから少し休んどけ」

「そういうわけにもいかないよ。京君一人でやらせるわけには………」

「大丈夫だ。次の一撃で終わらせてやる、確実にな」

「出来るの?」

 

 正直疑問で仕方なかった。ここまで強い敵を一撃で仕留められるのか。僕も制限解除を使えば出来るだろうけど体力の問題上使うのは困難だ。すると京君から笑いが溢れる声が聞こえる。

 

「ふっ、ああ任せとけ。俺の必殺技見せてやるよ」

「必…殺……技………?」

 

 よく見とけと言いながら京君は僕の前に立って背を向けてきた。それから頭上で手を合わせて右脇腹の方へと合わせた手を持っていく。手を離していくと紫色の魂みたいなのが出てきた。

 

「──死してなお燃える拳よ、敵を包み、冥府へと誘へ────

    石破天驚拳・骸の型(スカル・フィンガー)』!!!

 

 紫の魂はやがて骨手の形となって敵に襲いかかる。その手は敵を掴み、包み込むと淡く光出し京君が右手を天に突き上げ、掛け声と同時に広げていた手を握り拳に変えると爆発した。

 

デッド・エンドォ!

 

 爆発した場所からは成人の男性が倒れて出てきた。その人の近くにはメモリが落ちてあり、表面には『TRICERATOPS(トライセトップス)』と書いてあった。TRICERATOPS、確かトリケラトプスのことを指す英語だったと思う。すぐに黒服の人を呼んで手当てする様にお願いすると颯爽と連れて行ってしまった。僕達は変身を解除して快斗君の元へと向かうと快斗君は膝をついて座ったままだった。

 

「終わったよ、大丈夫?」

「それが、快斗君ずっとこのままで」

「おいバカ、さっさと元に戻れ」

「誰が、バカだ………」

 

 いつもなら強く言い返すはずの快斗君が今回に限っては弱々しかった。

 

「帰ろう?ほら、皆多分待ってるから」

「じゃ、俺らもとっとと帰るか。新一、時間大丈夫か?」

「あ、うん、ここら辺だったらギリギリ大丈夫だと思う」

「じゃあせめて顔の汚れだけでも落としてけ。めんどくさいことになるぞ」

「すでに服が少しボロボロだけどね」

「そんくらいは誤魔化せ」

「それじゃあ松原さん、快斗君のことお願いします」

「う、うん!わかった!」

 

 そう言って僕らは彼らの元から離れていった。しばらく二人で歩いていると京君から声をかけられる。

 

「暑いな」

「夏だからね」

「………アイツ、変なことに巻き込まれなければいいんだけどな」

「…例の話?」

「ああ、あの資料に書いてあったことだ」

「確かに心配だけど、僕らが言ったところで今はどうこうできる問題じゃないよ」

「そうだけどよ………お前、意外と冷たいんだな」

「そう?」

「普通ならもっと心配したり焦ったりしてるもんだが、お前は冷静だからな。あれか?放任主義ってやつか?」

「そうじゃないけど……まぁ快斗君なら大丈夫だよ。何があっても絶対戻ってくるだろうし」

「まるでフラグだな」

(だけどまぁ、嫌な予感がするんだよな………根拠はねぇけど、探偵としての感というかなんていうか……少し調べてみるか)

 

 道の途中で僕たちは別れてライブハウスに戻っていく。そこには丁度練習を終えたお嬢様たちが出てきていた。合流しようと声をかけると皆して驚いた様な声をあげる。

 

「ど、どうしたんですか名護さん!?」

「大丈夫なの!?」

「い、いやぁ、実は派手に転んでしまいまして………」

「全く、子供じゃないんですからもう少ししっかりして下さい」

「紗夜さんとリサ姉…なんか新兄のお母さんみたい………」

「「違うよ(います)!?」」

 

 さっき汚れは取っておいたはずなのだがまだ土汚れがついていたのか二人が服を払ってくれている。正直このコントを見てて笑うのを堪えていたが少しだけ声が漏れてしまい、リサから強い一撃を喰らった。皆の前では言わなかったが怪我しているところに入ったのでとても痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後俺は花音さんとともに行くことなく一人で歩いていた。今日の戦いが頭の中でずっと繰り返されている。もしあの時俺が止まらないで進んでいたらどうなっていたのか。それよりもっと早く動けていたら事態は悪化せずに済んだのではないのか。

 ────もし花音さんの方へ飛んでいった弾に俺が当たっていなければ今頃花音さんは………

 そんなことを考えるたびに頭が痛くなる。そんなこと考えたくないと俺は逃げていく。そしていつの間にか俺は路地裏にいた。壁に寄りかかって頭を抱える。

 気づいてしまった。俺は強くなんかない。だからああなった。ああなってしまった。俺は強いはずなのに、そう思い込んでいたからこんなことになってしまった。

 ──嫌だ。嫌だ嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ────

 弱い自分は嫌だ。嫌いだ、大嫌いだ。もっと力が欲しい。力があればあんなことにはならなくて済む。もう誰も傷つけなくて済む。誰も絶望しなくて済む。力だ。力があれば。

 

「なぁ君、何を泣いているんだい?」

 

 ふと顔を上げるとそこには白い服の男がいた。革ジャンみたいな白い服を着た男。ソイツは笑顔のまま話しかけてくる。

 

「どうしてこんなところで泣いているんだい?」

「俺……弱いから………何も……守れなくて………」

 

 気づけば俺はその言葉を吐いていた。嗚咽が混じりながらも、なきぐしゃりながらみっともない顔をして話していた。

 

「そうか、君は力が欲しいんだね?」

「チカラ?」

「ああ、一緒に来ないか?君なら絶対的な力を手にできる」

「絶対的な………チカラ………」

 

 その言葉に惹かれた俺はその男の手を取って立ち上がった。コイツが何者なのかわからない。コイツの言っているものはなんなのかわからない。けど俺は力という言葉にだけ意識を奪われて歩いていった。その道は希望の道だと思い込んでいた。それが何も見えない真っ暗な道だとも知らずに。




新「しかし、サーヴァントにしてみた企画の宝具って使えたんだ…」
京「遊びだと思ってたんだけどな………」

いや、君が仕事ついでにやってた結果ああいう技使えるようになってたでしょ

京「まぁな、てか今日アイツここにいないんだな」

さぁ、それは後のお楽しみってことで………

新「嫌な予感しかしないね。次回は『第十三夏 骸の怒り』です」
京「今更だけど最後に夏ってつけるのめんどくね?」

それは言わないで!

壁の色を変えるとしたら?

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